暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
そこでは三年ぶりに直接会う仲間達と。
新しい仲間との出会いが待っていました。
街道が復旧して、すぐに隊商が動き出した。隊商のリーダー格らしい恰幅が良い男性の商人が。
街道の修復を終えたあたしに、即座に声を掛けて来る。クリフォードさんにもだ。
「活躍は見せてもらった。 王都にいくまでの護衛を頼めないだろうか。 君もだ」
「はあ、かまいませんが」
「俺はいいぜ。 どっちにしても、銭はあるだけほしいからな」
クリフォードさんは現金な性格だな。
いや、金はあくまでトレジャーハントにつぎ込むのか。
それはそれで、またちょっともったいないようにも思う。
この腕だったら、何処ででも傭兵としてやっていけるだろうし。
そこそこの大きさの街でも、主力の戦士として腰を下ろせるし。望むなら簡単に伴侶だって得られるはずだ。
だとすると、余程トレジャーハントが好きなのだろう。
まあ、それならば。あたしも何も言わない。
いずれにしても、隊商が複数。更に、隊商で雇っている傭兵もいる。
余程の事態がない限り、問題は無いだろう。
さっきの若い傭兵が、手を振っている。
「ありがとう! 俺、腕を上げて、あんな風に活躍出来るようになるよ!」
手を振り返して、そのまま隊商とともに行く。
直したばかりの街道を見て、商人達は驚いていた。
「最近バレンツ商会が、画期的な接着剤を導入していると聞いている。 家屋用に使っているそうだが、それだろうか……」
「いずれにしても、あんな大物が消し飛ぶほどの爆発の跡がこんな短時間で修復されるとは」
「凄い技量だ。 王都でも名が知れているのだろうか」
「だそうだが?」
クリフォードさんが茶化す。
まああたしとしては、苦笑いするしかない。
錬金術については、クリフォードさんは知らないそうである。
まあ、それは別に良い。
錬金術については、知られていない方が良い。
古代クリント王国のカス共について知られていない方が良いように。
アンペルさんの話によると、今のロテスヴァッサも、一時期錬金術師を集めて、身の程知らずの事を色々と目論んでいたようだし。
一度錬金術というものは。
きちんと責任を持てる人間だけが扱う技術になるべきなのかも知れない。
或いはだが。
単純なテクノロジーを再建して。
それで人類は再起を目指すべきなのかも知れなかった。
街道を行くと、ちいさな集落が幾つかある。それらはいずれもあまり豊かそうには見えなかったし。
魔物の脅威にさらされているようにも見えた。
だが、一つ一つ全て救っている余裕は無い。
勿論問題に直面していて、助けられるようなら助けていくが。
あたしの手は、どこまでも拡がるわけでは無い。
それはあたしにも分かっている。
だから、その辺りではどうしても妥協はする癖がついていた。
この三年も、散々魔物を駆除しながら、それは思い知った。
クーケン島から街道でつながっている別の村が、魔物に襲われて。何人も食い殺された事件だってあった。
救援に行ったときにはもう間に合わなくて。
あたしが魔物を皆殺しにしても、後の祭りだった。
カタキをとってくれて有難う。
そう言われたけれども。
あたしがもっと早く辿りついていれば、仇をとる必要すらなかったのだ。
そう思うと、自分に出来る限界の狭さと。
手が届かない場所が世界にはたくさんあることを。
どうしても思い知らされてしまうのだ。
数日間過ごす。
その間、十三回に達する魔物の襲撃があり。
あたしがその度に出て撃退した。
最初、あたしの技量を半信半疑で見ていたらしい商人も、戦っている内に考えを変えたらしい。
一人、あからさまにあたしの尻やももをずっと見ていた狒々爺がいたが。
そいつも、すぐに恐ろしいものを見る目で、あたしを見るようになっていた。
隊商は、行く先々の集落でも、商売をしていて。
バレンツ商会が、如何に良心的に商売をしていたのか、見ていて思い知らされた。
まあ、バレンツ商会が来るまでは、あたしもろくでもない商会が散々来たから、それは知っていたのだが。
