暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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凄まじい強さを誇るフィルフサの群れ。

そして統率個体である将軍も、当然恐るべき強さを誇ります。

苛烈な豪雨の中。

ついに、その将軍との戦いに持ち込む所まで持ち込むライザ。

しかし、直接対決を挑んでなお、勝てるか分からない程強力な相手です。


死闘三牙
序、分断策


あたしの前で、クラウディアが手をかざしている。

 

まだ続いている土砂降り。

 

その先で、フィルフサが陣地を構築している。

 

そしてフィルフサの群れとあたし達の間にも、かなり激しい濁流が今まさに音を立てて流れている。

 

まさかフィルフサが、水を防壁として使ってくるとは思わなかったが。

 

ともかく、それは現実として受け止め。

 

現実的に倒す方法を考えなければならない。

 

「どう、クラウディア」

 

「小型中型大型、まとめて数は三千すこしくらいかな」

 

「……かなり減っているようだな」

 

「うん。 二つの群れが瓦解した事、更にこの大雨でダメージを受け続けていることもあるんだと思う。 予備兵力は少なくとも近くにはいないよ。 飛行型は……もう全滅したみたいだね」

 

そうか、良い情報ばかりだと言いたい所だが。

 

王種、最低でも将軍二体が無事である時点で、いい情報とは言えない。

 

さて、此処からだ。

 

水の流れを、タオが急いで分析している。クラウディアも、それを手伝っている。順番に手順を進めていく。

 

「敵は小高い丘に陣取っているんだよな」

 

「うん。 洪水で押し流すのは無理だろうね。 少なくとも、このまま見ているだけの場合は」

 

「厄介だな……」

 

「この辺りは、水が多いし、雨もそう。 だからフィルフサも学習して、この辺りでの動き方を心得ているんだと思う。 まさか水害まで防御に利用してくるとは思わなかったけれどね。 だけれども、それでもつけいる隙はあるはず。 僕達の武器……知恵を最大に使えば」

 

タオが分析を続ける中。

 

クリフォードさんは周囲を警戒。

 

アンペルさんは、もう何も言うことは無いという雰囲気で、タオを見ていた。

 

タオは学者としてはもう自分より上。

 

そうアンペルさんは言っていたな。

 

嬉しい事に、あたしのことも錬金術師として自分より上と、褒めてくれていたっけ。

 

今は、それを喜ぶより。

 

むしろ責任を受けた事を誇りに思い。

 

戦い続けなければならない。

 

無言で様子を見ていると。

 

タオが、よしと頷いていた。

 

「計算終わり。 ライザ、上手く行けば、敵の籠城の体勢を崩せる可能性が出て来た」

 

「詳しく」

 

「戻ってる暇が無いから、簡単に説明すると。 水の流れを見る限り、浅くなっている地点が幾つかあるんだ。 それを壁として利用して、水を一点に集める」

 

「よく分からん」

 

ボオスがぼやく。

 

タオは、見てれば分かるといって。

 

何カ所かに指を指していた。

 

「あそこ、そしてあそことあそこ。 同時に爆破できる?」

 

「出来るけれど、鉄砲水がこっちに来る可能性があるんじゃない?」

 

「大丈夫。 計算が間違っていなければ、上手く行く」

 

「最悪私が防ぐ」

 

セリさんがそう言ってくれる。

 

まあ、セリさんの植物操作は、この状況と相性が良いか。

 

ともかく、他に案も無い。

 

やってみるしかない。

 

タオの指定の位置まで皆にさがって貰い。最悪の場合、一番機動力があるクリフォードさんに援護して貰う体勢で、爆弾を設置して回る。

 

戦略用の広域制圧爆弾は殆ど使ってしまったが。

 

まだ発破用のフラムが幾つか残っている。

 

この土砂降りの状況だ。

 

それを使えば、簡単に決壊は引き起こせるが、問題は鉄砲水に巻き込まれたらこっちまで死ぬと言う事だ。

 

一箇所目。

 

設置開始。クリフォードさんが、周囲を警戒してくれる。

 

勘の鋭さは類を見ない人だ。

 

これに関しては、今まで何度も助かっている。

 

「やっぱ誰か見ていやがる。 でもどこから見ているのか、誰が見ているのかがわからねえ」

 

「それって、ロマンじゃないですか?」

 

「違うな」

 

「はあ……」

 

