暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
セリが無言で歩いていると、懐かしいオーレン族の魔力を感じた。
王都の外で食糧は調達し。
自身は畑を借りて、そこで植物の研究をする毎日。
それに、だ。
錬金術師を見かけた。
そいつについても、調べておきたかったのだが。
今の時点で、悪い評判は聞かない。
錬金術師といえば、古代クリント王国とこの世界の人間が呼んでいる時代からろくでもない連中ばかりだった。
その時代に此方に来てから、何人も錬金術師を見てきたが。どいつもこいつも、世界を滅ぼしかけた「自称優秀な人間」と同じ輩だった。
何人も殺した。
今度もそうするかもしれないと思って、調査をしていたのだが。
どうも手練れが周りに多くて、仕掛ける機会がなかなかなかったのだ。
それもあって、周囲を彷徨いて調査していたのだが。
オーレン族が、近付いてくる。
かなりの手練れだ。
移動する。
農業区に行く。
こっちの方が、戦いやすいし。
植物を用いた結界を作りやすい。
殆どの畑が放棄されてしまっているという事もある。大量の植物があるから。それはセリにとっては武器にも盾にもなる。
農業区。
既に夜で、ただでさえ人はいない。
向こうを警邏らしい灯りが通って行くが、セリに気付いている様子もない。
月も雲に隠れてしまっていた。
追いつかれた。話しかけられる。
「オーレン族だな」
「そうよ」
「……戦うつもりはない」
「そう……」
相手はフードを取る。
そうされたなら。此方も取るのが礼儀だ。
最敬礼をかわす。
そして、互いに挨拶した。
相手は白牙氏族のリラ=ディザイアス。白牙氏族と言えば、武闘派としてセリも知っている。
ただ、あのフィルフサの大攻勢を生き延びられたのだろうか。
それが不安ではあったのだが。生き残りがいたのか。
「まさか白牙の戦士が生き延びていたなんてね」
「此方に来たのは六十年ほど前だ。 其方は」
「あの古代クリント王国とやらが、オーリムを滅茶苦茶にした少し後」
「そうか……」
戦意がないなら、別に構わないか。
此方の人間に飼い慣らされているとか、そういう懸念もあった。
セリは知っている。
古代クリント王国の人間よりも、もっと前。
神代とか此方では呼んでいるのか。
その時代には、オーレン族が此方の世界の人間と苛烈に争った。そして、その中で、さらわれる者が出た。
さらわれたものは、二度と帰って来なかった。
恐らくは、生体兵器の素材にでもされてしまったのだろう。
そう、長老が。
オーレン族全ての長老が嘆いていたのを、覚えている。
「今私は、人間の錬金術師とともに行動している。 本来なら錬金術師など皆殺しにしてやりたい相手なのだが、こいつが変わり者でな。 古代クリント王国が開いた門を全て閉じるために動いている」
「信じがたい話ね」
「既に数十を閉じた」
「何……」
白牙の氏族は、特に嘘を嫌うと聞いている。
それがこんな事を言うとは思えない。
挨拶の仕方もしっかりしていた。
六十年前に此方に来たと言うなら、そんな程度の年月で此方に染まるとも思えないし。
オーレン族にとっては、たった六十年だ。
「我々が三年前に協力した錬金術師ライザも、今ここに来ている。 何かしら、ろくでもないものが封じられているという可能性が浮上してな」
「……」
「良ければ、ともに行動しないか。 我々でも、ライザでもかまわない」
「考えておくわ」
礼をすると、そのまま別れる。
リラという戦士も、追ってくる事はなかった。
まずは、考える時間が欲しい。
錬金術と、オーレン族が一緒にいるだと。しかもあの忌まわしい門を閉じるために動いているというのか。
洗脳されている可能性を考慮したが、六十年前に来たとリラは言っていた。
だとすると、今の時代の人間では、リラには勝てないだろう。最強の戦士が出て来て、どうにかというレベルだが。そんなのを、たくさん集める事は無理だ。
既に強力な錬金術師がいない事も確認している。
数百年前にオーリムに攻めこんできた連中は、恐ろしい武装をしていた。伝承に聞く千年前の神代のは更にその上を行く武装をしていたという。
だがそんなものは既に朽ち果てている。
だとすると、リラは嘘をついていないと結論出来る。
そんな錬金術師がいるのか。
此方の世界の人間は、極めて知能が劣悪だ。これだけ巨大な社会を作っているのに。
都合が良いときばかり本能を肯定して動物的であろうとして。
都合が悪くなると、社会から受ける恩恵を得たいがために、社会の一員である事を主張しようとする。
オーレン族は原始的な生活こそしているが、スペックは此方の人間とは比較にならない。
だから、此方に来てすぐに此方の人間がいつまでたっても微塵も進歩出来ない理由を悟ったセリは。徹底的に此方の人間を軽蔑していたのだが。
嘆息する。
いずれにしても、門でも開かれたら困る。
リラが一緒にいる錬金術師はいいだろう。多分、ライザというのは見かけてあわよくば首を取ろうと思っていた錬金術師だ。
接近するのにリラの名を出せば丁度良いか。
もしも其奴が、オーリムに攻めこもうと目論んでいる輩だったら。
禍の芽は、早めに摘む。
そう、セリは決め。
接触について、いつどこで行うか。考え始めていた。
(続)
セリさんのライザに対する殺意は、原作でもリラさんが指摘している事です。
まあオーレン族からすれば、当然の懸念、当然の憎悪ですんで仕方がないですね。
ともあれ、探索も第三遺跡の調査を終了。
第四遺跡の調査の準備にライザは取り掛かります。
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