暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
ライザは、出来る事を対応します。
現時点では対処療法にしかならないとしても。
少なくとも、錬金術で出来る不幸の解決は、ライザはするつもりで王都に来ています。
遺跡から戻る。
大きな橋を渡って、今度は工房だった辺りを掃討作戦開始した。この辺りも幽霊鎧やゴーレム、何よりも魔食草もどきがいる事もあって、どうしてもクラウディアの音魔術が必要で。
毎回が厳しい戦いになった。
今日も大きなゴーレムとの戦闘になり。
パティがもろに拳の直撃を受けかけたのだが。
紙一重で……いや髪を数本散らせながらもかわしきって、完璧なカウンターでゴーレムの腕を叩き斬った。
あたしが渡したばかりのネックレスの力もあるが。
それ以上に、剣腕がどんどん増してきている。
ギリギリの力量差の相手との連戦が効いているのだ。コレに加えて、パティは家でも鍛錬をしていると見て良い。
実戦での経験と、訓練での経験。
どっちも伸びる力が違う。
本当に、大まじめに訓練しているんだな。
そう思うと、本当に頼りになる後輩だと思うし。
今後、あたし達に並ぶ使い手にもなれると思う。
ゴーレムの中には、人型をしていないものも増えてきており。対処はそれぞれによって変わってくる。
戦闘は苛烈さを増して。
あたしも手傷を貰う事が、ちらほら出始めていた。
アトリエに戻ると、解散となる。
今日はクラウディアが残る。そういえば、朝のミーティングの時に、後で話があるといっていたっけ。
お茶を出して、菓子をぱくつきながら聞く。
蜂蜜が濃すぎて、ちょっと甘いけれども。まあこのくらいなら、許容範囲である。
「それでクラウディア、どうしたの?」
「前から話していた機械の修理、ライザの作った品を見せて、許可を貰ったの」
「!」
「いろいろ利害関係の調整とか大変だったの。 機械そのものはもう動かなくなっているから、それを修理してくれる?」
もちろんだ。
構造を覚えてしまえば、量産だって出来る。
人間の文明は後退する一方。
テクノロジーは特に悲惨で、古代クリント王国以降、人間は進歩というものを一切していないのが現実だ。
すぐに工業区に出向く。
パティが声を掛けて、傭兵らしいのが数人来ていた。多分、余計なトラブルを避けるための人員だろう。
強面のが何人かいるが。
実際の実力は、あたしにもクラウディアにも遙か遠く及ばない。
ただ、人間の価値は見かけだけとか考えているような猿の同類には、それで充分。そういうのはかなりの数が現実にいるので、これは効果がある。
それだけの話である。
工業区の奧に、寂れた大きな建物があった。
夕方で、周囲に魔術の灯りが灯されているが。それすらもちょっと怪しい感触である。
中に入ると、なんだかいじけた感じのおじさんがいて。
クラウディアを見ると、むっすりと礼をするのだった。
「クラウディアです。 それが例の機械ですね」
「ああ。 俺の家族を……いや一族をずっと支えてくれていたが、それも動かなくなっちまったがな」
「此方が話に挙げたライザです」
「そうか。 なんでもこの間、空を真っ赤に焦がした大魔術師さんだって? へへ、宮廷魔術師でも機械を直せないのに、あんたにどうにかできるのかね」
「……」
酒臭いな。
まあ、それも仕方が無いか。
この人が直面しているのは、間近な絶望だ。
そんなものに遭遇すれば、それは壊れるのもやむを得ない。
家族も離散してしまったのだろうか。
まずは、機械を見せてもらう。
それなりに大きな建物の中は酒臭く。広くても、家具も何もなかった。ほとんど売り払ってしまったのだろう。
今は、酒びたりで生きているのが精一杯と言う事だ。
なるほどね。
これは恐らくだが、製本のための機械だ。
今の時代、均等な文字をゼッテルに書き出す機械は、かろうじて少しだけ残っているらしい。
活版印刷とかいうそうだ。
その活版印刷の装置も劣化が激しいらしく、クラウディアに出来れば直したいと話は聞いているが。
完全に壊れている機械の修復の方が、先にやった方が良いだろう。
