暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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3、水将との激突

かなりの数が、陣を組んでいる。

 

長期戦になれば不利だ。

 

雨が止みはじめたら、もう勝ち目はなくなる。フィルフサが雨の範囲から撤退して、一度仕切り直しになる可能性もあったが。

 

その場合は、あたしが水による防壁を徹底的に固めて、フィルフサがこられないようにするだけだ。

 

ただ、敵もそれは察知しているのだろう。

 

雨が止むのを待つべく、陣列を組んで待ち構えていた。

 

「数はおよそ2500。 将軍がいるよ」

 

「……他の敵は?」

 

「恐らく、敵の本陣があると思われる地点に同じくらいの規模。 こっちは将軍がいるかは分からない。 他にもう少し下流に一群」

 

「多分もう一群は最低でもいるね。 仕掛ける前に、状況を探ろう。 遊撃でもしていたら面倒だよ」

 

クラウディアは頷く。

 

そのまま。身を低くして移動。

 

時間はない。

 

パティが寒そうにしていたので、あたしが熱魔術で周囲の寒さを多少緩和する。だけれども、これをやると後で余計寒くなる。

 

最低でも敵の一軍を潰したら、そのまま撤退する必要があるだろう。

 

そう考えた瞬間だった。

 

「後方、敵!」

 

「おいでなすったな!」

 

レントが剣を抜く。

 

どうやら、やはり敵は此方の動きをある程度想定していたらしい。

 

恐らく下流側に配置している部隊は、同じ作戦で、奇襲を狙って来たとき対策。

 

川に貼り付いている部隊は、また鉄砲水を引き起こすための部隊。

 

そして、遊撃の部隊は、感知に特化したフィルフサの情報を受け取り。

 

あたし達を逆に不意打ちするために動いていた、ということだ。

 

うおんと、嫌な音がした。

 

動物の鳴き声ではなく、何かが投擲されるような音だ。

 

それが、無数のフィルフサが、突貫してくる音だと気付く。だが、此方も既に戦闘態勢は万全。

 

大雨の中だ。

 

この数が相手でも、いける。

 

まずはあたしが、持ち込んできている爆弾を、ハンマーを投擲する要領で敵陣真ん中に放り込む。

 

最大級まで火力を上げたローゼフラムである。

 

音もなく飛んでいくローゼフラム。

 

敵の群れから、迎撃用の火線が迸るが、全て弾かれる。大火力の戦略用爆弾だ。そんなもので誘爆しないように、手を入れてあるのである。

 

やがて、敵陣のど真ん中にローゼンフラムが吸い込まれ。

 

あたしはセーフティを解除。

 

起爆していた。

 

フィルフサの群れが、散る。

 

それどころか、一部の個体は文字通りの壁になる。

 

それが、近付いて来ている中見えていた。

 

炸裂。

 

巨大な薔薇の形をした巨大熱量が、敵陣を文字通り蹂躙し尽くす。消し飛ぶフィルフサも多いが。

 

それ以上に、今の瞬間にダメージを減らすべく動いていた奴もおおい。

 

その散開した敵の群れが、そのまま襲いかかってくる。

 

「敵は柔らかくなっているとは言え、油断するな!」

 

「分かってる!」

 

レントに、ボオスが怒鳴り返すように応じる。

 

また雨が激しくなってきた。

 

次々に躍りかかってくるフィルフサの群れを、総力で迎撃する。そもそもこういう遊撃に選ばれた敵の部隊だ。

 

戦闘力が低いとはとても思えない。

 

斥候には精鋭が選抜される。

 

斥候というと使い走りのようなイメージを持つ者もいるかも知れないが、実際には敵の数や状態を正確に把握しなければならないから、相当な精鋭が選抜される。時には将そのものが斥候をすることもある。

 

斥候に来たあの将軍。強かったな。

 

そう思いながら、あたしは襲いかかってきた巨大な百足型を蹴り砕く。真っ二つにされても平然と動きそうだから、熱槍を前後に叩き込んで、更に爆裂させてやる。

 

