暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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4、星の都に眠る者

朝早くに出て、遺跡仮称星の都に到着。

 

今日も探索範囲を拡げて、問題が無さそうなら遺物を持ち出すつもりだ。流石に此処には、もう所有権を持つ人間はいないだろう。

 

此処で腐らせたり或いは虫の餌にするくらいなら。

 

本は相応に持ち帰って管理した方が良い。

 

それだけである。

 

強力な魔物がいる。湖から上がって来ている様子だ。此処での縄張り争いもしていたのだろう。

 

サメの後には、もう少し小さいサメがいて。それを倒しても、また湖から此方を伺っているサメが見えた。

 

エサ場にするには閉鎖的な空間だが。

 

見た所、鼬の群れが水浸しになっている辺りを住処にしているようだ。サメは、それらをエサにしているのだろう。或いは此処を寝床にしているのかも知れない。

 

物資を詰め込みながら、あたしは撤収を判断。

 

まだ本を物色しているタオと、壁や床をさわりさわりしているクリフォードさんに声を掛ける。

 

遺跡の探索は二人が専門家だ。

 

もう少し遺跡の安全圏を拡げたら、羅針盤をあたしが使う。

 

あたしが主戦力である事は承知しているし。

 

あたしが抜けたら奇襲を受けた場合に被害が出ることも想定しなければならない。

 

リーダーシップを取るという事は。

 

命を預かると言うことだ。

 

それをあたしは理解しているから。

 

常に責任を持って行動する。それだけだ。

 

「もう少し調べたいけれど、駄目かな」

 

「ダメ」

 

「ライザ、時々容赦ないよね……」

 

「タオはこう言うときは、首根っこでもひっつかまないと動かないし」

 

タオがそうされたらたまらないと腰を上げる。

 

背丈は伸びたしガタイも良くなったけれど、ぶっちゃけ格闘戦だったらあたしの方が数段今でも上だ。

 

魔術が誰でも使える時代。

 

男性戦士が女性戦士よりフィジカルが強いとは限らないのである。

 

多分だけれども、クーケン島にいるアガーテ姉さんは、今のタオを腕相撲で簡単に捻るだろう。レントでも勝てるか怪しい。

 

魔術が使える時代は。

 

見かけで相手の戦闘力を判断できない時代でもある。

 

「クリフォードさんも」

 

「分かってるさ。 それにしても、何かあったのか」

 

「……嫌な気配がしてね」

 

「そうか。 それはまずいな」

 

即座に理解するクリフォードさん。

 

それはそうだろう。あたしが魔術師として相応の力の使い手だと知っているからだ。

 

力のある魔術師の勘は侮れない。

 

あたしも、何度も勘に助けられている。

 

「あんたが嫌な気配と言うくらいだ。 今まで倒して来たサメ程度じゃねえだろ」

 

「はい。 もしも相手に敵意があれば、かなり危険だと思います」

 

「なるほどな。 もっと準備をしてきたいと言う訳か」

 

「……」

 

あたしには、この気配が何者かはだいたいわかる。

 

恐らく、精霊王だ。

 

精霊王はまだ此処にいる。

 

或いは戻って来たのかも知れない。

 

精霊王とガチンコして、確定で勝てると言い切れるほど、あたしは自分に慢心していない。

 

レントとアンペルさん、リラさんが此処にいれば話は違っただろうが。

 

その場合も、パティが今度は足手まといになる可能性がある。

 

それくらいの危険な力の持ち主だ。

 

相手の敵意が向いたら、だが。

 

いずれにしても、クラウディアが見つけた鉱石も回収したのだ。今日は成果として充分である。

 

「とにかく、今日は撤収」

 

「しゃあない。 戻るぞ」

 

クリフォードさんも戻る。あたしは最後尾で警戒をしつつ、荷車を引くクリフォードさんを支援。

 

パティは側面について貰って、あたしの支援範囲にいてもらう。

 

前に霊墓で奈落に転落しかけたこともある。

 

そもそもパティが魔物から見て肉的な意味で魅力的に見える事は分かっているので、それもあって警戒はした方が良い。

 

本人も、それを利用できるほど図太くなれば。

 

或いは、凄まじいまでの達人になれるだろうか。

 

今が一番伸びる時期だ。

 

この時期に、死の臭いを嗅ぐことも含め。

 

あらゆる経験を積むべきだと、あたしは思う。

 

黙々と歩いて、湖岸に。

 

クラウディアが音魔術を強めに展開している。あたしの言葉はしっかり聞いていて、それで警戒を強めているのだろう。

 

「向こうは此方をじっと見ているみたい。 ただ、攻撃の意図はないみたいだよ」

 

「了解。 じゃ、相手の気が変わらないうちに今日は撤収といこう。 荷車、エアドロップに積み込んで」

 

「もう少しいたかったけれども、仕方がないね」

 

明日はタオは来られないらしい。

 

学生だ。時間を作ってくれているとは言え、色々と単位を消化しなければならないという事だ。

 

そうなると代わりがほしいが。

 

リラさんに来て貰うのも、ちょっと問題か。

 

アンペルさんは、対人戦は得意だが、リラさんほどの戦闘のスペシャリストじゃない。

 

もしも門を探しに遺跡に行ったら。

 

アンペルさんが自衛出来ない可能性が出てくる。

 

やはり手数が足りないな。

 

そう思う。

 

水中にエアドロップが沈み始めると、此方に向いている意識が消えた。

 

要するに興味を失ったと言うことだ。

 

クラウディアも同じ事を言う。

 

パティが、どっと疲れたようだった。

 

「大丈夫、パティ」

 

「ライザさんが撤退を即断するような相手の注意を惹いていたと思うと、緊張して……」

 

「明日も探索する以上、相手の意識はこっちに向くだろうね。 出来れば敵対はしたくはないけれど」

 

気が重そうなパティ。

 

貪欲に戦闘技術を学んでいるパティも、流石に度が過ぎた相手は怖いと思うのだろう。

 

その気持ちはわかる。

 

だから、あたしはパティに何か言うつもりはなかった。

 

 

 

(続)




原作では、この遺跡から急激に探索が大変になってくる湖底の遺跡。

この星の都「仮称」で、ライザは更なる調査を進め。

パティは剣士として、才能を花開かせていきます。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

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