暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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4、トレジャーハンターの血

この世界はどうしようもない。

 

クリフォードは幼い内から、そう知っていた。

 

クリフォードの家は貧しく、辺境にあって。今の世界どこの辺境でもそうであるように、はっきり言って不幸極まりなかった。

 

不幸というのは心の持ちかた次第だ等という言葉もあるが、それは違う。

 

一切れのパンを奪い合って家族が殴り合いをし。

 

子供の半分は半年も生きられずに死に。

 

魔物の襲撃に為す術もなく。

 

ろくな指導者もいない。

 

どれだけ努力しても、生きる事だけが精一杯。

 

それは客観的に見て不幸な状態であり。

 

気持ちの持ちようで、どうにか出来るものではないのだ。

 

クリフォードもそんな家に生まれて見て来た。

 

そもそもどうしようも出来ない世界にいじけた人々。

 

魔物が出る度に、多くの戦士が死んで。

 

優秀な奴が生き残るわけでも、賢い奴が生き残るわけでもなく。

 

ただ運が良い奴だけが生き残るのを見て。

 

この世界はクソだなと、クリフォードは幼いながらも思った。

 

死にたくは無かった。

 

だから武術を身に付けた。

 

幸い、それに関する才能はあった。武術を補うための魔術も身に付けた。こっちは我流だったので、兎に角苦労した。何度か好き勝手に騙されてから、ボロボロの本を見つけて、それで文字も覚えた。

 

出来る事が一つずつ増えて。それで最初にやったのは、確実に生きるための事。

 

魔物と戦うために、様々な武芸を磨いたが。

 

結局一番良かったのは投擲で。

 

ナイフや矢なんかを使い捨てている余裕もなかったから。

 

試行錯誤の末に、ブーメランなんて使いづらい武具を扱うようになった。投石でも良かったのだが。魔術とブーメランの相性が良かったのだ。

 

そんな生活をしていたから。運が良くて幾つかの戦いを生き延びても。

 

荒事が絶えなかったから、体中は常に傷だらけ。

 

だから墨を入れて。

 

魔物にかっ捌かれかけた口元は、いつしかマスクで隠すようになった。

 

荒れていた人生だったが。

 

ふと手に取った本で、人生が変わった。

 

それには、夢が詰め込まれていた。

 

トレジャーハントの夢。

 

五百年だか前。

 

世界に大規模な破滅が起きた。

 

古代クリント王国の終焉だ。

 

壊滅的なダメージを受けた古代クリント王国は多数の街、多数の技術、多数の人員を失い。

 

それで一気に衰退。

 

衰退は現在まで続いていて。

 

人間の勢力圏、支配領域は狭まる一方だ。

 

古代クリント王国の終焉については謎が多く、それが現在まで数多の人間を不幸にしているのも事実。

 

だが、逆に考えて見よう。

 

それだけの街が放棄されたのなら。

 

其処に足を踏み入れれば、放棄されたものがそのまま残っているのだ。

 

宝だけでは無い。

 

テクノロジーも残っている可能性が高い。

 

特にテクノロジーは、今や衰退する一方。服を作る機械すら、既に壊れかけて直せないのだ。

 

それらをもしも復興することが出来たのなら。

 

それはまさに、希望ではないだろうか。

 

希望とはロマンだ。

 

この手帳を見て、ただ生きるために魔物を殺し。ただ生きるために酒を飲み。時に性欲を発散するためだけに色街に足を運んでいたクリフォードは衝撃を受けた。

 

そしてトレジャーハントを大まじめに勉強し始めた。

 

幸い、戦闘の技量には困らなかったから、食っていくことは出来た。魔物にいつ殺されるか分からないのは今の時代誰でも同じだ。

 

だから、そんな中で余裕があるというのは、本当に貴重なのだと。夢とロマンを知ってから、始めて感じた。

 

師匠が出来て。

 

そして色々と教わった。

 

