暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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1、青の湖畔へ

街道を北に進み、大きな湖に出る。

 

地形的にあまり高くない場所だから、湖の全容は見えない。

 

無言で手をかざして周囲を確認。

 

ちいさな集落がこの辺りにもある。先に見た集落よりは、もう少しは大きいようだけれども。

 

良い生活をしているようには、とても見えなかった。

 

王都の中でも、農業区の人間が差別されているのは見て来た。

 

それと同じだ。

 

王都の中の人間は、王都の周囲に暮らす人間を差別しているのだろう。

 

それも、自分は正しい差別をしていると考えて。

 

馬鹿馬鹿しい話だ。

 

あんな壁、強い魔物がその気になれば、一瞬で崩されてしまうだろうに。

 

パティは戻ってくる、

 

長老と話をしてきたようだった。タオがうきうきである事から、それなりに成果があったのだろう。

 

「今の時点で、強力な魔物の話はありません。 鼬やワニは出ますが、集落の戦士で対応は可能なようです」

 

「それよりもライザ! 直接童歌を聴けたよ!」

 

タオが目をきらっきらに輝かせている。

 

なおクリフォードさんは、小遣い稼ぎだといって、近くの魔物を駆逐しにいっている。

 

雑魚ばかりだから、あの人の手練れなら遅れは取らないだろう。

 

あたしも、自由行動を認めた。

 

まあ苦戦しているようなら、ブーメランを真上に投擲してほしいと言ってあるので。そういう意味でも多分大丈夫だろう。

 

とりあえず、タオの話を聞く。

 

やはり星の都の伝承は、この辺りにあるらしい。

 

本当に目をきらっきらに輝かせているタオを見て、パティすら呆れ気味だ。

 

まあ、それもそうだろう。

 

この状態になると、帰って来るまで結構時間が掛かるのだ。

 

「それでタオ、どう思う」

 

「星の都については、恐らくあると思うね。 ……それがもしも、古代都市の残骸で、湖に落ちたのだとすると……」

 

タオが指さす。

 

その先には、島では無く、対岸が見えた。

 

「浮島とかではないんだ」

 

「この湖の規模、それほど大きくないんだよ。 円形ではあるけれど。 恐らくだけれども、もしもその星の都が落ちてこの辺りに被害を出したのだとすると。 円形の湖はいびつな大きさになって、それでしかも後から土砂とかで埋まったんだと思う」

 

「ふむ……」

 

「だから、入口になりそうな場所は、案外地上部分にあるかも知れない。 ただそうなると、今まで発見されていない理由がわからない。 個人的に気になるのは、水の流れなんだ」

 

近くにある川などを総合すると。

 

明らかに変な風に水が流れている、とタオが言う。

 

さっき指さした辺りの地下を、水が流れているのでは無いか、というのだ。

 

なるほど。

 

そうなると、その下辺りだと。

 

或いは、その星の都に入り込める場所があるのかも知れない。

 

だとすると、やはりここは。

 

あたしが今開発している、水中行動用の道具の出番だろう。

 

クリフォードさんが戻ってくる。

 

何匹か鼬を仕留めてきたそうだ。

 

パティが感心していた。

 

「基本的に魔物には三対一で当たる戦術を徹底されました。 一人で鼬を倒すとは、流石ですね」

 

「なに、さっきみたいなばかでかい奴はいなかった。 それだけさ」

 

「それでクリフォードさん」

 

「ああ、分かってる」

 

単独行動をするクリフォードさんに、同時に頼んだことがある。

 

湖の状態の確認だ。

 

「どうやるかは知らないが、水の中に安易に足を踏み入れるのは止めた方が良いだろうな。 ワニが湖の中で、ばかでかい魚にぱっくりやられるのを見た。 あの大きさの魚だと、人間なんか一呑みだろうよ。 泳いで湖に入るとか、それは完全に自殺行為になるだろうな」

 

「そうでしょうね」

 

「錬金術でどうにか出来そうか」

 

「今、開発中の道具があります。 まずはそれを完成させる必要がありますね」

 

一度撤収だ。

 

全員に声を掛けて、一度戻る。

 

街道を行くとは言え、思ったほど安全じゃない。途中、此方を伺っている魔物の視線は何度も感じた。

 

正確には、五感で魔物の存在を察知しているのだろうが。

 

