暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
本作でも非常に重要な役割を果たします。
ただ、安全を確保してからの最終調査で、です。
やはり羅針盤、これは強力な道具だな。あたしは、羅針盤を調整したのにもかかわらず、入ってくる残留思念の多さに驚かされる。
周囲を見回すと、そこに当たり前のように人影がいて。過去の存在であるのに、今いるかのように喋っている。
半裸の男性が目立つ。女性もかなり肌面積が多い。
此処は暑かったのだ。
それはそうだろう。
此処で多数の鍛冶工房が動いていたのだから。
話が聞こえてくる。
「また西の方の街が落ちたそうだ。 クリント王国の連中は、陥落した街の人間を全て奴隷にしているらしい。 それも、老人は皆殺しにしているそうだ」
「魔物と同じだ。 どうにかして防がないと」
「錬金術師が多数いて、どうにも分が悪いらしい。 我が国の軍も消耗が激しく、どうにか支えるので手一杯だ」
「複数の国で連合を組んでいてもとめられないか。 我が国にも、もう少し錬金術師が多くいればな……」
そういう会話が聞こえてくる。
だが、同時に。
この国も、一方的な被害者ではなかったようだ。
陥落した街から逃げてきた者達を優しく迎える事はせず。危険な労働などに従事させているようでもある。
鞭が振るわれる音。
時々上がる悲鳴。
使い捨てにされる労働者。
「また死にやがった。 根性がない奴だな」
「とにかく武器の量産を急がないといけない。 クリント王国だけではなく、封印を守らないと本当にこの土地は滅ぶぞ」
「仕方が無い。 孤児院やら救貧院やらの人間を全部寄越すように上申するしかないな」
そんな話をしているのは、白衣を着込んだ連中だ。
どうやら此奴らは、この工房が存在していた国で、社会的地位が高い所にいた者達らしい。
人間の命を、数で勘定している。
これは、滅んで当然だったんだな。
そう思って、あたしは呆れた。
他にも見て回る。
太陽のようなものが輝いているが。
その周囲には、武装した戦士や。幽霊鎧が配置されている。信仰対象というよりも、あれは動力だったのだろう。
白衣の者達が来る。
顔はよく見えない。
此処は残留思念の世界だ。この工房にいた人間にとっても。更には白衣を着た人間にとっても。
此処にいる人間そのものはどうでもよかったし。
白衣を着た連中は、此処にいる人間に皆嫌われていた、と言う事でもあるのだろう。
古代クリント王国だけが腐っていたわけではないようだ。
そう思うと。
人間に過剰な力を与えると、こうなるんだなとも思うし。
とても嘆かわしい話だな、とも感じる。
いずれにしても此奴らは、既に滅びた。
ともかく封印の話だけしてほしいものだとあたしは思う。それくらい、どんどん不快感がせり上がってきている。
此奴らの遺志を継ぐんじゃない。
いま生きている人間の、命を守るために封印をどうにかする。
王都で偉そうにしている貴族だの王族だののためではない。
今を生きるために必死にあがいている人達のためだ。
そう考えて、一度羅針盤を閉じる。
かなり精神的に消耗している。この羅針盤、人間のくだらない部分をダイレクトに見せられる。
そんな事は分かっているし。
今までだって、散々くだらない人間の本性は見て来た。
だけれども、あたしの周囲には、幸い、そうではない人が集まってくれた。
だから、頑張れる。
「ライザ、大丈夫? 顔色真っ青だよ」
「平気。 引き続き、周囲の警戒をお願い」
「分かったわ」
クラウディアは、頼もしいな。
そのまま羅針盤を開いて、調査を行う。これも散々調整した上で、なおもまだ消耗が激しい。
誰かしらに引き継ぐときが来たら。
その時には、更に細かく調整しないと危ないだろう。
あたし専用に今は調整している。
他の人間が使ったら、一瞬で干涸らびかねないのだから。
それに、精神的な負担もある。
とにかく続けて、調査していく。実際問題、封印の状態が恐らく相当にまずい事は分かりきっている。
