暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

67 / 150
危険な植物が……

敵と見なした相手に、総力で牙を剥きます。


1、魔食草の王

全身から煙を上げながら、ゴーレムが倒れ臥す。だけれども、あたしはびりびりと嫌な予感を感じていた。

 

此奴もかなり手強かった。

 

だが、どうにもこの嫌な予感は。

 

同じく大きな魔力を持つセリさんとクラウディアも感じ取っているようだ。

 

あたしは、声を張り上げる。

 

「油断しないで! 何かいる!」

 

「連戦か。 まあいい。 やってやる!」

 

今のゴーレムで、遺跡中枢部に巣くっていたガーディアンは終わりと思ったのだが。案の定、一番危険なのが残っていたようである。

 

それが、ゴーレムの残骸を吹き飛ばしながら、姿を見せる。

 

なんというべきなのだろう。

 

全身からおぞましいまでに強い魔力を放つ、巨大な何かが、今も全身を編み上げている、

 

そう。

 

魔食草もどきの根が、組み合わさっていくのだ。

 

彼方此方に生えていた魔食草の幹が、どんどん地面の底に消えて行っているのが分かる。クリフォードさんが、帽子を下げていた。

 

「トレントの話題を出したが、どうやら悪い形であたったようだねえ」

 

「い、遺跡全体の魔食草が、集まっているって事ですか!?」

 

「そうなりそうだ。 コレは……やばいぞ」

 

「……」

 

パティが生唾を飲み込んでいる。

 

それもそうだろう。

 

既にあたしとクラウディアは数発攻撃を叩き込んだが、これは。

 

熱槍による炎上も期待出来そうにない。

 

魔力が強すぎて、そのまま熱を抑え込んでいるのだ。多分ローゼフラムが直撃しても、燃やすことは厳しいだろう。

 

程なくして形を為したそれは。

 

木でできた、巨大なドラゴンとでも言うべき存在になっていた。

 

ただし三年前にあたしが戦った、翼を持つタイプではない。

 

地面に足を降ろした、巨大な奴だ。飛ぶ事は出来そうにないが、代わりに体はとんでもなく重厚である。

 

「来るよ! 総員、総力戦用意!」

 

「久々に手応えがありそうだな……」

 

うそぶいているレントの声にも、余裕が無い。

 

口を開ける魔食草の王。便宜的にそう呼ぶ。

 

次の瞬間、クラウディアがフルパワーで音のシールドを展開したが。それをまとめて、吹き飛ばすほどの音波が、遺跡中に轟いていた。

 

膝を突きそうになる。

 

これは、直撃していたら、多分鼓膜を破られる程度では済まなかったはずだ。

 

超ド級の音波砲。

 

多分だけれども。これくらいの火力になってくると。

 

一瞬で石材を砂にするだろう。

 

地響きとともに、魔食草の王が踏み出す。あたしがローゼフラムを投擲すると、頭はそっちをむいていないのに反応。

 

触手のように体から生えた根が、ローゼフラムを包み込む。

 

起爆。

 

爆発して、根の一部が吹っ飛ぶが。

 

恐らくだが、体の一部をいわゆるトカゲの尻尾斬りする事で、全体のダメージを抑え込んだのだ。

 

今までの戦闘を全て見ていた。

 

全員の技を知っている。

 

そう判断して良い。

 

壊れかけていた、この遺跡の人間が作ったガーディアン達。ゴーレムやら幽霊鎧やらと違う。

 

此奴は、頭が劣化してもいない。

 

最悪の魔物として、現役ということだ。

 

「音波砲には何度も耐えられない! インファイトを仕掛けながら、短期戦を挑むよ!」

 

「任せろっ!」

 

レントが突っ込んでいく。続けて、少し躊躇ったが。それでもパティも。タオも。

 

足を振り上げると、叩き潰しに掛かる魔食草の王。

 

いや、違う。

 

そう見せて、足下から多数の根が、三人を強襲する。それどころか、全身から無数の根が触手のようにしなり、三人どころか此方全員を強襲しに来る。

 

インファイトなんてさせるか。

 

そういわんばかりだ。

 

一応ハンドサインでやりとりをしたのだが、それすら読んでいたのかも知れない。

 

舌なめずりしながら、熱槍を惜しみなく連射。クラウディアも、矢を全力で飽和攻撃し続ける。

 

