暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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大苦戦が続きます。

流石のライザも、此処まで未知の危険な壁がある場合は、大胆に出られません。


1、エアドロップの限界

森の危険ラインのそばで、エアドロップを膨らませる。更にごつくなった様子を見て、クリフォードさんは大はしゃぎ。

 

レントはそれを見て呆れていた。

 

「いいねえ! 無骨でごつくて、まさにロマンだ」

 

「……」

 

「それはそうとライザ、何を強化してきたの?」

 

「まずは魔力遮断。 空気だけでは無くて、外から入る魔力も遮断するようにしてみた」

 

ただそのままだと、クラウディアの音魔術も届かなくなる。

 

そこで、コーティングをした紐を外につながるようにしてある。

 

これをクラウディアが持つ事で、音魔術を内部に伝える事が出来る。糸電話の要領である。

 

そういえば、この電話というものも、良く語源が分からない言葉だそうだ。糸は分かるのだが。なにが電なのか、誰も知らないのである。

 

まあともかくとして、コレで調査を開始する。

 

糸はそれなりの長さを確保してある。

 

あたしがエアドロップに乗り込んで、まずは試運転。

 

大丈夫。

 

昨日以上に安定している。

 

足回りはしっかりしているし。多少何か踏んだくらいでは全く問題も無い。

 

後はこれから降りられないことをどうにかしないといけない。出来ればサンプルを、エアドロップから降りずに採取する仕組みも欲しい。

 

ただ、全部一辺にやるのは無理だ。

 

少しずつ、順番にやっていかないとまずい。

 

「ライザ、音魔術で確認する限り、まっすぐ進めているわ、 此方から見ると、滅茶苦茶に動いているようだけれど」

 

「おっけい。 じゃあ、もう少し進んでみるね」

 

「気を付けて」

 

「大丈夫、任せて」

 

エアドロップの中からの全周確認は出来るようになっているので、とりあえず今の時点では平気だ。

 

ただ、クラウディアの音魔術が届く範囲は限界がある。

 

それを考えると、最終的にはどうにか対策を練らないとまずい。

 

エアドロップから降りて動けるように対策を考えないと、魔物に攻撃された場合にはどうにもならないのだ。

 

この森に適応している魔物か何かに出くわして。

 

エアドロップをひっくり返されでもしたら、それでジエンドである。

 

車輪がまた何か踏んだ。

 

多分石ではないと思う。

 

黙々とエアドロップを進めて、一度止まる。

 

クラウディアの声が、少し遠い気がする。

 

「クラウディア、声がちょっと遠くない?」

 

「うん、ライザの声も少し遠いかも知れない」

 

「……戻る。 このラインを覚えておかないと」

 

一応周囲を確認するが。

 

まずいなこれ。

 

周囲の光景が、ちょっと違和感があるかも知れない。

 

対魔力の装甲をつけて、それで空気も遮断して。それでもダメだとすると、どうすればいいのか。

 

対魔力の装甲がまだ弱いと言う事だろうか。

 

いや、まだなんともいえない。

 

とにかく、サンプルが欲しい。だけれども、エアドロップから降りるのは自殺行為である。

 

とりあえず後退して、皆の所に戻る。

 

何とか戻れて、ほっとした。

 

冷や汗をダラダラ掻いているのはクラウディアだ。ハンカチで額を拭っている。この辺りは森の奥で、涼しいはずなのに。

 

「戻ったよ。 じゃ、情報を分析しよう」

 

「まずは集落に戻ろう。 この辺りにいると、知らないうちに変な影響を受けているかも知れない」

 

「違いねえ」

 

レントも同意する。

 

ともかく集落に戻って、情報を整理。

 

あたしがエアドロップで奥に進んでいる間も、タオを主軸に実験はしていたのだ。だから、色々と情報を共有しないとまずい。

 

昼食を口に入れながら、軽く話す。

 

「まずライザだけれども、森の奥に三百歩分くらいは進んでいたと思う」

 

「三百歩か。 ちょっと頼りないねそれだと」

 

「うん。 三百歩進むだけで、ライザが作った対魔力装甲と、密閉が貫通されるほどだと見て良い。 もっと奥に進むと、何があるのかも分からないよ」

 

「ちょっと危険かも知れないね」

 

知れないでは無く、危険だ。

 

だが、クラウディアはそれで、皆の不安を和らげようとしてくれている。それは分かっているから、何も言わない。

 

レントが運び込んできたのは、危険圏内に生えていた木だ。

 

