暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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完全に壊れてしまっている王都の機械類。

テクノロジーは復興どころか衰退の一途を辿っています。

それに歯止めを掛けるため。

ライザは時間を捻出して、錬金術を駆使しての機械の修理を行います。

自分にそれが出来るから、です。


2、機械は何も語らず

確かに、かなり巨大な機械だ。

 

工業区の一角。

 

既に廃墟になって久しいらしい工場に入って。あたしはそこで、ずっと動き続けていたらしい機械を見た。

 

しばし観察して、構造を確認する。

 

ベルト状の部品があって、其処で中途の段階のものを運ぶ。

 

加工する場所。

 

分別する場所。

 

様々な機能がついている。

 

だが、どれも酷く痛んでいるのが明白だった。

 

偉そうな鯰髭の男が出て来ている。ふんぞり返っている其奴の事を、パティが耳打ちしてくる。

 

「リヒトラグス公爵です。 三人、メイドとして例の一族がついていて、そのおかげで家が回っている人物です」

 

「ふうん……」

 

「まったくこんな夕方にこんな場所に呼び出しおって! 今日のディナーは楽しみだったのだぞ!」

 

「この機械の修復に関しての書類に押印されたのは公爵閣下です。 上に立つ人間の責任を果たしてください」

 

無表情で。

 

ちょっとパティの所にいる人より背が高い、だけど顔が同じなメイドの人がそう淡々と告げる。

 

かなり年配のようだが、老いはそれほど顔に出ていない。

 

少なくとも、親同然の相手。それも絶対に逆らえないタイプの親同然の相手なのだろう。ぐっと公爵だかがだまる。

 

クラウディアが来ると、不満そうな視線を公爵が向けるが。

 

その間にあたしは公爵を観察し終えていた。

 

身体能力、ゴミ以下。

 

魔力もカス。

 

頭の回転も遅い。

 

貴族が優秀だのと言う都市伝説は、誰が作りあげたのか。本当に、これを見ていると失笑が湧いてくる。

 

クラウディアは、丁寧に胸に手を当てて礼。

 

相手も不満げに返していた。

 

「リヒトラグス公爵、よくおいでくださいましたね」

 

「ああ、責任者であるからな」

 

それを忘れていた癖に。

 

ともかく、クラウディアがこれから機械を分解して修理することを説明。何かメイドに耳打ちする公爵だが。

 

しっかり聞こえている。

 

多分クラウディアが、音魔術で届けてくれたな。

 

クラウディアもこの阿呆の相手に、相当腹が据えかねていたのがよく分かる。

 

「あれが例の蛮人だろう。 魔物の群れを鏖殺したとか言う。 幾つかの機械を直したとか聞くが、信用して良いのか」

 

「現場で確認しましたが、完全に破損していた機械が修復されています。 どうやっているのかはよく分かりませんが、事実として受け止めるしかないでしょうね」

 

「学術院が何百年かけてもどうにもできなかったのにか」

 

「学術院の教授達は、殆どは過去の資料をまとめることが仕事か、もしくは貴族の名誉職となっていました。 ただそれだけの話です」

 

メイドさんの言葉に苦虫を噛み潰す公爵。

 

なんだ。

 

自分らが無力であることを、しっかり自覚できているでは無いか。

 

ささやかなプライドを金で支えていると。

 

思うに、古代クリント王国が邪悪な錬金術師に乗っ取られたのも、こういうのが国政を回していたからなのだろう。

 

「ではライザ。 修復を開始してくれる?」

 

「んー、これはかなり掛かると思う。 二日丸々掛かると思うけれど、大丈夫クラウディア」

 

「二日……」

 

「部品数が多い、劣化が酷い、部品が大きい。 まあ一つずつ直すけど、やっぱり手間は掛かるよ」

 

あたしとしては、クラウディアと親しいことを隠す必要もない。

 

クラウディアの方でも、その方がむしろやりやすいだろう。

 

しばし考えてから、クラウディアは頷いていた。公爵にも見えるように。

 

「最悪で三日という話はしていたので、何とかしてくれるならかまわないよ」

 

「ふむ、分かった。 じゃ、早速取りかかるわ」

 