どこでも同じなんだなと、呆れさせられた。
弱者にはとことん強く出る。
それが人間なんだなと思う。
本当にろくでもない生き物だ。
あの悪意の塊だった、フィルフサの王種。蝕みの女王と同じだ。
人間の中には、あたしの大事な仲間もいる。信頼出来る人だっている。
でも、古代クリント王国のカス共も人間だった。
やっぱり、人間という種族は、総体としては信用できないのではないのか。そう、こういうのを見ていると思い知らされる。
やがて、大きな丘まで来ると。
手練れっぽい傭兵の一団が、迎えに来ていた。
「到着が遅れているので、王都の本部から派遣されてきました」
「おお、ありがたい。 途中で大物の魔物に阻まれてな。 此処にいるライザさんに助けて貰ったのだ」
「ふむ?」
ちらりと様子を見ると。
あのフロディアさん。
クラウディアの幼い頃からの友達で、バレンツ商会でトップのルベルトさんの秘書官みたいな事をしていたメイドさんに雰囲気が似ている人だった。
「カーティア殿、最近の王都周辺はどうか」
「問題はありません。 すぐに王都に向かい、安全圏で商品の積み卸しをいたしましょう」
「うむ、そうだな。 護衛を頼む」
丘を越える。
あたしは、魔物の気配が多いなと思って馬車を降りる。荷車は馬車に乗せたままだ。
丘から手をかざすと、幾つか大きな遺跡が見えた。
「遺跡がありますね」
「王都の周囲は遺跡の宝庫なんだよ。 遺跡が多くあるのもここに来た理由でな」
「トレジャーハントが本当に生き甲斐なんですね」
「おうよ。 ただこの辺りの遺跡は危険度が段違いでな。 危なくって、一人で潜れたもんじゃねえ」
クリフォードさんくらいの腕利きが其処まで言うなら、相当なのだろう。
手をかざして彼方此方を見ると。
北部には荒野や密林がぐちゃぐちゃに混じって点在している。
南部はというと、巨大な山がある。
穴だらけと言う事は、鉱山だと言う事だろうか。
そして、ある峠までさしかかって。
それを超えると、見えてきた。
巨大な城壁に囲まれている、巨大な都市だ。なるほど、これが王都。アスラ・アム・バートか。
なんとなくわかってくる。
これに住んでいる人間が、全能感に近いものを抱いてしまう理由が。
実質上の領地なんか、ここしかないのに。ロテスヴァッサが偉そうにしている理由もだ。
圧倒的な文明の産物。
そういう風に、この巨大都市は言える。
古代クリント王国の時代は、こんなのが幾つもあったのだろう。
そう思うと、それだけ人間がおかしくなるのも納得は出来た。
「普通お上りさんは無邪気に喜ぶものなんだが、あんたはちょっと違うな」
「ええ、まあ」
「ふっ。 あの様子だと、相当修羅場は潜っているようだし、無理もないか」
丘を降り始めると、辺りの魔物の気配が薄くなる。彼処までがピークだったようである。
というか、あの辺りが魔物にとってもエサ場の限界点なのだろう。
この辺りの街道は、魔物にとってはキルゾーンに等しく。
近付くと、命を落とすというわけだ。
周囲には、恐らく王都で暮らせないだろう、貧しそうな集落が点々としている。それらの集落には、各地の辺境集落で見て来たのと、あまり変わらない貧しそうな人が暮らしているのが見えた。
王都の城壁は非常に高いが。
あんなもの、ドラゴンが出たらひとっ飛びで飛び越えられてしまうだろう。
文字通りの張りぼてだな。
そう思って、呆れた。
或いは古代クリント王国時代の連中が魔術的な防壁を仕込んでいれば。ある程度はドラゴンを防げるかも知れないが。
あたしが見た所、それも無さそうである。
巨大な城壁の周囲は堀になっていて、水が流し込まれている。巨大な吊り橋があるが、これも籠城のためなのだろう。
吊り橋を渡って、王都に。
吊り橋は基本的に解放されているようで。通るときに多少カタカタ揺れたが。思った以上にしっかりしていた。
吊り橋を通ると、大通りに出る。
大通りと言っても、あたしが知っているものとは規模が根本的に違う。何かの祭でもやっているのか。彼方此方に旗が伸びていて、賑やかに人が行き交っていた。
