暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
見つけた。此処だ。
王都の地下に水を供給している機械設備。やはりあった。
古代クリント王国ほどテクノロジーはなかったにしても、それでも神代のテクノロジーをある程度受け継いでいる国家の都市だったのだ。
あっても不思議ではないと思っていたが。
今回は、一緒に来ているのはタオとパティだけである。
そういえば、王都に来てしばらくはこの三人で調査をしていたっけな。
そう思いながら、すっかり歴戦の猛者に成長したパティを見る。
「ライザさん、こんな森の奥にある、このなんだかよく分からない滝みたいなのがそうなんですか?」
「間違いないよ。 王都三十万人の命の元だね」
「農業用水なんかは川から直に引いているけれど、彼方此方にある井戸や噴水には別口で水を引いている話はしたよね。 これがそれだよ」
タオがすぐに手慣れた様子で光学式コンソールを発見。
調査し始める。
案の場エラーまみれだそうだ。
あたしは頷くと、奥に入る。
今日はクリフォードさんは、リラさんと一緒にオーリムで生き残っているオーレン族を探している。
今までに三組、合計で十一人を救出に成功している。
まだ他にも分散して生き延びている小規模集団がいるという話なので。今日も続けて捜索を続行しているのだ。
クリフォードさんの勘は頼りになる。
リラさんも、それは認めていて。
勘を最大限に生かしてくれと、何度か言っているのをあたしは見ていた。
「よし、構造は理解出来たよ。 今、表示するね」
「動力はまだ残ってるみたいだね」
「うん。 多分だけれども、此処の直下に竜脈があるんだよ」
「……」
竜脈か。
どうしてそんな風に呼ぶのか、というのも不思議なのだが。
ひょっとすると、エンシェントドラゴンが自然門を作ったのも、それに関係しているのだろうか。
だが、どうして此処に自然門を作らなかった。
或いは竜脈でも特に強い場所に作るのか。
それとも、何か別の条件があるのか。
いずれにしても、情報が足りない。
今後はタオやクラウディアと連携して、更に情報を集めていく事になるだろう。
根本的には、オーリムに蠢く大量のフィルフサという大問題はなんにも解決していないのだし。
各地では、今でも魔物に多くの人々が脅かされている。
その人々が、必ずしも善良ではない、と言う事も問題だ。
あたしが万能だったら、それこそぱぱっと全部解決できるのだろうが。
残念ながら、あたしは万能でもなんでもない。
ただし、寿命は普通に超越できそうなので。
それを利用して、一つずつ、問題は解決していく。
出来れば今の王都に集った面子が生きているうちに、フィルフサだけは全て根絶やしにしておきたいのだが。
もしもフィルフサが生物兵器であり。
神代の畜生連中に改造された存在だったのだとしたら。
それに、「伝承の古き王」には、それを裏付けるように、妙ちくりんな機械も装着されていた。
それを考えると、あの機械のサンプルも、何処かで手に入れて解析し。
場合によってはまとめて全部粉砕するようなことも、考えたかった。
やりたいことが多すぎて。
いずれにしても、すぐには着手できない。
今は、まず。
目の前にある、この浄水設備から、修理をしていかなければならない。
タオが構造を見せてくれたので、なるほどと把握。
仕組みは北の里のと大して変わらない。
戸を開けて、地下に。
途中の階段は錆びだらけで、本当に忘れ去られて、何も整備がされていないのがよく分かった。
「王家か何かに、此処の事は伝わってないのかなあ」
「ロテスヴァッサが成立した際に、たまたま都合がいい人間が王族になっただけだからね。 そんなものを伝承できる余裕は無かったんだと思うよ」
「まあ、それもそうか。 あの機械の正体も、理解していなかったみたいだし」
「なんだか手間を掛けます。 すみません」
申し訳なさそうに謝るパティ。
階段の一番下まで降りると、それなりに広い部屋に出た。
水をとめるわけにもいかないか。問題は、エラーが出ている部分である。水を綺麗にするのには、複数の仕組みが使われている。
まずは熱を使って煮沸。
その後は、何段階かのフィルターを用いて不純物のカット。
その後は、幾つかの段階を経て、配水管に水を流している。その配水管から、王都の各地にある井戸に水が行っているのだが。
エラーを見て、なる程と呟く。