あたしが取りだすはレンチ。

 

こういうのは、既に幾つも準備して、釜で調合済だ。

 

ネジなどは構造を確認したし。

 

機械を直すときに、付帯部品の構造は覚えた。

 

大きめのネジをとめるときに使うレンチや、ネジを締め込むときに使うドライバーは、既に揃えてある。

 

すぐに分解を始める。

 

そして、荷車で、アトリエとピストン輸送を開始。

 

パティに手伝って貰うが。パティは装備品もある。力が見た目よりずっとある。

 

大きめの金属の塊を、あたしとパティがそれほど苦労せず持ち運んでいるのを見て、公爵は度肝を抜かれているようだった。

 

「あ、あれはアーベルハイムの令嬢だろう。 若くして武名名高いとは聞いていたが、あれほどの筋力があったのか」

 

「将来王都最強の武人になることでしょう」

 

「し、信じられん……」

 

パティが聞こえてきている会話にげんなりする。側で墨付きを出しているのが、リヒトラグス公爵を実質上コントロールしているメイドの一族の人間だというのも余計に色々と思うところがあるのだろう。

 

それにパティは自分の強さに自信がない。あたしには分かる。自分だけの力ではなくて、あたしが渡した錬金術の装備幾つかがこのパワーの根元だと知っているからだ。もう少し戦歴をつけないと、多分力を引き出すことは厳しいだろうとあたしは思う。

 

「大丈夫、手指とか傷つけてない?」

 

「大丈夫です。 どれくらい防御が向上しているかも分かってきたので……」

 

「よし。 念の為に口に出して言うけれど、とにかく切れ味が鋭いから気を付けてね。 自動回復にも限界があるから、とにかく「擦らない」ように。 機械そのものが不衛生だから、何が起きるか分からないよ」

 

金属の恐ろしさは、「滑った」時に発揮される。その時、金属は容赦なく柔らかい体をざっくり切る。

 

それが刃物でなくてもだ。

 

パティも手袋を確認しながら、慎重にパーツを扱っている。大きなパーツは、クラウディアが持ち込んだ大きめの荷車に乗せて運び、アトリエ前で解体する。人払いは、クラウディアが雇った戦士達がやってくれた。

 

途中で、パティがクラウディアに何か言いに行き。すぐに戻ってくる。

 

何度も往復しているうちに、完全に周囲は暗くなった。

 

機械の三分の一は分解できたか。

 

此処からは一旦修復を開始だ。

 

頭の中に設計図はある。

 

錬金釜に部品を放り込んで、どんどん修復する。酷く汚れているものも多い。そういう汚れも、全て溶かしてしまう。

 

ジェムがドカドカ出てくる。

 

あたしの魔力もどんどん吸われる。

 

フィーに、ジェムの一部をあげる。フィーは喜んで飛び回っていたが。だが、あたしの方を心配そうにも見ていた。

 

「よし、これは修復完了。 そこにおいて……」

 

「ライザさん」

 

「どうしたの、パティ」

 

「今日はここに泊まらせていただきます。 お父様には、クラウディアさん経由で既に連絡しておきました」

 

そっか。

 

パティも自分の未熟は理解している。

 

どんどん先に行こうと頑張っている。

 

野営だけじゃない。

 

あたしと直接一緒に生活する事で、もっと経験を積みたいのだろう。

 

「大衆浴場は流石にハードル高いだろうから、お風呂だけは自宅でこなしてきて」

 

「えっと、分かりました」

 

「うん。 じゃ、あたしは調合と修復を続けてるから。 急いで行ってきて」

 

「急ぎます」

 

パティがひゅんとアトリエを出ていく。

 

どんどんフットワークが軽くなってきているな。

 

そう思って、あたしは良いことだと思った。

 

パティはとにかく、規約を守ることに関しては非常に出来る。自分に対しても厳しい規約を課して、自分を律している。

 

まだ若いのに、それが出来るのはとても立派なことだと思う。大概の人間は、欲望に負けてしまうのだから。

 

パティはタオが好きで。

 

その欲望はずっとある筈だ。

 

それに対して、きちんと自己制御が出来ているのは凄い。一番自己制御が出来ない年齢なのに。

 