まあ、同じ事だ。

 

警戒を絶やさないようにパティに時々いいながら、帰路を急ぐ。

 

そして、王都近くになって、やっとパティが肩の力を抜いたようだった。

 

「今日は、かなり早く戻れましたね……」

 

「そうだね。 実は今、長旅をするための移動式アトリエの設計をしているんだ」

 

「長旅。 移動式アトリエ」

 

「簡単に組み立てられるアトリエだよ」

 

もうなんでもありだな。

 

そう顔に書いているパティ。

 

まあ、それはいい。

 

とりあえず、今日はパティを伴って鍛冶屋に行く。一応探索は終わり。タオはここで解散した。あの本や、聞いた童謡などをまとめてくれるのだろう。

 

荷車をアトリエに入れて。それから、インゴットを取りだす。それと、良さそうな獣の毛皮を、皆の前で調合して、皮鎧などに使いやすいように加工する。

 

これがビーストエアである。錬金術で何倍も強化したなめし革だ。

 

通常のなめし革とは、ひと味もふた味も違う。

 

錬金術の加工によって、この皮は非常に強度を増すことになる。モフコットなどを用いても、それなりの防具を作れるのだが。

 

これにより生臭さを全て取り去り。

 

元々の魔力を増幅し。

 

更に強力な装備へと加工できる。その上金属よりもだいぶ軽いのだ。

 

「ほう、これが錬金術……」

 

「あんまり驚いていないですね、クリフォードさん」

 

「いや、驚いている。 あれだけのエーテルを簡単に絞り出して、それを彼処まで巧みに操るのか……」

 

また目の前で褒める。

 

だめだよ調子に乗るから。

 

そう内心で呟きながら、ある程度の量のビーストエアを準備。

 

クリフォードさんも、此処で解散。

 

宿に戻って、明日に備えるそうだ。フィーは懐から出て来て、アトリエの中を嬉しそうに飛び回っている。

 

何をしたらまずいかを、あたしを見て完璧に理解しているようで、おいたは全くしない。

 

この辺り、まだ幼体だとはとても思えない。

 

賢すぎるし、良く出来すぎている。

 

だから不安だ。

 

もしも成体になると、がらりと生態が変わるのでは無いか。ただでさえフィーはドラゴンの亜種では無いのかという話まであるのだから。

 

「フィー、元気そうですね」

 

「あたしの魔力がここには満ちているからね。 どうも大気中の魔力よりも、あたしの魔力の方がフィーにはおいしいみたい」

 

「魔力だけを食べる生物ですか。 ちょっと想像もつきません」

 

「糞便も殆ど出さないんだよね。 処理が簡単で良いけど」

 

準備が終わったので、フィーに懐に入って貰って、鍛冶屋に向かう。

 

途中、パティは行き交う人に時々挨拶していた。

 

貴族だからと言って高圧的に接するのではなく、相手に敬意を持って接している。

 

それでいいのだろう。

 

やがて鍛冶屋に到着。

 

デニスさんにも、パティは丁寧に接していた。

 

デニスさんの方も、パティには丁寧に接している。

 

まあこれは、装備を作ってもらった時などに話をしたりして、顔見知りだからかも知れない。

 

この堕落した王都の住人にしては、デニスさんは良い腕の持ち主だ。

 

社交辞令が終わった後、胸当ての話をする。

 

ビーストエアを渡すと、デニスさんは驚いた。

 

「この皮は……どうやって加工したんだい」

 

「錬金術で」

 

「はあ。 全く凄い技術だな……」

 

「ともかく、パティ用に指定した加工をお願い出来ますか」

 

加工内容は、既にゼッテルに書いてある。

 

あたしはあまり説明が上手では無いので、タオに書いて貰った。

 

採寸なども書いてあるので、此処でやる事は殆どないと思う。

 

パティを見て、デニスさんは黙り込んでいたが。

 

やがて奧から、皮製の胸当てを持ち出して来た。

 

「パトリツィア様、これを試着して貰えますか。 着替えには奥の部屋を使ってください」

 

「分かりました」

 

「試着、必要ですか?」

 

「この装備は、恐らく重量を一切感じないほどに強力な身体能力強化が掛かるのは私にも分かる。 だけれども、やはり装備をしたとき、どんな風に体に影響が出るかは、実際に身に付けて貰って、それで調べる方がいいんだ」