ネジなどが潰れかけている。
修理しようと、散々四苦八苦した痕跡がある。あたしが簡単にばらしていくのを見ると、男は酔眼で煽ってくる。
「なんだあ。 随分と手慣れているなあ」
「ペチクラさん」
「……分かってる。 あんたの大事な客なんだろ。 だが、俺にはもう失うものなんてないんでな……」
クラウディアの声、今本気で冷えていたな。
あたしに対してセクハラまがいの暴言でも吐こうものなら、多分即座に殴り倒していたのだろう。
今のクラウディアは、強力な弓を散々引いていることもあって、下手な男なんて歯牙にも掛けない程度の腕力がある。
こんな酒浸りのオッサン、本気で殴れば一発であの世行きだ。
「なるほど、この辺りが駄目になっているんですね……」
「分かるのかよ」
「分かりますが」
「……」
このおじさんと話しても意味がない。
クラウディアに、ばらした部品を持ち帰って良いか確認。いいと許可が出たので、すぐに持ち帰る。
まず最初にやるのは、同じものを念の為に生産すること。
ばらした部品を確認して、その本来の用途をチェックしていく事だ。
そして、釜にエーテルを満たし。破損部分を修復していく。
こう言う部品は精密機器だ。
実際に修復してから、組み合わせてみて。動くか確認する必要がある。
あたしは元々古式秘具を修理したときもそうだが。
こういうのの空間把握に才能があるらしく。
この手の作業は、殆ど苦にならない。
フィーが側で、じっと見ている中。修理を淡々と済ませていく。
しばしして。
ネジなどの部品は完成。
問題は動力だ。
この機械は、大気中の魔力を吸い上げて動く仕組みになっている。
もっと大きな機械になると、石炭をくべたりして動かすらしいのだけれども。この機械に関しては、そもそも大気中の魔力で出力が充分と言う事なのだろう。
いずれにしても、これらが修復できない要因。
細かいパーツを今の鍛冶では作れないという事もあるのだが。
そもそもパーツの材質が錬金術由来だったりするので。
文字通り、今の技術ではどうにもならないのだろう。
百年前に、ロテスヴァッサで馬鹿をやらかそうとしていた錬金術師どもも。或いは最初は、こういう機械を少しでも直して、生活を復興させたいと思っていたのかも知れない。ただ、それも最初だけ。
錬金術がもたらす凄まじい利益に目がくらんで、あっと言う間に腐り果てたようだが。
一つずつ修復していく。
本を閉じるための機構も、敢えて複雑に作られているし。一部には錬金術のパーツが使われている。
劣化も酷い。
これは修理のしようが無かった訳だ。
一つずつ、確実に修理していき。
やがて、全てが仕上がる。
くみ上げる。
動かして見る。
ゼッテルと装丁用の分厚い表紙を使って、本が作れるかどうかを確認。このゼッテルにしても、大量生産の機械があるらしいが。今はもう、殆ど現役で動いているものはないそうだ。
「よし……」
動く。
本がしっかり装丁されて出来ていた。
ぴかぴかだ。
機械の錆も、全て取っておいた。
後は再度分解して、現地で組み立て直すだけ。明日の朝、遺跡に行く前に、皆の立ち会いでそれはやろう。
そうあたしは決めると。
フィーを抱きしめる。
そろそろ夜も遅いよ。
そう、視線が告げているのを、あたしは気付いていた。フィーはこういう所で、あたしをしっかり支えてくれている。
「ありがとうねフィー。 じゃあ、もう寝ようか」
「フィー!」
さて、すっきり錬金術で作業もした。
あたしは、機械関係ではバレンツと連携して動いている。それを事前に示してあるので、貴族も介入できないし、オフレコで動いてくる奴もいない。
機械が動かなくなって、生活が出来なくなっている人間もいるかも知れないが。それらの全員をあたしが救えるわけでもない。
勿論可能な限りは救うが。
そういう善意につけ込もうとするカスがたくさんいるのも、あたしはクーケン島で散々見て来た。
伸びをすると、休むとする。
明日も忙しくなる。
だからこそに、やるべき事は、しっかりやっておくべきだった。
朝のミーティングを終えると、タオにも機械の修復にだけは立ち会って貰う。なお、今回はボオスにも足を運んで貰った。
