暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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1、目覚める死人達

遺跡に到着。

 

タオとパティとあたしで手分けして、周囲を確認。

 

扉を開けて、岩で念の為に固定。

 

そして、遺跡の内部に入ると、まっすぐにあの巨大な鐘を目指していた。

 

タオが既に完璧に構造を暗記しているので、先導してくれる。内部で仕掛けて来る魔物はいない。

 

途中にある鎧の数がそれなりに多いのが気になる。

 

これが幽霊鎧だった場合。

 

鐘を動かした場合、一斉に動き出す可能性があり。

 

その後の行動次第では襲いかかってくるだろう。

 

鐘に辿りつく。

 

パティが、生唾を飲み込んでいた。

 

フィーは鐘を、大きく目を見開いて、じっと見ている。

 

何か感じ入る所があるのかも知れない。

 

この鐘のベロは破損していたのを、既に修理済だ。

 

あたしが無言で取り付け始めると。

 

タオが、警戒をするようにパティにいい。

 

頷くと、パティも周囲を見張る。

 

さて、吉と出るか凶と出るか。

 

前だったら。

 

三年前だったら、もっと頭が働いた気がしてならない。どうにも頭の動きが鈍くて、こうすれば良いというのが浮かんでこない。

 

それが苛立たしいが。

 

今ある手札で勝負するしかないのだ。

 

人間として色々とあたしは欠陥も多い。

 

だからこそに、そういう欠陥があるなかで。勝負していかなければならないという所も確かにある。

 

鐘の中に、用意してきた脚立を立てて。それで作業をする。

 

上の方に、ベロをぶら下げる金具があるので、其処にベロをつける。

 

かなり大きなベロだが。

 

それでも、どうにでもなる。

 

脚立から降りて、すぐに鐘から離れる。流石にこの鐘が落ちてきて閉じ込められでもしたら、あまり良い気分はしない。

 

「ベロ、つけたよ」

 

「そういえばライザ、刻まれていた魔術とか解析は出来なかった?」

 

「どうにも頭がはっきりしないんだよねえ。 前は直感的にわかったと思うのに」

 

「それならば仕方ないよ。 ただ、いずれお医者さんに見てもらった方が良いかも知れないね」

 

それもそうだな。

 

そう思いながら、距離を取る。

 

鐘はかなりさび付いているが、一応ちゃんと音は出るはずだ。あのベロが重要だったのであって。

 

鐘そのものは、それほど重要では無い。

 

魔術を発動するための媒体に過ぎず。

 

それ以上でも以下でもない。

 

ベロについていた魔術については。あまり解析できなかったが。それでも、羅針盤で見た残留思念から。鐘を動かす魔術については分かる。

 

「闇覆う天蓋よ、その力を示せ」

 

「フィー?」

 

フィーが小首を傾げる。

 

あたしは、フィーに懐に入るように指示。

 

どうにも嫌な予感がする。

 

ぎしぎしと。

 

嫌な音を立てて、鐘が動き出した。

 

ゆっくりと、揺れ始める。

 

鐘が落ちたりしないだろうな。そう思うくらい、さび付いていて、嫌な感じだ。

 

だが、やがて鐘の中でベロが動作し始める。

 

これだけは、新品同様に直してあるのだ。

 

そして、驚くほど。

 

澄んだ音が周囲に響いていた。

 

目覚めるな。

 

そう思って、あたしは周囲に警戒をする。さて、どうなる。

 

音が遺跡中に拡がっていく。

 

それが吉と出るか凶と出るか。

 

無言で周囲を見回す。

 

やがて、明らかな変化が、遺跡に生じ始めていた。

 

ごごご、と凄まじい地鳴りが起きる。

 

遺跡全体が動き始めている。

 

回廊が動いている。

 

今立っている場所も、音を立てながらせり上がり始めていた。

 

激しい起伏があった回廊の高さが、一定になりはじめている様子だ。それだけじゃあない。

 

大量の岩が、奈落の底から浮き上がってくる。

 

それぞれに強力な魔力を感じる。

 