出来るだけ急いで、可能な限り補填をしなければならないだろう。
また、残留思念を見ていく。
鍛冶区では、量産している。幽霊鎧もゴーレムも。どんどん余所に運び出しているようである。
「昔は人間が多すぎて、街には物乞いなんて者がいたらしいが、今では人間が全く足りない有様だ」
「戦争で文明が進歩するとか言う説を誰かが唱えたらしいな。 現実はコレだ」
「淘汰圧がどうのこうのだろ? 優秀な奴、真面目な奴から死んでいって、残るのはサイコ野郎ばかりだよ。 結果がこのがらんどうの兵隊で補うしかないってのは、笑えない話だよな」
「しっ。 誰が聞いていてもおかしくない」
鋭い不平不満。
古代クリント王国時代をピークに、人間の数は激減していき、魔物との力の差が逆転することになる。
それは誰もが知っている歴史だが。
その前にも、古代クリント王国は敵対する国家をこんな風に蹂躙して潰していたんだな。
古代クリント王国の錬金術師が、如何に奴隷にされた人々を残忍に扱っていたかはあたしも感応夢で見たが。
あれは、こういう負けた国から連れてこられた人間だったのだろう。
いや、それだけではないのかもしれない。
自分の国でも、権力層が気にくわなかったり。
或いは何らかの理由で資産を失ったり。
そんな事があった人間は、奴隷にされて。
頭を振る。
今ですら、世の中は良くないのだ。
それなのに。人類の文明が魔物に優位を取っていた時代ですらこれだったと思うと。あたしは、おかしくなりそうだ。
羅針盤を閉じて、休憩を入れる。
パティが心配そうに声を掛けて来る。
「ライザさん、休憩を入れてください。 ライザさんが無双の豪傑でも、それでも消耗はする筈です」
「ありがとパティ。 無双の豪傑って、大げさな」
「大げさなものですか……でも、少し安心しました。 ライザさんでも、消耗するって分かると」
「フィー!」
フィーがパティに同調するように懐で言うので、あたしは苦笑い。
とにかく少し休憩を入れる。
タオとクリフォードさんは、必死に遺跡を調査してくれている。時間はあまりないが、急いでも多分残留思念に精神をやられてしまうだろう。
熱魔術でホットミルクを作って、それを飲み干す。
随分楽になる。
そのまま、少し体を動かして。気分転換をしてから、また羅針盤を使っての残留思念を調査に戻る。
今までの遺跡と違って、此処では人々の不満がとにかく多く聞かれる。
多分戦争に直結した場所だったから、なのだろう。
古代クリント王国との戦争に不満が多いのは。
封印された何者か。
あたしはフィルフサでないかと思うのだが。ともかく、その何者かは人間ではなくて。そいつには怒りをぶつけようがないからなのだろう。
太陽のように輝く、中央区にある何か。
話をしているのは、豪奢な格好の奴だ。
貴族か王族か。
側にいるのは、その手下だろう。
「動力はどうだ」
「どうにも。 恐らく、例のものを封印するまでもてば良い方かと思われます」
「国力を消耗し尽くしてしまうな。 クリント王国に何度か降伏の使者を送ったが、聞き入れる様子もない。 最悪の場合は、離散して逃げるしかないだろうな」
「もはや組織的な抵抗能力は失われつつあります。 封印をとにかく完成させて。 後世に生きる者達のためだけに、出来ることをしなければなりませんな」
煌々と輝く地底の太陽。
これは、なんだ。
「封印するしか手がなかったのが口惜しい。 クリント王国の鬼畜共に、いっそ押しつけてしまえばよかったものを」
「なりません。 あの者達……正確にはクリント王国を動かしている錬金術師達は、モラルというものを微塵も持ち合わせておりません。 あのようなものを渡したら、一体何に利用しようとするか」
「口惜しや。 滅ぶ以外になにもないとはな」
「無念は分かります。 ともかく、今民を少しずつ辺境に逃がしております。 全てを逃がすのは恐らく無理ですが……」
また、別の者が映り込む。
残留思念と言っても、時代とかがバラバラだ。
太陽は明るかったりしぼんだりしていて。
これがなんなのかすら分からない。