三人は、上下左右から飛んでくる根を相手に、レントを中心によく頑張ってくれている。レントは三人分以上働いて、凄まじい雄叫びを上げながら、他の二人が危ないときに良く助けている。

 

あたしも、負けてはいられないな。

 

セリさんが、地面に手を突き、何かの大魔術を発動。

 

同時に、地面から出ていた魔食草の王の根が、数本根元から引きちぎられていた。

 

手を地面に突きながら、セリさんが言う。

 

「長くは保たないわ」

 

「ありがとう! クラウディア、クリフォードさん! 支援っ!」

 

「分かった!」

 

「任せとけっ!」

 

跳躍すると同時に、全力でブーメランを投擲するクリフォードさん。ブーメランは強い魔力を纏い、うなりを上げながら不可解な機動で飛ぶ。そして、魔食草の王の根を、次々に叩き潰す。

 

魔食草の王は恐ろしい程俊敏に動くと、最前衛の三人にボディプレスを仕掛けようとするが。

 

三人とも散る。

 

だが、魔食草の王は根を地面に叩き込み。全身をぐんと持っていく。

 

レントが動く。

 

狙っているだろうパティの前に立ちふさがると、裂帛の気合とともに、巨大質量を一瞬支える。

 

その脇腹に。

 

あたしが、詠唱を終えて。

 

熱槍四千をまとめた圧縮熱槍を叩き込んでいた。

 

熱するだけでは無い。

 

即座に冷やす。

 

それでも、魔食草の王は、体勢を崩しさえしたが。倒れもせず、燃えもしない。

 

レントとパティは飛び退くが。

 

同時に、魔食草の王は、背中から多数の触手を展開。

 

その全てが振動する。

 

「まずい、伏せてっ!」

 

クラウディアの声。

 

同時に、神経を直接擦られるような音が、辺りに響き渡っていた。

 

足が止まる。

 

思考も。

 

ふらついた所に、見える。振るわれる、太い触手。

 

そうかそうか。

 

人間の弱点を知り尽くしているから、こういう音魔術も使えるという訳か。

 

クラウディアは音魔術でガード。立て続けの矢を放って、僅かに時間を作ってくれるが。地面に落ちたクリフォードさん始め、全員が出遅れる。

 

「フィー!」

 

懐で、フィーが暴れる。

 

分かっている。直撃を貰ったら、流石に危ない。

 

だから、あたしは踏みとどまると。

 

雄叫びを上げていた。

 

「この程度で、あたしがどうにかなるかあああああっ!」

 

手に熱量を集中。

 

飛んできた太い根を、それで薙ぎ払っていた。

 

真っ二つになった根が、空中で爆発四散。根元の方は、あわてて本体へと戻っていく。

 

レントがタオとパティをもろに庇って、直撃を受けたようだが、大丈夫。死んだようには見えない。

 

セリさんは、倒れている。

 

流石に今のは、厳しかったか。

 

今度は口から、あの強烈な音波砲を放とうとしている魔食草の王。

 

させるか。

 

あたしは手元からクライトレヘルンを取りだすと、全力で投擲する。魔食草の王は、多数の触手を放って防ぎに掛かる。

 

触手が、クライトレヘルンを掴み、封じ込める。起爆。触手が超低温に粉々になるけれども。

 

それで、逆に魔食草の王の口が、フリーになる。体の一部を切り離すくらい、奴にはなんでもないということだが。

 

その時あたしは、最初の位置にはいない。

 

一瞬だけ、魔食草の王が、動きを止める。

 

あたしが移動していたのは、その真正面。至近だ。

 

どうせ防御に掛かる事は分かりきっていた。

 

あたしの爆弾を警戒しているのが、分かっていたからだ。

 

だからあたしは、クライトレヘルンを投擲と同時に、詠唱開始。更に、魔食草の王の首に、刃が突き刺さる。

 

レントだった。

 

「調子に乗るな、雑草ドラゴンっ!」

 

凄まじい軋み。

 

無数の木が、無理矢理生長するような音。

 

それが、魔食草の王の悲鳴だったのかも知れない。

 

更に、タオが左足に乱舞での猛攻を。

 

パティが背中に上がって、数本の根をまとめて薙ぎ払った。だが、文字通り捨て身の一撃である。

 

あたしはハンドサインで離れてと告げながら、詠唱を続行。

 

見えている事を、祈るしかない。

 

三人を振り払う魔食草の王。

 

触手が全身から伸びて、辺りを滅多打ちにするけれども。

 

