暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
三年でしっかり力をつけたクラウディアが、参戦します。
良い意味でも悪い意味でも。
パティは、ずっとカウンターの練習を続けていた。
言われた通りだ。
確かに、魔物に狙われる傾向はある。
現時点では、パティなんて問題にならないくらいライザさんとタオさんが強いから、それでパティは狙われなかっただけ。
弱い奴を叩くのは基本的な戦い方だが。
それにしても、パティに比べて二人が強すぎたのだ。
更に二人に並ぶ使い手であるクリフォードさんが加わった事で、パティに攻撃が来る可能性は更に減った。
なら、カウンターは必要か。
必要だ。
いずれ技量があがれば。魔物は率先してパティを集中狙いしてくる。
その時に備えて、今のうちに手を打っておく。
今はまだ、そうして技量を高める余地がある。
余地があるうちに、出来る事をやっておくのだ。
メイドと、ずっと乱取りをする。
何をしてほしいかは告げてある。ずっと相手の力量はパティより上。だから、戦いにも本来はならないけれども。
それでも、やるべき事を叩き込んでくれる。
実戦だったら何度死んでいたのだろう。
傷が出来ては、回復魔術で治す。
メイドには何でも出来るように思う。パティは無力な子供だ。それから見ると、本当に何でも。
お父様も、意地を張っていないで。
この人と結婚してくれればいいのに。
この人だったら、パティはお母様と呼べる。
確かに男として筋を通すのは、一人の人間として尊敬できる。でも、顔も分からない母親を、ずっと尊敬するのは無理だ。
神代と呼ばれる時代には、フォトという技術があったらしい。
それによると、人の姿をずっとありのまま残せたらしい。
だけれども、とっくにそんな技術は失われている。
その技術があったら。
少しは顔も分からない母親のことを、好きになれたのだろうか。
そんな風にパティは思う。
訓練時は、雑念を払える。
そういう訓練をしてきたからだ。
だけれども、休憩を入れると、どうしても雑念がわき上がってくる。まだ脆いのだと、パティは自分を評価する。
脆いから、悩む。
勿論悩まなくなったら、それは人間ではないとも思うけれど。
お父様が振るう曇りのない剣筋を見ていると。
ライザさんの、躊躇なく相手を打ち砕く蹴り技を見ていると。
あの境地に行くには、迷いを断つしかないのだと分かる。
だから、ひたすらに稽古をつけて貰う。
「短期間でかなり上達してきていますね。 私の初動を見る事が出来ています」
「ありがとうございます。 でも、見る事が出来ているだけです」
「……凄い使い手を、複数側で見ているのが大きいのでしょう。 その実戦も」
「見稽古ですね」
頷くメイド。
そして、武器を変えた。
いつもは長柄で訓練しているのだが。これは。
恐ろしい大きさの剣だ。訓練剣とはいえ、受け損ねたら打撲で済むかどうか。
「更に初動を見やすい武器にします。 それに、この武器であれば、魔物の攻撃に火力で劣ることもありません」
「……は、はい」
「いきます」
訓練用だから、無骨な鉄塊である実剣よりは軽い。
だが、それでも平然と振り回している様子を見ると、この人がどれだけ鍛えているのかよく分かる。
格闘戦だけで言えばライザさんと同格……いやそれ以上ではないのか。
生唾を飲み込むパティに。
どんどん地力を見せてくれているメイドが、踏み込んでくる。
必死に横っ飛びに逃げて、一撃を避ける。
それで精一杯だ。
横殴りに来た場合は、訓練剣で受けるしかないが、もろに吹っ飛ばされる。
仮想敵は魔物だ。
この人は今、魔物でも退くような武技を見せてくれている。つまり、これこそ最高の訓練。
そう思って、立ち上がり。
もう一度と、パティは叫んでいた。
朝になって、ライザさんのアトリエに出向く。
お父様には、遺跡探査の時以外には、ライザさんやタオさんとあまり接しないようにと言われた。
恐らくだが、貴族の政治に関する話だろう。
ライザさんは既に王都で話題になっているそうだ。