大剣でばっさり斬って、それで持ち帰ってきたのだ。

 

木はかなり重いのだが流石はレントである。

 

「この木についても分析がしたい」

 

「あまり無為に植物を傷つける行為は賛成できないわ」

 

「ごめんセリさん。 でも、知恵を貸してくれないかな。 このままだと、本当に危ないかも知れないし」

 

「……まあいいわ。 この植物は、恐らくは貴方たちが言う幻惑に対応していると見て良いでしょうね。 あの中でもまっすぐ生えているし、枝などもおかしな様子はないわ」

 

そうなると、これも分析する必要があるか。

 

挙手したのはクリフォードさんだ。

 

「俺もそのエアドロップに乗って良いか。 ライザは既に自分で実験してるが、俺がいざという時に操縦できれば安心感は大きいだろう」

 

「基本は水中に行く時に使ったものと同じですが、分かりました。 次はクリフォードさんに頼みます」

 

「よしきた」

 

午後は手分けすることにする。

 

セリさんはこの安全確保してある集落で持ち帰った木の分析。手伝いとしてパティが残る。

 

パティは戦闘経験は積んで欲しいが、あの森は思ったより魔物が少ない。此処までも、骨のある相手との戦闘は発生していない。

 

現地に行くまでは魔物が出るが、それも大した奴はいない。

 

だとしたら、ここであまり絡みがないセリさんと、接しておくべきだろう。

 

パティもそれを理解したようで、頷いてセリさんに丁寧に礼をしていた。

 

「何でも遠慮無く言ってください。 今日は助手に徹します」

 

「そう。 じゃあ、まずは……」

 

セリさんが、固有魔術を使って幾つかの植物を出し。その葉を調合し始める。

 

手伝いについて説明したので、てきぱきパティが動き始めた。

 

多分だけれども、工場での機械修理であたしと一緒に動いて経験を積んだからだろう。

 

パティは真面目なので、ものごとを覚えるのはそれなりに早いという事だ。

 

後の面子は、森に出向いて、エアドロップを主軸に調査していく。

 

あたしも熱魔術を駆使して、周囲を調査。その間、クラウディアと連携して、クリフォードさんがエアドロップで奥に行く。

 

クリフォードさんは、こういうのは好きだからだろう。

 

簡単に操縦して、奧にすぐに進めていた。

 

「おっと、川のようだぜ」

 

「戻ってください」

 

「よしきた。 いっそ、川の中から奧に進むというのはどうなんだろうな」

 

「上流から毒が流れてきているという話がありました。 あまりお勧めできません」

 

この周囲を探索しているとき。

 

セリさんが指摘した事だ。

 

あの人は専門家である。だとしたら、その言葉に嘘は無いだろう。

 

ともかく、彼方此方調べながら、色々と情報を蓄積していく。

 

クリフォードさんは自分の楽しいを、調査に優先させない。クラウディアとタオと丁寧に連携して、しっかりエアドロップを動かして、此処から三百歩奧の第二危険ラインまでの情報を集めてくれている。

 

陽が傾き始めるまで、そうやって情報を集めてから、帰還に入る。

 

クリフォードさんは、ご機嫌な様子で戻って来ていた。

 

「いや、いいねえ。 神代にはこんなのりものが何処にでもあったのかも知れないな」

 

「あったとしても、人の心は今以上に貧しかったと思います」

 

「そうだな……」

 

それは、クリフォードさんも認めていると言う事か。

 

なお、あたしは熱魔術の調査が終わった後、羅針盤を使ってもみたのだが。近くにあった残留思念は薄く。あったとしても最近の人のものばかりだった。それも森から出られなくなって苦しんで死んでいった怨念とか、そういうもの。

 

いずれにしても、遺跡に対して有効な情報と思われるものはなく、徒労だった。

 

集落で、セリさんとパティと合流。

 

パティはかなりこき使われたようで、疲れ果てていたが。まだ大丈夫だと言う。セリさんは、木をバラバラになるまで調べ尽くしていた。そして、崩した木は、配下にしているだろう植物が、土の下に引きずり込んでいく。

 

ばきばきという音がかなり生々しい。

 

セリさんは植物の本職だが。

 

だからこそに、地下での植物の争いの苛烈さも知っているし。

 

森の生態系を乱すことが何を意味するかも分かっているのだろう。

 

「どうでした、セリさん」

 

「ある程度はわかったわ。 後はアトリエで話し合いましょう」

 

「了解です。 パティ、これ」

 

「有難うございます」

 

渡したのは栄養剤だ。

 