スーツは基本的に名士や商人くらいしかクーケン島では着ていなかったが。
此処では誰でも着ているな。
そう思いながら、隊商から料金を受け取る。
あたしとしては、荷車を引いて徒歩でここまで来ることも覚悟していたので、多少は楽を出来た。
「また、機会があったら護衛を引き受けてほしい。 ライザリン=シュタウト殿。 君の力量は見せてもらった。 商会の人間が困っているとき、君が支援に来てくれたら、料金を普通の傭兵の倍増しにして払うように、通達を出しておく」
「ありがとうございます」
護衛をした商人と、握手をして別れる。
クリフォードさんも、軽く街について説明だけしてくれて。それで去って行った。
さて、此処からは。
まずは順番にやる事をやっていかないといけない。
タオとボオスが迎えに着てくれているとは思うが、何しろこれだけの長距離移動をした後だ。
当初の予定よりもだいぶ到着時間はずれている。
ただ、昨日。
近くにまで来たら飛ばしてほしいと言われていた、鳥便を飛ばしてある。
これは帰巣本能を持つ鳥による通達で。
早馬以上に重いものは運べないのだが。
相応に早く目的地に着く上に。
ちいさな手紙くらいなら送る事が出来る。
それもあって、一応迎えは着てくれているはずだが。
大通りを抜けるだけでも、半刻は掛かる。まあ、これなら住んでいる人間が万能感を拗らせるか。
そう思いながらも。
周囲で売っているものには興味もある。
全体的に野菜や鉱物は品質が低いな。
そう思う。
それはまあ、そうなのだろう。
タオにも話は聞いているが、このアスラ・アム・バートは幾つかの区に別れていて。中には農業区なるものもあるという。
農業区に住むことはアスラ・アム・バートでは最低の地位に甘んじることを意味するとかで。
農業区の一部は荒れ放題。
与太者の類が跋扈することすらあるとか。
工業区というのもあるらしいが。
さっき途中に見えていた山だろう。
鉱山が魔物の出現で閉鎖されて以降、遠くから来る鉱石に頼りっきりだという話もあって。
得られる鉱石が、相当に品質が落ちているらしい。
鉱石の一つ一つが、非常に高額になっているらしく。
それで相対的に質も落ちているそうだ。
色々といびつな街だな。
そう思って、中央区と呼ばれる居住地域に出る。
すり鉢状になっていて、クーケン島でも、他の集落でもみないような背の高い建物が林立している。
見た所、恐らくはスーツなんかと同じ古代クリント王国時代やそれ以前のテクノロジーによる産物だ。
これは、壊れたら多分取り返しが利かないな。
材質は石か、煉瓦か。
或いは、それに似た別のものかも知れない。
観察していると、あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。はて。あんまり聞いたことがない声だが。
振り返ると、長い坂から、手を振っている男性二人。
一人はボオスだ。あんまり変わっていない。
まあボオスは、クーケン島を出たときには、成長期が終わっていた。相変わらずのなんか偉そうな雰囲気はあるが。
別にそれは、今では敵意として向けられていない。
走り寄ってきた、長身の男は誰だ。
小首を傾げていると、走り寄ってきた男は、警戒心ゼロのまま話しかけてくる。
「ライザ、久しぶり!」
「……消去法で考えて、まさかタオ!?」
「びっくりしただろ」
びっくりした。
ボオスが苦笑いしている。
タオは、前はとにかく背が低かった。あたし達の中でも飛び抜けて背が低くて、このまま伸びないかと思っていた。
そもそもあまり良い親では無いタオの両親も、どっちも背が高い方ではなかった。
それが、今では長身のボオスに並ぶか、いやこれは。
背丈で超えているかも知れない。
腰にぶら下げている双剣が、完全に背丈に負けていない。これは、剣を作って渡して正解だったか。
「はー。 まさかこんなに三年で変わるなんてね……」
「ライザはあんまり変わらないね」
「あたしはまあ、成長期過ぎてたし。 ボオスと同じ」
「まあ、そうなるな」
とりあえず、歓談は後だ。
咳払いすると、まずは今後の事を話さなければならない。
