暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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1、そもそも誰も何も知らず

アトリエに戻って、それでやっと一息つく。

 

途中からタオとボオスも来てくれて、手伝いをしてくれた。バレンツが派遣してくれた医師も協力して、栄養失調になっていた集落の人々を救助。それでも物資がたりなくなったので、あたしはアトリエを往復し。

 

お薬を補給して、すぐにまたとんぼ返り。

 

そうこうしているうちに次の日も夕方になり。やっと殆どの人が落ち着いた状態で、後を任せることが出来るようになった。

 

湖畔の村の人達は、連れてこられた衰弱しきった人達を見て、かなり嫌そうな顔をしたが。

 

クラウディアがひとにらみするだけで黙り込んだし。

 

顔役をしている戦士が、お前達もここに来たときはこうだっただろうがと声を張り上げて。それで以降は何も言わなくなった。

 

人間の生存圏は、後退するばかりなのだ。

 

これを見ていても、やはりそうだとしかいえない。

 

悲しい事実だ。

 

たくさんの人を救えなかった。

 

死んでいた中には子供も多かった。

 

もう体が治りそうにない程にダメージを受けている人も少なくない。

 

これが現実だ。

 

あたしは横になったまま、なんどもため息をつく。

 

爆発しそうな怒りが収まると。

 

後は、徒労だけが襲ってくるのだった。

 

クラウディアが来る。

 

ミーティングか。

 

フィーが懐から出ると、周囲を飛び回る。愛嬌でも撒いてくれているのかな。だとしたら、フィーなりに気を遣ってくれていると言う事だ。

 

有り難い話である。

 

「戻ったわ」

 

「よし、みんな。 ミーティングするよ」

 

「分かった。 それにしても、本当に腐りきっていやがるなこの王都はよ……」

 

ボオスがぼやく。

 

ボオスはどんな汚い作業でも、平気でやっていた。

 

汚物の処理とか、汚れきった人達を洗う介護とか。栄養剤を口からダラダラ零してしまう人に、根気よく飲ませるとか。

 

昔だったら、これは出来なかっただろう。

 

確実にボオスは、上に立つ人物に相応しくなろうと心がけて、それを実践していると言う事である。

 

クーケン島にいた頃の、お山の大将ではない。

 

もう殆どの貴族よりも、口が悪いだけで何もかも立派だ。

 

「調べてきたけれども、あの集落は数年前に支えになっていた戦士が死んで、それっきり放置されていたみたいなの。 特に特産品がある訳でもないし、名目上の領土さえあればヒルデスラント伯爵はどうでもよかったみたいでね」

 

「許せない……」

 

「ライザ、落ち着いて。 他にも「深森」のヒントがあるかも知れない集落が幾つもあるのよ」

 

「分かってる。 下手に動くと、それどころじゃなくなるもんね」

 

クラウディアは大人だ。

 

しっかりこういうのを対応出来るようになってきている。

 

だけれども、あたしは決めた。

 

なんとか伯爵の顔面は、何かしらの手段で蹴り砕いて、ブチ殺す。今ではない。ただそれだけの話だ。

 

いずれ、生きていた事を後悔させてやる。

 

「他の集落はどうなってる?」

 

「あの集落ほど酷い場所はないみたいで、どうにか魔物から身を守ることだけは出来ているみたい」

 

「それは素晴らしいニュースだな」

 

皮肉混じりのボオスの言葉。

 

パティは、疲れきっている様子で。何も口にできずにいる。

 

あまりにも過酷すぎる現実。

 

それが、決して心が強い方では無いパティを痛めつけているのは、明らかすぎるほどだった。

 

先に戻るかと、気を利かせるが。

 

首を横に振る。

 

此処で話を聞かないといけない。そう、自分を更に追い詰めているのは明らかだった。

 

「少し認識が甘かったね。 クラウディア、却って二度手間をかけた。 ごめん」

 

「いいんだよ。 ライザはむしろ、集落を一つ救って、助けられる人をみんな助けたんだから」

 

「……ちょっと僕も次からは行くよ。 他の集落は大丈夫だと聞くけれど、これは何があるか分からないからね」

 

「頼むタオ」

 

頷くタオ。

 

レントが、ぼそりと言った。

 

「それで、遺跡の手がかりとやらはどうする。 聴取なんか出来るのか」

 

「ライザの薬はとても良くきいていて、バレンツから派遣した医師が驚くほどの回復だと連絡をくれているわ。 体調が戻り次第、バレンツの人間の方で聴取はしておくね」

 