フィルター。
煮沸装置。
全てがダメだ。
これは湧かさないと、水が飲めなかった訳である。
その説明をすると、パティはうっと呻いていた。
「つまり、井戸から湧いていた水は、川の水とまんま同じだったって事ですね……」
「流石に目に見える程の大きなゴミとかは、ほら。 あそこで排除されてはいたみたいだけれど」
地下の部屋からは、幾つかの映像が見られる。
滝みたいなのが流れ込んでいる先にネットがあるが。それもボロボロだ。全部取り替えないといけないだろう。
いずれにしても、これは取り替えをしても、王都の人にはなんの影響も無い。
更に、動力も。
クーケン島の動力と同じで、死にかけている。
文明は一度断絶したんだな。
あたしはそう思って。大きなため息をついていた。
三年前に、クーケン島にアンペルさんとリラさんが来なかったら。あたしも、こんな事は一生知らなかっただろう。
それが幸せか不幸せかは分からないが。
いずれにしても、その内フィルフサにこの世界は蹂躙されていただろうし。それを嘆く暇もなく死んでいたはずだ。
タオが設計図を書き起こす。
そして、あたしはそれを貰って、内容を把握していた。
タオが、パティに話をしている。
「パティ、ヴォルカーさんに此処の事と、これから修理に入る事を説明しておいて」
「分かりました。 内容については、私が理解出来たぶんで良いですか?」
「うん。 ヴォルカーさんはライザの事をとても信頼しているようだし、ライザがへまをしなければ絶対に直る。 しかもライザはこう言うときは絶対にへまをしないから、安心して良いと思うよ」
「タオ……」
なんか引っ掛かる言い方だが。タオは、笑顔を引きつらせると。拳を鳴らし始めたあたしを置いてさっさと戻る。
パティは真っ青になっていたが。
ともかく、あたしはパティも先に行かせる。
とりあえず、準備する道具類について、頭の中でリストアップする。
自身の空間把握能力については、あたしも一応自信はある。
万能などではないあたしだが。
出来る事は、経験を積むうちに。
自分で把握できるようになってきていた。
アトリエに戻ると、素材を確認。幾らか足りていない。オーリムに行く必要はないが、砂漠付近でいいのが採れる場所がある。
砂漠だと、単騎で出向くのは少し厳しいか。
「フィー?」
「ちょっとお出かけしないといけないねえ」
「フィー!」
フィーが、嬉しそうに上を飛び回る。
オーリムに頻繁に出入りしているから、というよりも。
あの自然門近くの空気を浴びているからだろう。
すっかり元気は戻っていた。
やはりドラゴンに関係しているのだ。オーリムに行ったから元気になった訳じゃあない。それをあたしは理解していた。
だから、今ドラゴンに関係する……ワイバーンの素材を幾つか集めて実験している所である。
王都を去る目処はついているが。
幾つかこなさなければならない残存タスクの内。
フィーの生存に必要な要素を見つける。
それが、絶対の一つだ。
丁度ボオスが来たので、護衛にパティとレントを頼む事にする。
砂漠に行くと聞いて、ボオスはうっと顔をしかめたが。それ以上に、嬉しそうにフィーが頭に乗っているので。
ボオスは何も言えなくなったようだった。
「わかった。 レントはまだ俺と修行をしているから、明日には出られるように声を掛けておく」
「お願いね。 パティは多分明日の朝来るから、その時に話をするわ」
「それにしてもお前、短期間で王都の重要人物だな。 今ではお前の名を聞くだけで、悪党が逃げるって話だぞ」
「妙だね。 別に捕り物なんかしてないんだけど」
貴族を複数潰すのに関与したくらいだ。
ただ、アーベルハイム卿があたしに協力的であること。
王都南にわんさかいた魔物を、空を焦がすような大火力魔術で文字通り一網打尽にしたこと。
それらも大きいのだろうと、ボオスは言う。
なんだか煮え切らないが、別に良い。
咳払いすると、ボオスは本題に入る。
「とりあえず、俺の役割はもう終わりという判断でいいな」
「うん。 今までありがとうね。 そろそろクーケン島に戻ることを考えるから、後は個人的な手伝いだけしてくれれば大丈夫だよ」
「本当によ。 俺の頭だと、此処での学問にはついていくのがやっとなんだよ。 ちょっと忙しすぎたぜ」
ボオスは此処で、学問以上にコネの構築に腐心していた。
だからあたしの支援でコネ関連の事を色々やってくれていた事は、本当に感謝の言葉しかない。