師匠はもう亡くなってしまったが、本格的にトレジャーハントの技量が身についた頃には、周囲の戦士達はクリフォードを奇異の目で見るようになっていた。それはそうだろう。魔物にいつ殺されるか分からない戦士は、みんな生き方が刹那的になる。

 

それが刹那的な快楽から不意に距離を置いて、変な手帳を読みあさり。時々単騎で出かけて来るのだ。

 

周囲の戦士はバカだのおかしいだのとクリフォードを嘲ったが。

 

それは、自分の下の存在を作らないと怖くて仕方がないからと、クリフォードは知っていた。

 

自分がそうだったから分かるのだ。

 

だからもう、そういう人間には興味も持たず。

 

幾つかの遺跡を攻略し。

 

遺跡に住み着いている人里に襲い来るものとは桁外れに強い魔物と戦って生き延びた頃には。

 

宝なんて得られなくても、これぞ天職だと想う様になっていたし。

 

迷宮に挑み。

 

ロマンを求める事に、今まで得てきた全てよりも素晴らしい感動を感じるようになっていた。

 

ただそれは、恵まれた戦闘力があって始めて出来ることだと言うことも分かっていた。

 

幸せを得られたのは、たまたま才覚があったからだ。

 

そう思うと、クリフォードは素直に喜ぶことは出来なかったし。

 

故に、過去の話なんて。

 

他人にしようとも思わなかった。

 

女はいつの間にか、どうでも良くなっていた。

 

昔はイライラしたときなどに色町に足を向けることが多かったのだが。

 

ロマンと天職を見つけてからは。

 

性病を貰うリスクの方が大きいと判断するようになっていたし。

 

ましてや恋愛ごっこをしようとも思わなくなっていた。

 

こうして孤高のトレジャーハンターが誕生した。

 

自分でも変人である事は、クリフォードも自覚していたが、別に変で一向にかまわない。

 

各地を放浪しながら、遺跡を巡り。

 

そして、放棄された都市に住み着いている魔物と戦いながら。其処でどんな暮らしが行われていたのか。

 

どんな技術があったのか。

 

それを思い馳せるだけで、心が躍った。

 

思うに、いびつに育ったから。

 

心の中の子供が、いつまでもずっと大きくなれなかったのかも知れない。

 

だがそんな分析などどうでも良いくらい。

 

クリフォードは、遺跡に取り憑かれていた。

 

各地を放浪し。

 

賞金を稼いだり。或いは傭兵をしながら生活費を稼ぎ。

 

いつしかクリフォードは。匪賊やら盗賊やらを片手間にあしらえるようになり。

 

それで悪名も高まっていたが。

 

同時に、世間での評判なんてどうでも良くなっていた。

 

自分らしい生き方と社会性は両立しない。

 

いつの間にか知恵を付けていたクリフォードは。

 

それをいつしか、自然に理解していた。

 

 

 

王都にクリフォードが出向いたのは、ただの気まぐれからだ。

 

知っていた。

 

王都アスラ・アム・バートがろくでもない場所である事は。

 

自分でいけそうな遺跡については、肌で分かるようになっていたから。手に負えそうな遺跡から回っていたのだが。

 

欲が出て来たのだ。

 

王都に出向いた理由は二つ。

 

一つは、王都周辺には人間が手出し出来ないと言われているレベルの遺跡がゴロゴロしている事。

 

当然人間が手出しをしていないのだから、過去のロマンが其処に眠っている可能性は非常に高い。

 

もう一つは、王都は腐っていてろくでもない場所でも、相応の戦士がいる可能性が高い事。

 

魔術師に関しては、それこそロクな力量の奴がいないという話は、以前に聞いたことがあった。

 

だが戦士ならどうか。

 

世界中にいる謎のメイド一族の戦士が非常に強い事はクリフォードも知っているが。

 

あの者達は、基本的に各地の主要戦力を担っていたり、有力者との血縁を重視しているようで、クリフォードとは相容れなかった。

 

だが王都には、虚名に過ぎなくとも有名な資格を得るため、騎士になろうとする戦士が集まる。

 