そして、浮き上がってきた岩が、回廊の彼方此方にくっつき始める。

 

いびつな部分も多く。

 

明らかに欠落している場所もあるが。

 

これは。

 

今までは護りのための形状で。

 

これからは、遺跡としての本来の役目を、霊墓が果たすと言う事なのか。

 

右往左往しているパティに叫ぶ。

 

「最悪、全力で入口まで走るよ!」

 

「は、はいっ!」

 

最悪の場合は、荷車を放棄して、全力で走って。

 

それでも逃げ切れるか、ちょっと分からないな。

 

揺れがまだ続いている中。

 

大量の鎧が、自動的に動き始める。バラバラに散っていた鎧の残骸が、それぞれ示し合わせたように、人型に変わっていく。

 

手にしていなかった剣や槍が、鎧に生じていく。

 

鎧から、わらわらと虫が出てくる。

 

内部に住んでいた虫たちだろう。

 

いきなり住み慣れた家が、動き始めたのだ。それは驚いて逃げ出すのも当然だろう。

 

パティが青ざめて、口を押さえるのが見えた。

 

確かにある意味ではグロテスクな光景だが。

 

そんな事で青ざめていられると言う事は、まだ余裕があるという事だと判断して良いだろう。

 

揺れが、止まる。

 

まだ遺跡全体では揺れているようだが。

 

少なくとも今いる地点は止まった。

 

随分と遺跡の形状が変わる。

 

そして周囲には、多数の幽霊鎧が。じっと此方に、それぞれの武器を向けて立ち尽くしていた。

 

「タオ、ちょっとまずいかなこの数」

 

「敵対の姿勢を示さないで。 もしも問答無用だったら、もうとっくに仕掛けて来ているはずだよ」

 

「それもそうか。 パティ、大丈夫?」

 

「は、はい……」

 

パティは吐きそうなようだ。

 

まあ虫を見るどころか、羽音を聞くのもいやと言っていたのだ。鎧の中からぼろぼろ虫が湧いて出てくるのを見れば、それは吐きそうになっても不思議では無いだろう。

 

ともかく、今は周囲を警戒する。

 

白銀だっただろう、苔むしていて今は緑色の鎧が此方に歩いて来る。

 

そして、何か喋った。

 

タオがそれを聞くと、剣を収めて。また何か喋る。

 

単語とかが難しくてよく分からないけれども。

 

何となく、会話の内容は理解出来た。

 

この遺跡を目覚めさせたのはお前達か。

 

そんな事を聞かれて。

 

その通りだ。遺跡の調査をしにきたと、タオが答えた。

 

良かった。ある程度は友好的な存在らしい。

 

剣に手を掛けたままのパティに、そのままと告げる。パティは青ざめたまま、じっとしている。

 

緊張が解けたら、吐くかも知れないが。

 

それはその時。

 

恐怖や緊張がピークに達して吐く人は別に珍しく無い。

 

あたしもそれは知っているから、もしそうなっても咎める気はない。パティは駆け出しの戦士としては、良くやっている方だからだ。

 

幾つかの会話をした後、タオが冷や汗を拭う。

 

幽霊鎧達が、一度距離を取ると。

 

それぞれが、持ち場に着くつもりのようだ。

 

戦闘は避けられたか。

 

この数に襲われると、かなり厄介だった。

 

交戦経験がある古代クリント王国時代の幽霊鎧よりも、これは明らかに古い時代のものだ。

 

そうなると、性能が未知数だからである。

 

「それでタオ、どんな話をしていたの?」

 

「うーんとね。 かいつまんで話すと……今がいつなのかとか、大いなる呪いがどうなったのとか、そういう事を聞かれたよ」

 

「そう言われても、こっちは分からないね」

 

「うん。 そもそもあの鎧達は一種のからくりで、あまり複雑な事を答えられないみたいなんだ。 大いなる呪いとは何かと聞いても、此方では把握していないって言われてしまったよ」

 

そうか。

 

まあ、あまり細かい事をぺらぺら喋るのも問題か。

 

