暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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3、迷いの森へ

朝一番に、気持ちよく体を動かしていると。やっぱりパティが最初に来る。

 

本当に向上心の塊だな。

 

そう思って、感心して。一緒に体を動かす。

 

パティの事は、近所の人達は、どこかのお金持ちの子くらいに認識していたようだけれども。

 

最近は誰かがアーベルハイムの令嬢だと気付いたようで。

 

恐れ多そうに見ているので、なんというかもったいない。

 

もっとパティと積極的に接して、困っていることとかを話して欲しいのだけれども。

 

その方が両者のためになる。

 

アトリエをパティに任せて、さっと知り合いの所を見て回る。カフェでの依頼を受けて、薬や爆弾についての納品を即座に済ませてしまう。

 

ジェムは大量に余っているので、このくらいは簡単だ。

 

後は畑も見ておきたいが、まあ得に問題はないだろう。

 

帰路で義賊の三人組と出会った。三人組も、機械が直されたことは知っているようだった。

 

「いやはや、あんた凄いな。 凄い使い手なのは一目で分かっていたんだが、これほどとは……」

 

「いえ、あたしではなくて錬金術が凄いんですよ」

 

「そうかい。 でも、それは危険な技術でもあるんだね」

 

「……はい」

 

何となく分かるのだろう。

 

服などが安く出回るようになったので、そこから情報を知ったらしいが。ともかく、感謝はされた。

 

それは当然嬉しい。

 

アトリエに戻ると、クラウディアとセリさんが来ていた。

 

セリさんが摘んで来たハーブを茶にしていたのだが。ちょっと香りが強すぎるかもしれない。

 

セリさんは、なるほどといって、次はもっと香りが弱いものを摘んでくると言う。

 

それは有り難い話である。

 

オーレン族の味覚は、正直よく分からない。

 

そういえばセリさんに聞いたところに寄ると、セリさんの緑羽氏族は、昆虫食の文化はないらしい。

 

リラさんが昆虫食について教えてくれたことを、驚いていた。

 

オーレン族も、結構氏族によって考えが違うのだと思う。

 

だとすると、交流が難しいのは大変なのは当然だし。

 

セリさんが少しずつ歩み寄りの姿勢を見せてくれているのだ。

 

だったら、こっちもそうするのが筋というものだった。

 

やがて、みながおいおいと来たので。ミーティングに入る。

 

タオが、まずは説明をしてくれた。

 

地図を見せながら、大きく丸で囲んで見せる。

 

「この範囲が迷いの森だよ。 或いは、この範囲全てが遺跡かも知れない」

 

「なんだって……」

 

「しかも足を踏み入れた人間を生かして返さない危険な場所だ。 急に魔物が強くなる気配はねえから、多分だが何かしらの魔術的なトラップがあると見て良いだろうな」

 

「厄介な場所だぜ」

 

クリフォードさんに、レントが返す。

 

レントも、彼方此方を回っているらしく、色々な事を知ってそれを生かしているようである。

 

朝にパティに聞いたのだが。

 

昨日の討伐任務でも、レントは他の戦士十人分の活躍をして。ヴォルカーさんから騎士にならないかと誘いを受けたそうである。

 

レントもちょっと悩んだそうだが。

 

いずれにしても、すぐには無理と返事をしたとか。

 

まあ、それでいいと思う。

 

いずれにしても、騎士なんてのは名誉職だ。

 

アガーテ姉さんも騎士だが、今ではクーケン島の護り手の長をしているように。

 

レントも、騎士になっておけば、それだけ動きやすいかも知れない。

 

ただ、それだけの話なので。

 

騎士になっても、損は無いだろう。

 

「それで、迷いの森対策はどうするんだ」

 

ボオスが、ずばりと斬り込んでくれる。

 

タオが、それに対して、順番に説明をしてくれた。

 

「まずはクラウディアの音魔術。 迷いの森に霧が出ているとかそういう話はないらしくて、だとすると視覚以外の五感を狂わせている可能性が高い」

 

「なるほどね。 私の音魔術で、周辺の地形を調べながら進むと」

 

「そうなるね。 後は、これ」

 

ロープを出してくるタオ。

 

ただ、それを直に結ぶのではない。

 

クリフォードさんと一緒に作ったものらしい。

 

「これはクリフォードさんのブーメラン操作の魔術を応用したもので、常に一定の方向を向くようにしてあるんだ」

 

「ふむふむ」

 