 

なるほどねえ。

 

そういえば手袋や靴を思いついたときも、色々と実際に身に付けてから調整を繰り返したっけ。

 

頭がはっきりしていた時期のあたしですらそうだ。

 

確かに本職の言う事は聞いておいた方が良い。

 

すぐにパティは戻ってくる。

 

胸当てをつけている。

 

胸当ての形状は、あたしが設定したものと殆ど同じだ。デニスさんが言う通りに、それから色々動いて。その度に、細かく質問が飛んでいた。

 

かなり熱を帯びているので、見ていて面白い。

 

「なるほど、腕を降ろすときにこの部分が邪魔になると」

 

「私の剣術は速度を重視するので、腕にぶつかるとどうしても……」

 

「なるほど、それではこうしては……」

 

「それはいいですね。 お願い出来ますか。 それと……」

 

設計の一部に修正が入る。

 

あたしは口出しをしない。

 

本職がやる事だ。この人は数限りない戦士の武器を打ってきて。防具だって同じように作ってきている。

 

鎧がすっかり時代遅れのものとなってしまった今でも。それは同じ。

 

ごっつい鎧が役に立たなくなった時代だが。

 

それは魔物が相手だから。

 

例えば、裸で戦うのと、服を着て戦うのでは、傷を受ける量が全然違ってくる。

 

同じように、服を着て戦うのと、軽装備でも防具をつけて戦うのでは、同じ結果になるはずだ。

 

魔物の攻撃に重装防具が耐えられなくなっているのは事実だが。

 

それでも、こういう胸当てを作るのには、大きな意味がある。

 

まだまだ勉強がいるな。

 

そう、あたしはデニスさんとパティのやりとりを見ていて思う。

 

やがてパティは別の胸当てをつけて戻って来て。それでまた喧々がくがくのやりとりをして。

 

それが終わった後に、設計をさっと書いて、デニスさんが見せてくれた。

 

「こうなります。 色などは、後で好みに塗装できるが、何色がいいでしょうか」

 

「ふむ、筋肉の動きを邪魔しないように、背中側にベルトを回すような形にすると……」

 

「色については、白を基調でお願い出来ますか」

 

「分かりました。 それでは白を基調とした色彩に仕上げます」

 

ビーストエアはどちらかというと赤黒い。

 

それを白中心の色彩にするのか。

 

まあ、パティとしても、金色とかの趣味が悪い色にしないのはいい。金色は要所に使うのはいいのだが、全部金にするとだいたいは悪趣味になってしまう。

 

その辺を心得ていると言う事なのだろう。

 

「料金については……」

 

「加工代だけで充分です。 後でアーベルハイムに請求します」

 

「それでお願いします」

 

ぺこりと頭を下げて、鍛冶屋を出る。

 

緊張した様子で、パティが冷や汗を掻いていた。

 

「結構緊張した?」

 

「緊張しますよ。 命を預ける装備を頼むんですから。 それに私の剣術はどうしても速度が重要になりますし」

 

「ふうん……」

 

その割りには被弾がまだまだ多いな。

 

いや、まて。

 

一緒にアトリエに戻りながら、話を聞いておく。

 

「パティ。 昔から、魔物に優先的に狙われない?」

 

「それはあります。 今はライザさんたち強い人達と一緒に戦っていますので、魔物も私を優先的につぶしに来ると言う訳にはいかないようですけれど」

 

「なるほどねえ」

 

「何か理由があるんでしょうか。 明らかに腕が劣る事が魔物にも見抜かれているんですか?」

 

違うな。

 

多分だけれども、パティは魔物から見てとても美味しそうに見えるのだと思う。

 

ただ、それを口にしても引かれるだけだ。

 

パティがやるべき事は。

 

自分に向けて、攻撃が飛んでくる事を常に想定して。

 

それにカウンターを入れる事ではないだろうか。

 

「パティ、あのさ。 提案があるんだけど」

 

「はい」

 

「今後、カウンターを主体に技を磨いてみては」

 

「カウンター……ちょっと今までは、考えた事がありませんでした」

 

それも分かる。

 

パティの剣術を見て来て分かったのは、速度と手数を武器に攻めて行くものだということである。

 

ただしパティの経験が伴っていないので攻めきれず、守勢に回ってしまう。これはどうしようもない。

 

