暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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三年で変わったのは皆同じ。

クラウディアは商人として、金が命より価値があると考える人間達に塗れて過ごす内に。

自分がそれらに染まり。

腐っている事を自覚して、苦悩していました。


墓場にも陽は昇る
序、暗雲に光差す


三年。

 

あの夏の冒険から過ぎた時間だ。

 

その間に、クラウディア=バレンツはすっかり大人っぽくなった。あくまで見かけだけだと、クラウディアは思っている。

 

少女らしい見かけだったクラウディアは、今はすっかり大人の色気を纏っていると言われるし。

 

実際取引先の人間に口説かれることもある。それも少なくない頻度で。生物学的な意味でのメスとしてはクラウディアは魅力的に見えるのだろう。

 

だがクラウディアが三年で身に付けたのは。

 

父である商会の長ルベルトから任された経営に関する強かさ。

 

それは決して、好ましくは無かった。

 

三年前に親友になったライザと手紙でやりとりをしているときだけが、本当に心が躍った。

 

その時だけは、とても楽しかった。

 

それ以外は。金が絡むろくでもない世界だけがクラウディアの居場所。

 

色気が出たとは言うが。

 

周囲の男が、向けてくる視線が露骨に変わっただけ。

 

ライザの胸やおしりや足に男の視線が纏わり付いていたのを思い出す。

 

ライザと一緒にいた頃は、クラウディアは少女としての要素が容姿に強く出ていて、ああいう視線は殆ど受けなかった。そう分析出来る。

 

今は違う。

 

そして、それを利用しようと思う程に強かにもなれず。最近は、クラウディアの表情は硬く強ばるばかりだった。

 

それだけじゃあない。

 

クラウディアのいるバレンツ商会は、数多ある同業者の中でも屈指の規模を誇り、強大な影響力も持っている。

 

王都の貴族達が何の役にも立たないでくの坊である事は知っていたが。

 

結果として、代わりにバレンツ商会が、更に言えばクラウディアが直接指揮して様々な王都外での問題に何度も関わる事になった。

 

魔物に壊滅的な状態まで追いやられた集落の復興。

 

盗賊や匪賊が跋扈する集落の救援。

 

いずれも、人の業を散々見る事になった。

 

人肉食の跡だって、何度も見た。

 

人間が魔物にどんどん追い込まれている今の時代。

 

商会の使う街道を守るのは、自分で行わなければならない。

 

そして人材なんて生えてこない。

 

魔物に殺されれば、それだけ人は減る。

 

それなのに傭兵を消耗品か何かと思い込んでいるバカがいて。

 

クラウディアは、人間が嫌いになる一方だった。

 

今、クラウディアは。

 

長い事掛かって処理をしていた、王都近郊の集落のもめごとをやっと解決した所だった。

 

本来だったら、貴族なりなんなりがしっかり統治していればいいものを。

 

連中は壁に囲まれた王都から魔物を怖れて出てこない。

 

何がロテスヴァッサ王国か。

 

その勢力が実質的に及んでいるのは壁の中だけ。

 

その外では、寒さと餓えと危険にたくさんの人が苦しんでいる。

 

その現実をクラウディアは知っている。

 

だから、この集落で。

 

魔物に脅かされた水源を取り戻すまで、随分とおぞましすぎるものを見て来たし。なんとかお金を撒いて傭兵を集めて。

 

水源を少なくない犠牲とともに奪回したときには、疲れ果てていた。

 

クラウディアも最前線で戦ったが、それでも何人も死なせてしまった。

 

力が足りない。

 

ライザ達と冒険しているときも、クラウディアは支援中心だった。勿論それはそれで、皆に貢献はしていたが。

 

単純な圧倒的暴力がないのも事実で。

 

そのために。ライザと別れて以降。仕事の関係で、何人も死なせたのも事実だった。それだけ、魔物による食害は苛烈で。街や村を放棄する人間も増えている。まだまだ黄昏の時代は続いている。現在進行形で、人間の生活圏は縮小していていると、思い知らされるばかりだ。

 

少し前の戦いにはレントくんも加わっていた。

 

三年前に、一緒に冒険した腕利き。

 

今では技術的にかなり円熟した筈なのに。

 

どうしてかいじけているように見えた。

 

レント君も腕を上げていて。前線で戦ってくれたけれども。

 