「そうか。 いずれにしても、想像以上に厄介かも知れないな。 魔物の数も、凄まじかった」

 

「……」

 

クリフォードさんが咳払い。

 

皆の視線を集めると、歴戦のトレジャーハンターらしくいう。

 

「こう言うときは、一度足を止めるもんだぜ。 俺もトレジャーハンターに命を賭けてはいるが、だからこそそれが道楽だって事も分かってる。 此処は、まずは人の命を優先する所だろう」

 

「……そうですね」

 

勿論、今の遺跡調査も、長期的に見れば人の命を考えての事だ。

 

だが、この行動で多数の命を取りこぼしたら、それこそ何の意味もないのである。

 

良く多数のために少数を斬り捨てるとかほざく輩がいるが。

 

その手の輩は。自分と身内のためにどうでもいい人間を斬り捨てているのが実情であって。

 

美辞麗句だの覚悟だのを口にしながら。

 

身内しか守っていないのが現実だ。

 

あたしは、そんなカスと一緒になるつもりはない。

 

「よし、タオ。 次に行くべき集落は」

 

「この集落がいいと思う。 明日は僕も行くから、案内をするよ」

 

「分かった。 では今日は解散。 とにかく、丸二日外にいたメンバーもいるし、みんなゆっくり休んで疲れを取って」

 

ミーティングを終える。

 

あたしはパティをアーベルハイムに送る。

 

此処でタオが送ると、色々面倒だからだ。

 

パティはすっかりしおれていた。

 

「ライザさん。 私、貴族であることに怒りすら感じます。 あの集落の惨状を見て、最初に体に来たのが吐き気だったのも許せません。 まずどうして怒ることが出来なかったのか。 自分の惰弱さに、怒りでふるえすら感じます」

 

「パティ。 その怒りを忘れないで。 絶対に、同じ事をする貴族にならないって今覚悟を決めて」

 

「……はいっ」

 

「それでいい。 それでこそ本来の意味での貴族だ。 王都に巣くってるカエルの群れを、いずれ掃除するときに、その怒りを叩き付けて」

 

顔を上げるパティ。

 

まだ本調子ではないようだが。

 

それでも、これでまた一皮剥けるはずだ。

 

パティを家に届ける。アーベルハイム卿は出かけているらしく、メイド長が出たので。パティを預ける。

 

後は、あのメイド長がどうにでもしてくれるだろう。

 

あたしは風呂に行くと、まずは汗を流す。

 

まあ、野営は慣れっこだ。

 

今更これくらい、どうとも思わない。

 

疲れを取ってから、カフェに出向いて。いつもの倍くらい注文して、がつがつと食べる。どうやら噂になっているらしく、声が聞こえる。

 

「東の街道の方で、昨日空が燃えたらしいぞ」

 

「南の方であった、あの極大魔術と同じ使い手によるものらしい。 魔物の群れをまとめて消し飛ばしたとか……」

 

「とんでもねえな……年単位で片付ける事を検討する魔物の群れだっただろうに」

 

「森が燃えなかったのは良かったな。 これで多少は街道も安心して通れるだろ」

 

勝手なものだな。

 

自分達が魔物をしっかり駆除できていなかったと、反省している声は聞こえない。

 

食事が来た。栄養を多めに指定したものばかりだ。

 

しばし無心で食べる。

 

体はまだ若いから、こう言うときは貪欲に栄養を求めてくる。向かいにクラウディアが座ったので、ちょっと手は止まったが。

 

「ライザ、疲れている所ごめんなさい」

 

「ん」

 

クラウディアが音魔術で結界を展開。これで外に会話は漏れない。

 

更に、側に二人、戦士の護衛がついている。

 

「機械の修理の目処がついたわ。 明日の夕方、頼めるかな」

 

「分かった。 今のうちに、やれることはやっておこう」

 

「ありがとう。 遺跡で封じているものが、オーリムへの門でないことを今は祈ることしかできないね」

 

「本当だよ。 でも、その可能性は上がるばかりだ」

 

今までの残留思念を見る限り。

 

それと戦闘をずっとしていたことが分かっている。

 

強大な魔物だとしても、アーミーがいた時代の人間を脅かすほどではないだろう。

 

事実五百年前の戦いでは、精霊王が古代クリント王国に従えられて、フィルフサと戦ったのだ。

 