「しかも浮くから、戦闘中に邪魔にもならない。 ロープを直に結んでいると、どうしても立ち回っているときに踏んだりして危ないからね」

 

「考えて、しかも準備してくれているな」

 

レントが感心。

 

あたしも感心した。

 

後は、順番に磁石などを配ってくれる。

 

そして、出立となった。

 

一応念の為、あたしも幾つか装飾品を出しておく。魔力に対する抵抗を増やすためのいわゆるタリスマンというものがあるのだが。

 

それを更に強化したものだ。

 

これで、弱めの魔術くらいだったらはじき返せる。

 

問題は迷いの森とやらで常時発生している魔術が、そんなに弱いとは思えないという事で。

 

常に気を張っていないと危ないだろう。

 

今回はフルメンバーででる。

 

夕方までに戻る事にして。戻らない場合は、ボオスがアンペルさんとリラさんに連絡するようにうちあわせも済ませた。

 

王都を出る。

 

やはり、外でフィールドワークするほうが、あたしの性にあうな。

 

そうあたしは思う。

 

街道警備の戦士が、好意的に声を掛けて来るので、挨拶を返す。何度も魔物を駆逐している内に、名前が知れ渡ったのだろう。

 

或いは命を救ったのかも知れないが。

 

流石に覚えていられなかった。

 

街道のある一点で、タオが足を止めて、此処からだと手を振る。

 

クラウディアが、音魔術を展開。凄まじい広さに、探査範囲が拡がる。ロープも起動する。

 

これで、簡単には迷わないはずだ。

 

獣道すらないブッシュに入る。

 

案外ブッシュは多く無いのだが、此処はちょっと多めだ。目立つ邪魔な下草は、その場で鎌で斬り払ってしまう。

 

どんな毒草か知れたものではないからだ。

 

霧は出ていないが。

 

案の定、比較的早くに、クラウディアが異常を検知していた。

 

「止まって!」

 

「!」

 

「見えている光景と、音魔術で探知している地形が乖離しているわ。 多分視覚が既におかしくなっていると思う!」

 

「厄介だな。 もうかよ……」

 

レントが剣を抜き、構える。

 

クラウディアが慎重に周囲を探索してくれる。どうやら魔物はいないようだが。

 

というか、魔物の死体すら点々としているそうである。

 

魔物すら、迷って訳が分からなくなるというのか。

 

これは、恐ろしい。

 

あたしはそのまま跳躍。

 

高い所から、周囲を調べてみる。

 

特にこれと言って変わったところのない森に見えているが。クラウディアは全く見えている光景と地形が一致しないと言う。

 

つまり見る角度を変えても駄目と言うことか。

 

「とにかく、これ以上は進まない方が良いね。 色々と試してみよう」

 

「まずは俺からだ」

 

前に出たのはクリフォードさん。

 

使い捨てらしいナイフを取りだすと、投擲する。

 

クラウディアが音魔術を使っている。

 

だから、どう動いたかは此処で分析出来る。更にどう飛ぶか見る事で、此処から先にどう進むべきも判断できるだろう。

 

案の場だ。

 

クリフォードさんが投擲したナイフは、ぐいんと真横に曲がった挙げ句、途中で見えなくなった。

 

クラウディアは、冷静に告げてくる。

 

「まっすぐ飛んで、木に突き刺さったよ」

 

「えっ……」

 

「ささった音もこっちには聞こえなかったね。 クラウディア、拾えた?」

 

「ううん、ダメ。 この様子だと、見えているものだけではなくて、聞こえている音までおかしくなってると思う。 私が魔術で制御しているから、なんとか周囲の地形は理解出来るけれど、これでは進めないわ」

 

次はこれだと、クリフォードさんがロープを出してくる。

 

ロープの先端に石を結んで、それで投擲。

 

やはりぐにゃんと曲がるロープ。

 

それをたぐり寄せるクリフォードさん。やがて、ロープはちゃんと戻って来た。

 

「どうだった、クラウディア」

 

「うん。 まっすぐ飛んで、戻って来てる」

 

「おいおいこれは想像以上にまずいな……」

 

「まずはクラウディア、危ない範囲を確認して、それで印をつけていこう。 その後、ここから先には入らないように、周辺の集落の人達にも連絡をしておかないと」

 

すぐに手分けして動く。

 

どうやら魔物はこの辺りは危険だと経験的に知っているらしく、森の中であるのに殆ど姿を見せない。

 