だいぶ味の方は改良しているが、それでもむせそうになるパティ。

 

まあ、あたしもあまりおいしいとは思えないが。

 

それでも、飲みやすいように、日々改良はしている。

 

「タオ、ボオスは大丈夫そう?」

 

「まだちょっと無理をしているみたいだね。 どうも顔色が悪い時があるよ」

 

「多分そうなると、栄養剤だけだと無理だね。 しょうがない、装飾品を作るか……」

 

「それ以前に、無理をさせないことが大事なんじゃないのか」

 

レントが片付けをしながら正論を言うが。

 

ボオスはそもそも、タオほど賢いわけでもないし、レントやあたしくらい体力がある訳でもない。

 

ボオスが何をそんなに頑張っているかは分からないけれども。

 

ただ、分かっているのは。

 

今後のためにボオスが無理をしていると言う事だ。

 

無理をするなというのは簡単だが、ボオスとしても恐らくはブルネン家、いやクーケン島の為に無理をしている訳で。

 

それを否定する訳にもいかない。

 

せめて何をしているのかが分かれば、手伝いようもあるのだけれども。

 

今の時点では、それも厳しいのが実情だ。

 

帰路の街道で魔物が出る。

 

むしろパティはいきいきと迎撃に出る。腕を鈍らせるのがいやなのだろう。

 

街道を通る度に魔物を駆逐しているので、どんどんこの辺りの魔物は質が落ちているようである。

 

全部綺麗に片付けて、それでおしまい。

 

この程度の魔物なら、もうパティ一人で充分だろう。

 

「腕を上げて来てるね、パティ」

 

「でも、この先の遺跡にはもっと強い相手がいますよね。 この程度では……」

 

「うん。 だからもっと鍛錬をしておいて」

 

「分かりました。 ただでさえ未熟なんです。 もっと腕を磨いておかないと……」

 

多分だと思うけれど。

 

パティは、この一季節だけで、あたし達に追いつくのは無理だと思う。

 

だけれども、それでも。

 

足手まといにならない程度にまでは強くなれるはずだ。

 

王都に到着。

 

アトリエでミーティングを行う。

 

タオが、地図を更新。

 

クラウディアと連携して、地図を埋める。三百歩分奧に進めるだけでも、随分と違うのだ。

 

「森の中心部、まだ入れないのはどのくらいの広さと思う?」

 

「そうだね、ざっと今の時点だと2500歩四方くらいだと思う。 まだ、ほとんど奧には肉薄できていないよ」

 

「意外と狭いな」

 

「でも、そもそも仕組みがまだよく分からない。 セリさん、其方の成果は」

 

セリさんは頷くと、軽く説明してくれる。

 

なんでもあの森に満ちているのは、タチが悪い何かしらの魔術だけではないらしい。

 

魔術もそうなのだが、複数の要素が重なりあって、あの幻惑という概念を越えたものを作り出しているらしかった。

 

「まず何かしらの生物性の毒素か何か。 それに魔術。 後は……ひょっとするとそれらが相互増幅しているのかも知れないわね」

 

「厄介だな……」

 

「他の地点の調査を進めるわ。 これはちょっとやそっとで攻略できる場所じゃないわよ」

 

セリさんは現実的だ。

 

だが、あたしはそれは良くないと判断した。

 

ワイバーンの群れを蹴散らして、北の荒野に向かう手は確かにある。

 

だけれども、それで何かを見つけたとして。

 

そこで、全ての真相がわかるとは限らないのだ。

 

手が開いているなら、両方を同時に進める手もある。

 

だけれども、別働隊として動いてくれているリラさんとアンペルさんの事もある。

 

もう、これ以上贅沢は言っていられないのである。

 

「毒素の情報はありますか」

 

「……この植物の木片に、かなりの濃度で蓄積されているはず。 ただ、それも一種類とは限らないわ」

 

「何とか調べて見ます」

 

毒は、散々作ってきた。

 

薬と毒は紙一重なのだ。

 

戦闘用の毒素も錬金術で作ってきたし。調べて見れば、それがどういうものかは分かるかも知れない。

 

いずれにしてもはっきりしたが、あの森は不自然過ぎる。

 

帰らずの森というような危険地帯は他にもあるらしいのだが。それにしても、いくら何でもおかしい。

 

やはり人為的に作られた、誰も入れない難所。

 

そう判断するのが正常だろう。

 

古代クリント王国の錬金術師だったら、どんなものだって悪用することを考えた筈だ。連中に触れさせたくない何かしらの技術を隠していたのだとしたら。

 