ともかく、此処からは一旦周囲の調査のし直しだ。

 

回廊は立体的な構造から、平面的な構造に変わっている。その変化の過程で、更に崩れた場所もあるようだ。

 

これは危ないな。

 

足下そのものも、危ないかも知れない。

 

パティが、やっと戦闘態勢を解いて良いと言われて。ほっとした様子で、大太刀から手を離す。

 

「あ、あの鎧、怖くて、それで……」

 

「パティ、それよりも、その場から安易に動かないで。 元々傷んでる遺跡だし、足下がどうなってるか分からない」

 

「お、脅かさないでくださ……」

 

次の瞬間。

 

パティの足下が、崩落する。

 

え、と顔に書いているパティが。崩落した地面ごと、一気に下に沈み込む。あたしが飛び出して、手を伸ばすが。

 

墜ちる時は、加速度がどうのこうのだったっけ。

 

伸ばした手が、空を斬っていた。

 

そのまま、跳躍しようとするあたしを、タオが必死に手を掴んでとめようとする。

 

流石にあたしが強靭な足腰の持ち主でも。

 

この高さから落ちたら死ぬ。

 

そう思ったのだろう。

 

踏みとどまる。

 

パティが。すでに視界にいない。

 

ぐっと唇を噛む。

 

やはり、連れてくるべきではなかったか。

 

だが。

 

「フィー!」

 

かなり下から声がする。

 

完全に気絶しているパティを吊して、フィーが凄まじい勢いで羽ばたいているのが見えた。

 

あたしはすぐにロープを腰に結ぶと、タオに叫ぶ。

 

「タオ!」

 

「分かってる!」

 

ロープ、問題なし。

 

あたしは、タオが踏ん張るのを見ると。

 

そのまま、虚空に跳躍していた。

 

ロープについては、あたしが錬金術で結ったものだ。問題はタオが二人分の体重を支えられるか、だが。

 

元々タオは頭に重点的に強化魔術を使っているのであって。

 

体の方に強化魔術を使う事だって出来る。

 

耐えられるはず。

 

問題は足場だ。

 

鐘の結構近くが崩れたくらいである。簡単にくずれて、辺りが全面崩落する可能性だってある。

 

そんな事を考えているうちに、パティがどんどん近づいて来たので。

 

空中で掴む。

 

掴んで見ると、本当に小柄な子だなと思う。そのまま引き寄せて、抱きかかえるようにする。

 

パティの重さの分更にもう少しロープが伸びて。

 

それで、一気にぐっと引っ張られた。

 

この重み、体に掛かる負担が思った以上だ。

 

腰に縛っているロープが一気に引き締まったので、むぐと呟いてしまう。フィーが、力尽きてあたしの頭の上に乗る。

 

しばらく振り子みたいにぶらんぶらんと揺れた。

 

それが止まるのを、少し待つ。

 

「タオ!」

 

「大丈夫、聞こえるよ!」

 

「随分上だね!」

 

「今落ちた時間から計算したよ! 背丈の二十倍は落ちてる! とにかく、揺れがなくなるまで待って!」

 

そっか、それは大変だ。パティが気絶するのも分かる。

 

そのまま、ロープをたぐって上がる。タオがしっかり支えているようだが。不慮の事故が起きてもおかしくないからだ。

 

パティを抱えているから、片手と足でロープをたぐって上がって行かなければならないのだが。そのくらいは、朝飯前だ。

 

「フィー……」

 

「良くやったね。 あとで魔石の魔力をたくさんあげるからね」

 

「フィー!」

 

疲れきっているようだけれども。嬉しそうにするフィー。

 

上も確認しながら、ロープを登る。

 

見た所、かなり彼方此方で亀裂が見える。

 

その亀裂がある位置を、ある程度把握しておく。

 

さっきぶらんぶらんと振り子みたいに揺れたときにかなり回ったのだけれども。それでも今は回らずにロープは安定しているので。

 

それで、位置も分かる。

 

