暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
アーベルハイム卿。ヴォルカーは、自宅に疲れた体を引きずって戻って来ていた。
無能な王室の、出来もしないことを並べ立てるだけの会議。
あーでもないこうでもないと、実体を伴わない「有識者」による空論の場。
ヴォルカーは、それにいつも現実的に最前線で民を守る身から意見を出し。
貴族の蓄財など、こんな時代には意味がないことを口を酸っぱくして告げ。
そして嫌われる。
貴族に嫌われる事は別に何とも思っていない。
実際問題、ヴォルカーを陥れようとした奴は何人もいたが。
街道が潰れたら、王都は終わると。王都中の名士にネットワークを持っている例のメイドの一族の執事とか或いは家族とかから諌言を受けたり。或いは不審死を遂げたりしていて。
誰も実現は出来ていない。
そんな連中よりも、如何に民を守るかだ。
可能な限り防衛のための予算を増やし、有能な戦士を育成しなければならない。
戦士なんて、流れ者を適当に雇えばいい。どうせ使い捨てだ。
そううそぶく貴族もいるが。
そういう流れ者すらも、もう王都には愛想を尽かして去り始めているほどなのだ。
第二都市サルドニカの勢いが増していること。
むしろ有能な人材は其方に移っていることを告げても、誰もそれを理解出来ていない。
本当に、井戸の底。
無能なカエルが合唱する、この世の悪夢だ。
そう思いながら、自宅でしばしくつろぐ。
少しだけ休んだら執務だ。
書類を処理していると、あっと言う間に夜。
夜になってからも油断出来ない。
いつ強力な魔物が出て、出動になるかしれない。
ライザくん達が来てから、随分とその心配は減った。あの超世の英傑が、王都近くにいた魔物の巨大な群れを、文字通り焼き払ってから。
随分と魔物の被害は減ったのだ。
それでも可能性はある。
だから執務の合間に風呂に入り。
食事もさっさと済ませる。
勿論それでは体が保たないことはわかっている。
パティの伴侶候補として、タオ君というとても有望な若者が出て来たのは、本当に幸運だった。
有能な人間同士を掛け合わせても、残念ながら有望な子供が出来るとは限らない。これは何人も実例を見て知っている。
だけれども、少なくともパティとタオ君の世代は、王都は安泰になる。
だから今、必死に根回しをして回っている。
後はタオ君が実績を積んで、数年以内に王都の学術院で地歩を確保してくれれば。
それで、パティの夫に相応しい格が備わる。
その頃には、引退も考えたい。
それくらい、ヴォルカーの体には無理が来始めているのだった。
風呂から上がって執務をしていると、メイド長が来る。
「お嬢様がお戻りなされました」
「うむ。 怪我などはしていないか」
「ここのところ、どんどん腕を上げているようです。 危険な戦闘を重ねている事もあるでしょうが。 怪我は目に見えて減っています」
「それは嬉しい事だ。 私以上に強くなる日は近いかも知れない。 そうなれば、武人としてこれ以上嬉しい事もない」
魔術が誰でも使えるものである今の時代。
優秀な女性戦士なんて珍しくもない。
パティは固有魔術がエンチャントと言う事もあって、戦士として大成するかちょっと心配だったのだが。
あのライザ君と一緒に実戦を重ねていて。
ぐんぐんと伸びているようだ。
「お嬢様がお土産をお持ちです」
「うむ……」
「ワイバーン肉のようですね」
「ほう」
ワイバーン。
ライザ君はあの強さだ。確かに倒せても不思議では無い。
王都の弛んだ警備の戦士では、ワイバーンなどとても倒せない。最後に撃破報告が上がったのは、王都近郊だと十二年前だったか。
それもヴォルカーが参戦した戦いで、手練れを何人も失った厳しいものだった。
パティは怪我をしていないと言う事で、本当に良かった。
とにかく、ワイバーン肉を持ち帰るのは、何か意図があっての事か。
そういえば。前にワイバーンを倒した時は、大火力で最後は消し炭にして。肉どころではなかった。
肉は食べられるのか、ヴォルカーも知らない。
メイド長が料理してくると言って、姿を消す。
そのまま執務を続けて、呼ばれたので出向く。