それもまた、あり得る話だった。

 

解散後、更にエアドロップの装甲を強化する。

 

多分、一種類の対魔装甲ではだめだ。

 

しばし考えて後、ゴルドテリオンも装甲に使う事にする。かなり貴重な素材を用いるのだけれども、やむを得ない。

 

トラベルボトルを用いて、擬似的に再現した鉱山に潜る。

 

フィーもついてくる。

 

やはりこの中の方が、フィーは心地が良いようだ。

 

「フィー!」

 

「この中は魔力そのものみたいなものだからね。 思う存分食べて良いよ。 あたしから離れ過ぎないようにね」

 

さて、やる事が少し多いが。

 

どうにかこなすしかない。

 

淡々と鉱石を掘り出し。姿を見せる魔物をつぶし。そして、適当な所で切り上げる。

 

手に入ったゴルドテリオンの素材になるゴルディナイトは多くは無いが、他の鉱石も手に入ったのだから、可とする。

 

後は、夜中まで黙々とエアドロップを調整。

 

それが終わったら、翌日に備える。

 

2500歩四方、か。

 

タオが言った、まだ入れない範囲だ。

 

森じゃなければ、大した距離ではないんだけれどな。

 

そう、布団の中で思う。

 

とにかく、その2500歩四方に踏み込むためにも。

 

今は、可能な限りの準備をしなければならなかった。

 

 

 

早朝。

 

毒の解析をする。

 

毒といっても、エーテルに溶かしてみて理解出来たが、ごく少量だけだ。それも、明確な毒素じゃない。

 

というよりも、これは。

 

ある意味、毒では無い、もっと別のものではないのだろうか。

 

パティが来たので、一緒に軽く外で体を動かす。体操を終えると、すぐにアトリエで今日の打ち合わせをする。

 

「それで、今日はもっと奧に踏み込むんですね」

 

「そうなるね。 それと並行して、周辺の地図を更に埋めていくことになると思う」

 

「分かりました。 私も出来るだけの事はします」

 

うん、それでいいと思う。

 

タオが最初は目的だったとは思うけれど。

 

パティも、今はそれどころじゃなくなっている事は理解出来ていると思う。

 

下手をすると、王都どころか世界まるごと滅ぶ。

 

それを無視してはいられない。

 

古代クリント王国と言えば、今の人間からすれば、超文明を作っていた超国家である。それが一瞬で滅ぼされたほどの相手だ。

 

その可能性が極めて高い。

 

今、それを知っている以上。

 

引くことは、あり得なかった。

 

皆がおいおい来たので、軽く説明をする。毒素についてだけれども、実はそれほど強烈なものではないこと。

 

むしろ、と前置きして。

 

あたしは咳払いしていた。

 

「ひょっとしてこれ、魔術を増幅している物なのかも知れない」

 

「魔術を増幅?」

 

「うん。 それも出力ではない何か」

 

考えて見れば、だ。

 

フィルフサに対してはほぼ攻撃魔術が通用しない。これはあたしが、直に戦って身を以て知った事だ。

 

もしも封印されている存在がフィルフサだとする。

 

この遺跡から漏れているのが、対フィルフサ用の毒なり、魔術だったとする。

 

ひょっとするとだけれども。

 

古代クリント王国の人間が近づけないようにする役割もあるかも知れないが。

 

どちらにしても、魔術は普通、フィルフサには通じない。

 

フィルフサは凄まじい魔力吸収能力を持っていて、コアを破壊しないと死なない。

 

様々な生物の特徴を貪欲に取り込んでいって。

 

その強みを、自分のものとしていく。

 

それを考えると、毒だの魔術だのは、時間稼ぎにしかならない。

 

普通だったら、だ。

 

もしも永続的に効くようなものを考えるとすると。

 

それは相手を、頭ごなしに力尽くで抑えるようなものでは無いはずだ。

 

実際、あの森に踏み込めている存在がいない……古代クリント王国の連中も含めて……という事を考えると。

 

出力を増幅するのではなく。

 

魔術の何か別の要素を増幅するものではないのかと思うのだ。

 

それが毒と混じって撒かれている。

 

それならば、説明がつく。

 

「少しずつ、頭が冴えてきているな」

 

「うん。 なんだかみんなと合流してから、確実に頭が冴えてきていると思う」

 

「それで、その毒とやらはどうする」

 

「……成分は分析出来た」

 

ただ、カウンターとなるものを作るのはちょっと時間が掛かるかも知れない。

 