巨大な魔物を苦もなく蹴り殺す達人。ドラゴンスレイヤー。
三年前から、作ったものがバレンツ商会を通じて流通していて、王都の経済に大きな影響を与えている存在。
その全てが一つだというのだから、それは話題になる。
とんでもない魔人が来た。
そういう噂になっているそうだ。
今は、パティがなんとなくその魔人と関係していると臭わせるくらいでいい。
そうお父様は言う。
貴族の政治闘争が如何に陰湿で馬鹿馬鹿しいかはパティも把握している。そんな事で、心を乱されたくない。
タオさんの側にいたいし。
経験も積みたい。
それに、見た事がないものを見ると、怖いと同時にわくわくが浮き上がってくるようになってきている。
子供みたいだと自嘲するのだけれども。
それと同時に、今までこんなに好奇心を抑え込んできたのかと、パティは自分でも驚いていた。
アトリエには、いつもパティが最初につく。
だけれども、今日は続いてクラウディアさんが来たので、驚く。
この人はライザさんの事が大好きで大好きで仕方がないオーラを常に放っているので、ちょっとびっくりである。
普段は落ち着いた厳しい所すらある綺麗な女性なのだけれども。
ライザさんの前では、子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべているので、そのギャップも凄い。
「ライザ、今日から参戦させて貰うわ」
「助かる! 次の遺跡、凄く手強そうだったからね」
「うん。 勿論、守ってね」
「ふふ、もうそんな必要ないくせに」
アトリエに入って、クラウディアさんが自分で作った菓子を振る舞ってくれる。
いや、これは。
本当に美味しいな。
実の所、貴族がそんなに美味しいものを常に食べている訳では無い。そもそも王都は農業区を軽視していることからも分かるように、常に最高の食材が手に入る場所ではないのだ。
このため香辛料漬けにしている食べ物とかが多く。
決して常に美味しいものが食べられるわけではない。
菓子にしても腐敗を避ける為の砂糖漬けが多いのも事実で。
異常に甘いものはよく食べられるが。
こういう上品な味付けのお菓子は、あまりない。
また、逆に貧民向けには薄味の食べ物が多く。
それは香辛料や保存料を貴族が独占しているからだ、という事をお父様に聞かされた事がある。
騎士時代と今では食べるものの味が全く違うので。
時々、腹の調子を崩しそうになることもあるのだとか。
いずれにしても、依頼を出すために使っているカフェなどは、どちらかというと貴族向けの食事も出てくるため。
味付けは濃いめにしてあるそうである。
馬鹿馬鹿しい話だが。ともかく、この菓子のおいしさを味わうと、言葉が止まってしまう。
味付けばっかり濃い高級品や。
逆に、珍味というだけでおいしくもないものが貴族の食卓には結構出てくるので。
これは逆の意味で新鮮だ。
言葉が出なくなる。
ボオスさんとタオさんが来る。今日は二人同時。そう思っていたら、クリフォードさんも来た。
一瞬、火花がクラウディアさんとクリフォードさんの間で散ったようだが。
この二人は互いに警戒し合っている様子だし、仕方がないのだろう。
なんとなく、理由はわかる。
ライザさんの事が大好きなことが見ているだけで分かるクラウディアさんにとって。得体が知れないトレジャーハンターは、すぐに信用できないのだろう。腕利きであっても。
クラウディアさんは、パティの事は警戒していないらしい。
それについては、とても有り難かった。
この人がやり手で。優しいだけの人ではない事くらいは、パティにも分かるからだ。
「今日から、本格的に遺跡の探索に入ります」
「確か湖底にあるって話だったよね。 水の中に潜る方法はどうするの?」
「エアドロップという道具を完成させたんだよ」
「素敵! 乗って見たい!」
クラウディアさんがとても嬉しそうなので、こっちもほっこりする。
ともかく、遺跡の中を調査する事。
今日は五人体勢で行く事。
何かあった場合は、アンペルさんとリラさんという人に連絡が行くこと。