体が砕けても、動いてくる百足型だが。

 

ボオスが飛びかかって剣を突き刺すと、動かなくなる。

 

よし。次。

 

躍りかかってくる犬のような奴。鋭い動きだが、水の中を走ってきている。外で戦った時ほどじゃない。

 

紙一重で爪を回避しながら蹴り上げ。

 

続いて来た奴の顔面を、肘鉄で泥水の中に叩き落とし。

 

更に来た奴を、熱槍で至近距離から射撃。

 

本来は効かない。今も効きが悪いが。

 

それでも、怯ませる事には成功。

 

其処に前蹴りを叩き込んで、吹っ飛ばす。

 

四体目が襲ってくる。五体目、六体目が同時。

 

跳躍して、残像を抉らせる。

 

ぼっと、下で遅れて音がした。

 

其処に残ったフラムが炸裂して、三体がまとめて粉々に消し飛ぶ。着地と同時に、あたしは踏み込み、今度は前に出る。更に来る犬型を、文字通りちぎっては投げ、ちぎっては投げる。

 

レントが一番大軍を引き受けてくれている。

 

だが、そっちに行く余裕は無い。

 

荷車を守りながら、皆総力戦の最中だ。

 

しかもこのままだと、他の敵部隊が動いて、この部隊の救援に来る可能性も否定出来ない。

 

クラウディアの音魔術。

 

「ライザ、将軍見つけた! この強力な魔力反応、間違いないよ!」

 

「ありがとうクラウディア! 場所指示お願い!」

 

「任されたっ!」

 

多数の矢が、次々にフィルフサを貫く。一発では倒せない。だが、クラウディアは一発目は観測射撃に使ってコアの場所を特定しているらしく。二射目で次々とフィルフサを撃ち倒している。

 

そんな乱射の中、明らかにおかしい一矢。

 

なるほど、そっちか。

 

至近で戦っているのは。パティだけ。

 

声を張り上げる。

 

「仕掛けるよ! パティ、来て!」

 

「はいっ!」

 

手元の爆弾は多くは無いが。

 

それでも、短期決戦だ。続いて次の群れが来る可能性が高い。連戦になるが、将軍をその都度ぶっ潰せば、それだけ敵の戦力を削れる。

 

王種に近付くのも、容易になる。

 

走る。パティが次々にフィルフサを斬り捨てる。コアを砕くのは、もう他の人に任せる。足などを切り裂いて、動きを止めるのに注力。

 

そういう戦い方だ。

 

剣舞が今の時点で、完璧になってきている。

 

剣舞というのは、剣にとって必要な動きを全て取り込んだものだ。それを実戦で生かせるようになれば、達人の領域。

 

既にパティは、其処に入り込んで来ている。

 

だが、見た感じ、パティは神懸かりの状態だ。

 

要するに、集中の極限の末に。意識を半分捨てて、戦闘に没頭している状況である。

 

だとすると、まだだ。

 

この状況を、冷静に出来るようにならないと。神懸かりが切れた瞬間に、敵に殺されるだろう。

 

特にこういう対多数戦の時にはだ。

 

「大きいの行く!」

 

クラウディアの声。

 

支援による大規模射撃魔術。

 

後ろで、魔力量ならあたしにも匹敵するクラウディアの魔力が爆発するのが分かった。大技で、一気に数を減らすつもりだ。

 

ならば。

 

前に立ちはだかった蟹みたいな姿をしたフィルフサ。大型で、容赦なく巨大な鋏を振り下ろしてくる。

 

パティと左右に飛び分かれ。

 

パティが鋏を、根元から両断。

 

背中を展開し、そこから多数の矢を放とうとしてくる蟹。

 

だが、次の瞬間。

 

頭上から、光の矢が、無数に降り注いでいた。

 

多数のフィルフサが、一斉に泥沼に串刺しにされていく。あたし達の道をふさごうとしていた奴らも。

 

大技だ。連発はできない。

 