そっか。それはロマンに分類されないのか。

 

よく分からない定義だが、ともかくクリフォードさんには大事なものなのだ。馬鹿にするつもりはない。

 

二箇所目に行く。

 

一見すると、ただ氾濫寸前の川岸。

 

どう計算したら、上手く敵に大量の水流を叩き付けられるのか、よく分からない。

 

だが、それでもやるしかない。

 

そうして苛烈な攻撃をすることで。

 

敵の牙城を崩す。

 

将軍を押し流せればいいのだが。

 

事実三年前の戦いでは、かなりの数の将軍を濁流に叩き込んで、押し流してやったのである。

 

将軍もフィルフサだ。

 

押し流せば死ぬ。

 

多分王種もそれは同じだが。

 

流石に王種が同じ手に乗ってくれるかは微妙だろう。

 

二箇所目での作業完了。

 

続けて三箇所目に向かう。

 

クリフォードさんは微塵も油断をしていない。流石に歴戦のトレジャーハンター。それ以上の歴戦の戦士だ。

 

爆弾の設置、完了。

 

皆の所までさがる。

 

今の時点で、フィルフサは仕掛けて来ていない。ともかく、この大雨が止むのを待っている状態か。

 

それは判断として完璧に正しいから。

 

あたしがその正しい判断を、徹底的に崩してやる。

 

いや、あたし達がだ。

 

フィルフサは生物兵器なのかも知れない。

 

それとも、何かしらの間違いで出現してしまった存在なのかも知れない。

 

いずれにしても、フィルフサは今のままでは、存在してはいけない生物だ。

 

だったら、ここで仕留めてしまうしかない。

 

移動も設置も急ぐ。

 

相手はドラゴンと戦える生物だ。

 

長距離攻撃手段を持っている可能性が高く、もしも狙撃されたらひとたまりもない可能性だってある。

 

それを考えると、急ぐしかない。

 

設置を順番に終えていく。

 

そして、すぐにその場を離れる。如何に水で鈍っていても、フィルフサ相手に油断するつもりはない。

 

爆弾の設置、完了。

 

タオが言うとおりであれば、一気にこれで戦況を変える事が出来る筈だが。タオを疑うつもりはない。

 

だが、タオの計算通りといくかどうか。

 

戻って、設置が終わった事。

 

クラウディアが、設置位置を確認したことをそれぞれ話し合う。

 

頷いていた。

 

「よし、ライザ!」

 

「うん!」

 

セーフティを解除。

 

そして、起爆。

 

複数箇所で、爆弾が炸裂。

 

一気に彼方此方で、水の流れを変えていた。

 

少し高くなっている地点から、様子を見る。

 

決壊した川から、どっと水が流れ込む。それは文字通り水の竜となって、辺りを暴れ狂う。

 

タオには、どうそれが動くか計算できているのだろう。

 

そう信じて。

 

計算も当たると思って。

 

様子を見守る。

 

複数の川から、一気に水が流れ込んだことで、低地に水がなだれ込み。池になっていた場所が、湖になっていく。

 

それだけではない。

 

凄まじい波濤とともに、やがてそれが一箇所に集まる。

 

「出て来たよ! 王種だと思う!」

 

「防御する」

 

セリさんが、植物の壁を展開。

 

更には、レントが前に出て、防御の態勢を取る。

 

あたしも地面に手を突くと、氷の壁を展開。熱魔術によるものだ。あまり高熱に比べて氷は威力を出せないが、それでも詠唱有り、時間を掛けての魔術だったら、これくらいは余裕。戦闘でも攻撃に氷は活用しているが。壁にすることも条件が整えば可能だ。

 

王種のいる方向が光る。

 

超遠距離攻撃の可能性を想定したが、あれは違う。

 

凄まじい波濤になっている水に、何かしらの大火力魔術を叩きこんだようだ。凄まじい水柱が上がっている。

 

だが、それでも水は食い止められない。

 

水のパワーは凄まじい。

 

あたしはおぼれかけたときにそれを思い知らされたし。

 

着衣泳の訓練を散々やって、更に水の恐ろしさを思い知らされた。

 

ドラゴンだろうが。

 

精霊王だろうが。

 

牙を剥いた自然の猛威には、勝てっこない。

 

何度も水に攻撃を叩き込む王種。だが、水は容赦なく怒濤となって、その光をかき消すのが分かった。

 