あたしはぐいぐい行く方だけれども。
誰ともすぐに友達になれるって訳でもない。
友達になれる相手とはすぐになれるが。
あわない相手とは、絶対に相容れないからだ。
だから、ボオスみたいな緩衝材が必要になってくる。これは、あたしもクーケン島で散々老害になった大人相手に苦労するようになって。自分でも理解した事だ。
そして老害はクーケン島だけではなく、王都にもわんさかいる。
あたしだけでは、必要な人間に渡りをつけることが出来ない。
状況に応じては、残念ながら現状では。すっかり頭が凝り固まった老害とも、渡りをつけなければならないのだ。
ボオスが戻ると、今作れるぶんの調合はしておく。
エーテルに素材を溶かして、要素を抽出。順番に部品を作っていく。どの部品も頭に入っているから問題ない。
タオが作ってくれた図は、保険だ。
夜に、フィーに促されることもなくなった。
余裕がそれだけ出来てきた、と言う事だ。
大衆浴場で汗を流して、それで後は適当に食事をカフェで取って、眠る。
王都で当面生活出来るだけのお金はある。
それもまた、問題はもう無かった。
順番に、フィルターを取り替える。古いフィルターはすっかり傷んでいて、おぞましい臭いがした。
これを通った水が、王都の人達の口に入っていた。しかも彼方此方破れている。
それを思うと。皆慄然とする。
レントですら、手を無言で洗いに行った程である。
あたしが用意しておいたくみ置きの水で、皆すぐに手を洗って。更には消毒もした。
フィルターは、先に全部外してしまう。
そして、奧に積み上げて。
それから、新しくあたしが作ったフィルターを、順番にセットしていく。
膨大な水が流れているのだが。
配水管の上が開くようになっていて、其処からセットできるようになっている。故に、水が……まあかなりの勢いで流れているが。落ちなければ大丈夫だ。セットするときには、命綱をつける。
とにかく危ないからである。
「セットすると、ガチンと手応えがあるよ」
「こっちは問題ない! ガチンって言った!」
「こっちも大丈夫です!」
レントとパティがそれぞれ言う。パティもあたしが渡している装飾品の支援で、大の男を軽く捻るくらいの腕力になっている。全く問題ない。
そのまま、複数のフィルターをセットしていく。
フィルターはそれぞれ編み目のサイズが違っていて、頑丈さなどにも差がある。様々な大きさの不純物を、これで取り除いていたのである。
出来れば配水管も全部掃除したいくらいなのだが、そうもいかないだろう。
ともかく、一刻くらい掛けて、フィルターの交換を完了。
次は煮沸装置だ。
煮沸装置はすっかり傷んでいる上に動力がなくなっている。
仕組みとしては、100℃まで水を一気に熱するだけのものだ。動力には竜脈からのものを使っていたようだが。
今回あたしが用意したセプトリエン式の動力炉に切り替えた事で。
最低でも、1000年はもつ。
動力を取り替え。駄目になっているパーツも順次取り替える。その度にタオに光学式コンソールを確認して貰い。
丁寧に、作業を進めていった。
煮沸装置はかなり大きい上に、まとめて交換しなければならない。
これは配水管と一緒になっておらず。落ちてくる滝をまとめている下部分に置かれている。だからそれを置き換えるだけでいい。
まあ、とにかく大きい上に、機械が傷んでいるので。
レントにもパティにも手袋をして作業して貰った。
蒸気にすると水は非常に堆積が大きくなる事もあって、危険極まりない。装置の調整は、念入りに行わなければならなかった。
「よし、部品全て交換完了!」
「動かして設置するよ!」
「パティ、持ち上げるぞ!」
「はいっ! えいやっ!」
あたしも手伝うかと思ったが、レントとパティだけで大丈夫そうだ。
滝の水を浴びながら、二人が巨大な壺みたいな煮沸装置をセットする。
後は、滝の上の川にある網をセットし直しておく。これがないと、魚とかがどんどん下に入り込む。
落ちたら死ぬという点もあるのだけれども。
死んだ後、ネットにどんどん汚れが蓄積するというより大きな問題がある。
それに、網には生き物だけではなく、川を流れてくる色々なものが引っ掛かる。倒木だとか草だとか。
汚物もだ。
だから、予備のパーツは作っておく。
交換のやり方についてのマニュアルも。
動力は千年はもつが、ネットについてはこれは数十年に一度は交換しないとダメだろう。その時の為に、何セットかあたしは作っておいた。