その隙間を縫うようにして、クリフォードさんのブーメランが炸裂。また、魔食草の王の動きが止まる。

 

「おっさんだからって、舐めてくれるなよ!」

 

更にセリさんが、地面に手をついたまま、魔術を再発動。

 

地面に突き刺していた根が、まとめて地面の下で押し潰されたのか切り刻まれたのか分からないが。

 

魔食草の王が、身をよじって軋みを挙げる。

 

そして、クラウディアが、フルパワーでの魔術を放ったのだろう。

 

音魔術の弓手との連携しての、総力での飽和攻撃。

 

無数の魔術矢が、あたしに向かう魔食草の王の攻撃を、全て弾き返す。

 

「今日の天気は……晴れのち隕石!」

 

詠唱完了。

 

あたしの全身が、魔力に覆われる。それも、超高密度の。

 

魔食草の王が、あたしを見る。

 

全力で動こうにも、今の総力での攻防で、あたしを叩くための手数が足りていない。あたしは、収束型の。

 

二万の熱槍を一点に収束した。

 

文字通り、熱の槍を。

 

いや最早、光の槍と呼ぶに相応しいものを手にしていた。

 

人間の、原初の武器は投げ槍だったそうだ。

 

これについては、アガーテ姉さんにも聞いたし。タオも学術的にはそうらしいという話をしてくれた事がある。

 

弓矢が発達する前に、人間の武器として活躍した投げ槍。

 

あたしは、元々熱槍を得意としてきたのだ。

 

だったら、原初にして究極。

 

それがこの形。

 

「グラン……」

 

それでも、総力で跳びさがる魔食草の王。残った全ての触手、更には口も。全てを使って、詠唱。

 

全部で詠唱を重ねて、防御魔術を展開。

 

目に見えて分かる程の光のシールドが、十二枚。あたしの前に、張り巡らされる。全てのシールドに魔法陣が浮かんでいる。

 

あたしは、恐れもせず。

 

あわてもせず。

 

得意魔術の、練り上げた最大魔術の。

 

最後の一説を唱えていた。

 

「シャリオ!」

 

踏み込む。

 

地面が粉砕される。

 

元々あたしの切り札は蹴り技だ。それに、最大火力の魔術を乗せる。それは、全身を使っての、投擲に他ならない。

 

投擲は、全身を使った技。

 

そして、それには強靭な足腰がいる。

 

あたし自慢の足腰が。

 

それをフルパワーに生かし。最大魔術に組み込んだのが、このグランシャリオ、一点収束型。

 

どんな敵でも確実にブチ殺すための。

 

最大奥義だ。

 

投擲された、もはや熱を通り越えて光の槍が。

 

魔食草の王が展開した、十二枚に達する強烈無比なシールドに突き刺さる。

 

三枚までは、文字通り紙のように引き裂いた。

 

五枚までは、秒ももたなかった。

 

七枚。それぞれ二秒ほど掛かる。

 

十枚。魔食草の王が踏ん張り、総力で防御に掛かる。それでも貫通し、撃ち抜く。

 

グランシャリオ収束型は、その熱をあまりにも凝縮していることもある。周囲に熱が零れる事はない。

 

倒れているパティとタオの至近で、シールドと激しくせめぎ合う。

 

だけれども、単純な魔術だけで防ごうとしている魔食草の王に対して。

 

あたしの一撃は、物理的な加速も伴ってのものだ。

 

「いっ、けええええええええっ!」

 

十一枚目のシールドが砕け、辺りに黄金の光が拡がる。後ろ足で立ち上がった魔食草の王が、全身を萎びさせながらも、そのシールドに全ての力を注ぎ込んでいるのが分かった。だが、見る間に消耗していく。

 

あたしの渾身の一撃。

 

こんな、地底遺跡で裸の王様を気取っていた輩に、負けるものか。

 

裂帛の気合とともに、ついに最後のシールドが撃ち抜かれ。

 

悲鳴を上げる魔食草の王が。

 

瞬時に生きた松明と化す。

 

燃え上がりながら、膨大な魔力をまき散らす魔食草の王。それを見て、フィーが声を上げていた。

 

「フィー! フィーフィー!」

 

「……」

 

この魔力量。

 

尋常じゃ、ないな。

 

多分ここの封印は。

 

そう気付いたけれども、あたしは大きく肩で息をつきながら。その場に座り込む。

 