「アンコールは無しよ……!」

 

クラウディアがフィルフサ達にそう告げるのが聞こえる。今ので、敵陣に乱れが生じていた。

 

だから、突破する。

 

パティもついてくる。

 

泥沼をかき分け、雨を蹴散らして走る。まだ無事なフィルフサが次々前を塞ごうとしてくるが。

 

あたしは怒号を張り上げていた。

 

「どけええええっ!」

 

巨大な猿のようなフィルフサを、文字通り蹴り砕きながら跳躍。

 

転んだ所を、パティがとどめを刺す。

 

あたしは着地と同時に走り。そして、フィーが鳴いていた。

 

「フィー!」

 

「!」

 

パティは対応できている。

 

あたしは飛び離れて、その一撃を回避する事に成功していた。

 

文字通り、沼を砕くようにして、それが振り下ろされる。長い節につながれた大斧、とでも言えばいいだろうか。

 

直撃していたら、即死だった。

 

ずるりと、大斧が沼から引き抜かれる。

 

パティが大太刀を鞘に収める。声を掛けておく。

 

「将軍だよ。 今までとは比較にならない。 気を付けて」

 

「分かりました」

 

すうと、パティが息を吸い込む。

 

二対一か。

 

できればもう一人は欲しいが。そもそもこの群れは統制が取れていて、此処まで突っ切れたのが不思議なくらい。

 

後方を皆が必死に塞いでくれているというだけでも御の字の状況。

 

ここで殺るしかない。

 

将軍が、姿を見せる。

 

虫に似ているが、非常に重厚な姿をしていて、背中に虹色の結晶を生やしている。頭に角があるのは、多数いる将軍と同じ。

 

だが、将軍級はそもそもドラゴンと戦闘出来る程の力がある。しかも此奴は、群れの質から言って。

 

この状況で、ドラゴンとやり合える実力があるとみていい。

 

背中から、ずるりと触手みたいなのが伸びる。それが鋭い音とともに膨れあがり、多数の節に変化。めりめりと形を変えていく。

 

同時に、あたしとパティは散開。

 

あたしは左から。パティは右から仕掛ける。

 

左三本の足を振り上げる将軍。なんだ。

 

沼地になっている地面に振り下ろす。それと同時に、辺りに光が奔る。それが魔術だと気付いた時には、本能的にあたしは跳んで避けていた。

 

爆裂する。

 

辺り全域が、文字通り吹っ飛ぶ。パティは、避けられたと信じるしか無い。

 

そして、空中で横殴りに、さっきの斧が飛んでくる。無理矢理熱魔術で空中機動して、回避しつつ、フラムを投擲。

 

フラムが炸裂するかと思った瞬間。

 

多数の何か。人間の掌大のものが飛んできて、フラムを包み。爆発は、それで抑え込まれてしまった。

 

着地。

 

今のは、見た。

 

フィルフサが引っ張り出した触手。それが膨らむときに、余剰分が空に拡散していた。それだ。

 

つまり此奴は、広域攻撃、動きを封じた後の大火力攻撃でとどめを刺し。ついでに余剰で防御までしてくると言う訳だ。

 

頭部をぐっと上げる将軍。

 

角の部分に、光の刃が生える。

 

まずい。

 

だが、次の瞬間。泥を吹っ飛ばしながら、パティが突貫してくる。そのパティに向けて、光の刃を将軍が叩き付ける。

 

発止とぶつかり合う大太刀と光の刃。

 

だが、まずい。

 

あたしは全力で、将軍に突貫。真横に、蹴りを叩き込む。

 

将軍の体勢が崩れる。

 

パティがさがる。

 

その上下、殆ど掠めるようにして、二つの斬撃が同時に走り、下の方の斬撃は沼地を大きく抉っていた。

 

ずらさなかったら、パティは首も足も失っている所だった。

 

将軍は五月蠅そうに踏み込むと、動かないままあたしを吹っ飛ばす。泥沼に叩き込まれたあたしに、あの大斧が叩き付けられる。

 