だから、パティは大成できるとあたしは思うし。

 

将来の歪みについても、心配だとも思っている。

 

パティが戻って来たので、後は無言でひたすら機械の調整を行う。かなり遅い時間まで作業して。

 

そして、切りが良い所でぴたりととめた。

 

「よし、此処まで。 パティ、そっちのベッド使って。 あたしは床で寝る」

 

「えっ、でもそんな」

 

「今日はそれでいいの。 その内、もし同じ機会があったら、パティも床で寝てちょうだい」

 

「……分かりました。 それでは、ベッド使わせて貰います」

 

頷いて、作業を切り上げる。

 

フィーがベッドにパティが寝たのを見て、困惑していたが。

 

結局あたしの側に来た。

 

どれだけパティと仲良しでも、こう言うときはあたしと一緒が良いんだな。

 

そう思って、ちょっとだけ嬉しかった。

 

 

 

翌朝。

 

ミーティングをするが、今日はあたしとパティは機械に集中。タオとクリフォードさんは回収してきた情報の解析に集中。

 

つまり、王都の外には出ない。

 

セリさんが挙手する。

 

「ちょっと見て来たいところがあって。 誰か手伝ってくれないかしら」

 

「王都の外か」

 

「ええ」

 

レントが、俺が手伝うと言う。

 

セリさんはしばしレントを見てから、頷いていた。

 

レントの護衛があれば充分な場所なのだろう。一応、あまり危険な所には行かないようにという話と。レントに、後でどこに行ったか説明をと言う話をしておく。

 

これがプライベートなら兎も角、皆のミーティングで話す事だ。

 

しっかりそういうのは、区別しておくべきである。

 

クラウディアは今日も機械の修復周りで調整を続けてくれるらしい。

 

更にはボオスも、一緒にその手伝いをするとのこと。

 

ボオスは将来を見越して、明らかに問題がある客のあしらい方を此処で学ぶつもりなのだろう。

 

皆、それぞれ経験を積むつもりなのである。

 

解散とあたしが声を掛けると。

 

さっと皆散る。

 

あたしは昨晩修復を終えたパーツを、パティと一緒に荷車に乗せると、工業区へ運んでいく。

 

そして機械を現地で更に分解し。

 

どんどんアトリエと往復しながら、修復していく。

 

ぴかぴかになっていくパーツを見て、昨日同様に来ている公爵どのは驚きをずっと隠せずにいて。

 

やがて、どうあってもインチキではできっこないと判断したのだろう。

 

むしろ青ざめ始めていた。

 

何となく、理由はわかる。

 

こいつら、あたしのことをまだ半信半疑でいて。機械の修理を出来る事にも、実感が無かったのだ。

 

それがこんな調子で、機械がポンポン直されていく。

 

ここ何百年も、壊れるだけ、どんどん性能が落ちていくだけだった機械が、だ。

 

それが恐怖になって来たのだろう。

 

まああたしにはどうでも良いことだが。

 

「パティ、次のはかなり危ないよ。 持つ場所は気を付けて」

 

「はいライザさん」

 

「よし、3、2、1」

 

0と同時に持ち上げる。パティも慣れてきているが、だからこそに敢えて声を掛けながら動く。

 

荷車で運ぶ最中も、劣化しているパーツがこれ以上壊れないように気を付ける。

 

いっそ錬金釜を工場に持ち込むのも手なのだが。

 

手の内は見せたくないし。

 

何よりも、錬金術をやっている最中は、流石のあたしも無防備だ。パティだけでは守りきれないだろう。

 

アトリエで、パーツを修復し。

 

どんどん工場に持ち帰る。

 

更にパーツをアトリエに持ち込み。どんどん時間が経過していく。

 

作業が進んだところで、昼食に。

 

パティはずっと働いているが、基礎体力はあるのだろう。吐くようなこともなく、結構平気な顔をしている。

 

あたしもクーケン島で色々教えているが。

 

基礎体力が無い子は、結構簡単にへばる。

 

こればっかりは、素質云々の問題ではないので。

 

努力の結果で、良いことだと思う。

 

「きょ、今日は凄く量が多いですね」

 

「これからも力仕事を一日やるからね」

 