なんなのか、分かる残留思念はないだろうか。
少し周囲を歩き回りながら、動き回っている残留思念を見て良く。
半裸の男女が、太陽みたいなのを拝んで、呪文みたいなのを唱えている。あたしも詠唱はするが、これは詠唱する呪文とは違うな。
何となく、理解する。
これは魔術というよりも、クーケン島の老人達が言っていたような「呪い」だ。
皆が唱えているのは、精神をぐらぐらに揺らす一種のトランス状態を作り出すためのリズムであって。
なんら魔術的な意味はない。
ゆらゆらと揺れる人々の残映。
それが崇めているのは、太陽のように燃えさかる何か。
「神代の残り火よ!」
誰かが声を張り上げる。
多分この国で一番偉い奴だ。
太陽の前に立って、手を掲げ。
自分がその代理かのように振る舞っている。
「我等に繁栄を! この土地に実りを!」
「我等に繁栄を!」
一斉に周囲が唱和する。
これは、信仰の対象だったのだ。それも、王族か、それに近い立場の奴がわざわざ出てくる程の。
無言になって、考え込んでしまう。
正直な話、これが健全な事とは思えない。
老人達がやっているような信仰とは違う。
組織化された、政治と一体化した信仰。タオが言っていたような、古代クリント王国以前にあったような、支配のための宗教だ。
そして、見る。
なるほど、そういうことか。
これはどうやら、余所から持って来たのだろう。
元は、魔術的な何かの装置。
太陽みたいなのは、その装置が作り出していたのであって。
ここに据え付けられたのは太陽ではない。
既に動かなくなっている装置だ。
羅針盤を閉じる。
あたしは、ぐっしょり掻いている冷や汗を拭うと。
地面を触り、確認していく。
この辺りの筈だ。
「ライザ、何か見つかった!?」
「……分かってきた事がある。 この辺りに動力炉がある」
「でも、地面は何も無かったよ」
「違う。 ひょっとすると……」
確かに一見すると何も無い。
タオが声を掛けて来たが、あたしは適当に応じて、距離を取る。羅針盤を使って、色々な角度から中央区を見やる。
それで、少しずつ分かってきた。
そういうことか。
あの中央区自体が。
全部まとめて、炉なんだ。
動力はどうなっているのか、分からない。
それほどのオーバーテクノロジーなのだ。
神代の、という言葉があった。或いは神代に開発された、とんでもない超ド級の古式秘具だったのかも知れない。
いずれにしても、はあとあたしは溜息が出る。
これは、この国が滅びるまで、何百年も動き続けて。
多くの動力の元になったのだろう。
無言で見やる。
そして、調査に戻る。
今は、これはどうでもいい。
ともかく、封印があるなら見つける。ないなら見切りをつける。いずれにしても、さっさとやらないとまずいのだ。
隅から隅まで、羅針盤で調査していく。残留思念が、彼方此方を行き交っているが。
見えた。
壁の一角があく。
とんでもなく厳重に警備されている。
だけれども、今はもう。
そんな警備など、過去の存在になり果ててしまっている。だから、そのまま近くまで行って、調べる事が出来た。
「みんな、此処だよ!」
間違いない。
多分、此処だ。羅針盤を使って、念入りに調べる。
一見するとただの岩壁。此処を古代クリント王国に発見されたときに備えて、念入りに偽装したのだろう。
かなり現実の光景と、羅針盤の光景が違っている。
今は岩壁だが。
昔は、もの凄くテクノロジーを感じる、堅牢そうな壁になっていたようだ。
「壁の封印はどうだ」
「神代の残り火が動力となっています。 クリント王国の者どもですら、簡単には開けられないかと」
「よし……。 最後の仕事は終わりだな。 例の植物を放て。 もう此処に用はない」
「無念にございます」
蠢いていた、魔食草もどき。
それが彼方此方に、無作為に放り投げられているのが見える。なるほど、あれが伸びに伸びて、この地下空間を占拠したのか。
周囲にはもう人はいない。
残留思念というのは不思議で、何かにフォーカスしてみると。他は見えなくなる。つまり、この残留思念に集中していると、こうなる。