泥沼で足場が悪いが、あたしは逆立ちの要領で下に手を突くと体を旋回させ。大斧を蹴り返す。

 

沼地に衝撃を逃しながら。

 

目の前で、泥水が吹っ飛ぶ。

 

ひやりとするほどの破壊力だが、それでも威力は殺した。

 

雄叫びを上げながら飛び上がり。とんぼを切って立ち上がる。弾かれた大斧が、今度は真上で停止。

 

真っ二つに切りおとそうと、音を置き去りにして振り下ろされる。

 

熱槍で爆破して速度を落としつつ、突貫。だが、衝撃波だけで吹っ飛ばされる。全身が、これだけでも破裂しそうに痛い。

 

だが。

 

斬り込んだパティが、将軍の角に大太刀を食い込ませる。

 

それが最後の頑張りで、パティは鬱陶しいとばかりに踏みこんだ将軍の一撃で吹っ飛ばされる。

 

追撃に、多数の小型飛翔体が飛んでいくが。

 

あたしがそうはさせない。

 

突貫。

 

こっちにも、当然将軍は対策をしている。多数の小型飛翔体。顔と急所を腕で守りながら、そのまま走る。

 

鈍痛が走るが、知るか。

 

雄叫びを上げながら、あたしは渾身の蹴りを、将軍の横っ腹に叩き込む。一撃に巻き込まれた将軍の足が、一本、砕け散っていた。

 

将軍の体の逆側から、衝撃波が抜ける。

 

明らかにダメージが入った。コアにだ。

 

将軍が体を揺らし、飛翔体が落ちる。だが、致命傷じゃない。

 

驚くほどの速度で体勢を立て直すと、残った足を将軍が此方に振るって来る。まともに食らったらスライスされて即死だが。

 

体勢を立て直していたのは、あたしもだ。

 

最初に飛んできた足を、むしろ蹴り飛ばしつつ。その衝撃を利用して飛翔。将軍は全身を旋回させて、あたしを切り刻むように足を振るったが。全て不発。

 

上空で、熱魔術で空中機動。

 

一瞬遅れたら、大斧が体を抉っていたが。それも回避。

 

だが。将軍が背中を展開する。

 

更に触手を二本、あたしを串刺しにせんと飛ばしてくる。

 

流石だ。

 

もしも雨が降っていない状態だったら、全員懸かりでも勝てたかどうか。だが、今は、この豪雨。

 

戦力は十分の一以下。

 

だから勝たせて貰う。

 

両腕で触手を弾いてガード。多分肉を抉って骨まで行ったが、そんなもんは薬で後で直す。

 

熱魔術で、更に空中機動。というか落下加速。体に大きな負担が掛かるが、パティが倒れているのが見える。

 

今、此奴を倒しきらないと、助けられない。

 

雄叫びを、あたしは上げていた。

 

「いぃっ、けえええええええええっ!」

 

文字通り、一つの。

 

空から地面を貫く杭になる。

 

あたしが将軍をブチ抜いて、コアを砕いた瞬間。

 

其処に、巨大な間欠泉が出来る程に、水が噴き上がっていた。将軍の全身が、一瞬の抵抗の後、バラバラに砕け散るのが分かった。

 

あたしは、膨大な水が降ってくる中。

 

少しだけ笑っていた。

 

やった。

 

これで、四分の一。

 

しかも、恐らく各個撃破を狙って来ている敵の、最強の部隊を撃破出来た。

 

呼吸を整えながら、パティの方に。

 

大丈夫、生きている。あたしも体中抉られて悲惨な有様だが。それでも、薬で治せる範疇だ。

 

「ライザ! 無事!?」

 

「右の鼓膜、やられてる。 クラウディア、今将軍は仕留めたけど、周囲は」

 

「フィルフサが逃げ散り始めてる……」

 

「よし、群れは崩壊したね。 でもすぐに次が来る。 手当て、急いで!」

 

あたしも、出来るだけ急ぐ。

 