最悪どっちかの家に居候というのも考えていたのだが。二人が学生だと言う事も考えると、ちょっとこれは厳しいか。
あたしはどうでもいいけれども。
二人がどんな噂を立てられるか、知れたものじゃない。
この王都には学園区というのがあって、其処には各地から学生が集まってきている。
実の所、タオのような純粋に学問をしに来る人間は少数派。
殆どは、故郷で箔を付ける為に、王都での学校を出たという経歴を求めに来ているのである。
ボオスなんかは典型的なそれだ。
ロテスヴァッサは実質的な領土なんて王都しかないのだけれども。
それでも、文化的には影響力はあると言う事なのだろう。
或いはだが。
アガーテ姉さんがここで取得した騎士の資格のように。
一応、王都で取得したという実用的な資格に、それなりに興味がある人間は多いのだろう。
それに、地方の有力者にとっては。
今でも人間が一番多く暮らしている都市で、苦労して取った資格というものが。
相応に箔になるのかも知れない。
カフェに出向く。
カフェと言ってもかなり大きな場所だ。内部には戦士がたくさんいる。
傭兵や、いわゆる冒険者かもしれない。
傭兵以上に緩やかな不定住生活をしている人間で。まんま傭兵になったり、場合によっては賊になったりもする。
このカフェはそれなりに雰囲気がしっかりしているので。
地方で見かけるような、すぐに与太者に早変わりするようなのはいないのだろう。
席を取り、注文をして。
値段にびっくりする。
聞いてはいたが、ちょっととんでもない値段だ。此処で暮らしていたら。三年こつこつ貯めていたお金なんて、あっと言う間に尽きるだろう。
「おっそろしい料金だろ。 王都の連中には水も湧かせない奴が多いからな。 魔術師は湯沸かしで生活費を稼ぐ事から始まることも多いんだぜ」
「僕達は、最初は用心棒から始めたんだよ」
「いやはや、手紙で知ってはいたけど、もの凄いね……」
「父さんが持たせてくれた金なんて、あっと言う間に尽きてな。 学費は一応足りたんだが、生活費がやばすぎる。 お前らと一緒に冒険する時のために鍛えてるんだが、鍛えるための用心棒家業が生命線になっちまってな」
ボオスが本末転倒だと呆れる。
二人を見て分かるが、相当に腕を上げている。この様子だと、王都周辺の街道警備で、散々魔物とやりあったのだろう。
幾つか必要事項を確認。
まずクラウディアだが、近々王都に来ると言う。
なんでも、西側の街道沿いにある集落で問題が発生していたらしく。それの対応に当たっているらしい。
レントは王都近くにいるらしいのだが、どうにも様子がおかしいそうだ。
それについてはあたしも手紙をやりとりしているから知っている。
「あいつも成長期は終わってるからな。 そこまで見かけは変わらないと思うぞ」
「何度か顔はあわせたの?」
「僕は一度だけ。 用心棒として出向いた先で、一緒に戦ったけど。 ちょっとよそよそしかったね」
「全く、あれだけお前達の結束は固かったのにな」
ボオスはぶっきらぼうに言うが。
心配してくれているのは分かる。
あの時。オーリムでボオスの呪いは解けた。
対立していた悪ガキ軍団は、今では志をともにする同志だ。
古代クリント王国の所業に、ともに怒った者同士である。
これは恐らくだが。実際に体験しないと理解出来ないだろう。
「お前はどうだ、ライザ」
「うーん、どうにも三年ぱっとしなかったね。 腕は落ちていないし、むしろ魔力なんかは伸ばしているはずなのにね」
「あれ以上かよ。 お前、人間型の太陽か何かか」
「ボオス、それはそうとして。 まずは家だね」
その通りだ。
一応、モリッツさんから預かったものについては、後で見せるとして。
拠点が必要になる。
タオが、思い当たる節があるという。
そういうと、ボオスがなんだか苦笑いしていた。
「タオ、大丈夫か。 例のお嬢さんのとこだろ、宛てって」
「そうそう。 パティはとても真面目で礼儀正しい良い子だから、ライザともすぐに仲良くなれると思うよ」
「パティ?」
「こっちで今勉強を教えてる子だよ。 家庭教師の仕事をしていて、それで学費を稼ぐ足しにしているんだ」