何が言いたいかというと。
要するに、この壁を封じて、魔食草もどきを放った時。
この遺跡は、既に役割を終えていたのだ。
恐らく今の王都が古代クリント王国に陥落させられたのか、或いはそれに近い状態になったのか。
いずれにしても、この遺跡を有していた国が、負けが確定したのだろう。
そして封印だけはした。
後の時代の人間のために。
そう判断できたのは。封印したものが、人間の手に負えるものではないと分かったから。
追い詰められると人間は愚かな判断をする。
この遺跡を有していた人間は、決して正義でもなければ善良でもなかった。おぞましい事だってやっていたし。
社会にたくさんの矛盾を抱えてもいた。
一部の人間は、古代クリント王国以前はパラダイスのような代物だったと考えているようだが、そんなものは大嘘だ。
古代クリント王国だけがカスだったのではなくて、他の国だって似たようなもので。その中で古代クリント王国が錬金術師の手で勝ち残った。それだけの話であったのだろう。それはよく分かった。
あたしは、羅針盤を閉じる。
だいたい、やるべき事は分かった。
まず第一に、岩壁の偽装に使われている岩を崩す。皆で総出で、さっさとやってしまう。
あたしが熱槍を叩き込んで。更にそれを急激に冷やし。
クラウディアが矢を連発して叩き込み。
最後にレントとクリフォードさんが気合いを入れて大きい一撃を叩き込むと。巨岩が嘘のように崩れて、ぼろぼろと周囲に散る。
更に掘り進める。
三度もそれをやると、堅牢な壁が出てくる。
パティが、声を上げていた。
「い、岩の中にこんな凄い壁が。 羅針盤、とんでもないですね……」
「危ないよ。 ちょっと離れて」
一応念の為だ。
ぶっ壊せないか、試してみる。
壁に対して、あたしは熱槍を連続して叩き込む。
更に、立て続けに冷やしてみる。
だが、流石に対錬金術師を想定しただろう壁だ。びくともしない。傷ついている様子もない。
勿論、執拗に攻撃を続ければ、恐らくは壊せるだろうが。
問題はそれに掛かる時間だ。一月は掛かる。あたしはそう判断した。
「よし、この壁は簡単には壊せない。 だとすると……」
一時的にであっても、あの炉を動かすしかない。そういうことだ。
フィーが、懐でごそごそと動いて。フィーと鳴く。
時間か。
あたしは頷くと、一時撤退を指示。
タオやクリフォードさんも、しっかりあたしが羅針盤で残留思念を見ている時にも、調査をしてくれていた。
今日は帰ってからが忙しい。
帰路も油断しないように急いで、王都に入ってやっと一息をつく。
そして、アトリエに入ってから。残留思念で見た事を、順番に告げる。タオは凄い勢いでメモを取っていく。
「なるほど。 もう名前も残っていない、この土地にあった国。 そこでは、そんな事が行われていたんだね」
「王都はその国の首都だったのでしょうか」
「いや、違うと思う。 その時代の首都は、もっと大きかっただろうし。 古代クリント王国に焼き払われたんじゃないのかな」
「……」
ぞっとしたのだろう。パティは青ざめて俯く。
この王都は、古代クリント王国が滅ぶときに、奇跡的に残った都市の一つだ。それは、タオからも聞いているだろうし。
歴史の授業でも教わっている筈。
魔物との力の差が逆転し、人類が日々勢力圏を縮小している今。
だが、過去は今よりいいとは、限らないのである。
「まず順番に、やるべき事を整理しよう。 最初にあの中央の巨大炉を動かす。 ざっと見て来たけれども、恒久的に動かすのはもう無理だと思う。 一時的に動かす事だけだったら、なんとかなりそうだけど」
「マジか。 相変わらずすげえな」
レントが感心してくれる。
ありがたい。
こういう、まっとうな視点から褒めて貰えると、やる気が出るというものだ。
「それで次にあの岩に埋まっていた壁を開かせて、中にあるものを確認すると。 宝の可能性は」
「ないですね。 恐らく封印があるのが彼処です。 ガーディアンは流石にもういないと思います」