タオは昨日から本格的に授業を進めて、更に持ち帰った資料の確認もしてくれているらしい。
こういう資料には、そもそも客観的な視点からの調査が必要で。
どうしても主観的な情報が書かれているのを、他の資料と示し合わせて、正しいか確認する必要があるという。
良くいる、史書とされるような書物の記述を丸呑みにして信じ込むような学者は、三流も三流。
その史書が二次資料以降だった場合は、やるだけ無駄だとタオは厳しい事も言う。
タオは学者としては、普段の温厚な性格が消え失せたように厳しい言動をする。
それがまた、既にタオが学者としては一人前以上だと言うことを示してもいるのだろう。
荷車に機械のパーツを積んで、現地に。
途中で、アーベルハイムのメイド長が来て合流。
パティが、申し訳なさそうに言う。
「実はバレンツ商会経由でうちにも話が来ていまして。 他の貴族の介入を避ける為にも、すくなくともアーベルハイムの執務を取り仕切る彼女が立ち会うようにとお父様が」
「別に良いよ。 クラウディアも、アーベルハイムとの面倒な政治的なアレコレ、やってくれたんでしょ?」
「そうだよ。 本当に大変だったんだから」
「そんなんだからこの王都、井戸の中なんだよ。 風通し悪……」
ぼそりとぼやく。
城壁の外は魔物だらけ。街道もまともに守れず、食糧生産の要である農業区を軽視しているような場所だ。
良い印象なんて微塵もない。
鉄面皮なメイドさんも、流石に苦笑いしたのだろうか。
ほんのちょっとだけ、表情が動いていた。
途中で、バレンツの護衛の傭兵も参加する。
こっちは本物の腕利きか。
見た感じ、昨日の強面なだけの連中とは違うようだ。
更に、数人の商人も来ている。
いずれもが、バレンツではない商会の人間らしい。
クラウディアが、よそ行きの様子で話をしている。
「此方のライザリン=シュタウトが……」
「流石だな。 つけいる隙が見えねえぜ」
「商売の話しているときのルベルトさんとそっくりになってきているね」
「ああ。 いずれクーケン島で商売をする事があるだろうが、一秒も気が抜けねえだろうな」
ボオスがぼやいた。
ともかく、現地に到着。
家の中の商人は、酒を無理に抜いたのだろう。青ざめて、隅で突っ立っていた。
多分この家も、資産も、既にバレンツに抑えられているのだ。
「ライザ、機械の組み立てと稼働をお願い出来る?」
「任せて。 タオ、ボオス、手伝ってくれる」
「任せて」
「俺は細かい作業は苦手なんだがな……」
それでも問題ない事を見せる必要がある。実は最初はパティに手伝って貰おうかと思ったのだが。
流石にこういう公式の場で、それはまずい。
商人達が見ている中、機械の組み立てを行う。
新品同様になっていること。
動力源が再稼働状態で、脈打つようにして周囲の大気中の魔力を取り込んでいる事を見て、商人達からどよめきの声が上がる。
「こ、これは本当の事なのか。 機械が修復された事例は、ずっと起きていないと聞いているが」
「共食い整備に成功した例は百年以上前にあるらしいが、それも部品の再生産なんて出来ない今は、それすら例がないと聞くぞ。 どうやって……」
「はい、組み立て終わり」
更にどよめきが上がる。
そして、装丁用のゼッテルと表紙を、青ざめている本来の機械の持ち主に渡す。頷くと、手慣れた様子で。
それこそ、ずっとこの一族を助けてきた機械に、持ち主は触る。
そして、機械が動いた。
スムーズに、本が装丁される。
おおと、声が上がっていた。
「き、奇蹟だ! ずっと機械が直ることはなかったというのに!」
「百年来の事だ!」
「お静かに」
クラウディアが手を叩くと、全員が黙る。この迫力、確かに敵に回したくはないものだな。
アーベルハイムのメイドさんは、じっと目を細めて様子を見ている。多分これは、あまり好意的な視線では無いなとあたしは思う。
みんな同じ姿をしていることも、異常な高スペックもあり。このメイドさんの一族、多分何かあるのだと思う。
その何かが具体的に何なのか、危険なのか安全なのかは分からないが。
あたしに対しての、警戒は伝わるのだった。