精霊王ですら、アーミーを組織する人間には勝てなかった。

 

それ以上の魔物がいたとは考えにくい。

 

魔物が人間に優位を取ったのは、古代クリント王国滅亡後。

 

人間の力が衰退してからだ。

 

それはただの事実であって。

 

なんら疑う余地のない歴史的真実。

 

だとすると、やはり消去法で。

 

古代クリント王国が滅ぼした、この辺りにあった国が封じていたのは。魔物よりも遙かに危険な存在。

 

要するに、フィルフサ以外には考えられないのである。

 

タオも恐らくはそうだろうと、この間言っていた。

 

あたしもそう思う。

 

半年に一度くらいグリムドルに足を運んで、それでグリムドルに近付くフィルフサを撃退して回っているが。

 

雨による弱体化が入って、なおもまだ油断出来ない相手だ。

 

今のうちに、覚悟は決めなければならない。

 

「次の機械は何?」

 

「保存食を自動生成する機械で、少し規模が大きいの。 ライザでも、一日がかりになるかも知れない」

 

「なるほどね。 分かった。 じゃあ、明後日の探索は入れない方向で行こう」

 

「ごめん。 ただ、ライザが動きやすくなるように、次の機械を直せばなるはずだから」

 

クラウディアがそう申し訳なさそうにすると、あたしもちょっと苦しいか。

 

クラウディアも注文して、夕食を一緒に食べる。カフェのマスターも、クラウディアが見た目よりずっと食べるので、驚いていた。

 

夕食を終えると、後はアトリエに。

 

フィーが不安そうに、あたしを見上げてくる。

 

「フィー……」

 

「大丈夫。 あたしが怒るのは、理不尽と、弱者を踏みにじって平気な顔をしている奴だけだよ。 ごめんねフィー。 怖かったでしょ」

 

「フィー、フィーフィー!」

 

多分、平気だよと言う意味か。

 

だとすると嬉しい。

 

とにかく、あたしも今日は余裕が無い。

 

残りの魔力を絞り出しておいて。

 

それをフィーに食べさせると、後は寝ることにした。

 

疲れが溜まっていて、すとんと落ちてしまう。

 

それくらい、疲れが酷かった。

 

助けられなかった人だって多い。

 

もっと早くに、あの集落の事を知っていれば。

 

そう思うと。あたしは、やっぱりハラワタが煮えくりかえるかと思うのだった。

 

 

 

翌日。

 

皆、疲れが多少残っているが、それでもどうにかなると判断。

 

あたしは、明後日は探索をしないこと。

 

今日中に、出来る事は可能な限りやることを告げて。

 

すぐにアトリエを出た。

 

パティは大丈夫そうだ。まだ体も若い。昨日ぐっすり寝て、それで体力を取り戻したのだろう。

 

街道を走る。

 

パティが、途中で告げてくる。

 

「ライザさん、今日回る予定の集落の一つは、例のヒルデスラント伯爵の名目上の領地です。 昨日一昨日の件もあって、或いは誰かしら息が掛かった人間が来ているかも知れません」

 

「そう。 どうでもいいかな」

 

「邪魔をして来るかも知れません。 その時は、私に任せてください」

 

「……分かった」

 

まあ、あたしも邪魔をされたら首を蹴り折るくらいには頭に来ている。此処は、パティに任せるべきだ。

 

パティはアーベルハイムの令嬢であり、代理とも言える。

 

相手が貴族の威を借りる狐だとしたら。

 

そのままパティは若き虎だ。

 

街道を逸れる。

 

相変わらず酷い道だ。集落へとりあえず到着。とりあえず、なんとか生活は出来ているようで安心した。

 

手分けして、情報を集める。

 

クリフォードさんとタオが、連携して情報を集めていく。あたしはレントとセリさんをつれて、集落の外に。

 

そして、魔物をまとめて片付ける。

 

一昨日の巨大な魔力については、近場の魔物も感じ取ったのだろう。

 

あたしの姿を見て、明らかに逃げ腰になる奴がいる。

 

クーケン島近場の森でも、似たような行動を魔物が取るようになっている。

 

無駄な戦闘を避けられるならそれに越したことは無いが。

 

今は、魔物が増えすぎている。

 

可哀想かも知れないが。

 

見つけ次第、殺処分だ。

 

勿論抵抗はしてくるが、容赦なく仕留めていく。途中から、パティも戦闘に加わって、片っ端から敵を始末する。

 