燻製肉を、そのまま調理したものが並んでいるが。かなり肉は贅沢な大きさで、空を飛ぶために体を絞っている鳥よりも、更に食べ応えがありそうだった。
鱗に覆われた体の中に、こんなに贅沢そうな肉があったのか。
既にパティは、席に着いて待っていた。
「お父様。 今日仕留めてきたワイバーンです。 血抜きなどは澄ませ、燻製にしてあります」
「ライザ君がいたとはいえ、良く無事だったな」
「実はライザさんいわくかなりの小型個体だったらしくて。 その、ライザさんたちは殆ど苦戦もしていなかったんです……」
「そうか。 あれだけの大魔術を放って動けるほどだ。 不思議な話ではあるまい」
パティは、少し考えた後に言う。
これほど美味しい肉は食べた事がないと。
そうか。
興味が出たので、食べて見る。
確かに、燻製肉でも信じられない程に柔らかく、芳醇な肉だ。
力がわき上がってくるようである。
思わず、驚きに目を見張っていた。
貴族がいいものを食べているわけではない。
美味として上がってくる肉もあるが、どうしても王都の農業区軽視の傾向もある。肉は新鮮なものは滅多に手に入らず、スパイス漬けだったり、燻製にされて持ち込まれるものが殆どだ。
勿論本当に美味しいものが食卓に上がることもあるのだが。
基本王都で味付けが濃い料理が出回るのは、砂糖や塩に漬け込む事で、保存をよくするため。
肉の素の味なんて、生かせる状態にないのだが。
これは、素の肉がうまいのだと一発で分かる。
久しぶりに、無言で肉を切り分けて食べる。
騎士の時代、野営しながら仕留めた走鳥のもも肉を炙って食べた時を思い出す。あの時よりも更に美味い。
スープは。
肉汁が溶け込んでいて、しかも肉が崩れるほど柔らかい。
これはすごいな。
どんな高位貴族でも、王族ですらも食べられないほどの味だ。
武勲を立てたときに、王族の晩餐に相伴したことがあるから分かる。
しばし無言で。
ついつい全て綺麗に食べ終えてしまった。
元気がわき上がってくるかのようである。
美味いだけではない。
この肉は、本当に素晴らしいなと、感心させられる。
「ワイバーンは危険な魔物だ。 この肉は、出回らない方が良いだろう。 愚かな貴族が、馬鹿な命令を下しかねない」
「はい。 ライザさんに意見して、それは配慮して貰いました」
「うむ……。 これはひとときの夢の味だと思おう。 次にワイバーン肉が手に入るとしても、それはまた奇跡が起きたときの話だ」
「分かっています」
パティも、言わなくても意図は汲んでくれた。
それにしても、久しぶりにこんなに美味しい肉を食べた。
メイド長の料理の腕は達人級で。いつも最大限味を引きだしてくれるのだが。
それにしても、これは本当に素晴らしい。
ため息をつくと、執務室に戻る。
体の中から活力がわき上がってくるかのようで。
いつもより集中して、書類を片付ける事が出来ていた。
「よし、今日の執務は終わりだ。 後は眠る事にする。 問題があったら、すぐに起こすように」
「分かりました」
頭を下げ、書類を持ち執務室を後にするメイド長。
それを見送ると、寝室に向かって、休む事にする。
疲れるとよく眠れるというのは大嘘で、実際は気絶するのが近い。
だが、今日は体に活力が戻ったようで。久々によく眠れた。
寿命を縮めるように働いていたヴォルカーだが。
久々に、寿命が延びるかと思った。
(続)
遺跡「工房」攻略完了です。
問題はその次の遺跡が、そもそも場所すら分からないか。もしくは到達が極めて厳しい事ですが……
本作の次に連載する作品はどれが良いですか?
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暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
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真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
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