「ペチクラさん。 以降、仕事はバレンツから回します。 借金の返済については、指定の書類通りにお願いします」
「わ、分かった。 昨日はその……疑ってしまって、済まなかった! あんたは神の化身かなにかか」
「ただの人間です」
感動したのは分かる。
だが、面と向かって褒められて。それで調子に乗るようだと、人間はダメになる。
あたしはそれを良く知っている。
だから、明確にその褒め言葉に対しては否定で返していた。
クラウディアが咳払い。それで、また皆が背を伸ばす。
最大規模の商会の令嬢と言う事もある。
クラウディアは、既にその辺の商人では、及びもつかない立ち位置にいる。それが良く伝わる。
「他の機械も、修理の目処が立ち次第、このライザリン=シュタウトの手で修復をいたします。 それまで、軽挙妄動は控えるようにしてください」
「わ、分かった」
「それでは解散とします」
アーベルハイムのメイドさんも、他の商人もわらわらと散って行く。
泣いている機械の持ち主にも聞こえないように、外に。
そこで、やっとボオスが肩の力を抜いてぼやいた。
「どんどん人間離れしていくなお前。 機械の事は俺も聞いているが、本当にこれは歴史的な快挙だぞ」
「人間のテクノロジーがそれだけ衰えているんだよ。 古代クリント王国の滅亡以降は、加速度的にね」
タオが補足。
本当だったら、あたし以外でもこれくらいは出来る錬金術師は、今までいたはずだ。
だけれども、どうせ皆ろくなことをしなかったのだろう。
ロテスヴァッサに集まった連中のように。
むしろこういう機械が直ると、自分達のありがたみがなくなるとまで思っていたのかもしれない。
これだけ人類が追い詰められている世界なのに。
本当に度し難い話だ。
パティが嘆く。
「それまで、職人や鍛冶師は何をしていたんでしょうか……」
「パティ、それは違うよ。 あの機械はばらしてみて分かったけれど、中枢に錬金術が噛んでるんだ。 殆どの機械がそう。 この世界でのテクノロジーの進展は、古式秘具や今の機械を見ても確信できた出来たけれども、錬金術が噛んでいるんだよ。 それが古代クリント王国の破滅で壊滅的なダメージが入って、根本からぼっきり折れたんだ。 それ以降は人間の文明の持つパワーそのものが低下して、復興どころじゃなくなったんだよ」
そういう意味でも、古代クリント王国の錬金術師達の罪は重い。
比較的新しい都市であるサルドニカですら、持ち込まれている機械は錆だらけという話である。
この世界は、終焉が見えているのだ。
誰かが立て直さないと、本当に近いうちに魔物に圧殺されて人類は滅びる。
或いは門を封じている聖堂が壊れて、フィルフサがなだれ込んでくるかも知れない。
そうでなくても、全ての機械が壊れたときに。
文明は、相当な後退を余儀なくされるだろう。
いずれ、工業で今の機械を動かしたり、生産出来る時代が来るかも知れないが。少なくとも、それまでは誰かが機械を直して、文明を立て直す時間を作らなければならない。
あたしだって、滅びるつもりは無い。
「さて、僕は学園に戻るよ。 パティ、夜にはまた家庭教師をするからね。 宿題はしっかり終わってる?」
「はい。それは勿論です」
「タオ、じゃあ今のうちに調査もヨロシクね」
さて、此処からだ。
遺跡に向かう。
職人達が実際に使っていたらしい工房の跡地は、居住区ほど広くはないものの、入り組んでいる上に、壊すとまずそうなものが幾つもある。
その中で、魔食草や、幽霊鎧、ゴーレムをいなしながら戦闘をするのは難事だ。
少しずつ、戦いやすい場所に敵を可能な限り引きずり出して戦う必要がある。
大規模破壊を行う爆弾も使いづらい。
それでも、クラウディアの音魔術が奇襲を防ぎ。
あたしがピンポイントに敵を熱槍で貫き。
危険な敵を引きずり出して、囲んで叩き潰して。
確実に敵の頭数を減らしていく。
幸い、敵は殆ど壊れてしまっている。自分の担当範囲以外には、ほぼ興味を見せないくらいに。
少しずつ、確実に安全圏を増やしていく。
この遺跡調査は、長期戦だ。
もう街道の魔物駆逐から、一週間以上は経過している。これで半分行っただろうか。