ともかく、ネットをセットし直して、古いネットを交換しているうちに。タオが煮沸装置を動かして。
試運転を開始する。
多分、上手く行っているはず。
外殻はゴルドテリオンで作り、更にはグランツオルゲンで補強して防御力を上げているから、問題は無い筈だ。
レントとパティがヘトヘトになって戻って来たタイミングで、あたしは取り替えた傷んでいる部品を処分する。
全部一度外に持ち出すと。
持って来ておいた釜にエーテルを満たして。それで分解してしまった。
こうすれば要素ごとに分別でき。
ジェムにして、保管することが出来る。
傷んだゴミに見えても、こうすることで思わぬ要素を抽出出来たりするのだ。流石に食べ物には使わないでくれよとレントに言われるが。まあ、そのつもりはとりあえずない。
パティはすっかり疲れきって、座り込んで無言。
タオが淡々と煮沸装置を動かして。
それで、しばしして、満足したようだった。
「よし、此処は別物に綺麗になった筈だよ。 ただ、配水管は王都中に伸びている。 いずれ技術が戻って来たら、今度はそれを交換しないといけないだろうね。 それまでは、綺麗な水は出ないと思う」
「はー、骨折り損かよ」
「ねえタオ。 水の圧力を上げて。 一度強引に水圧で配水管を掃除するとか、できないのかな」
「ダメ。 王都の彼方此方で、配水管が破裂する」
そうか。
多分タオの方が、こういうのに対する認識は正確だろう。
ともあれ、これで浄水も含めて上水はとりあえず大丈夫だ。
問題は下水だが。
こっちは既に見つけてある。汚水の浄水装置については、仕組みはそれほど難しいものでもない。
幸い動力を復活させれば、すぐにでも動く程度のものである。
まあ、心理的に嫌だったので、出来れば後回しにしたかったのだが。
そうもいかないだろう。
動力については、既に替えを作ってある。
千年はもつ。
だから、今の時点でどうこういう必要はないだろう。
千年後、この程度の技術も戻っていないようなら、人間はそれまで。というか、魔物に押し切られてきっと滅んでいる。
もしも千年後、巻き返しが上手く行っているなら。この程度の技術は回復も出来ている筈だ。
だから、あたしとしては、其処まで気にはしていなかった。
作業が終わったので、カフェに出向いて、それで食事にする。
やっぱりあんまり美味しくないが。
それでも、農業区で少しずつ作物を作り始めている成果が出ているようだ。出来るのが早い作物を使った料理は、もうカフェで出始めている。卵なんかは顕著で、鶏が既に持ち込まれ。
新鮮な卵が、いつでも手に入るようになったようである。
鶏は世話が色々と大変なのだが、肉もエサに比べてたくさん採れる。王都でもっとたくさん飼育できるようになれば、それだけで大きな食糧源になるだろう。
フワフワのオムレツが出て来たので、皆少しだけ機嫌も良くなる。
「うわ、おいし」
「卵については、既に提供が始まっているらしいです。 そもそも、王都近辺から買う卵は、鮮度にも問題があって、更には運ぶのも大変だったということでして……」
「でも、今まで卵で儲けていた商人は文句を言うんじゃ無いの」
「それについては、バレンツが率先して動いてくれているようです。 他の商品の販路を提供してくれているとかで」
なるほどね。
いずれにしても、オムレツで少し元気も戻った。
午後は、下水の方を片付けてしまうとする。
下水の方は、動力炉を変えるだけだが。
既にシステムが破綻して動きが止まっているので、とにかく行くだけで酷い臭いに包まれる事になる。
だから消臭剤を先に準備し。消毒用の薬液も準備しておいた。
北の里で使った服とマスクも準備して、皆で向かう。
まあ、あの時よりはマシだろう。
そう思って現地に踏み込んだら、大量の蠅とゴキブリがお出迎えだったので。あたしは一度撤退を指示。
そして、熱魔術で全部まとめて焼き殺してから。
結局、まずは汚物の処理からしなければならなかった。
あの時と全く同じだな。
排水処理曹から、案の場に汚物が漏れていたのだ。三十万人の生活排水である。排水処理のシステムが動力不足で止まっていたのだから、こうなってしまうのもまあ仕方が無いのだろう。
「こりゃ、後何年か放置していたら、此処爆発していただろうね。 汚物で内側から」
「勘弁してくれよ……」
「しゃ、喋りたくないです……」