時々タオに声を掛けているので、それで方向もばっちり。

 

タオに、上がりながら。どの位置が危ないかを告げておく。

 

どうやら遺跡が古くなりすぎているようだ。

 

それを、無理に動かしたのだからああもなる。

 

他にも床が抜けそうな場所があったので、気を付けなければならないだろう。

 

上が近づいて来た。

 

もう少しだよと、フィーを励ましながら上がる。まあフィーはあたしの頭にしがみついているだけだが。

 

それにしても、思ったよりもずっと力があるんだなフィー。

 

ちょっと感心した。

 

落ちたパティにすぐ飛びついたのだとしても、あそこまで落ちたのだとしても。そもそも気絶して脱力したパティを支え続けたのだ。

 

この小さな体からは考えられない出力だ。

 

本当に魔力で飛んでいるんだなと思って、色々と驚かされる。

 

やがて、一番上まで辿りつく。

 

まずは抱えているパティを上に。タオも器用に左手でロープを掴んだまま、パティを右手だけで引っ張り挙げる事に成功。

 

後はあたしは、簡単に這い上がる。

 

タオが、腰が抜けそうな顔をして、へたり込む。

 

「運動不足?」

 

「違うよ。 ライザがおかしすぎるだけだよ……」

 

「そうかな」

 

「昔っからそうだよ。 健脚すぎるんだよ……」

 

いずれにしても、体力の限界っぽいので、休ませる。

 

タオは、一応周囲の危ない場所については記憶しているはずだ。さてパティだが。しばらくして、目を覚ます。

 

飛び起きて、周囲を見回すパティ。

 

泣きそうな顔をしていたが。

 

あたしが、その顔については、タオから体で遮った。

 

「ら、ライザさん……私、落ちて……」

 

「フィーが助けてくれたんだよ」

 

「フィー!」

 

「そうですか……。 フィー、ありがとうございます」

 

何処かフィーを警戒していたパティだが。それでも、素直に礼をいう。というか、今ので完全に心を許したらしい。

 

警戒が、完全に消えているのが分かった。

 

咳払いをすると、状況を説明する。

 

周囲の床が、彼方此方脆くなっている。

 

中身が空っぽの幽霊鎧が動けるからといって、人間が踏んで大丈夫とは限らない。

 

何カ所か崩落しそうな場所があった。

 

それを告げると、真っ青になるパティ。

 

「すぐにでましょうこんな遺跡! 命が幾つあっても足りないです!」

 

「パティ。 なんなら先に遺跡を出る?」

 

「ええ……」

 

「あたし達だけでやろうか調査。 内部に強力な魔物は今の時点でいない。 どうせ一度退路を確保するために外に出るから、荷物を守ってくれるだけでもいいよ」

 

勿論これは発破かけのための言葉だ。

 

パティは自尊心があまり強くない。

 

パティが怒るのは。家族や好きな人であるタオを馬鹿にされたとき。

 

多分自分を馬鹿にされたときは、それほど怒らない。

 

その辺りの見極めが、もうあたしには出来ている。

 

これでもクーケン島で、流れの商人相手にものを売ったりしていないのだ。

 

「……や、やります!」

 

「本当に、大丈夫だね?」

 

「大丈夫です!」

 

「分かった。 その言葉、信じるよ」

 

頷く。

 

まずはいずれにしても、一度退路を確保しなければならないのだ。

 

荷車の後ろに、パティにはついてもらう。

 

先頭はタオ。

 

これは一番身軽だからだ。

 

荷車を引きながら、あたしが続く。

 

タオは回廊だった通路を確認しながら進むが。やはり時々崩落が起きる。あたしが下から見ていた、薄くなっている場所だ。

 

やはり鐘を動かして、遺跡を「稼働状態」とでも言える状況にしたことで。

 

彼方此方に無理が出ているのだ。

 

それは分かっているが。

 

そもそも得体が知れない状況だ。

 

フィルフサを封じている可能性も否定出来ない。

 

だから、調査は続けるしかない。

 

安全、が確保できるまで。

 