「波が……!」

 

「複数方向からの水流が、あのフィルフサ達が陣取っている丘にぶつかるように計算した!」

 

「なるほど、三角波を意図的に起こしたのか」

 

「丘に……直撃するよ!」

 

凄まじい破裂音が響く。

 

破裂音かと思ったが、違う。

 

多分だけれども、今タオが言った水流が合流して、一気にフィルフサ達が雨宿りをしていた丘に直撃し。

 

抉り取ったのだ。

 

そのもの凄いパワーが、破裂音と錯覚させた。

 

思わずパティが耳を塞ぐのが見えた。

 

大雨の中、此処まで轟くほどの水のパワーだ。これは、殆どのフィルフサが、ひとたまりも無い筈である。

 

「クラウディア、どう?」

 

「今、確認中……王種、上空に出て後退してる!」

 

「位置分かる? 狙撃して叩き落とす!」

 

「……待って、今、正確な位置を……」

 

あたしは詠唱開始。

 

更に、足下を凍らせて、踏み砕いても地盤が壊れないようにする。

 

この距離から、相手に届けられる爆弾は存在していない。

 

しかしながら、あたしにはこの距離を蹂躙できる切り札がある。

 

一点収束型のグランシャリオ。

 

一発で石造りの家屋複数を粉砕する熱槍を二万、一点に収束し。

 

それをあたしのもう一つの切り札である足技をフル活用して、踏み込んで相手に叩き付ける文字通りの必殺の技。

 

相手を必ず殺す技だ。

 

ただ、今までの時点で、殺せなかった敵が出て来ている。だから、あたしは更に研鑽を重ねるつもりだ。

 

最強だと思い込んだ時点で、人間は進歩を止める。

 

だからあたしは、まだまだ強くなる。

 

そして人間を止めてももっと強くなるつもりだ。

 

この世界の人間は。

 

古代からずっと、錬金術を知れば悪用することしか考えなかった。

 

そんな輩には、焼きを入れなければならない。

 

必要ならばあたしが魔王になる。

 

ただそれだけの話だ。

 

「ライザ、位置確認完了!」

 

クラウディアが、光を並べて、相手の位置を示してくれる。

 

頷くと、あたしは詠唱の最後を唱え終え。

 

収束させた、全てを撃ち抜く光の槍を。

 

踏み込みながら、投擲していた。

 

相手はフィルフサ。

 

魔術がほぼ効かない。

 

この土砂降りの中。しかも、凄まじい波濤を浴びた王種だ。

 

これがどこまで効いてくれるか分からない。

 

だが、それでもだ。

 

無傷はあり得ない。

 

クラウディアの誘導に従って、グランシャリオの火線が伸びる。全てを焼き尽くす熱の槍が。

 

直撃。

 

炸裂音が、此処まで響いてきていた。

 

空が明るくなる。

 

爆発したのだ。

 

「直撃……!」

 

「油断するな。 防御態勢続行!」

 

アンペルさんが警戒を促す。あたしは深呼吸しながら、体内の魔力の流れを練って行く。

 

反撃が来る。

 

どうやら、今の凄まじい波濤を耐えきったフィルフサが、此方を捕らえたらしい。反撃の魔術が、セリさんの植物の壁を、あたしが作った氷の壁を次々貫く。

 

だが距離がある。

 

すぐに皆で移動を開始。わざわざ壁が破られるまで、待ってやる理由なんてない。

 

「クラウディア!」

 

「王種、墜落してる! 間違いなくダメージは入ったけれど、コアにまで行ったかは……」

 

「墜落先は!」

 

「……っ、ダメ。 水の中じゃない」

 

そうか、じゃあ戦って殺さないとダメだな。

 

そう思いながら、あたしは皆を急かして、水の中を移動する。苛烈な攻撃で、さっきまでいた場所が粉砕される。

 

多分さっきの丘にまだ生き残っていた残存のフィルフサ。

 

それも将軍級によるものだろう。

 

クラウディアが、光魔術で地図を展開。位置を示してくれる。

 

どうやら、丘よりかなり向こう側に王種は落ちた様子だ。

 

水は一気に丘に叩き付けられてから、その反動で渦巻いてはいるが。それ以上三角波が起きる事もないようである。

 

そうなると、将軍と王種の分断は、成功したとみていい。

 

