暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
そこは、ロマンの塊みたいな場所だった。
おおと、声が上がるクリフォード。
同じく隣で、眼鏡を曇らせてタオがおおっとか声を上げている。
「遺跡だ! カンテラが必要ないくらい明るい場所も多い!」
「すげえぞ。 この建築様式……かなり古い!」
「古代クリント王国以前のものですね。 これはひょっとすると、星の都よりは新しいものの、例の封印に関連する、リアルタイムで動いていた遺跡かも知れないですよクリフォードさん!」
「だが、それでも多少様式が違うな!」
スイッチが完全に入ったクリフォード。
これでも色々な遺跡でトレジャーハントしているのだ。
タオほどの専門知識はないが、遺跡にロマンが溢れていることだけは分かる。
ただ、危険な臭いがプンプンした。
彼方此方に彷徨いている幽霊鎧。現役のようで、巡回をしている。
それがちゃんと動いているものだったら大丈夫だったのだろうが。
恐らく、あれは機能が壊れて。
ただ盲目的にこの遺跡を守るガーディアンとなっているのが実情だろう。
ライザが何かの道具を彼方此方に配置し始める。
それは灯りを発生させる装置なのだと分かった。
更に周辺が明るくなり、見えてくる。
流石に遺跡の中に飛び出すほど、クリフォードも命知らずじゃあない。トレジャーハントをする過程で、散々危険な目にもあったからだ。
此処までに三体の大型ゴーレムを倒した。
時間的にも、そろそろ夕方になる頃だ。撤退しないとかなり危ないと判断して良いだろう。
帰路にルートを示すための印を入れていく必要もある。
撤退の時分だ。
だが、それでも少しでも此処にいたい。
うずうずする。
「タオ、此処から見える範囲のマッピングをよろしく。 なんだろうあの植物……」
ライザが呟く。
巨大な地下空間にある遺跡。
それは石造建築ではあるのだが、彼方此方に変な色の川みたいなのがある。
地下水脈は普通もっと澄んでいるものなのだが。
あれは明らかに、変な色に濁っていた。
それだけじゃあない。
ライザが呟いたように、こんな地下なのに、奇怪な植物が蔓延り。木みたいなのまで生えている。
オブジェだとは思えない。
魔物の一種である事も、想定しなければならないだろう。
手をかざして、今まで見てきた魔物のデータと照合する。遺跡探索の過程で、レアな魔物と遭遇する事も多かった。
遭遇した後は調べた。
殆ど記録にない魔物と遭遇したと後で分かった事も多い。
あれが魔物だとしたら。
トレントか。
いや、違う。
植物の王ともいわれる魔物だが、あれは深い森に生息するものだ。
マンドラゴラか。
いや、それも違っている。それもどちらかというと、潤沢な光を必要とする。エサとして動物を襲う種類もいるが。あくまで補助であって、エサの基本は光と水だ。
他にも何種類かの植物の魔物を想定するが、どうにもぴんと来ない。
あるとしたら、魔食草。
魔力を喰らって際限なく大きくなり、その成長スピードから嫌われる植物だが。しかし、地下で育っていること。これだけの巨大遺跡を覆い尽くすほどいる事。これがよく分からない。
魔食草も、結局は光を必要としているのだ。
この繁殖ぶりは異常である。
「よし、道は確保できた。 一度撤退。 この遺跡、嫌な予感がビリビリする。 レントが撤退するわけだよ」
「こんな恐ろしい場所に一人で来て、生還出来ただけでも凄すぎてめまいがします……」
「パティ、ライザと一緒にいると、この程度では怖がらなくなれるよ」
「それはそれで、人間を捨てているみたいでちょっと……」
タオの慰めも、パティに必ず効くわけでもないのか。
微笑ましいな。
そう思いつつ、クリフォードは見解をライザに話しておく。
帰路で幾つかの見解を述べたが。
ルートを確定させるために、用意してきた光を放つ塗料を岸壁に塗りながら、ライザは小首を傾げる。
「確かにどれも条件と一致していないですね。 マンドラゴラはあたしも素材として錬金術で使うので、なんとなく分かるんですが……」
「俺は魔食草が一番近いと思うが、それにしてもあれはおかしい。 繁殖ぶりが、まるで遺跡を丸ごと喰らっているようだ」
「亜種の可能性はないですか?」
クラウディアが言う。
ライザとツーカーの動きをしている。
ライザにぞっこんだな。
これでどちらかの性別が違ったら、どっちも幸せだっただろうに。そう思って、クリフォードは世の中上手く行かないものだなと内心で呟いていた。
「とにかく調べて見ないとわからねえ。 一応サンプルは少しだけくすねてきた」
「流石ですね。 僕にも少しください」
「分かった、渡しておく」
「セリさんはどう思います?」
ライザの言葉に、セリは首を横に振っていた。
分からないと言う。
「私は一万五千種類ほどの植物を知っているけれども、どれとも該当しないわ。 光が届かないこの場所で、此処まで大きくなれる植物は限られるほどしかないし、そのどれともあれは該当しない」
「一万五千……」
「植物学者になると、千種類知っている程度では話にならないんだよ、パティ。 でも一万五千種類となると、並みの学者では歯が立たないだろうね」
「つ、ついていけない世界です」
想像以上に凄いな、セリは。
そう思いながら、クリフォードは確信する。
あの遺跡との融和ぶり。
恐らくだが、あの植物は人工的に作られた変種だ。
タオに、小声で警告しておく。
「危険なサンプルの可能性がある。 いざという時には即時で焼却処分した方がいいだろうと思う」
「はい、分かっています」
頷く。
そして、帰路を急ぐ。
収穫は多く、童心に帰れる素晴らしいロマンを満たしてくれる遺跡を見つけた。
だが、同時に。
其処は全身の危機意識を喚起する、極めて命が簡単に吹き飛ぶ場所でもあるのだった。
(続)
鉱山の奧にはやはり遺跡がありました。
どうにか到達はできましたが……
原作をやっていると分かりますが、この遺跡、とにかく面倒な場所です。原作で一番面倒な遺跡かも知れません。
本作でも、原作とは違う方向で面倒な場所として描写していきますので、お楽しみに。
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