たまに小物が姿を見せたが、そんなのは一蹴するだけである。

 

森がおかしくなっている範囲は、かなり広い。

 

木の幹にペイントしながら、次に次にと行く。

 

タオが、周囲を鋭く観察していた。

 

「見て、どの木も不自然なくらい綺麗だ」

 

「ええと、大きな動物がマーキングで縄張りを主張していない、って事ですね」

 

「そうだよパティ。 此処は普通の動物にとっても、超危険な場所として認知されてるって事だね」

 

「人間より感覚が鋭い動物でも近寄れないのに、どうしたら……」

 

パティがぼやく。

 

セリさんが、ある程度印をつけてから、ぼそりと呟いていた。

 

「試してみたい事がある。 いいかしら」

 

「はい。 どういうものを試したいんですか」

 

「クラウディアの音魔術の支援を受けながら、私が植物操作で道を作ってみる」

 

ああ、なるほど。

 

そのコンビネーション技は有用かも知れない。

 

ただ、まず今日は。集落に面している場所の、入ってはいけない地帯を印をつけて回りたい。

 

それからだ。

 

後、アーベルハイム卿にも注意を促すべきだろう。

 

もしも遠征の部隊でも此処に入ろうものなら、確実にとはいかないにしても、高い確率で生きては出られない。

 

数なんて関係無しにだ。

 

数刻かけて、クラウディアと連携して印をつけていく。

 

この印に使った染料は、錬金術で造ったものだ。簡単には剥がれない。

 

後はこれの意味を注意喚起で知らせておくこと。

 

もっとも、戦力がない人間は、普通は此処まで入れないが。

 

「よし、一旦コレで注意喚起が終わりだね。 これから手分けして、周囲の集落に連絡して回って、南のこの集落で合流しよう」

 

「心得た」

 

さっと解散して、集落を回る。

 

四つある集落を回るだけだから、それほど時間も掛からない。あたしはパティとセリさんとで回る。

 

セリさんは、森の中を苦もなく移動しながらぼやく。

 

「色々と面倒な事ね」

 

「誰の命も大事ですから」

 

「そう皆で考えているのなら、こんな惨状にはなっていないでしょうに」

 

「……返す言葉もありません」

 

本当に申し訳なさそうなパティ。

 

最初の集落が見えてきた。バレンツから派遣されている戦士がいて、あたしを知っていたので助かった。

 

例の迷いの森について、具体的に危険な範囲が分かった事。

 

入ると視覚も聴覚も狂うこと。

 

それ以外にも狂う可能性が高い事。

 

魔物ですら近寄らない事。

 

危険地域には印をつけたので、それを見たら即座に引き返すこと。入った人間がいたら、諦める事。

 

これらを伝達すると、皆戦慄していた。

 

「年寄りが迷いの森について話していましたが、それほど危険だったとは……」

 

「私も確認しました。 まっすぐ投げたナイフが真横に曲がって飛んで見えたり。 木に刺さっても音すら聞こえなかったり。 とにかくとんでもなく危険な場所です。 絶対に近寄らないようにしてください」

 

「パトリツィア様が見聞きしたのですか。 分かりました、徹底的に周知します」

 

まあ、そもそもこの集落の戦力だと。

 

迷いの森に辿りつく前に魔物のエサだけれども。

 

そのまま、次の集落に。

 

セリさんは、ずっと集落では無言だったけれども。

 

移動中では、それなりにしゃべった。

 

「それで、本格的な調査は明日からかしら」

 

「はい。 そうなりますね」

 

「……貴方ほどの戦士が危惧する封印って、やはり……」

 

「そろそろ言ってもいいかなあ。 パティは信頼出来る人間だとあたしも思いますし。 恐らく、セリさんが思っている通りの存在です」

 

はあと、セリさんが嘆息する。

 

パティはそれほどのものなのかと、驚愕しているようだった。

 

集落に着いたので、すぐに危険を周知。

 

そして、次の集落で、合流。他の集落とは距離があったので、これで適正な手分けと言えた。

 

もうすぐ夕方だ。

 

とりあえず周知したことは皆で確認して、後は戻る。

 

この森の危険性は、街道の守備をしているヴォルカーさん。それにアンペルさんとリラさんにも展開するべきだ。

 

王都の戦士の質から言って、此処まで遠征する可能性は低いが。

 

少なくとも遠征する人間が出る可能性を考慮すると、ヴォルカーさんに周知は必須だろう。

 