だったら、攻撃一辺倒の動きをやめて。

 

一度カウンターを主軸に置き直してみてはどうだろうか。

 

多分パティには師匠がいる。

 

側で一緒に実戦を経験したあたしからのアドバイスが適正か判断できるだろうし。

 

そう思ったら、パティに様々な応用を叩き込んでくれるはず。

 

実戦に出るためには、どうしても最低限の修練が必要になってくる。パティも、それは分かっている筈だ。

 

「確かに被弾が多い事は、今までも課題だと思っていました。 家の人間に相談してみます」

 

「ちなみに師匠はヴォルカーさん?」

 

「いえ、お父様は最初の頃は稽古をつけてくれましたが、今は多忙ですので。 今はメイド長が稽古をつけてくれています。 私に取っては、お父様とは違う意味で、親に近い人です」

 

パティの家庭も色々複雑な訳か。

 

ともかく、その辺りは専門家に任せるべきだろう。あたしも戦闘については生半可な専門家よりはわかるつもりだが。

 

個人武技については、あくまでリラさんに教わったものを伸ばした我流に近いものに過ぎない。

 

もしも専門家がいて、的確なアドバイスがあるならば。それに従った方が良いだろう。

 

アトリエの前でパティとも解散。

 

さてと、此処からは自分自身での仕事だ。

 

アトリエに入ると、調合を始める。

 

空気が出る、くらいでは水に潜れない。

 

やるべき事は、呼吸を担保。

 

水中で自在に動ける。

 

そして、水中の強力な魔物から身を守る。

 

この三つである。

 

水中を泳ぎながら移動するのは論外だ。ただでさえスペックが低い人間が、水中で魔物に勝てる訳がない。

 

今のあたし達でも無理だ。

 

リラさんでも多分厳しいと思う。

 

だったら、やるべき事は。

 

水の中を歩いて移動する。

 

水そのものが邪魔だ。

 

魔物はどうやって回避するべきか。此方を認識させないのが一番なのだが。それにはどうするべきか。

 

それらをクリアしたのが。

 

今開発中のエアドロップである。

 

口の中に空気を発生させる飴、というのを最初は考えた。

 

結構結構。

 

風呂桶にでも潜るなら、それで大丈夫だろう。

 

だが魔物がいる水の中に潜るのでは、それでは駄目なのである。そんな事は、わざわざ声高に主張するような事でもない。

 

淡々と調合をしながら、細部を詰めていく。

 

今までに、調合して研究はしてきた。

 

それの大詰めだ。

 

明日の朝までには、完成させたい。

 

「フィー! フィー!」

 

「ちょっと待ってね。 これが終わったら、遊んであげるからね」

 

「フィー!」

 

あれ、ちょっと様子がおかしいな。

 

一度手をとめて、それで気付く。

 

客だ。

 

しかもこの気配は、ヴォルカーさんか。

 

はて、何だろう。依頼はしっかり受けている筈だが。

 

戸を開けて、ヴォルカーさんに入って貰う。調合の最中だったが、別に今手をとめて失敗するようなものでもない。

 

アトリエの中を見回すと、厳しい表情でヴォルカーさんは言う。

 

「ライザくん。 薬も発破も納入してくれて助かっている」

 

「ありがとうございます。 それで何か不始末がありましたか?」

 

「いや、今の時点では私の想像以上の仕事をしてくれている。 今日来たのは、パティの事でな」

 

「……」

 

無理させすぎている事を、責めに来たのか。

 

いや、違うな。

 

単にこの人は、表情が常に厳しいだけだ。色々あって、常に険しい顔をするようになってしまっているのだろう。

 

茶を出し、茶菓子も出す。

 

茶菓子はクラウディアが持ち込んでくれたものだ。これは普通に貴族の舌でも満足するはずだ。

 

「それで、パティに何かありましたか」

 

「少し急ぎすぎていないだろうか。 明らかに戦闘に対する意欲が増している。 ドラゴンとでも戦わせるつもりかね」

 

「今の時点では、街道周辺に出る大物程度としかやりあっていませんよ。 ただ将来的にドラゴンと戦えるくらいの技量はほしいとあたしも思いますけれど」

 

「……なるほどな」

 

どうやら想定していた前提が違うらしい。

 

ヴォルカーさんは咳払いする。

 

