暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
皆が戦っている間。
タオは授業をこなしつつ、同時に調査も進めていた。授業以外の時間は、ずっと本とにらめっこ。
図書館にも足を運び。
そこで分厚い本を、凄まじいペースで読み進めていく。
タオは身体強化の基本的な魔術を使っているが、それを独自発展させて、脳に作用させている。
その結果、圧倒的な記憶速度と、文字の読解速度。複数種類の文字を解読出来る頭の回転を手に入れている。
天才とか言われているが。
実際には、タオは魔術で自分の頭脳を強化しているだけだ。
ただこの魔術による強化は、三年前の一夏の出来事で、鍛え抜いたから出来る事。
今ではあの時の伸び幅を戦闘にも知能活動にも使えるようになっている。
素でのタオの頭脳は、とてもではないけれども今とは及びもつかない程しかない。でも今の、魔術込みでの頭脳は。
王都という腐った井戸にいるどの学者などよりも上の自信がある。
ライザには言っていないが。
実は、この間王族を見た。
ろくでもない連中だと一目で分かった。
無駄に飾り立てた動きにくそうな服を着て、それで威厳が保たれると思い込んでいるだけのボンクラ。
周囲の貴族も無能だが。
その筆頭があの者達だ。
そもそも実効支配地域が王都しかないのに、何が王族貴族だか。
タオも身内以外にそれを言うつもりは無いが。
少なくとも、此処では得られる知識を得る以外で、価値を見いだしていない。
戦禍に踏みにじられなかった本がたくさんある。
それだけだ。
「……」
「タオさん?」
「あ、ごめん。 ええと……カリナさんだね」
「はい」
気が弱そうな女子生徒。植物学を専任している。
タオがいなければ、秀才の名を恣にしていたらしいと言われている人物だが。タオにはあまり興味が湧かない相手だ。
一応、普通に接するが。
こんな風に女子生徒がよってくるのは、実の所煩わしい。
パティのようにしっかり話を聞いて真面目に勉強する人間だったら、別に側にいても問題は無いと思うのだが。
この手の女子生徒は、どうも別の目的があるように思えてならないのだ。
タオはどちらかというと、虐げられる側だった人間だった。
ボオスと和解するまでは少なくともそうだった。
今では背も伸びて、学業でトップ。この街の戦士くらいだったら、余裕で畳めるくらいの剣腕もついて。
少なくとも虐げられる側ではなくなった。
貴族の子弟とかがタオに嫌がらせをしようと目論んでいた時期があったらしいが。
外でタオが武勲をあげた事。それも何度も。
アーベルハイムがタオに対してコネを持とうと積極的になった時期を境に、その手の奴らは周囲に姿を見せなくなった。
いずれにしても警戒はしてしまう。
「実は、これが分からなくて。 ライザさんに、頼んで欲しいんですけれど……」
「ボオスはいなかった? 僕はしばらく忙しいから、ライザ関連の窓口はボオスに頼んでいるんだけれど」
「ご、ごめんなさい。 ボオスさん、ぶっきらぼうで怖くって……」
「確かにボオスは口が悪いね。 でも、しっかり自分のミスを認めて努力出来る努力家なんだよ」
これは今の、嘘偽りない評価だ。
ボオスはライザの事故があってから歪んだけれども。
それでも、今はしっかり関係を修復できた。
それだけで凄い。
そうでなければ、今頃お山の大将として、クーケン島で誰からも嫌われていただろう。
「分かった。 僕からボオスには言っておくよ」
「ありがとうございます。 タオさんは、ずっと勉強していますね」
「今はとにかく、忙しいからね。 遅れは取り戻しておかないと」
「……」
一礼すると、カリナは行く。
糖分が足りない。
そう判断すると、菓子を口に入れ。そして本を読み進める。
気がつくと夕方だが。目的にしていた本は全て読み終えた。図書館に本を返して、ついでに寄贈の手続きをする。
大量の古書を持ってくるのに訝しんでいるが。
今、遺跡を友人と探索していて、そこで見つけていると説明は毎度する。
アーベルハイムと連携している事も告げてあるので。
司書はそれで、書物の受け取りをしてくれるのだった。
その後は、ライザの宿に移動。
既に皆揃って、ミーティングをしていた。
パティはタオを見ると、すっと表情が明るくなる。タオも、しっかり宿題をしてくれるパティは教えがいがある。
すぐにミーティングに加わる。
カリナさんからの依頼は、ライザに伝えておく。
ライザは頷くと、本題に入っていた。
「鍛冶地区の掃討作戦は、後二日くらいだね。 中央にある大げさな装置は大型のゴーレム数体が守りを固めているから、あれを駆除する時は総力戦になると思う」
「じゃあライザ、悪いけれどその間は僕は調査を続けるよ」
「何か分かった?」
「例の歌詞について調べているんだけれども。 この王都が古代クリント王国に落とされたのは、だいたい六百五十年ほど前だと分かってきたよ。 その時に、相当な規模の略奪と焼き討ちがあったらしくって、貴重な資料が多く失われたようなんだ。 その欠けた部分を今必死に調べているよ」
酷い話だと、ライザはぼやき。
クリフォードさんも頷く。
冷めているのはセリさんだ。
そんなものだと、人間を見ているのだろう。
それも仕方が無い。
この人がオーレン族だったら、人間をどれだけでも恨む資格がある。
勝手に侵略した挙げ句、オーレン族をだましにだまし。フィルフサを大繁殖させて、世界を破滅させたのは人間だ。
それは許せないと思うのも、当たり前なのだから。
今、こうして接してくれているだけでも奇蹟に近い。
「じゃあ、解散。 あたしはカリナさんの指定された植物について、在庫を漁っとくわ」
「持ってるんですか!?」
「まあ、一応。 薬草とかは基本的に回収しているでしょ。 念の為に、種とかも保存しているんだよ」
「そう……」
セリさんが、食いついた。
珍しいな。
ライザに、話しかけている。
「今、珍しい薬草の種があるのなら見せてくれるかしら」
少しずつでも、距離を詰めてくれるなら、それでありがたい。
タオは、セリさんにも丁寧に応じているライザを見ながら、そう思う。
リラさんより、更に対応が厳しい人だけれども。
一人でも多く、オーレン族と関係を修復できるのであれば。
それはとても素敵なことなのだと、タオは思うのだった。
(続)
皆が出来る事をそれぞれ連携してこなしながら、ライザ達は遺跡の真相に次々と迫っていきます。
この連携は三年前にライザがリーダーシップをとって行っていたものと同じ。
スランプで鈍っていても。
ライザが豪傑である事は、三年前と変わっていないのです。
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