これはやめられないのだ。

 

世界が掛かっているのだから。

 

一度、入口まで戻る。タオが、座り込んで、水を飲み始める。パティはずっと貧血になりそうな程青ざめていたが。

 

壁に背中を預けて、へたり込んでしまった。

 

余裕があるあたしが、見張りをかって出る。少し、いずれにしても休憩はいれないと危ない。

 

今強い魔物が中にいないのは事実だが。

 

それでも、万全に備えておかなければならないのだ。

 

栄養剤をタオとパティに渡す。

 

パティが、若干恐怖の声を含ませながらあたしに言う。

 

「あ、あのライザさん」

 

「なに?」

 

「フィーと一緒に助けてくれてありがとうございます。 そ、それで。 その、ロープをつけて、片手で私を抱えて、それでロープを上がったんですか」

 

「そうだよ」

 

完全に声をなくして、それで黙り込むパティ。

 

タオが力無く補足した。

 

「凄いだろライザって。 あの蹴り技を出せるのは、幼い頃からずっと外を走り回っていた基礎体力があってのことなんだ。 多分腕相撲とかしても、その辺の男なんかじゃ瞬殺されちゃうよ」

 

「基礎体力……」

 

「今のパティの年は凄く伸びるから、いずれ追いつけるよ」

 

「……」

 

完全に黙り込んだパティ。

 

これは、ちょっと回復に時間掛かるかな。

 

いずれにしても、本人の問題だ。

 

休憩を、しっかり取っておくこととする。

 

一刻ほど休憩して、水も取り。交代でトイレにも行っておく。その後は、持ち込んである燻製肉も食べておく。

 

それで体勢を整えてから、遺跡にもう一度入る。

 

一度鐘は動いたのだ。

 

この遺跡は目覚めた。

 

霊墓と呼んでいる此処は。

 

既に、動き出していて。である以上。なおさら、封印されているという何かが危険ではないことを確認するまでは。

 

立ち尽くすわけにはいかなかった。

 

 

 

パティは、本当に死ぬのだと、あの時思った。

 

足下がくずれて。

 

反応できなくて。

 

それで落ちて。

 

墜ちて墜ちて墜ちて。

 

暗闇の中で、意識が溶けて消える寸前で、フィーが飛んでくるのが見えて。

 

凄く長い時間が経過したように思えたけれども。

 

実際にはごく短時間だったのだろう事が分かった。

 

何度この短期間で、走馬燈を見たのだろう。

 

探索を再開するとライザさんが言ったときに、ひっと悲鳴が漏れそうになった。お父様と一緒に魔物を退治しにでた時。

 

目の前で食われそうになった戦士を見て。

 

それでも悲鳴は漏れなかったのに。

 

自分が、今までに無い程の濃厚な死を間近で感じて。というか、どう考えても助からないと体と頭が理解して。

 

頭がまだ混乱している。

 

どうして漏らしていないのかよく分からない。

 

はっきりしている事がある。

 

ライザさんは、この程度の危険、何度でも潜ってきている、と言う事だ。

 

それに、あの時パティがしっかり反応できていれば。此処までの危険な事にはならなかった。

 

自分の責任だ。

 

それが分かっているからこそ、悔しい。

 

悔しいから、今はただ。

 

この、ずっと先にいる人達に、必死に食い下がっていくしかないのだ。

 

遺跡の中に入る。

 

足下がふるえる。トラウマが生じかけている。この遺跡は危ない。体がそう認識してしまっている。

 

だけれども、ライザさんについていけば。

 

今までの、未熟なアーベルハイムの跡取りではなく、ぐっと伸びられるはずだという確信だってある。

 

井戸の中の蛙の仲間ではなく。

 

ぐっと先に行けるとも確信できる。

 

だからパティは顔を上げる。

 

いつでも戦えるように、心身を必死に整える。

 

それはまだ、蟷螂の斧かも知れないが。

 

それでも、いずれドラゴンを断ち割る刃となる。

 

そのためにパティは。

 

二人についていくのだ。

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