やっぱりライザがいないと、どうしても精彩を欠く。

 

戦いが終わって、集落の防備まで固めている段階になると。

 

俺の仕事は此処までだとか言って、何処かに行ってしまった。

 

何度かバレンツの仕事は手伝って貰ったのだけれども。

 

今のレントくんには、三年前の閉鎖的な集落を飛び出したいという熱い気迫が感じられなかったし。

 

クラウディアとも、事務的な話以外はしなかった。

 

孤独になってしまった。

 

そう思う。

 

幼い頃から側にいたフロディアは、あれはあれでなんだかんだで頼りにしていたのだと思う。

 

フロディアはクラウディアの事は大事に思っていたか分からないけれども。

 

少なくとも、お父さんは仕事優先だし。

 

お母さんはずっと伏せっているクラウディアにとって。

 

身近にいる人は、フロディアだけだった。

 

誰もいないな。

 

仕事上のつきあいがある人はいるが、みんな信用できない。

 

お金が絡むと、人間はケダモノ以下になる。

 

それが、ここ三年で学んだ事。

 

信頼なんて、目の前の利益と比べれば簡単に吹き飛ぶ。

 

それはそうだ。

 

人命だって、お金の前には吹き飛んでしまうのだから。

 

手紙を確認する。

 

ライザが王都に来ている。この近くだ。

 

まだ確定はしていないが、フィルフサがいる可能性を想定して動いているらしい。

 

無理もない。

 

アンペルさんやリラさんの手紙はクラウディアも見たのだが。

 

各地で門を閉じて回っていると聞く。

 

つまりそれだけまだ門があるということで。

 

フィルフサが出て来ていないだけで、出て来てもおかしくない場所は世界中にあるという事だ。

 

王都近辺の調査というなら、最優先事項だろう。

 

彼処に住んでいる貴族はクラウディアも嫌いだけれども。

 

それでも、十五万からの人が蹂躙されるのを、見過ごすわけにはいかないのだから。

 

だけれども、ライザに会うのがとても怖い。

 

分かっている。

 

ライザはあの時のままだ。

 

三年で年は取っただろうけれども。それでも太陽みたいな、快活で元気で。

 

パワフルにみんなを引っ張って行く。大好きだったライザのまま。

 

それに比べてクラウディアはどうか。

 

すっかり汚れきったように思う。

 

見た目ばっかり大人っぽくなったけれど、ただそれだけだ。

 

ライザと別れる時に。

 

お父さんが、ライザが男だったらと嘆いていた。

 

それは、今になって思う。

 

クラウディアは普通に異性愛者だ。

 

だから、ライザの事は人間として好きなのであって、性愛の対象ではない。

 

だからこそに惜しいとも思うのだ。

 

確かにあの時。別れる時に。

 

お父さんがいった事は、今になって事実だったのだろうなと。本当に思う。

 

ライザが男だったら、何の躊躇もなく嫁いでいたと思う。

 

本当に、世の中ままならない。

 

悩みはあるが、今は世界が滅びるかどうかと言う調査をしているのだ。

 

だから、急いで王都に向かって、ライザに協力しなければならない。そう自分に言い聞かせて、クラウディアは鬱屈を押し殺していた。

 

忙しい日々だったが。

 

デスクワークだけをしていた訳では無くて、前線でかなり魔物とも戦った。

 

あの一季節で成長したライザ達と一緒に戦えるような戦士なんて、ほとんど数えるくらいしか世界にはいないこともその過程で理解出来た。

 

だからそもそも、戦力として自分を数えなければならず。

 

移動中に隊商を襲撃してくる魔物や、或いは盗賊と戦うために。

 

自身をコマとして考えなければならず。

 

それで嫌でも、腕がさび付くことはないのだった。

 

ともかく、残務を済ませる。

 

部下を残して何かあった場合には対応できるようにする。

 

バレンツ商会は仕事に対しては正当な報酬を払うと傭兵の間では噂になっていて、それで相応に質が高い戦士が集まるのだが。

 

それでもやはり、どうしようもない戦士も来る。

 

腕が未熟なのならいい。それだったら、むしろ教育プログラムをお父さんが組んでいるので、それにそって教育までする。何なら、ライザが提供してくれたインゴットから打ちだした装備を、雇用中には貸し出しもする。