「まあ、それはそれでロマンだな。 今まで封じられていた歴史の産物だ。 それがどんなものであろうと、ロマンなら俺は愛するぜ」
「……」
クリフォードさんの独自理論を聞いて、セリさんが呆れているようだが。
あたしとしては、人には人の数だけ考えがあると思うし。
それが有害でなければどうでもいい。
クリフォードさんの理屈は確かに独特だけれども、別にあたしに害があるわけでもないし、誰かを苦しめているわけでもない。
だったら、それでかまわない。
自分と意見が違う人間をゴミか何かのように見る輩がいるが。
そういう連中こそ、古代クリント王国の連中と大差ないようなゴミカスであり。人間という存在そのもの……いや世界そのものの敵だろう。
あたしには、興味が無いし。
縁もない相手だ。
「ライザ、ごめんね。 ちょっと今日は早めに引き上げるわ」
「クラウディアこそごめん。 明日は大丈夫? 低いとは言えあの壁の向こうにガーディアンがいる可能性があるから、出来るだけ戦力は揃えたいんだ」
「うん、それはどうにかしてみる」
クラウディアが急いでアトリエを出ていく。
機械関係で、王都の政治勢力図が動乱の兆しを見せている。メイドの一族が動いてそれぞれ勝手に動かないように掣肘しているようだが。それでも、クラウディアは連日会議を行わないといけないくらい面倒な事態になっている。バレンツはそれだけの影響力を持つ商会で。
更には機械修理という点で、今は台風の目に位置している。
タオが咳払いすると、議事録を見せてくれた。
なるほど、良く纏まっている。
「ありがとうタオ。 みんな共有して」
「よし、見せてくれ」
回し見して、それで今日は解散とする。クラウディアには、明日見て貰えればいい。
意外にも、声を掛けて来たのはセリさんだった。
「それでどうやってあの戸を開けるつもり。 あの中央部分の巨大装置を動かすという話だったけれど」
「簡単ですよ。 動力を補給してやれば良い。 あれがどうやって動いていたかはちょっと分かりません。 地熱を使っていたのか、それとも大気中の魔力をあり得ないくらいの効率で吸収していたのか」
実は、個人的には龍脈が怪しいと思っている。
というのも、以前ドラゴンを仕留めたときに、古代クリント王国が作った装置を見たのだけれども。
龍脈を利用していて。それで動くようになっていた。
あれは古代クリント王国と言うよりも、もっと古代の技術だった可能性が高い。
そうなると、神代のものとなれば。
龍脈を使って動く装置は、当たり前だった可能性が高いのだ。
いずれにしても、動力の元は多分断たれてしまっている。動かなくなるまで使ったのだろうし、何よりももう使えないようにあの遺跡の人間達が手を打ったのだろう。
だから、動力そのものをあたしが補給すれば良い。
それだけだ。
「そう。 具体的にどうするの」
「扉さえ開けばいいので、ごく短期間だけ開けばいいんですよ。 何、今晩中に仕上げておきます」
「……分かった。 見せてもらうわ」
セリさんは、めいめい帰宅していく者達に混じって、アトリエを出ていく。
大きく嘆息する。
そして、あたしは。
ありったけの魔石を出してくる。フィーがその上を飛び回るが、食べ物では無いよと告げておく。
遺跡を探している間に、見つけた魔石は結構ある。
それらをまとめて圧縮して。更にあたしの魔力もつぎ込む。
そうすることで、臨界ギリギリまで魔力を詰め込んだ、一瞬だけでも動力の代わりになるものが出来る。
この手のものは、散々調合してきたので、別に難しくも無い。
淡々とやってしまうだけのことだ。
ただ時間は掛かるし、制御も難しい。
丁寧に釜の中で調整をしていると。
フィーはあたしが厳しい調合をしていると理解したのだろう。見張りをしてくれた。
賢い子で助かる。
あたしは夜半まで。調合に没頭する。何、これくらいの調合なら。幾らでもこなしてきたのだ。
失敗する要素もなければ。今更怖れる事もなかった。
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