「空気は熱魔術で循環させているから、息はできるはずだよ。 とにかく、今は機械類を掘りだそう」
そう。
汚物から掘り出すところからだ。
念の為に人数分持ち込んでいたシャベルで、どんどん汚物を外へ掘り出す。
此処もコントロールセンターになっていて、それほど地下深くではない場所にあったから、行き来はそれほど大変ではないが。
それでも荷車に例の如く油紙を敷いて、何度も往復しなければならなかった。
街の外の森の中にあったのだが。
なんだなんだと様子を見に来た魔物ですら、臭いにギャッとか悲鳴を上げて逃げていった程である。
幸い近くが荒れ地になっていたので、其処にドンドン汚物を捨てる。
今、他の面子はみんなオーリムに行っていて、そっちはそっちでとても大変な状況なので。手伝ってともいえない。
ボオスは試験前での追い込みだとかで、今日は来てくれなかった。
タオがここに来ているのは、別に試験前に追い込みで勉強なんかしなくても、試験で困らないからだ。
ともかく、全員で汚物を出して。
やっとコントロールパネルが露出する。すぐに洗い流して、消臭剤をぶっかけて。消毒もすると。
タオが操作を開始。
その間にあたし達は、動力源を探す。
無言で探しているうちに、タオがシステムの再稼働に成功。
やはり、機械類は動力不足で全部止まっていて、
全て垂れ流し状態になっていた。
下流の水が汚くなっているのは、もうこれは必然だったというわけだ。とにかく、動力炉を見つけ出さないといけない。
それから一日以上、地下空間であまり口にしたくない作業をして。
そしてやっと、部屋の隅に動力炉を発見。
セプトリエンの動力を組み込んで。
それで、やっと浄水設備が動き出していた。
だが、動いた所で、汚物が無くなる訳ではない。
まだ作業をしなければならない。
パティが泣きそうな声で言う。
「こ、これも王都の未来のためです。 王都の未来の……王都の……」
「パティ、精神的に無理なら、もう大丈夫だよ」
「やります!」
「……うん。 頑張ろう」
もう自棄にやっているパティだが。
こう言う作業から目をそらさず、率先してやるのは本当に立派だ。
貴族というのは、必要ないとあたしは思っているが。
パティの精神は、理想的な貴族だと思う。
泣いて嫌がってはいても、それでも自発的にこういう作業をやれるのは、本当に立派である。
更に二日掛けて、汚物の浄化施設は綺麗になり。
隅々まで消臭して。消毒も終えた。
その時には。再び動き始めた汚水浄化設備が、汚水をぐんぐん浄化していて。下流の水も、露骨に綺麗になっていた。
此処のシステムは、錆とは無縁の金属が使われ。
汚水を徹底的に様々な方法で分解して、綺麗な水に戻すという仕組みであったようだ。タオが細かい仕組みを説明してくれたので、覚えておく。いずれ何処かの都市で、あたしが主導で設計、設置するかも知れないからだ。
パティも、マニュアルを渡されて。
それを死んだ目で受け取っていた。
アーベルハイムには、此処を知っておく義務がある。本当は王族にそれを知る義務があるのだが。
あの連中には無駄だろう。
実際、クラウディアから聞いたのだが。王宮の秘宝であるあの印刷機械も、それこそご神体のごとくあがめ奉るばかりで、全く使う様子がないという。
使わなければ意味がないのに。
使えば更に書物を安く流通させることが出来。多くの人々が手に取ることが出来るようになるのに。
それが分かっていない連中が。
王族を名乗るのは、滑稽極まりなかった。
とにかく、アーベルハイムで湯を借りて、綺麗さっぱりする。
何をしてきたかを説明すると。
流石のヴォルカーさんも引きつった笑みを浮かべて。大変世話になったとだけ言ってくれた。
パティも、死んだ目で頷く。
それを見て、ヴォルカーさんが形容しがたい表情を浮かべたが。
ともかく、今はそれで満足して貰うしかなかった。
かくして、王都の水問題は解決した。
後は、自然門と。
オーリムの問題を解決したら、帰るだけだ。そっちについても、もう殆ど終わっていると、セリさんから話が届いている。
王都の機械類も、少なくとも存在が把握されているものは全てなおし終えた。現在稼働しているものも、あたしが確認して、修理をしておいた。
後は残りなにかないか確認だけして。
それも終わったら、帰る準備をするだけだった。
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