そう思うと、あたしは。
今回も、やはり一季節まるまる事態を収束させるまで掛かるだろうな。
そう覚悟を決めるのだった。
どうにか今日の目的範囲の魔物を掃討。
大きく嘆息しながら、クリフォードは腰を下ろしていた。周囲の者達も、めいめい休んでいる。
明らかに、疲れやすくなってきている。
どれだけ鍛えていても、やはり体は二十歳をピークに衰えが始まる。クリフォードも、二十歳の坂を越えたのはだいぶ前だ。
それを考えると、周りに弱音は見せられないが。
同時に、体に無理もさせられなかった。
ただ、戦いに意味はある。
今やっている事は、安全圏を確実に拡げる。
堅実なやり方だ。
クリフォードは今まで、単騎で遺跡探索をしてきた。トレジャーハントも。
たまに、傭兵を雇う事もあったが。
これほどの英傑精鋭が揃うチームに加わったのは初めてで。むしろ胸を借りるつもりで、新鮮な気持ちでトレジャーハントが出来る。
それはとてもロマンを刺激される。
生きているとすら、感じる程だ。
自分のやり方だけが正義ではない。
そんな事は分かりきっている。
正義なんてものは相対的な価値観でしかない。
それも分かりきっている。
勿論、無為に弱者から搾取しないとか。弱者を虐げないとか。そういった普遍的な正義はある。
どんな道徳論も基本的には決まっていて。
殺すな、奪うな、犯すなの三則があるとか、何かの本で読んだっけ。
確かに全くその通りだとクリフォードも思う。特に強い立場の人間がこの三つの蹂躙を平気で行った時代のピークが古代クリント王国で。
それが故に、その負債で今も人類は破滅への坂を転げ落ちているのだろうとも。
だが、同時に。
此処に今、ライザという希望がある。
錬金術と言う学問を、最大限建設的に生かしている。
それだけじゃあない。
本人は鈍っていると口にしているが。それでも王都にいる学者なんかよりもずっと柔軟な頭と。
ずっと強い力を持っていて。
それで意図的に弱者を虐げるような真似はしていない。
それどころか、こんなロマンに触れさせてくれてもいる。
これは、とんでもない逸材に出会えたな。
そう、クリフォードは思うのだ。
後は、この輝く光が、落ちないように周りで支えていくしかあるまい。
人間は悪さをするときと、ズルをするときに一番頭が良く働く。その轍を。この輝ける希望の光に適応させてはいけないのだ。
「クリフォードさん、休憩は大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないぜ。 それよりも……」
「私は、大丈夫です」
パティが立ち上がる。
さっきかなり大きいのが擦って、右の二の腕の辺りをごっそり抉られた。
カウンターの実戦投入をしてから、相手の攻撃を見極め損なって、貰う事が増えるようになってきている。
だけれども、こうしないと体で覚えない。
ライザの薬であっと言う間に傷は回復した。本来なら一月……下手すると一生ものの傷になっただろうに。
ただそれでも痛みは凄まじかったらしく、まだ少し顔が青い。
しかしながら確実に腕は上がっていて。
カウンターも傷つきながらも、しっかり入れていた。
「よし、安全圏を拡大するよ。 タオに徹底的に調査をしてもらう間に、あたし達で出来る事は増やしておかないと」
「それにライザさんが羅針盤を使ってあの状態になると危険ですし、それまでに出来るだけの事はしておかないと、ですね」
「そういうこと」
「ふふ、パティさんもぐっとしっかりしてきたね。 私も負けていられないな」
くすくすと笑うクラウディア。
あからさまにクリフォードを最初警戒していたが、少しずつ警戒を解いてくれている。
これは、負けてはいられないな。
そう、クリフォードも奮起するのだった。
セリは。
相変わらず寡黙に、淡々と戦っている。そういえば、倉庫で植物の種を見つけた時に、ライザから譲り受けていたっけ。
今一番危ないのは此奴かも知れないな。
そうクリフォードは思いながら。幽霊鎧を発見。
交戦体制に入っていた。
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