「あの子は生真面目でな。 アーベルハイムの立場が決して良くない事を理解しているし、次世代の重圧についても気付いている。 その上でタオ君に好意を持っている自分をどうすべきかずっと悩んでいる」

 

「ああ、ヴォルカーさんもお気づきでしたか」

 

「親なのだから当たり前だ。 私としては、出来ればタオ君が何かしらの実績を学術院で上げてくれれば、それを待ってからパティの婿に迎えたいくらいだ。 ボンクラの貴族の息子なんかよりも、ずっとタオくんは文武に優れている」

 

そうか、親お墨付きの仲か。

 

でも、それだけをいいに来たのではあるまい。

 

そう思っていると、本題に入る。

 

「結論から言うと、タオ君とパティが今あまり親密になられると困る」

 

「といいますと」

 

「今、タオ君が自然にパティの夫として相応しいと認識されるように、私の方で手回しをしている所でな。 貴族の世界ではこういうくだらない根回しが必須なのだ」

 

「なんだか大変ですね」

 

まあ、それについては実の所分かる。

 

クーケン島でも、ブルネン家が似たような事をしていた。

 

あたし達が悪ガキ軍団として好き勝手に振る舞えていたのも、次代を背負う人材として、先代のブルネン家当主があたしを認めてくれていたからだし。

 

そうでなかったら、あたしはとっくに誰かと結婚させられていて。

 

今頃二三人子供を産んでいただろう。

 

その内一人でも育ってくれれば良い方だっただろうな、とも思う。

 

「私の言いたいことは分かるかな」

 

「はい。 私に対して信頼してくれている事。 そして私が二人の仲を茶化すような事はしないこと。 それにタオにもパティにもこの話はしない事」

 

「どうやら君は想像以上に聡明だな。 頼む」

 

「分かりました。 「タオの方は」問題ないでしょう。 兄弟みたいに育ったあたしがいうのも何ですが、基本的に生物としての本能よりも知識欲を優先する奴なので」

 

要するに朴念仁だ。

 

ただパティは多分自分の気持ちをどうするかでずっと悩んでいる。そういう意味も込めて、あたしは返答した。

 

ヴォルカーさんは複雑そうな顔をして。

 

そして咳払いした。

 

「時に君はタオ君に興味がないのかね」

 

「ないです。 というか性にほとんど興味がないです」

 

「……なるほどな。 天才と呼ばれる人間は、だいたい大きな歪みを抱えていると聞いた事がある。 君はその典型なんだろうな」

 

「人を面と向かって褒めてはいけないですよ」

 

もう一度咳払いするヴォルカーさん。

 

それについては、認めてくれたのだろう。

 

そして、頼むともう一度念押しをすると。

 

アトリエを出て行った。

 

「フィー、来客を教えてくれて有難うね。 集中していると気付けないからさ」

 

「フィー……」

 

「タオとパティの事なら大丈夫だよ」

 

それにだ。

 

今のタイミングで、ヴォルカーさんがこの話をしに来た理由が気になる。

 

多分だけれども、ヴォルカーさんはあたしを警戒している。もしもこれが漏れるような事があったら。

 

恐らく行動に出ると見て良いだろう。

 

あたしを消すための。

 

まあ、それはわからないでもない。その気になればあたしは一日で王都を破壊し尽くせると、もうヴォルカーさんは認識しているのかも知れない。まあ、やろうと思えばできなくもないが。やらない。

 

此処で問題なのはそれが出来ると言う潜在的な危険であって。

 

あたしを無理矢理身内に引き込むことで、いわゆる危険管理をしている、と見た。

 

ちょっと過大評価されているかなとも思うけれども。まああたしとしては、それはそれでかまわない。

 

最悪の場合、王都からの避難誘導とか、色々ヴォルカーさんには頼みたいのだ。

 

向こうが腹の内を見せてきたからには。

 

此方もある程度譲歩する必要がある。

 

それが、約束というものだ。

 

それを守れない奴は、基本的に信用なんて得られない。あたしはそれを、色々見て良く知っている。

 

嘆息すると、調合に戻る。

 

多分エアドロップの実用化そのものは出来る。

 

問題は、恐らく問題が生じるだろう事で。

 

それをクリアするために、現地試験を行う必要がある。それを見越して、数日はほしい所だった。

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  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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