クラウディアは、今日も王都で政治的なアレコレを頑張ってくれているはず。

 

いざ、遺跡の場所を特定出来たら。

 

その時には、来て貰ってしばらくは時間も採れないという事もある。

 

今のうちに、処理出来るものは、全て処理して貰わないと困る。

 

倒した魔物は、全て解体。

 

そして、肉や皮などの大半は、集落に寄付した。

 

凄まじい戦果に、どこか胡散臭そうに此方を見ていた集落の人間は戦慄したようで、それで一気に口が軽くなる。

 

「どう、タオ、クリフォードさん」

 

「ある程度分かった。 次の集落に行こう」

 

「此方もだ。 かなり興味深い話が分かったんでな。 他で裏付けを取りたい」

 

「よし……」

 

すぐに移動開始。

 

タオとクリフォードさんは、方向性は違うが二人ともスペシャリストだ。期待していいだろう。

 

そのまま移動して、次の集落に。

 

途中に出る魔物は、大した奴はいない。

 

人間を舐め腐っているようなのは、その場で殺す。

 

あたしの魔力を感じて、それで逃げ腰になるようなのも殺す。とにかく、魔物は徹底的に間引く。

 

今は魔物が増えすぎている。

 

生物学的な意味でも、バランスを崩すほどに。

 

だから駆除はやむを得ない事だ。

 

本来だったら、こんな殺戮はやるべき事ではないのだろうが。

 

今はそれどころではないのだから。

 

無言で魔物を蹴散らし、血を浴びながら次の集落に。相応の数の魔物の死体を荷車に積んできていたので。

 

即座に集落に引き渡し。

 

聞き込みは、タオとクリフォードさんに任せる。

 

此処は川が近くに流れているが、周囲の植生はどうにも豊かとは言えないようだ。セリさんが目を細めて、周囲を見ている。

 

「セリさん、これはちょっとおかしいですね。 どういうことでしょうか」

 

「これは恐らく毒物が原因よ」

 

「毒物」

 

「人間の生活排水、ではないわね。 多分上流に、何か毒を流すものが存在していると見て良いわ」

 

なるほどね。

 

それはちょっと、色々な意味で良くないかも知れない。

 

ともかく、魔物の駆除からやる。

 

川からサメが上がってくる。本当にどこにでもいるな。かなり大きなサメだが、これくらいならどうにでもなる。

 

次々に上がってくるが、全部始末するだけだ。パティも、もう大きな相手に臆さなくなっている。

 

というよりも。

 

昨日の一件で、更に一皮剥けた。

 

まだ技術は未熟だが、敵に突貫して、容赦なく刃を振るえるようになっている。それを見て、レントも何も言わない。

 

技術的な未熟さは、本人も分かっている。

 

改善するにはどうすればいいのかも、理解出来ている筈だ。

 

後は戦闘経験。

 

実際に試す。

 

この二つ。

 

パティはそれを、誰よりも真面目にやっている。だったらレントが何か言う事は、一つもないという訳だ。

 

あたしもそれには同意である。

 

最後のサメを、熱槍を叩き込んで仕留める。捌いて、肉を集落に持ち込む。一応腹の中身は確認するが、人間やその残骸が入っているようなことはなかった。

 

「ライザさん、此処が……」

 

「分かってる」

 

どうも役人らしいのがこっちを見ている。

 

だけれども、苦もなく多数のサメを仕留めて、集落に運び込んだのをみて縮み上がってしまったらしい。

 

後から散々嫌みでも言ってやろうと思っていたのだろう。だが、所詮は王都育ち。恐らくは王都からロクに出た事もなかったのだろう。

 

役人に、パティが歩み寄る。

 

そして、最敬礼をすると。青ざめながら、相手も応じていた。

 

貴族の間だけで伝わるような、回りくどい会話をしているのが聞こえる。視線が一瞬だけパティと交わる。こっちは任せて欲しい。そういう意図を感じた。

 

あたしは、住民に肉やら皮やらを分けてしまう。

 

途中で、タオとクリフォードさんと合流。

 

毒の話をすると、頷かれた。

 

「セリさんは流石だね。 実は、この辺りには古くから川に呪いが掛かっているという逸話があるらしくてね」

 

「毒というのなら確かにそれもありそうだな。 魔物は適応してしまっていて対応できているのだろうが、人間はそこまで対応できる程簡単に体がかわらねえからな」

 

「よし、次の集落へいこう」

 