夕方丁度にアトリエに到着。

 

ボオスが、あたし達を見てほっとしたようだった。

 

すぐに情報をボオスにも展開する。

 

ボオスも、唖然としていた。

 

「物理的に何かを隠さず、魔術的にそれほど危険な場所が作り出されているというのか」

 

「今の所魔術によるものかすら分からないよ。 古代クリント王国や、もっと前のテクノロジーかも知れない」

 

「いずれにしてもやべえな。 分かった。 俺がこれから、アンペル師とリラ師には伝えておく」

 

「よろしく」

 

その後は、明日の調査について、軽く方法を話して解散。

 

パティは残る。

 

パティは、そろそろ知る権利があるだろう。

 

タオも、それを考慮して残ってくれた。

 

正座して、パティが聞く姿勢に入る。あたしも、そろそろ話すべきだと判断したので、話をしておく。

 

「パティ、この件は、出来ればまだヴォルカーさんにも話さないで欲しいんだ。 それを守れるのであれば、話をするよ」

 

「分かりました。 お父様が相手でも、話しません」

 

「……ヴォルカーさんには、後で僕から話すよ」

 

タオが最初に確約を取る。

 

パティも、タオが相手だったら嘘は絶対につけない。

 

勿論パティも、それを理解した上で話を聞きに来ている。

 

だから、あたしも大まじめになる。

 

「もう十中八九確定だからそうだろうという前提で話すけれど、あたし達が封印されていると判断しているのは、異世界への門なんだ」

 

「い、異世界ですか」

 

「異世界の名前はオーリム。 セリさんや、あたしの武芸の師匠であるリラさんの故郷でね。 セリさんやリラさんは、オーレン族っていう、人間に近い存在なんだ」

 

「……ちょ、ちょっと理解に苦労しています。 時間をください」

 

混乱しながらも。

 

それでもパティは、大きく深呼吸して、精神的な体勢を整えていた。

 

それでいい。

 

どんな現実でも、前向きに見て。そして飲み込む。

 

それが出来るなら、パティは立派に将来多くの人達を率いる立場につく資格があると言える。

 

「わ、分かりました。 把握できたと思います。 その異世界は、危険な場所、なんですか」

 

「正確には、古代クリント王国が其処を地獄にしたんだ」

 

「えっ……」

 

「古代クリント王国の滅亡は謎だって歴史の授業で教えているよね。 ……僕は何が起きたかを知っている。 古代クリント王国は、オーリムへの侵攻を行い、そこで資源の略奪をしたんだよ。 その時、ある理由から、オーリムにいた危険な生物を大繁殖させてしまったんだ。 その危険な生物の名前はフィルフサ。 圧倒的な速度で増えて、何もかもを蹂躙し尽くす、破壊の権化みたいな生物なんだよ」

 

完全にフリーズするパティ。

 

タオほどの使い手が、それだけの危険性がある生物だというのだ。

 

どれほど危険なのか、理解したのだろう。

 

少しずつ、丁寧に話していく。

 

フィルフサは水が苦手だが、それ以外は生物急所も持たず、基本的には体内にある核を破壊しない限りしなない。

 

体内はがらんどう同然で、しかも凄まじい魔術耐性を誇り、今のあたしの魔力でも、単純な魔術勝負では分が悪い。

 

とにかく数が圧倒的で、三年前にあたし達が交戦した群れは数が100万を超えていた。

 

しかも乾期を的確に察知する習性を持ち、チャンスさえあれば怒濤の勢いで世界の壁を越えて侵略してくる。

 

人間の勢力圏全てを抑えていた古代クリント王国ですら、その進撃の前に蹂躙され尽くされ。国力を使い果たし、滅亡に追い込まれた。

 

それを聞いていて。ついにパティは意識を失った。

 

すぐに横に寝かせて、頭を冷やす。

 

しばしして目を覚ましたパティは、呆然として。

 

それから、あわてて身を起こしていた。

 

「す、すみません! 見苦しいところを見せて!」

 

「いいんだよ。 僕だって、フィルフサの斥候一匹がライザの総力攻撃をあっさり耐え抜くのをみていなければ、あんな現実受け入れられなかっただろうし」

 

「三年前の、更には錬金術初心者状態のあたしだけどね。 しかもあの斥候、訳ありだったし」

 

「ライザさんの総力攻撃を、一匹の斥候が耐え抜いた……」

 

また気を失いそうになるパティだが、どうにか踏みとどまる。

 