殆どのフィルフサは、将軍が死んだ事によって機能停止。生きている奴も、のろのろと戦場から逃れ始めている。

 

気を失っているパティを担いで、荷車に。

 

皆ボロボロだ。急いで傷に薬をねじ込んでいる。

 

「クラウディア、疲れている所ごめんね。 接近する敵について、音魔術で探り続けて」

 

「それよりライザ……」

 

「大丈夫。 薬で治る範囲」

 

パティはよく頑張ってくれた。

 

まだあたしの力が足りないから、これだけのダメージを受けた。それだけの話である。

 

すぐに薬を取りだして、傷口にねじ込む。

 

血もたくさん失ったから。増血剤も飲んでおく。

 

栄養も口に入れる。

 

はっきりいって保存食ばかりだからあまり美味しくないが、ぜいたくも言っていられない。多分敵が狙っているのは、此方を捕捉してからの、戦力を集中しての包囲殲滅。もたついていられない。

 

「敵補足。 群れ、同規模。 こっちに向かっているわ」

 

「まだいるはず」

 

「いや、他には接近している群れはないな……」

 

クリフォードさんが手をかざして、雨の向こうを見ている。

 

そうか、そうなると。

 

恐らくだが、今の将軍が想像以上に素早く倒されたと言うこともあって、敵は様子見に戦力を温存したのだとみていい。

 

もしも此方の戦力消耗が激しいようなら、今派遣してきている部隊でとどめ。

 

此方が気力充分なようなら、情報を持ち帰って、守りを固めて雨が去るのを待つという所か。

 

「どうするライザ」

 

アンペルさんが聞いてくる。

 

決まっている。

 

「此方から仕掛けます」

 

「何……」

 

「敵は作戦を切り替えたとみて良いでしょう。 そうなると、守りについていた部隊も、王種から離れている筈です。 今はとどめを刺すのと威力偵察を兼ねている部隊と、王種の守りに戻ろうとしている部隊がいる筈。 それぞれの群れを、逆にそれぞれ、速攻で各個撃破します」

 

「おいおい、またこれは、攻撃的だねえ」

 

クリフォードさんが呆れるが。

 

しかし、次の瞬間、不意に昂奮していた。

 

「良いぜ、ロマンに満ちている!」

 

「ロマンってなんなんでしょう……」

 

目を覚ましたパティが、荷車の上で昂奮するクリフォードさんを見て呆れている。

 

まあ、あたしにもよく分からないけれども。

 

ただ、士気が下がっていないのは、良いことだとは思った。

 

ともかく、手当てを急いで貰う。敵の群れの一つは少なくとも、此方を捕捉して向かってきている筈だ。

 

どんなに最低の結果でも、これだけは確定で潰さなければならない。

 

今、敵戦力の四分の一を潰したが。残りがガチガチに王種の周りを固めたら、かなり面倒な事になる。

 

将軍と戦って見て分かったが、此奴らの戦力は正直図抜けている。

 

土砂降りの中でなければ、そもそも勝負が成立しないだろう。

 

だから、今此処で仕留める。

 

無理をしても、だ。

 

「装備は問題ない?」

 

「何とかやってやる。 それにしてもお前ら、前よりきつくないかコレ」

 

「今後ライザと関わったら、いつもこうだろうさ」

 

「そうか……」

 

ボオスが遠い目になる。

 

まあ、あたしとしてはどうでもいい。

 

ともかく、此処で勝つしかないのだ。

 

此方に向かってくるフィルフサの群れ。クラウディアが、魔力を集中。凄まじい魔力に、背中に翼が生じる。魔力が大きい人間が、フルパワーで魔術を使うと時々起きる現象。あたしはちなみに、起きた事はない。

 

先制攻撃で、可能な限り削るつもりだ、ということだ。

 

だが、コアをこの位置から撃ち抜くのは無理だろう。そうなってくると。

 

なるほど。

 

そういうことか。

 