「まったく、元気だねえ。 俺ももう少しその若さが欲しいぜ」

 

クリフォードさんが言うが。

 

この人だって、充分に若い。

 

ともかく、次だ。

 

懸念していた横やりは入らなかった。

 

貴族共はこっちを蛮人とか思うかも知れない。だが、勝手に思っていろというのがあたしの本音。

 

井戸の中で偉そうにするのが文明人の仕草か。

 

くだらない自尊心のために、餓えている人達を見殺しにするのが指導者のやることか。

 

その程度の事も出来ない人間が。

 

貴族を気取るなんて、はっきりいって殺意しか湧かないのである。

 

次の集落に到着。

 

すぐに聞き込みを始める。

 

あたしは手をかざして、森の方を見る。

 

密林だ。

 

だが、どうにもおかしい。

 

奧に強い魔力を感じるとか、そういうのが全く無いのである。不自然過ぎるほどの場所だ。

 

こんな巨大な森で。

 

全く魔力とか感じないとか、そんなのがあるか。

 

逆に怪しい。

 

ともかく、魔物を蹴散らす。

 

この辺りのは、街道に出るのと殆ど差が無いから、苦労する事はない。勿論油断すれば死ぬこともあるだろうが。

 

そんなことはしない。

 

手当たり次第に魔物を駆除していると、やがて日が傾き始めた。

 

だが、タオもクリフォードさんも聴取を進めてくれているはずだ。

 

大きめのラプトルを仕留める。

 

黒焦げになった部分を踏み砕いて、食べられる所を血抜きした後切り分ける。皮も結構良さそうだが。

 

もっといいのを既に所有しているから、今の時点ではいらない。

 

パティも必要ないといったので、集落の人達に供与する。金に換えれば、少しは生活も楽になるはずだ。

 

「タオ、クリフォードさん、どう?」

 

「うん、一日資料整理の時間が欲しい」

 

「こっちもだ。 多分それである程度目星はつくと思う」

 

よし。

 

それなら充分過ぎる。

 

この辺りの魔物も、相当に間引くことが出来た。

 

後は、体勢を立て直せば、この辺りの集落の安全は、飛躍的に向上するはずである。

 

少しでも、人間の衰退を遅らせる。

 

魔物の数を間引く。

 

その両方を、同時にできた筈だ。

 

勿論、あたし達のような活躍を、誰もが出来る訳でもないことは分かっている。

 

だからこそ、こうしてやっておく。

 

後は、現地にいる人達の努力次第。

 

そういう状況にしておくのだ。

 

アトリエに戻る。クラウディアが来ていたので、すぐにミーティングに。おおざっぱな話を、タオがしてくれた。

 

「通称迷いの森。 あの辺りの密林の、現地民の呼び方だよ」

 

「普通の密林に見えたが、確かになんだか妙だったな」

 

「ああ。 ある程度からは絶対に奥に行くなと言うのは、現地住民の鉄則だそうだ。 魔物がいるというのもあるんだが、それ以上に分からないうちにいなくなるらしい。 どれだけの人数でいってもな」

 

以前、二十人くらいの戦士が、行方不明者を捜して赴いたらしいのだが。

 

一人も生きて帰ってこなかったそうである。

 

それもあって、あの密林に現地住民は絶対に近付かない。

 

「上流から流れているらしい毒も影響しているのかな」

 

「それについてはまだ何ともいえないけれど、毒の成分については分析をしてみるよ」

 

「お、出来るんだ」

 

「一応図書館に資料があるからね」

 

なるほど、これは心強い。

 

後は任せてしまって大丈夫だろう。

 

あたしは、ミーティングを解散。

 

そして、クラウディアと、それとパティと一緒に工場に出向く。

 

パティにも声が掛かったのだ。

 

アーベルハイムが、王都での機械復旧作業に関わっている。それを足がかりに、クラウディアが話を進めているらしく。そのためには、パティが責任者として顔を出す方がいいらしい。

 

前の機械修理の時もパティが顔を出していたが。

 

今回も、顔を出した方が良いくらい、面倒な案件と言う事なのだろう。

 

ともかく、王都のくだらない政治的なパワーゲームなんてどうでもいい。

 

多くの人の生活が機械の復旧で向上すればあたしには成功だ。

 

そして、クラウディアはあたしの意図を汲んでくれている。

 

パティも。

 

だから、あたしは機械を直す。

 

ただ、それだけだ。

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