暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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4、待つ者

ヴォルカーは野営を続けたまま、報告を待つ。

 

フィルフサという恐ろしい魔物について、ライザくんは順調に勝ち進んでいるようだ。手傷は受けているようだが。数は想定より少なく、戦闘で地の利を得たとは言え、それでも万単位。

 

しかも魔術が通用せず。

 

生物急所も存在しない、ただ殺す事だけを目的に襲ってくると言う危険極まりない魔物である。

 

アンデットというものがいるという噂がある。

 

幽霊などは、ごく希に目撃例がある。

 

ヴォルカーも古戦場などでたまに人影のようなものは見かけるが、実際に死体が起き上がって襲いかかってきたり。

 

悪意を持つ幽霊が襲ってくると言うような事例に遭遇した事はない。

 

一応報告例はあるらしいが。

 

それくらいに、死者が襲ってくるという事例は少ないのだ。

 

幽霊鎧という魔物もいるが。

 

あれはどうも古い時代のテクノロジーで動いている鎧だという話で。実際倒しても、鎧の中はがらんどう。

 

更には明らかに人間とサイズが違うものもいるので。

 

あれが中に人が入っていた、怨念で動くものだとは考えにくい。

 

ただ、それでもごく希に、極めて危険な不死者というものは存在しているらしく。

 

辺境などでは、そういった存在に、大きな被害を出す事があるのだとか。

 

そういった存在が何が恐ろしいかというと、戦士達が恐怖を駆り立てられるというのもあるだろうが。

 

そもそも遭遇例が少なく。

 

戦闘をどう進めて良いか分からない事だ。

 

倒し方が分からなければ、一方的に殺されてしまう。

 

それと同じで。

 

フィルフサという魔物の特徴を聞いていると、本当にそんなものが大挙して現れたら。ライザくんが言うように、王都なんてひとたまりもなかっただろうなと、ヴォルカーは思うのだった。

 

それにしても、だ。

 

娘が指名されて。

 

自分は留守番か。

 

パティが短時間で急激に強くなっているのは、ヴォルカーも分かっている。今の技量は、正直自分より上かも知れない。

 

それだけ良質な戦闘に恵まれていると言う事だ。

 

更に手にしている大太刀も、身に付けている胸鎧も、それぞれが文字通りの大業物である。

 

戦士だったら喉から手が出る程欲しいほどの代物であり。

 

ライザくんが素材を作りあげたそれらは、アーベルハイムの子々孫々に受け継がれていくだろう銘品だ。

 

それらはパティ用のものだから。

 

パティが戦線に出向く。

 

分かっているが、やはりこういうのはあまり気分が良くない。

 

妻も、戦場に出る自分を、こんな風に待っていたのだろうか。そう思うと、ヴォルカーはますます無言になるのだった。

 

テントの中で、しばし無言でいると。

 

伝令が来る。

 

「伝令!」

 

「うむ」

 

「前線からの情報です。 戦闘は有利。 ついに敵の首魁を追い詰めたという事です」

 

「そうか……」

 

フィルフサという魔物は、真社会性の生物だという。

 

そして王が倒れると、群れが再建されることはないそうだ。

 

王さえ倒してしまえば。

 

少なくとも、今ライザくん達が戦っている群れは再建されない。後は、その魔物が出てきた穴をどうするかだが。

 

アーベルハイムで、厳重に管理する必要があるだろう。

 

いずれにしても、ライザくんが戻って来たら、その時に相談する事になるだろう。

 

大人として。

 

此処を守らなければならない。

 

最悪の場合は、堰を切って水で満たし。フィルフサとやらが二度と此方にこられないようにしなければならない。

 

その時は大きな被害が出るし。

 

被害を糾弾されたら、首を差し出さなければならないかもしれない。

 

それを知った上で、ヴォルカーに後をまかせたライザくんは。

 

見た目よりも、ずっと強かで。

 

シビアな考えの持ち主なのだと思う。

 

一度外に出る。

 

一雨来そうだ。

 

戦士達に、雨が来る事を告げて、先に対策させておく。

 

ライザくんが王都の機械を順番に直してくれていると言う話だ。或いは、もっと質が良い水が、王都の住民に届けられるようになるのかも知れない。

 

いずれにしても、何があっても対応できるように、常に動けるようにしておかなければならない。

 

頭をはっきりさせ。

 

判断力を最善に保ち続ける必要がある。

 

最低でもあと一日。

 

やはりこの年齢になると、どうしても加齢が気になってくる。

 

妻が生きていれば、もう少し負担も小さかったのかも知れないが。

 

妻は体がそれほど強くなかった。

 

こんな道に進むことをつきあわせた時点で、どうしても時間はとれなかったのかも知れない。

 

今は、待つ。

 

娘が凱旋すると信じて。

 

ライザくんなら、きっとパティを生きたままつれて戻ってくれるはずだ。

 

あの豪傑ならば。

 

そう信じさせるだけのものが。確かにライザくんにはあるのだった。

 

 

 

(続)




激戦の末、ついに王種を追い詰めるライザ達。

しかしながら敵の戦闘力は以前交戦したフィルフサの群れとは次元違いです。

苛烈な戦闘の先は。

王種との死闘である事は、疑いがありません。

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