これらが話し合われた後、即座に出る事になった。
クラウディアさんは元々バレンツの令嬢。
移動しながらの商売には慣れているのだろう。今日は商売ではないが、すぐに出かける準備を整えていた。
荷車をクリフォードさんが引いて、四人でその周りを囲んで出る事にする。
ボオスさんは連絡係だ。
何かライザさんに耳打ちしていたが、或いは何かしらの貴族に関する進展があったのかも知れない。
トーマス卿と連絡をライザさんが取っているのは知っているが。
その続報か、或いは別の貴族に関する話かも知れなかった。
荷車とともに、湖畔に急ぐ。
エアドロップがかなり大きい事もあって、積載量が減ってしまうのが残念だが。そもそもあんな大きなものを、短時間で畳んで詰め込めるのがおかしいのだ。しかも乾燥機能までついていた。
城門で、パティが戦士達に話をする。
街道に出る魔物を、見かけ次第狩っているからだろう。
少なくとも、ライザさん達が主導で移動している方向で、魔物が出ている話はないそうである。
それは良かった。
魔物とも何とか上手くやっていければ良いのだが。
向こうが人間に対する殺意をむき出しにしている以上、そうも行かない。
じっと手を見る。
まだ発展途上の技術。
実戦を積むというのは、本当に大事だったんだなと思い知らされる。
パティですらこれだ。
お父様以外の王都の貴族なんか、どれだけ前線に出て来てもものの役になんてたちはしないだろう。
街道を外れる。
クラウディアさんの音魔術は、常時展開型のようだ。
もの凄く鋭敏で、見ているだけで驚かされる。
「此方を伺っている鼬が七匹。 ただし仕掛けて来るつもりはないみたい」
「了解。 そのまま音魔術よろしく」
「うん。 ライザ、歩いているので分かったけれど、凄く腕を上げているね」
「ふふ、腕だけは何とかね」
見ると、クラウディアさんは口を動かしていない。どうやら音魔術で、音声を皆の耳にだけ届けているようだ。
これもまた、凄いな。
音魔術の使い手は、パティも知っているには知っている。
だが、クラウディアさんのは技量がレベル違いだ。
王宮魔術師なんて、本当に井の中の蛙が喜ぶ程度の技量なんだな。
そう思って、ほろ苦くなる。
途中で、クラウディアさんが、警告を発してきた。
「エレメンタル。 四体。 接近してきてるよ」
「総員散開!」
ライザさんの声で、全員散開する。
とにかくパティは、皆の胸を借りるつもりで戦うだけだ。
森をブチ抜くようにして、人間より二回りも大きいエレメンタルが姿を見せる。全身が黒い。
たしかエレメンタルは何種類かいるが、黒いのは見た事がない。
というか、気配がびりびりとする。
他三体は雑魚……といっても三人で相手にするのが普通の奴だ。
即座に、散開して全員が戦闘を開始。
クラウディアさんはその場に立ち尽くして、立射の姿勢。パティは体勢を低くして、指示を受けた相手に突っ込む。
魔術の光弾が飛んでくるのを、紙一重で回避。回避の動作が小さいほど、そのまま攻撃に移せる。
二発目。
今度は直撃コース。仕方ないので、横っ飛びに逃れる。
三発目。魔術を際限なく撃ってくる。だが、それを回避した瞬間。エレメンタルの顔面に、魔力の矢が突き刺さっていた。
鋭い悲鳴を上げるエレメンタルに突貫して。
次の魔術はもう撃たせない。
踏み込むと同時に、大太刀を突き刺す。
エレメンタルの胸に食い込んだ大太刀。
更に気合いの声とともに振るい上げ、頭を真下から逆唐竹に割った。
それで、エレメンタルが消えていく。
次。
周囲を見ると、既に大きいのしか残っていない。
大きいのは丁度ライザさんと魔術戦をしていたが、圧倒的に押されている。黒いエレメンタルが、あんなに一方的に。
そのエレメンタルの側頭部に、クリフォードさんが投擲したブーメランが炸裂。首が折れた。
更にとどめとばかりに、ライザさんが接近。
蹴りを叩き込み。
黒いエレメンタルの頭を、蹴りでちぎり飛ばしていた。
首を失った黒いエレメンタルは、そのまま消えていく。
嘆息する。勝ちだ。怪我もしなかった。