それでたまに凄いのがいる。

 

そういう話は聞いていた。

 

優れた戦士と組めば、遺跡攻略もいけるかも知れない。

 

そう考えたクリフォードは王都に向かい。

 

途中でセリという凄まじい使い手と一度すれ違ったが。縁がないことが分かったので、誘うことはなかった。

 

そして、その後。

 

ライザと顔を合わせた。

 

凄まじい使い手だ。それがすぐに分かった。魔術師としても戦士としても、文字通りの古今無双だと舌を巻いた。

 

それよりも、瞠目させられたのは。

 

文字通り、世界を変える力の持ち主だと言う事が、びりびり伝わって来たことである。

 

単に強いだけではない。

 

周囲を自然に牽引する力が全身から溢れている。

 

これこそが、人類の宝とも言える存在だと、一発でクリフォードには理解出来ていた。

 

ライザともしもある程度の関係を構築できれば、今までにない難度の遺跡に挑戦できるかも知れない。

 

そう思うだけで、クリフォードは昂奮に体が熱くなるのを感じた。

 

ライザも調査していると、理由はわからないが、遺跡を調べているのが分かった。

 

それで、天命だと思った。

 

クリフォードが試される番だ。

 

そう判断したから、遺跡に対する調査能力を武器に、売り込むことにした。

 

女としてのライザには興味は微塵もない。

 

というよりも、性欲の対象としての人間には、もう興味が失せている。

 

生物としていびつなことは理解しているが。

 

それ以上に、自分として生きる事の重要性をクリフォードは理解しているし。

 

遺跡が探索出来なくなったらそれは自身の死だとも思っているので。

 

全てどうでも良かった。

 

そうして、ライザに情報提供を持ちかけてから。

 

宿にしている粗末な部屋に戻る。

 

宿泊費は問題ない。

 

周囲で魔物狩りの仕事を受け。

 

アーベルハイム卿と何度か一緒に戦ったからだ。

 

ばたばた戦士が傷ついて行くような仕事だったが。クリフォードは大物を数体仕留めた事もあり。

 

アーベルハイム卿は、給金をはずんでくれたし。

 

むしろ専属の戦士にならないかとも誘ってくれた。

 

有り難いが、今の時点ではそれは考えていない。

 

そう答えたが。

 

或いは、金を貯めるための短期契約であれば、受けるのもありかもしれないと今は思っている。

 

周囲に本を積み上げて、クリフォードは目を通す。

 

どうもこの近辺に。

 

星が落ちてきた、という伝承がある。

 

星が落ちると、実際には凄まじい破壊が引き起こされ。周囲が人が住める状態にはなくなるらしいが。

 

此処で言う星は、どうも何かしらの都市らしいのだ。

 

しかも、それは水中にあると聞いて。

 

クリフォードは。俄然興味を惹かれていた。

 

ライザと連携して調査すれば、太古のロマンが目の前に拡がるかも知れない。

 

そう思うだけで、わくわくする。

 

夢中になって参考の文献を調べて行き。

 

やがて、気になる一節を見つける。

 

なるほど。

 

確かに王都近郊に、変な形状の湖がある。あれは自然の浸食では考えられない地形をしている。

 

もしもあるとしたら、其処だろう。

 

頷くと、クリフォードはその情報の精度を高めるべく、調査を更に続けて行く。

 

ロマンを追うために。

 

クリフォードにとって、安定した生活やら、土地に根を下ろした生き方やらは、それこそどうでもいい。

 

ただロマンを求める事だけが全てだった。

 

それは恐らく、貧しい生活をしながら、生きるために生きることのむなしさを。

 

誰よりも知っていたからかも知れない。

 

 

 

(続)




ライザ達に接触してきたクリフォードさん。

徐々にライザの周囲に人が集まりはじめます。

原作でもそうなのですが。ライザは本人は気付いていないものの、強い求心力を持っており。人材を周囲に吸い寄せる力があります。

豪傑という言葉が相応しい傑物ですね。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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