「……そ、そのライザさん」

 

「うん?」

 

パティが言うには、今日はアーベルハイムの浴室を使って欲しいというのだ。

 

小首を傾げるあたしに、パティは続ける。

 

「何百年も、全く直る見込みがなかった機械を直す作業に立ち会わせていただいていますので。 せめて良いお風呂を使って欲しいなと」

 

「うーん、そうだね。 じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

「一応、早い内に連絡をしておきます」

 

「うん、分かった。 勿論、無理と言われるようだったら良いからね」

 

あたしとしても、アーベルハイム家の事はある程度まともな貴族として信頼しているけれども。

 

家人がみんなまともかどうかは話が別だ。

 

だから気を遣ったのだが。

 

パティの様子だと、あたしにかなり気を遣ってくれているようなので。

 

まあ、大丈夫だろう。

 

食事を終えたら、すぐに作業に戻る。

 

かなりのパーツを修復しているが、まだ残り四割くらいは修復できていない。大きなパーツは構造を把握した上で、熱魔術で裁断したりして持っていく。

 

その様子を見て、不安そうにしている者もいるが。

 

あたしが熱魔術のスペシャリストである事は、クラウディアが説明してくれる。

 

まあ、金属板の精密な溶接くらいは朝飯前だ。

 

錬金釜を使うまでも無い。

 

作業を続けていく。

 

夕方少し前には、機械類の分解は完了。後はアトリエに運び込み、パーツを修復して行けばいい。

 

空間把握には自信がある。

 

この規模の機械だったら、壊す恐れはなかった。

 

 

 

翌朝のミーティングも、同じように進める。

 

ただ、一つ違う内容を告げたが。

 

今日中に機械の修復は終わる。

 

それを聞いて、タオが頷いていた。

 

「流石だねライザ。 クーケン島の地下を修復したときから腕は落ちていないみたいだね」

 

「あの、確かタオさん達の故郷ですよね。 地下に機械があったとか」

 

「人工島だったんだよ。 色々調べて分かったんだけど。 古代クリント王国時代のね」

 

「……」

 

改めてタオがそう言うと。

 

クリフォードさんが興味深々の様子で身を乗り出し。

 

パティが黙り込む。

 

それを、あたしが修復した。

 

その事を理解したからだ。二人とも。

 

別にバカでもかまわない。此処では、それぞれのスペシャリストが必要なのだから。

 

ただ、機械なんて何百年も直る見込みもなかった代物なのだ。

 

それが、古代クリント王国の超ド級の機械を、システム丸ごとあたしが直した。

 

その事実を、今。

 

一緒に働いて、理解して。凄まじさに戦慄しているのだろう。

 

セリさんは、今日は一日畑仕事らしい。レントはどうしようか悩んでいたが、今日はもうこっちも力仕事は無い。

 

クラウディアが、声を掛ける。

 

「レントくん、ちょっと街道の方で魔物が出ているらしくて。 今日はアーベルハイム卿が出る筈だから、同行してくれる?」

 

「おう、任せておけ」

 

「じゃ、これで解散だね」

 

さて、昨日の話はあたしもまとめておかないと。

 

昨日のセリさんは、近場の森の中で数種類の植物を採取。植物の内容は、どれも生命力が強いもので。

 

あたしも知っている休作時に使うものだ。

 

畑はずっと使っていると駄目になってしまう。そこで、作物を植えずに休作と呼ばれる事を行う。

 

その時も土を剥き出しに放っておくのでは無く。

 

土地の栄養を戻すための草を植えておくのである。

 

これが休作用の植物だ。

 

セリさんは、良く知られているものを採取していたが。ただ、どこの土も強い魔力を帯びていたようである。

 

それを借りている畑で掛け合わせながら、強化しているようである。

 

ちょっと何をしているのか理解は出来ないが。

 

いずれにしても、悪い事を目論んでいるわけではないだろう。

 

タオとクリフォードさんだが、今はもう王都北東部の密林に遺跡があると判断。

 

危険な魔物と、何が起きるのかの分析をしているようだ。

 

多分、今日中に結果が出るだろう。

 

その間は、あたしはパティと機械を直すだけである。

 