大太刀を鞘に収める。クラウディアさんの方を見ると、複数のちいさな人影があったので、ぎょっとした。
それもすっと消えていく。
手にしていたのは弓矢に見えた。ということは、アレを使って支援攻撃をしてくれたと言う事か。
「クラウディア、流石。 三年前からずっと腕を上げているね」
「必死だったの。 それよりも、パトリツィアさん、大丈夫?」
「大丈夫です、問題ありません。 それと、パティと呼んでください」
「分かったわ。 パティさん、怪我がないようで何よりね」
にこりと微笑むクラウディアさん。
この人、生半可な射手十人分は働くんだな。
そう思って、パティはライザさんの仲間の凄まじさを、再確認するのだった。
湖畔について、エアドロップを展開する。
その間に、クラウディアさんが集落に行って、色々話をしていた。
集落を見て回っているようである。
パティが見た感じ、エアドロップは更に改善されているようだ。
ぱたぱたと飛び回って、フィーが嬉しそうにしている。
それを見ていると、パティも心が和む。
「戻って来たよ、ライザ」
「どうだった、クラウディア」
「良くない状態ね。 集落で少し前に、支えになっていた戦士が亡くなったらしいの」
「ああ、それで……。 力仕事を一人でやっているのはおかしいと思ったんだよ」
クラウディアさんが咳払いして、どうすべきかを軽く話した。
他の集落の人間を受け入れるか。
それとも、王都から一線を退いた戦士を受け入れるか。
どちらにしても、良い印象がないのも事実だ。
そこで、バレンツ商会で誰かしらを紹介する形を取りたい、という話をするつもりであるようだった。
本当は、こういうのは貴族がやる事なのだが。
連中にそんな事は期待出来ない。
アーベルハイムの領内だったらそれも出来るのだが。
残念ながら此処は違う。
パティが出ると、此処を領地(名目だけだが)にしている貴族が、へそを曲げて更にややこしい事になる可能性が高い。
クラウディアさんがやるのが、一番良いだろう。
「分かった、クラウディア、手を打てるようなら頼むね」
「うん。 封印って、例のものを封じている可能性が高いんでしょう。 だとすると、あまり人ごとでもないから」
「……」
まあ、パティはその例のモノについては教えて貰えないか。
それについては、まだ仕方がない。
とにかく、この人達と一緒に行くしかない。
まだ腕も何もかもが未熟なのだ。
それもまた、仕方がない。
準備が整ったので、エアドロップに乗り込む。クラウディアさんが乗っても、全く大きさは問題がない。
今日はパティの隣はクリフォードさんだ。
昨日はタオさんが隣だったので、すごくどきどきしたけれど。
今日は、そういう意味では自然体でいられる。
なおクリフォードさんはタオさんと遺跡について話していて。タオさんが、何度も感心して頷いていた。
「流石に遺跡に直に足を運んでいる人は違いますね。 もっと色々な話を聞かせて貰いたいです」
「俺の話程度でいいんなら幾らでも良いぜ。 未来の大学者に俺の話を参考にして貰えるなら大歓迎だな」
「そんな、まだこれからですよ」
「ああ、そうだな。 だから必ず大成してくれや」
クリフォードさんは墨を入れていたり、時々ぞっとするような殺気を放ったりする、後ろ暗い所があるようだけれども。
遺跡探索に文字通り命を賭けている子供みたいな人でもあるから。
パティは、そういう面で嫌いにはなれない。
潜水すると、クラウディアさんは凄く嬉しそうに周囲を見回し。
更には音魔術で、エアドロップの機能を支援してくれているようだった。
凄いな。
音魔術で、そこまで出来るとは。
「とても大きな魚がいるわ。 素で潜るのは自殺行為ね」
「攻撃の予兆はある?」
「ううん。 様子からして、此方をエサだと思っていないみたい」
「それは良かった。 そう設計したんだけれども、魚の気持ちにはなかなかなりきれないからね。 水の中で魚を見るのも、あまり経験がないし」
程なく周囲が見えないくらい暗い水位まで潜水し。
そして、移動を開始。
タオさんがナビゲートをして、ライザさんが完璧に操作する。