 

本当に駄目なのは、気分次第で行動が変わる腕利きだ。

 

そういうのは本当にいらない。

 

スタンドプレーを行う戦士が、腕が良くても戦況を悪化させるのは。昔アーミーが存在していた時代もそうだったらしいのだが。

 

小規模部隊指揮をしてみて、クラウディアも思い知っている。

 

だから、こういう部下に任せる戦士については、常にクラウディア自身が吟味するようにしているし。

 

専属で雇う戦士については、教育プログラムをしっかりやるように、部下達に教育もしていた。

 

人材は、湧いてくる事はないのだから。

 

残務を終わらせると、馬車で王都に向かう。

 

走って王都に直接行きたいくらいだけれども、流石にこれだけ治安が悪い場所を、一人で行くのはリスクが高すぎる。

 

そして馬車は思ったほど速く進めない。

 

魔物にとって馬なんて美味しいごちそうである、というのもあるし。

 

人間はやはりエサ以上に憎悪の対象であるからだ。

 

何よりも、商売で大量の金を常に動かしているのである。

 

クラウディアも、バレンツの人間全員を餓えさせるわけにはいかない。

 

移動中に音魔術で周囲を警戒しつつも。

 

常に執務もしなければならず。

 

その事が、大きな負担にもなっていた。

 

それでも、もうじきライザに会える。

 

そう思うだけで、クラウディアの心は躍る。

 

それもまた、事実だった。

 

 

 

馬車が止まる。

 

音魔術で周囲を感知しているので、何があるのかは分かった。ペンをとめて、馬車から降りる。

 

傭兵達が、殺気立っている。

 

道の真ん中に寝ているのは、かなり大きな魔物だ。あれは、何という種類の魔物だろうか。

 

四足獣なのは確かなのだが、何とも言えない姿だ。全体的に非常に屈強な体格をしていて。

 

恐らく草食なのだろうが。口から巨大な牙が威圧的に生えている。

 

全身の体毛は赤黒く、模様も派手だ。

 

これは雑魚から身を守る必要がない事を意味している。

 

いわゆる警戒色と見て良いだろう。

 

「あの魔物について、知識がある人は」

 

「い、いえ……」

 

「見た事もありやせん。 なんて恐ろしい……」

 

「……分かりました。 戦闘準備」

 

傭兵達の腰が引けている。

 

此処は、クラウディアが率先してやるしかない。

 

「戦闘に参加する傭兵は、報酬を上乗せします。 参加するなら手を上げてください」

 

「正気ですか!?」

 

「街道に堂々と居座るあの様子、周辺の集落に大きな悪影響を与えているのは確定と見て良いでしょう。 此処で駆除します」

 

「……」

 

雑多な傭兵達は顔を見合わせたが。

 

その中で一番若い、まだ幼ささえ顔に残っている戦士が挙手すると。数人が挙手。頷くと、クラウディアは他の戦士には馬車を守るように指示し。

 

前に出た。

 

弓は、ライザが作ってくれたものだ。

 

フィルフサとの最終決戦に間に合ったこの弓は、以降もずっと手にしていて。数も知れない程に魔物を撃ち倒してきた。

 

音魔術の技量は上がっている。

 

魔力量も。

 

歩いて行くと、寝そべっていた魔物が起き上がる。

 

同時に、クラウディアは矢を魔術で生じさせる。ふわりと浮き上がった石が、魔力の矢の中に取り込まれ、鏃の威力を補填する。

 

じっと此方を見る魔物。

 

背丈だけでクラウディアの二倍半、全長もクラウディアの歩幅の七倍以上は軽くある。

 

湾曲しながら突きだしている牙は、馬を簡単に貫いて即死させるだろう。

 

唸りながら、体勢を低くする魔物だが。

 

その時には、クラウディアは矢を放っていた。

 

ばつんと、強烈な音がする。

 

ライザの作ってくれたゴルドテリオンで要所を固めた弓は、矢の破壊力を極限まで強化するだけではない。

 

魔力を増幅もしてくれる。

 

放った矢が、魔物の額に炸裂し、巨体が明らかに動揺する。

 

立て続けに矢を番えて放つ。数発の矢が直撃して、血がしぶく。分厚い毛皮で守られている巨体が。

 