なお、昨日の夜はパティの家でお風呂を使わせて貰ったが。

 

大衆浴場ほど広くは無かったものの、とにかく大きくて快適な風呂だった。

 

こんなものを使っていたら、贅沢で頭が麻痺しそうだなとあたしは思ったけれども。

 

まあ壊すまでもないだろう。

 

ただ、なんなら貧しい人にも公開してあげて欲しいなとは思うけれど。

 

ミーティングが終わったので、パティと連携して、昨日のうちに修復したパーツを全て工場に運び。

 

そして、残っている未修復パーツを全て修復してしまう。

 

終わった後は、組み立て開始だ。

 

工業区にある工場に急ぐ。

 

ピストン輸送している時には急いでいたので気付かなかったが。

 

例のなんたら公爵の他にも、何人か貴族が来ているようだ。パティに紹介されたが、聞いた横から忘れてしまった。

 

クラウディアが、山となっている修復済のパーツの周囲に戦士を配置して、不埒者が触らないように見張ってくれている。

 

さて、此処からだ。

 

まずは、パーツを一つずつ取りだし。

 

基礎部分から、機械を修復して行く。

 

この機械は保存食を量産するものなのだが。鶏卵や麦粉などの材料を複数投入して、それを途中で加工していくものだ。

 

その加工の過程が長大で、煮たり焼いたり色々ある。

 

その過程のパイプなどが汚物同然の状態の加工物で詰まっていたり。

 

或いは腐食していたりで。パティは気絶しそうな顔をしたりしていたが。

 

それでもなんとか耐えたのは偉い。

 

そのまま組み立てを実施していく。

 

ざわざわ話を貴族達がしているが、多分クラウディアは今度は音魔術で、こっちに届かないようにしてくれている。

 

恐らくは、集中を続行できるようにするため。

 

気を遣ってくれている。

 

流石クラウディアである。あたしの女房役というに相応しい。ルベルトさんが、あたしが男だったらクラウディアを嫁がせたとか言っていたのを思い出す。残念ながらあたしもクラウディアも女で、しかも性的傾向は異性愛なので、世の中は上手く行かないものである。

 

パティと手分けして修復を続ける。

 

この機械は大きいだけあって、動力は四つもあった。これも分解して理解したのだが。どの動力も、既に死んでいる。

 

これを大気中から魔力を吸収する仕組みを更に強化した上で修復。要所に埋め込んでいく。

 

後は、パティと一緒に組み立てをしていく。

 

パティはどのパーツがどこに行くかは分からないので、あたしがパーツを率先して持ち出し、順番に運んでいき。

 

支えて貰い。

 

どんどんあたしが直していく。

 

時には溶接もしていく。

 

ネジなどは出来るだけ作ったが。大きすぎるパーツは切り刻んで運び出したからだ。そういうものは、ここで溶接する。

 

要所は、所々クリミネアで補強する。

 

デニスさん辺りに手伝って貰えれば良かったのだが。

 

流石にそこまで迷惑は掛けられないだろう。

 

修復を黙々と続けて行く。

 

山と積まれていたパーツがどんどん機械に吸い込まれるようにして消えていく。

 

順番だって間違えない。

 

あたしの空間把握能力は、ある程度自信がある分野だ。

 

この程度の機械だったら、間違えようがない。

 

後は、操作用のパネルだ。

 

タオを呼ぶべきかなと思ったけれど、まあいいだろう。残されていたマニュアルはクラウディアが確保してくれていたので。

 

最後のパーツをくみ上げながら、片手間に見せてもらう。

 

後はネジをとめたりの作業だ。

 

一人でも出来る。

 

パティは流石に参っているようなので、先に休んで貰う。でも、ちゃんと動くまで残るというので、一応雑務はやってもらった。

 

既に夜中だ。

 

貴族の連中は帰らない。

 

もう雑談も殆ど止めていた。機械が新品同然で直っているのは、彼等程度でも理解出来るように作業をしていたのだから。

 

後は試運転を、部品ごとにやっていく。

 

操作パネルをあたしが動かす。

 

光学魔術を利用した、立体的な情報表示システム。クーケン島の地下にもあった奴である。

 

これも古代クリント王国時代に作られた機械だったのだろう。

 