目の前には。

 

完全に炭クズと化した魔食草の王。

 

そして、遺跡の彼方此方に蔓延っていた魔食草もどきは。

 

すでに、どこにも存在していなかった。

 

 

 

かなり時間は残っていたが。今日はもう無理だ。

 

アトリエに戻って、即座に解散。あたしも流石に限界なので、ベッドで横になって寝る。

 

フィーは心配そうにしていたが。遺跡「工房」で魔食草の王が放った魔力をたくさん食べたのだろう。

 

おなかは一杯なのか。

 

文句を言う様子もなく、すぐに寝に入ったのだった。

 

あたしは、ぼんやりとしている内に夢を見た。

 

感応夢だ。

 

誰かが、鉢植えを持ってくる。白衣を着た人間。半裸の人間。入り交じって仕事をしている其処に。

 

そして、会議が行われた。

 

「これはこの地で伝わる、絶対に魔力を与えてはいけないと言われている……」

 

「そう、神代に作られた植物だ。 だが、念入りに実験した結果、これを薪にすることで、神代のものほどではないが、それにちかい性能の金属を作り出す事が出来ると明らかになった」

 

「反対だ。 これは繁殖力が尋常ではなく、もしも勝手に増え始めたら手に負えない」

 

「だが、クリント王国の者どもは、禁忌とされていた技術をどんどん導入してきている有様だ。 何よりも、例のものとの戦いは押される一方。 既存の鋼鉄では、もはや……」

 

目が覚める。

 

これだけか。

 

いや、これだけで全てが分かる。

 

あたしは頭を振りながら、大きなため息をついた。

 

過去に犯された過ち。

 

その全ては、封印を守るためだったのだろう。

 

遺跡にいた人達も、分かっていたのだ。自分がどれほど危険な代物に手を出したか、ということは。

 

それでもなお、やらざるを得なかった。

 

全身が怠い。

 

収束型のグランシャリオは、実は昨日の分もあわせて、まだ三回しか使っていない。

 

アイデアをくれたのは、既に引退したウラノスさん。

 

あたしがどうにか最大火力技を強化出来ないかと思っていた時に。

 

教えてくれたのだ。

 

あたしの固有魔術は熱操作。

 

だけれども、得意技……というか切り札は蹴り技。

 

その二つを、別々にするのではなく。いっそのこと、一つにしてはどうだろうと。

 

なるほどとあたしは考え。

 

そして試行錯誤の末に、収束型グランシャリオを作り出した。

 

それを機に、術の名前もグランシャリオに変えた。

 

だけれども、昨日はなって見て分かったけれども。この技は、クエーサーの方があっていると思う。

 

全てを滅ぼす光の星。

 

語源は不明らしいが、その言葉だけが残った言葉。

 

ラプトルとかと同じ。いにしえには意味がわかっていただろう、今は分からない言葉の一つ。

 

だけれども、これがとにかくしっくり来るのだ。

 

いずれ、更に技を改良したときに。

 

名前の変更は、検討するべきだろう。

 

ただそれは今では無い。

 

この冒険が終わった時。

 

流石にあたしも、戦いながら成長するほど若くない。伸びをすると、あたしは。

 

まだ日が出て朝になったばかりの街に出て。

 

軽く体を動かすのだった。

 

 

 

流石にこの日は、皆起きてくるのが遅かった。

 

クラウディアはお菓子を焼いてきてくれて。それが随分と助かった程である。みんな疲れていたので。

 

お茶も淹れてくれた。

 

クラウディアだって、総力での魔術をぶっ放して。決して楽ではなかったはずなのに。

 

普段は滅多にお菓子とか口にしてくれないセリさんも、黙々と食べている。

 

感想は口にしなかったけれど。

 

皆で黙々とお菓子を食べてから、軽く話をする。

 

「今日はまず最初に安全を確認してから、羅針盤での調査と、タオとクリフォードさんの調査を並行して行います」

 

「そうなると俺は見張りに集中でいいんだな」

 

「私もそうなると言う事でしょうか」

 

「そうなるね」

 

実の所、大量のゴーレムと幽霊鎧。

 

何より魔食草の王に守られていた遺跡中枢部分は、それほど目だった建物があるわけでもない。

 

ただ、あの太陽みたいな……感応夢でみたものが捧げられていたのは、間違いなく中枢部分だ。

 

つまり、其処は徹底的に調べる必要がある。

 