さっきまで陣取っていた高所が粉砕される。

 

凄まじい火力だ。

 

或いは遠距離戦特化のフィルフサなのかも知れない。だが、だとするとどうして先の将軍二体との戦いで、横やりを入れてこなかった。

 

ともかく接近戦を挑んで、一気に仕留めるしかない。

 

水を蹴立てて走る。

 

時々クラウディアが、指示を出してくる。

 

「その先、深くなってる! みんな左に迂回して!」

 

「クラウディア、ごめん、負担かける!」

 

「いいの! それより走って! さっきの長距離攻撃、どうして此方を狙えたのか、よく分からない! もしも不意を打たれたら、多分動きにくいこっちはひとたまりもないよ!」

 

「そうだな。 その場合は俺が何とか時間を稼ぐ」

 

レントが、最前衛で怒鳴り返すように言う。

 

土砂降りと風が凄まじくて、それくらい大声でないと聞こえないのだ。

 

土砂降りはもう二日と続かない筈だが。

 

最後の力を振り絞るようにして、荒れ狂っている。

 

フィルフサの王種には、ダメージを与えたはず。

 

撃墜したのだ。

 

地面に落ちて、それで無事でいるとも思えない。

 

問題はそれからだ。

 

リラさんが、分かりやすく問題を皆に伝えてくれる。

 

「将軍は恐らく二体、纏まっている。 その上足場も良くない。 皆、気を付けろ。 勝負は多分一瞬になる!」

 

「雑魚は殆ど流れてしまったはず。 だけれども、将軍の強さは桁外れだよ。 散々雨に打たれて、それでさっきの濁流の直撃を受けても、なおギリギリの勝負になる筈!」

 

「先に王種を倒すのはどうだ」

 

「横やりを入れられるとまずい。 先に将軍から倒す!」

 

クリフォードさんに、あたしが説明。

 

司令塔は、刻一刻変わる状況に、的確に対応しなければならない。それだけの責任を負っているのだ。

 

責任か。

 

あたしは、責任を押しつけ義務も押しつけ、そして利益だけ奪うような存在になるつもりはない。

 

大きく迂回して、大雨の中走って。フィルフサが陣地にしていた丘が見えてきた。

 

凄まじい抉れ方をしている。

 

さっきの水攻めが、どれだけ強烈に敵を襲ったのかが、一目で分かるほどだ。

 

フィルフサは少数。殆ど死にかけ。

 

将軍は、三体か。

 

最低でも二体と思っていたから、想定の範囲内だ。その中の一体。

 

明らかに異形である。

 

体は他の将軍と似た虫型だが。

 

その体は、筒のように伸びきっている。あれは砲撃特化型のフィルフサだと判断して間違いない。

 

さっきの長距離狙撃は、こいつによるものだ。

 

他二体の将軍は、プレッシャーで分かる。

 

右のは接近戦担当。左は防御担当か。

 

「パティ! あたしと右を叩くよ! レント、タオ、リラさん! 左を! セリさん、アンペルさん! 砲台型を! ボオス、クラウディア、クリフォードさん、残りの雑魚を頼むね!」

 

「分かった!」

 

振り分けは、簡単だ。

 

砲台型は、一目で分かった。他のフィルフサが支援して、やっと動けるタイプ。だったら、相手の動きを封じて、一点突破すればいい。セリさんが動きを止め、アンペルさんがコアを貫けば倒せる筈だ。勿論相手は将軍級のフィルフサ。理屈が分かっていても、簡単に勝てはしないだろうが。此処は二人を信じる。

 

防御型は、攻撃力に特化したリラさんと、更にパワーだけなら多分全員で一番のレント。これに加えて、相手の弱点を的確に分析出来るタオが適任だ。

 

そして接近戦型は、あたしとパティで出来るだけ迅速に仕留める。

 

クラウディアとクリフォードさんは、制圧戦闘を担当して貰う。ボオスも此処で頑張って貰う。

 

まだ生き延びている少数のフィルフサが、土砂降りで傷みつつも、仕掛けて来る。

 

其処へ、クラウディアの制圧射撃と、クリフォードさんのブーメランが横殴りに襲いかかる。

 

嘘のように砕け散る強力なフィルフサの装甲。

 

飛び散った装甲を蹴散らしながら。あたしは蟷螂ににた姿をしている、黒い将軍へと襲いかかっていた。

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