多数の人型が、クラウディアの周囲に出現する。その全てが、多数のバリスタ並みの巨大弓を手にしている。

 

これはもはや、単騎での精鋭弓部隊。

 

死の楽団だ。

 

「アンコールを聞かせてあげるかは分からないけれど。 せめて葬るときは、美しい音色で!」

 

クラウディアが、最後の詠唱を終える。

 

これらの矢は、魔術で放つだけでは無い。鏃に石や鉱石などを取り込むようにしてあるから、速度と撃ち出すときの加速もあって、充分な殺傷力を持つ。フィルフサに対してはそれもかなり落ちてしまうが。

 

この大雨の中なら。

 

そして、大雨の中でフィルフサの位置を正確に把握できるクラウディアなら。

 

ぶっ放される、数十に達するバリスタ並みの巨大矢。

 

破裂音のような凄まじい射撃音だ。

 

そして、それらが着弾してすぐに。

 

フィルフサ側も、反撃に出てくる。此方から接近して、仕掛けて来るとは思っていなかったようだが。

 

それでも、凄まじい反撃をしてくるのは流石だ。

 

セリさんが植物の壁を展開。第一波を防ぎ切る。

 

しかし、次の瞬間には乱戦が始まる。皆、手傷を受けて、それを無理矢理に直したばかりである。

 

パティはダメか。

 

流石に将軍と連戦させる訳にはいかない。

 

今の将軍は恐らく最強の個体だったのだろうが、それでも他も強いはず。出来れば三対一で懸かりたい。

 

そうなると、タオとレントを一瞥する。

 

「タオ、レント、中央突破して将軍を狙うよ。 一緒に行ける?」

 

「無茶を言わないでよ……」

 

「でも、やるしかなさそうだな!」

 

とにかく時間勝負だ。二人もその気になった所で。

 

あたしは、全力で泥を蹴っていた。

 

将軍の首、続けて取らせて貰う。

 

「クラウディア、残りの敵部隊の動向、監視を続けて!」

 

「分かった!」

 

「仕掛けるよ! さっきより条件は良いはず!」

 

敢えて、嘘を口にする。

 

此方の疲弊の分、恐らくさっきより条件は良くない。無理矢理薬をねじ込んで、継戦能力を作り出しているくらいなのだ。

 

体に無理は出ている。

 

それでもやらなければならないのである。

 

フィルフサは王種さえ残っていれば再起可能だ。

 

此処にいる王種を仕留めれば。

 

この土地をしっかり緑化し水も豊かな土地にすれば、そうそうフィルフサは侵攻して来られないはず。

 

そしてそれが楽観や希望的観測でないことは。

 

ここの門から来るフィルフサを、古代クリント王国時代の前の人々が、防ぎ切ったことからも。

 

此処にいる群れが、大した規模では無い事からも。

 

明らかすぎる。

 

希望はある。

 

だから、あたしが先頭に立ち。

 

全てを蹂躙する絶望を、逆に踏み砕くのだ。

 

フィルフサの群れが見えてくる。突貫。レントとタオに出来るだけ任せる。乱戦の中、あたしは雨で脆くなっている大型の装甲に蹴りを叩き込み、風穴を開けていた。

 

コアが露出する。

 

手を伸ばして掴むと、握りつぶす。まさかコアを握りつぶされると思っていなかったらしいフィルフサは、呆然と立ち尽くすと。そのまま後ろにどうと倒れる。

 

泥が飛び散る中、あたしは既に次に襲い掛かる。

 

乱戦の中、将軍が見えてくる。

 

見えてくると同時に、熱が側を掠めていた。

 

遠距離攻撃手段も将軍は持っている事が当たり前。此奴らも当然そうか。

 

二射目は、熱槍。冷気型で相殺。そのまま、激しい乱射戦を繰り返しながら、敵に接近していく。

 

レントとタオが、無理矢理敵を突破して側に来る。

 

頷くと、将軍にあたし達、クーケン島で最初にいた三人で。

 

将軍を仕留めるべく、躍りかかっていた。

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