暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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4、タオの懸念

タオは図書館の奧に篭もって本を積み上げ、それらを凄まじい勢いで読み込んでいた。司書はタオの行動を咎めず、ただ見ているだけだ。きちんと本は返しに来る実績があるからだ。

 

ただ、既に深夜に入ろうとしている。

 

今日も夕方前から来て、ずっと本に目を通している。

 

タオも時間が遅いことは分かっているが。

 

ライザの懸念が、どうも当たりそうなので。

 

あまりもたついてもいられなかった。

 

「封印は五つ……か」

 

呟く。

 

あの扉の鍵は、恐らくライザが開けてくれる。あの鍵が落ちていたのは偶然でもなんでもなく。

 

誰かしらが、実際に彼処までたどりつけたから、なのだろう。

 

手に入れた手記にも、似たような事は書かれていた。

 

或いは、もっと王都周辺が安全な頃には。

 

あの扉を破ろうとした人間が、たくさんいたのかも知れなかった。

 

古い資料といっても、必ずしも正確なわけではない。

 

明らかに政治的な意図で記述が歪んでいるものや。

 

巧妙に嘘を織り込んでいるもの。

 

そういった資料は山ほどある。

 

だから古い資料だからといってありがたがるのではなく。

 

全ての資料を、眉に唾をつけて読み込んでいかなければならない。

 

これが学者としての思考法。

 

全ては論理的に動かす。

 

アンペルさんに色々と、古い資料の読み方、向き合い方は教わった。

 

あの人には、とても感謝している。

 

師匠がいるとしたら。

 

あの人こそそうだ。

 

勿論リラさんに戦闘を仕込み直して貰った恩もあるけれども。

 

それ以上に、やはりアンペルさんに対する恩義の方を、タオは強く感じ取っていた。

 

いずれにしても、結論が出る。

 

どうも何かしらを王都周辺で封印している。

 

その封印は五つだということだ。

 

大いなる呪いという言葉は、古い資料になる程頻出する。

 

だが、この一連の童歌は、後の時代になる程内容が穏当になっていき。ただの色歌や、祭の時に歌われるような皆が楽しむものと変わっていく。

 

タオはそれらを遡り。

 

最初に何があったのかを、知る立場なのだった。

 

本を返しにいく。

 

司書が、もう夜遅いと嫌みを言ったが。謝って、寮に戻る。

 

長期的に借りている本もたくさんある。

 

今の時点で、優先順位が先。

 

更に単位も必要なものはほぼ全て取ってある事もある。だから、時間は作れている。

 

今調べている事の重要度は、はっきりいってこんな学園での勉強よりも遙かに上である。

 

下手をすると、世界が滅びるのだ。

 

だが、それをそうだと言えないのがもどかしい。

 

世界が滅びるなんて言ったところで。

 

頭がおかしくなったと思われるのが関の山だからである。

 

そのくらいは、タオも分かる。

 

タオだって、王都に来て、ここの人間の醜さはよく分かった。

 

良くしたもので、同じように地方から来ている人間には、王都の人間は性格が腐りきっているとぼやくものが多いそうだ。

 

主に腐敗貴族やそれに癒着している商人を見てそう感じているのだろうが。

 

タオも、それをあまり否定は出来ない。

 

アーベルハイム親子が例外なだけだ。

 

寮でも本を読んでいると、戸が叩かれる。

 

どうぞ、と言うと。

 

入ってきたのは、ボオスだった。

 

「随分と遅くまで頑張っているな」

 

「王都にある資料は、それなりに数があるからね。 検閲の跡があったり、顧みられていない本に重要な事が書かれていたり、とにかく目を通さないと」

 

「お前なりの戦いという奴か」

 

「うん。 僕にはレントのような武力や、クラウディアのような財力、ライザみたいな圧倒的なリーダーシップはない。 だから、せめて知恵を絞るだけだよ。 それに……」

 

ボオスも頷く。

 

フィルフサ絡みの可能性が高くなってきている以上。

 

これは最優先事項だ。

 

「それで何か分かりそうか」

 

「ええとね、封印が複数あるらしい事は分かってきた。 多分いつつだと思う」

 

「封印だと?」

 

「その正体はちょっとまだ分からない。 でも、もしもフィルフサを封印しているものだとしたら、超大規模な魔術装置とか、魔法陣とか、そういうものだと思う」

 

そんなもの、見た事も聞いたこともない。

 

そうぼやくボオスだが。

 

タオは咳払いする。

 

「古代クリント王国の時代には、聖堂ってものがあっただろ」

 

「あの湖の上にあった奴だな」

 

「そうだよ。 あれを更に巨大にしたものかもしれない。 今調べている遺跡は、多分古代クリント王国のものよりも更に古いと思う。 年代が違うんだ。 そして技術は、ずっと進歩しているわけでも、ずっと衰退しているわけでもないんだよ」

 

確かに、それもそうかとボオスは頷く。

 

理解が早くて助かる。

 

タオが見た所、森の遺跡は古代クリント王国の時代よりも更に古いものだが。

 

どうにも彼方此方に、人が入った形跡が見受けられた。

 

それは何故なのか。

 

或いは古代クリント王国の残忍で非道な錬金術師は、あそこを研究しようとしていたのではないのか。

 

もしそうだとすると、かなりの大事だ。

 

更にフィルフサの可能性が高くなってくる。

 

「ボオス、それよりも君の方が心配だよ。 僕は散々鍛えたから体力は大丈夫だけれども、無理していない?」

 

「問題ないと言いたいが、ライザの薬で随分助かってるな。 やっぱりお前にバカやってた時代の事もあって、ブランクがきついぜ。 あの頃は本当にどうしようもなかったな、あらゆる意味で」

 

「もうそれは気にしていないよ。 とにかく、無理はしないで。 頼れる事なら、誰にでも頼って」

 

「ありがとうな。 そうさせてもらう」

 

ボオスが行く。

 

さて、もう少し調べて見よう。

 

童歌の後半は殆どが欠けてしまっていて、どうにも資料が足りていない。

 

もしもこの資料があるとしたら、何処かの遺跡の中か何かではないか

 

そうなると、これ以降の調査で分かるかも知れない。

 

ライザが鍵の調合程度でミスするはずもない。

 

ミスするかも知れないが、リカバーはきちんとできる筈。

 

伸びをする。

 

そろそろ、休むか。

 

軽く体を動かしてから、風呂に入る。

 

深夜にも学生用の風呂屋はやっているので、特に問題は無い。

 

風呂から上がって、寮に戻り。

 

後は無心に眠った。

 

不意に目が覚めることがある。

 

夢を見ているときに、思いついた事があると目が覚めてしまう。

 

そういう場合は、メモ帳に思いついた事を記載して、眠る。

 

この癖のせいで、ぐっすり眠る事が中々出来なくなっている。

 

だが、それでもいい。

 

今のタオは、生き甲斐を見つけているのだから。

 

 

 

(続)




王都周辺の遺跡が、何かを封印していることが分かり初めて来ました。

タオの懸念、パティの不安を余所に、パワフルに調査を押しすすめていくライザ。

スランプであってもそのたくましさは、三年前と変わっていないのです。

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