もっとサンプルも欲しい。

 

一応ジェムを使って増やせるが、どうにも一種類だけ毒が蔓延しているとも思えないのである。

 

あたしが、もしもフィルフサを封じるとして。

 

どういう仕組みを考えるか。

 

その場合、一種類の毒だけで、フィルフサを封じられるとは考えない。

 

まず水を潤沢に用意する。それは絶対として。

 

それ以外にも、何かしらの防御策が絶対に必要になる。

 

毒一種類なんて、紙の壁も同じだ。

 

それなら、多数の毒を準備してフィルフサに対応しようと考える筈。

 

ただ、その場合。

 

毒に何かしら、パターンがあるのではないのだろうか。

 

いずれにしても、魔術対策、毒対策、どちらも必須だ。それを説明した後、まずは毒対策にサンプルを多数手に入れる事。

 

そのために、作ったものを見せる。

 

簡単に言うと、魔力で操作できるアームだ。

 

これを用いて、可能な範囲まで奥に行って、其処で物資を回収する。

 

その結果何か毒物が得られれば、その対策をする。

 

問題は、エアドロップ陸上型でどこまでいけるかだが。

 

ゴルドテリオンを用いた対魔術装甲で、可能な限りは強化した。後は魔術の性質が分かれば。

 

それらを話してから、出る。

 

街道を急いで進み、現地に到着。

 

とにかく、時間がいつまであるか分からない。もたついているわけにはいかない。

 

精神的な余裕が無くなると、とんでもない凡ミスをする可能性も上がる。今は皆が側にいるとはいえ。

 

それでも物事に絶対は無い。

 

まずは、あたしがエアドロップを操作。

 

確実に奥に進む。

 

昨日よりも、更に奧に行ける。流石に潤沢に使ったゴルドテリオン装甲だ。或いはこれなら、ちょっとやそっとなら魔物の攻撃に対応できるかも知れない。だけれども、これは結局棺桶だ。

 

若干周囲がフワフワになって来たのは、昨日より更に奧。

 

七百歩ほど進んだ地点だった。

 

よし。

 

アームを用いて、土などのサンプルを取得する。

 

そして、一度まっすぐ撤退して。それで、サンプルを皆に見せる。見せようと思ったけれども。

 

周囲が、ぐにゃりと曲がったように思った。

 

「ライザ!」

 

「!」

 

アームは、一応密閉式にしてある。

 

クラウディアが即応してくれたから良かった。即座にエアドロップに戻ってアームを閉じる。しばらく、身動きしないで。

 

そう叫ぶクラウディア。

 

これは、予想以上に危ない場所と見て良いだろう。

 

しばしして、顔を上げる。

 

かなり頭痛が酷い。

 

「くっ、皆、無事か!」

 

「想像以上に毒素が強いようね。 奥に行くのは自殺行為よ」

 

「分かっています。 でも、この奧にほぼ確定で封印があります」

 

セリさんに、あたしは応えておく。

 

ともかく、このサンプルは慎重に扱わないとまずい。下手な扱い方をしたら、その場で倒れてしまうだろう。

 

一度集落まで戻る。そこで毒消しを口にして、横になった。効きが悪い。これはやはり、普通の毒ではないと見て良い。

 

レントが一番最初に動けるようになった。

 

旅先で、色々と経験したかららしい。

 

レントは苦労している。それを聞いて、笑う者はいなかった。

 

「単なる毒消しではダメっぽいねこれは」

 

「というよりも、これだけ強力に対魔装甲をつけても貫通してくるって事は、何か違うって見て良いと思う」

 

「うーん、でも空気でもなく、魔力でもなく、何が人間の五感を狂わせるんだろう」

 

「……」

 

タオですら腕組みして考え込む中。

 

セリさんが、ぼそりと言う。

 

「そもそも空気は一箇所に定着しないものよ。 水もそう。 だとすると、定着しているものに原因があるのではないのかしらね」

 

「……土」

 

「そういえば、さっきも土を見ようとしたら、強烈なのが来ましたね」

 

「それも、離れた今はそれほど影響はないな」

 

皆の意見が出ると、頭が動く。

 

なるほどな。

 

だが、土の何がまずいのか。それが分からない。しばし考え込む。やはり、師匠にも意見を聞くしかないか。

 

師匠、アンペルさんに。

 

いずれにしても、今日は無理を出来ない。体調が回復してから、もう少し調査を行うが。

 

やはり、画期的な成果を上げることは出来なかった。

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