立派だ。

 

水を持って来て、飲ませる。

 

ちゃんと煮沸してあるお冷やだ。

 

水を口に含むと、パティも流石に少しは落ち着いて来たようだった。

 

「そ、その。 オーリムという世界は大丈夫なんですか?」

 

「地獄だよ。 古代クリント王国は、オーリムの資源を奪うために、水を奪う装置を使ったんだ。 水がなくなって、フィルフサは爆発的に増えた。 少数のフィルフサだったら対応できたオーレン族ですら追い立てられた。 古代クリント王国の人間はフィルフサすら資源にしようと目論んでいたようなんだけれども、あまりにも見通しが甘かったんだ。三年前の戦いで、僕達はそれらを知った。 それでフィルフサと戦った。 奪われていたオーリムの水を取り戻して、オーリムの一地域だけは何とか安全を確保したけれど、他はどうにもならない。 フィルフサは自分に都合がいいように、土地を改造するんだ。 今のオーリムは、一面の荒野と、フィルフサに都合がいい生物と植物が僅かにいるだけの場所なんだ。 そして、もしもオーリムへの門が解放でもされたら、恐らく王都なんて一日もかからずフィルフサに蹂躙され尽くすだろうね。 続いてこの世界全部がフィルフサに食い尽くされるまで、何年もかからないと思う」

 

「……な、なんとか、現状を飲み込むべく努力して見ます」

 

「うん。 すぐにヴォルカーさんに話したいだろうけれど落ち着いて。 ヴォルカーさんには、タオから話すから」

 

何度も深呼吸するパティ。

 

まあ無理もない。

 

封印が何処にあるか分からないのだ。

 

この王都そのものが、封印装置であっても不思議では無い。

 

封印は古代クリント王国より更に前の、神代のテクノロジーが使われている可能性がある。あの五つの封印があるとされているもの。

 

その封印装置そのものが、王都であったり。王都がその一部だったりしても、おかしくはないのだから。

 

完全に真っ青になっているパティを。あたしは自宅に送る。

 

タオは、自分で帰ってもらった。

 

これで、パティに。

 

未来にこの王都を背負う人間に、秘密を共有した。

 

パティはショックを受けただろう。

 

ただ、今の時点ではパティとしか情報を共有していない。

 

もしも情報が漏れるなら其処からだ。

 

そういう意味でも、しばらくは監視する必要がある。

 

色々と、気が重い。

 

あたしも大人になってからそれなりに年を経ている。

 

クーケン島にいた頃から、ろくでもない連中は目にしてきた。与太者の類も、散々見て来たし。

 

それ以上にタチが悪い連中も。

 

だから、何処か心の奥底では、人間を信用していない。

 

それはあたしも分かっている。

 

今回だって、情報を開示するまで、ずっとパティを見極めさせて貰った。もしもこれで裏切るようなら、あたしは王都周辺での調査を止めて、さっさと引き上げる。それくらいの気持ちでいる。

 

その場合は王都も世界も滅びるかも知れないが。

 

もうそれは、知った事じゃない。

 

最悪の場合、クーケン島だけ生き延びる事になるかも知れないが。

 

それをどうとも思わなかった。

 

いや、勿論冗談だ。しっかりやる事は、最悪の事態になってもやり遂げる。それが力を持つ者の責任だ。

 

だけれども、冗談でもそんな事を考えるなんて。

 

冷酷になったな、あたしも。

 

そう苦笑いする。

 

アトリエに戻ると、フィーが顔を覗き込んでくる。ずっと険しい表情をしていたのかも知れない。

 

「フィー……」

 

「大丈夫。 怒ったり悲しんだりしているわけではないよ」

 

あたしは三年前。古代クリント王国の所業を見て知った。

 

もしも現在の人間が、また連中と同じ事を繰り返すなら。

 

それは人間が滅びるべき時が来たのでは無いかとすら思うのだ。

 

ただ、それでも最後まで責任は取ろうと思う。

 

今は、パティを信用して良かったと考える。それだけだ。




向上心が強く真面目なパティはライザととても相性が良いです。

ライザはパティにどんどん出来る支援をしますし。

パティはライザから吸収できるものをどんどん貪欲に学びます。

この作品では、天才代表のライザと、秀才代表のパティ。

天性の自由人のライザと、王都でガチガチにしがらみに縛られていた(むしろ自分から自縄自縛していた)パティと。

二人の主人公の交友と、その差を描写しております。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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