名前からして女の子か。
そして、ボオスの反応からして、何となくわかった。
タオも昔だったら兎も角。
今の背丈と。
昔からそうだった、整理された優れた知識があれば。或いは確かに、不思議ではないかも知れない。
咳払いすると、では一旦解散とする。
まずは、タオにその子を紹介してもらうこととする。ボオスはタオほど勉強が出来るわけでもないようなので、色々大変らしい。
箔を付けるだけでも、それなりに苦労するんだな。
そう思って、あたしは苦笑していた。
タオと一緒に、貴族が住んでいる地区へ歩く。
学園区の先だ。
貴族などの、特権階級の住む区画がある。
まあ家庭教師をしていると言う事から想像がついたが。貴族の子女か。
タオは良い子だと言っているが。どうもこじれそうな気がする。
大きな邸宅の前に。
この家だけで、あたしの家と、畑全部を合わせたくらいの広さがある。しかも庭も含めると、何倍もでかい。
しかもだ。
周囲にある似たような邸宅を見ると、もっと大きいのが幾つもある。
馬鹿馬鹿しい規模だな。そう思って、あたしは呆れた。
玄関の方に回ると、随分としっかりした雰囲気の女の子がいた。
腰には体に不釣り合いなほど大きな剣をぶら下げている。形状からして片刃か。
背丈はあまり高くない。
プラチナブロンドの髪をツインテールにしている可愛い子だが。目つきは鋭くて、獰猛な獣を思わせた。
貴族にしては出来そうだな。そう、あたしは思う。
「パティ、話を以前からしていたライザだよ」
「始めまして。 ライザリン=シュタウトです。 ライザって呼んでね」
「始めまして。 パトリツィア=アーベルハイムです。 パティとお呼びください」
「ありがとう。 よろしくね、パティ」
貴族にしては礼儀正しいな。年長者に敬語で応じて来る。
パティは16ということで、結婚適齢期だ。貴族でもクーケン島でもそれは同じだろう。
そういう事もあって、かなりぴりついた空気を感じるが。
あたしも一時期クーケン島ではかなり五月蠅かったので、その気持ちは大いにわかる。
ブルネン家の先代があたしを買っていたこともある。
事実あたしは、ボオスの嫁の最有力候補だったのだ。
「ヴォルカーさんはいる?」
「先ほど、魔物の討伐から戻られました。 ライザさんに貸し出す住居について、ですよね」
「うん。 頼めるかな」
「幾つか管理している物件からピックアップしておきました。 錬金術というものが行える程度の強度と広さが必要だという条件もクリア出来ています」
ありがとう。
そうタオが言うと、パティは少しだけ厳しく引き結んだ表情を和らげた気がした。
ああ、なるほど。
これは面倒なのがよく分かる。
ただでさえ、井戸の中の蛙の貴族どもにとっては。醜聞はほしくて仕方がないものだろうし。
今聞いた話だけでも、このパティの親は珍しい武闘派貴族だ。
実力は見てみないと何とも言えないが、だとすると偉そうにするだけが取り柄の他の貴族とあまり上手く行っていなくても不思議じゃない。
ましてやそんなパティが、明らかにタオに気があるとなると。
パティの親も、パティ自身も、相当に気を付けているはずだ。タオはこの分だと、全くなんにも気付いていないっぽいが。
見た所、パティはかなり良い戦闘の腕を持っている。
16当時のあたしに比べるとだいぶ落ちるけれど、それは育った環境だ。こんなぬるま湯で、たまに魔物と戦闘している程度では仕方がないだろう。
いずれにしても、まずは住居だ。
落ち着いてから、色々と調べる。
あたしも、三年何もしてなかったわけじゃない。
例えばこの近くに門があるのならぶっ潰すつもりだし。
その門の先にフィルフサがいるなら、叩き潰す。
王都はこんな有様でも、人間が一番たくさん暮らしている場所だ。生活圏が減る一方の人類にとって、此処を今失うのはあまりにも痛い。
あたしは古代クリント王国のカス共とは違う。違う存在でなければならない。
そうでなければ、力を持った責任を果たせなかった。
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