フィーはライザさんの懐で大人しくしている。
多分だけれども、周囲が危険だと言う事を悟って、静かにしている方が良いと判断したのだろう。
やがて、エアドロップが浮上を開始。
目的地に着いたのだ。
大太刀を手にして、気合いを入れる。
此処からは、ワイバーンとの戦闘も想定しなければならない。
陸に横付けするエアドロップ。荷物を出して、エアドロップを積み直す。
半分浸水している此処は、遺跡の本来のどれくらいの場所なのだろう。封印が後からされたという童歌があるらしいから。
封印部分が沈んでいると言う事は、あまり考えなくても良いとは思うのだが。
ライザさんの指示で、周囲を警戒。
無言で、移動を開始する。
タオさんが、忙しくマッピングをしているので、その分をクリフォードさんが警戒しているようだ。
「少し先に幽霊鎧。 かなり大きいわ」
「見えないと言うことは、奇襲してくるつもりか……」
「そうみたい。 戦闘は避けられないかも知れないね。 数は十四」
「結構いますね……」
ライザさんが手を横に。
頷くと、タオさんが先に前に出る。
周囲を見るが、あまり足場が良くない。足場が良くない場所で、多数の敵を相手にする。
なるほど、そうか。
鎧を着ている相手だから、むしろそれが不利に働くのか。
各個撃破するわけだ。
タオさんが一線を越えると、周囲からざわっと人の気配。
鎧を着た人影が、わらわらと集まってくる。それぞれが、色々な武器を手にしていた。さび付いている斧を手にしている鎧が、一番大きい。あんなの貰ったら、即死だろう。
「侵入者。 殺せ」
「やれやれ、とりつく島もなしか。 排除するよ!」
ライザさんの号令とともに、交戦開始。
流石にこんな所に、生きている人間がいる訳もない。
思い切りやれる。
パティは足場が悪いのを確認して、少し下がり。
突撃しようとして、ぶつかったりする幽霊鎧の醜態を見た。
そして、其処にライザさんの熱魔術が、立て続けに炸裂する。鎧がそのまま、融解する程の熱量だ。
ばたばたと倒れる鎧に、ブーメランが炸裂し、立て直そうとしていた一体を文字通り粉々に粉砕。
本来だったらこれほど脆くは無かっただろうが、経年劣化の結果だ。
更に、クラウディアさんが矢を放つが。
とんでもないサイズの矢だ。
さっきの戦闘では見ている余裕がなかったが、本人が放つ矢は、本来これくらいのものなのかも知れない。
何より立射の姿勢が美しい。
型稽古で知っているが、こういうのは合理的だから型が出来る。
クラウディアさんも、ライザさんの仲間と呼ぶに相応しい実力なのだと、思い知らされる。
ばつんと凄い音がして、巨大な矢が放たれる。
二体の幽霊鎧がまとめて貫かれて、バラバラになって飛び散る。
大斧を手にしている大きな幽霊鎧が、前に飛び出してくるが。
その顔面にタオさんが蹴りを叩き込み、直上に跳ぶ。
それに反応した幽霊鎧に、ライザさんが特大の熱槍を叩き込む。動きが止まったところに、パティは突貫。
片手を、叩き落としていた。
それで大斧を持つ手がバランスを崩し、横に倒れる。
クリフォードさんのブーメランが、串刺しにするようにして倒れた幽霊鎧を粉砕。すぐに幽霊鎧は動かなくなった。
幽霊鎧の残骸を、ライザさんが調べる。
これといって、得られるものはないようだ。
武器の一部を回収したくらい。それも多分、錬金術で鋳つぶしてしまうのだろう。
それ以外は、指示を受けて徹底的に砕く。
大太刀の柄で粉砕して回っていると。
奥の方から、恐ろしい叫び声が聞こえてきた。
「何かいるねえ」
「フィー!」
フィーが警戒しているのが分かる。
だけれども、昂奮して何処かに飛んで行ってしまうようなこともない。すぐにライザさんの懐に戻る。
パティは、まだ周囲の人達にかなり下駄を履かせて貰っている状態だ。今の戦いでも、殆ど貢献できなかった。
だが、焦っても何もできない。
ただ、今は。
ひたすらに、戦いの経験を積んでいくしかなかった。
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