ベルトなどは動く。

 

パティに気を付けてと促しながら、機械部分が正確に動いているかを丁寧にチェックしていく。

 

ちょっとかなり遅くなってしまったが、これでオーケーだろう。

 

最後に材料を投入。

 

保存食を作って見せると、おおと貴族達が困惑と畏怖の声を上げていた。

 

「湯を掛けて、脈で180ほど待てば食べられるものです。 栄養価は充分で、保存も十年は出来ます」

 

「ま、まさか本当に……」

 

「や、やってみても良いだろうか」

 

「リヒトラグス公爵、まずは此方で手を洗ってください。 それとこれで消毒をして」

 

パティが細かく指示をして、公爵がそれに従う。

 

本当だったら、パティにああだこうだ言われたら不愉快になりそうなものだが。ずっとあたしの修復作業を見ていて、それどころではないくらいに驚いているのだろう。素直に従って、それであたしの指示通りに材料を投入する。

 

操作パネルの動かし方も教える。

 

立体的に表示される情報を見て、びっくりしたり、おっかなびっくりで操作していたが。やがて同じように保存食が出てくるのを見て、冷や汗が顔中にどっと出ていた。

 

「し、しし、信じられん……」

 

「リヒトラグス公爵閣下。 それでは今日はもう遅いので、明日に細かい契約などについて再確認をいたしましょう」

 

「う、うむ、そそ、そうだな……」

 

メイドに連れられて公爵が行くと。

 

貴族達は、あたしを化け物でも見るようにして見て。そしてそそくさと去って行った。

 

クラウディアが来る。

 

「お疲れ様。 これで一段落すると思う。 機械の修理については、私が順番とかまとめておくから、ライザは気にしなくていいからね」

 

「ありがとクラウディア。 これで王都の人達も、かなり食生活が楽になるかな」

 

「この機械は保存食を十五種類くらい作れるみたいだから、食事に掛かるお金が随分と減ると思う。 後はしっかり管理すれば、量産体制を整えて、近隣の街にも輸出できると思う」

 

そうか、それは良かった。

 

パティが言う。

 

「今日はお二人とも、うちのお風呂を使って行ってください。 私は凄く勉強させてもらいましたので、それくらいはさせてください」

 

「じゃ、あたしは使わせて貰うかな」

 

「そうだね、私もお邪魔させて貰うね」

 

「そういえばボオスは?」

 

実は、工場の外で主に動いていて。

 

なんとか公爵の手下の貴族達に、どう直すのかの説明を、錬金術抜きでやっていたらしい。

 

元々機械なんて微塵も知識がない連中なので、説明はかなり苦労したそうだが。

 

それでも出来る事はやってくれたそうだ。

 

そうか。ボオスも頑張ってくれているな。

 

後は、この工場は、例の公爵と、バレンツ商会が連携して、人員を入れて復興させ。王都に保存食を届けられるようにするという。

 

クラウディアが阿漕な商売をするとも思えないので、其処は信頼して良さそうだ。

 

これで、大きな機械を直して。

 

実績も作って見せた。

 

風呂に入って、ゆっくりする。

 

風呂から上がって茶をしばいて、少し遅い夕食を取っていると、ヴォルカーさんが戻って来た。

 

パティが今日の作業の説明をと、すぐに立ち上がって、ヴォルカーさんと執務室に消えて。

 

その間に、メイド長がてきぱきと片付けをしていた。

 

パティが戻ってくる。

 

もうかなり良い時間だ。そろそろおいとまさせていただくことにする。

 

アーベルハイム邸を後にするあたしとクラウディアに、パティが頭を下げる。

 

「王都の民を代表して、感謝を。 お父様は立場上頭を下げられませんので、その分私が頭を下げさせて貰います」

 

「パティ、ありがとう。 まだまだ機械は直させて貰うからね」

 

パティは立派だな。

 

貴族の子弟で、此処まで出来る奴は本当に滅多にいないだろう。

 

アトリエに戻る。途中でクラウディアは商会まで送った。

 

かなり夜遅くて、もう懐でフィーは眠っているけれど。

 

心地よい疲労感と達成感で。

 

今日はよく眠れそうだった。

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