だが、踏みとどまると、凄まじい雄叫びを上げる魔物。

 

即時で音魔術で壁を展開。

 

こんな雄叫びを聞かせたら、戦士達が戦意を喪失するだろう。

 

突貫してくる魔物。

 

全身が燃え上がる。

 

これは強大な魔力を明らかに込めている。

 

身体強化系の魔術だ。

 

クラウディアも詠唱開始。

 

戦士達が、立て続けに魔術を放つ。

 

炎の矢が魔物に次々に炸裂するが、文字通りそれを蹴散らしながら、魔物が此方にすっ飛んでくる。

 

かっと口が開くのが見えた。

 

やはり草食らしい。

 

だけれども、草食獣の方が得てして凶暴である事を、今のクラウディアは知っていた。

 

クラウディアの至近。魔物が、生じた変化に一瞬だけ怯む。

 

クラウディアが、詠唱を終えたのだ。

 

空中に、小型の人型が多数出現し。

 

それが全て弓を持ち、矢を番えている。音魔術の応用。多数の人型を空中に作り出し、それら全てで射撃を加える大技だ。

 

クラウディア自身は、一際巨大な、バリスタのような矢を番えていた。

 

クラウディアも実戦で音魔術を磨いてきた。

 

そうして結論したのが。

 

巨大な矢と、多数の小型の矢で飽和攻撃を与える戦闘スタイルが一番あっている。

 

小人達が一斉に矢を放つ。

 

魔物が、それでも突貫してくるが。

 

今度の矢は、さっきの牽制とは違っている。

 

魔物の全身に突き刺さる魔術の矢。

 

明らかに足が鈍るが、それでも突進をとめないのは流石だ。

 

魔力がゴリゴリ削られていくけれども。クラウディアは飽和攻撃を続行。周囲に魔物の気配がちらついている。

 

どっちも消耗したのなら。

 

そのまま一斉に襲いかかってくるつもりだ。

 

そうは、させるか。

 

手元の矢が更に巨大化していく。

 

冷や汗は、当然流れる。

 

逃げ腰になる周囲の戦士達の中で、クラウディアは大地に杭でも穿ったように構えを崩さない。

 

全身に五十を超える矢を受けて、それでも突貫してくる魔物。一歩走る度に全身から血が噴き出しているが。

 

その闘志だけは、凄まじい。

 

だが、この戦い。

 

悪いが、クラウディアの勝ちだ。

 

至近まで引きつけて。

 

最大火力の矢を、真正面から叩き込む。

 

衝撃波が周囲に奔る。

 

魔物が、目を見開くのが分かった。

 

その額に、クラウディアが放った最大火力の矢がめり込み、貫通。そして、喉の奥まで、貫き通した。

 

竿立ちになる魔物に。

 

クラウディアは大きく息を吸い込み。とどめの矢を叩き込む。

 

それで、魔物はしばらく止まった後。

 

背中から、地面に倒れていた。

 

呼吸を整えると。周囲の飽和攻撃の態勢を解除する。

 

此方を狙っていただろう魔物達が、さっと散るのが分かった。

 

勝てないと判断してくれたのだろう。

 

それでいい。

 

「魔物の解体を手伝ってください」

 

「わ、分かりました!」

 

息を呑む戦士達。

 

今のバレンツの令嬢は、生半可な傭兵では及びもつかない凄腕らしいというのは聞いていたが、噂以上だ。

 

そんなひそひそ話が聞こえる。

 

どうでもいい。

 

ライザの方がもっと凄かった。

 

リラさんの方がもっと凄かった。

 

みんなの中では、クラウディアは一番みそっかすだった。

 

魔物を捌いて解体して。肉を切り分け、内部から出て来た強大な魔力を込めている球体を取りだす。

 

食べられそうにない部分は焼いて処理してしまう。

 

巨大な骨は魔力を殆ど感じず、構造的にもそれほど硬くは無い様子だ。

 

焼いてしまって、その後は崩して壊す。

 

処置を終えると、小休止を入れて。急ぐ。

 

ライザ達にあいたいな。

 

そう思うのだけれども。

 

今、どんな顔で会えば良いのかな。

 

そう思う、すっかりこの腐敗した世界に染まってしまった自分への嫌悪感にも。クラウディアは苦しみ続けていた。

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  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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