ただ、戦闘中は、足を踏み入れたのだが。

 

そういった遺構の残骸が、力を持っているとは思えなかった。

 

封印も見当たらない。

 

それも、残留思念で調べるしかない。

 

外れだったら、それはその時だ。

 

今までの事から考えて、外れである可能性は少ないと思うが。それでも、調べる必要はある。

 

一通り話を終えると、遺跡に。

 

途中で、パティが話しかけてくる。

 

「ライザさん」

 

「うん?」

 

「昨日のとんでもない大魔術、あれが収束型のグランシャリオですか?」

 

「そうなるね。 あれを直撃させたら、生き物でも金属でも、基本的に構造体なら確実に壊せる自信はあるよ。  ただ、魔力で構築された存在とかには効きが悪いかもしれないね」

 

あたしだって、必殺無敵だなんて思ってないし。

 

そんな都合が良いものがあるとも考えていない。

 

精霊王くらいになると、倒せない可能性もあると判断している。今なら、色々と手札があるから、倒す自信はあるが。それだけだ。

 

ただ、神代の錬金術師の技術を見ると、今のグランシャリオでは倒せない相手がいてもおかしくないのも事実。

 

そういうのと相対した時の為に。

 

技は磨き抜かないといけない。

 

出来れば現状のクラウディアの音魔術くらいの周囲探知を、寝ている時にも出来るくらいに魔力は磨き上げたいけれども。

 

それはそれで、まだ先の話だ。

 

「それでどうしたの?」

 

「はい。 お父様に、遺跡での話はしました。 ちょっと現状では、あの魔食草の王だけでも、王都の警備では手に負えないですね。 今後あれと同等か、それ以上の魔物がいる可能性があると見て良いんです……よね」

 

「……何とも言えないけれども、少なくとも封印されている奴は、あれより弱いと言う事はないだろうね」

 

ぐっと恐怖を飲み込むパティ。

 

恐怖とつきあうのは、戦士の命題だ。

 

あたしだってそれは同じ。

 

恐怖を知らない奴はあっと言う間に死ぬ。

 

護り手に入った、同世代の悪ガキの中では無敵だった奴が。魔物相手に突出して。またたくまに右手を食い千切られて。

 

悲鳴を上げながら引きずられていって。以降は恐怖で武器を持つどころか、家の外にも出られなくなったのは。まだあたしが六つの時だったか。

 

とにかく根拠もなく偉そうだった奴が、別人のようにしおれてしまったので。よく覚えている。

 

あいつは確か、二十になる前に衰弱死したっけ。

 

悪い意味での成功体験を積んで恐怖を知らないでいると、そうなる。

 

ただ、それだけの話だ。

 

「分かりました。 お父様と相談して、今のうちに対策をするべく準備をしておきます」

 

「そうして。 まあ今の王都の戦士は、あんなのみたら逃げ散るだけだと思うけど」

 

「お父様が最前線に立って鼓舞して、一人でも多く非戦闘員が逃げられるように踏ん張るしかないと思います。 その時は私も……」

 

「……分かった。 そういう事態が来ないように、全力を尽くすよ」

 

流石にそれは寝覚めが悪い。

 

それに、だ。

 

状況は良くない。

 

星の都の封印は半壊状態。霊墓のは全壊。

 

そして、工房の封印はまだ見ていないが。恐らくは。

 

そう考えると、既に半分が駄目になっている、という事を意味する。

 

更には、何者かが封印されているのが何処なのかも分からない。これも今後調査しなければならないのだ。

 

とにかく、今日中に羅針盤を用いて、可能な限り情報を集める。

 

それで、できる限り調査を進める。

 

明日までに、工房の調査は片付けて、アンペルさんとリラさんに引き継ぎたい。二人はまた別で動いていて、調査に関してもあたし達よりも手慣れているはずだからだ。

 

鉱山近くの街道で、魔物を蹴散らす。流石にあの大軍を潰した後だと、かなり魔物の質も落ちている。

 

警備の戦士も、数を増やす予定だそうだ。

 

確かに南方面の街道の警備が足りないだろう。今のままでは。

 

ただどちらにしても熟練者は減ることになるだろうし。しばらくは警備の戦士も苦労するはず。

 

あたし達で、多少は苦労を減らさないといけない。

 

工房に到着。

 

魔物がいなくなって、静かだ。

 

あたしは頷くと。

 

羅針盤を取りだし、調査を開始していた。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。