暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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2、堅牢幻郭

アトリエに早めに戻り、ミーティングをしてから解散。クラウディアはすぐにバレンツに戻っていった。

 

色々と面倒な事になっているのだ。

 

これは、色々な意味で仕方が無い。

 

あたしも、エーテルに土を溶かしながら、分析をするが。どうにもよく分からない。土も、あの森から離れると、特に強烈な毒素やら悪さやらをばらまく事はないようである。

 

無言で一度手をとめる。

 

そして、アンペルさんの所に出向く事にする。

 

アンペルさんの安宿は、既に改造されまくっていて。宿の店主が、色々と不愉快そうに視線を向けてきたが。

 

あたしがにこりと笑みを返すと。

 

どうもあたしを知っているらしく、露骨に腰が低くなった。

 

どんな噂が流れているのやら。

 

ともかく、二人の部屋に行く。

 

リラさんはいない。

 

アンペルさんはいたが、小型の錬金釜で何か調合しているようである。義手はしっかり使えている。

 

良いことだと思う。

 

「ライザか。 入ってくれ」

 

「リラさんはどうしたんですか?」

 

「今手分けしてお前達が安全確保した遺跡以外を探っている。 私達でも、流石に一人であれらの遺跡を探るのは危険なのでな。 王都周辺に、まだ正体が分からない遺跡がないかを調べてくれている」

 

なるほど。

 

それは有り難い話だ。

 

とりあえず調合が終わるのを待つ。アンペルさんは、既に錬金術はあたしの方が上だと言っていたけれど。

 

経験やら何やら、あたしよりずっと勝っている要素はいくらでもある。

 

調合をアンペルさんが終えたので、クラウディアに貰ったドーナツを差し入れ。これが大好物である事を知っている。

 

ただアンペルさんは、あまり美味しそうに甘味を食べないので、クラウディアがいつも悲しそうにする。

 

アンペルさんも、思考のために糖分を補給しているとまで言うので。

 

それもあって、お菓子の作りがいがないのかも知れなかった。

 

「なるほど、それほど「深森」は厄介か」

 

「はい。 ゴルドテリオンの対魔装甲でも貫通してきます。 多分あれは魔術だけではないですね」

 

「いや、魔術だと思う。 ただ作用している手段が違っているんだ」

 

「どういうことですか?」

 

あたしから受け取った土を見ていたアンペルさんが、成分について説明してくれる。

 

そして、懐から取り出した金属を見せる。

 

「今は知識が失われてしまっているがな。 ライザ、雷撃は魔術で起こせるか」

 

「はあ、弱いものであれば」

 

熱操作があたしの固有魔術だけれども。

 

その気になれば応用も出来る。

 

ただ、単純に高熱、高火力で敵を圧倒する方が、小細工を弄するよりも遙かに高い成果を出せる。

 

故に、小細工はあまり鍛えていない。それだけの話である。

 

ただ、今後は相手によっては使える可能性もあるから、色々やってみたいとは思ってはいる。

 

今は、それを鍛えている時間がない。それだけである。

 

まずは冷気で空気中の水分を凝固させて。

 

それを熱で一気に温める。

 

更に色々と魔術で調整して。電撃を作り出し。金属へと流す。

 

人間を殺傷できる程度の電力には出来るが、その魔力で魔物数体を消し飛ばす事が可能なので、効率が悪い。

 

ともかく電撃を流すと。

 

いきなり、鉱石に大量の砂鉄がくっついていた。

 

「!」

 

「これが電磁石だ」

 

「どういうことですか」

 

「電気を流すと、一部の金属は磁石になるのさ」

 

既にこれは、電気というものが人間から身近でなくなって、失われてしまった技術と知識なのだという。

 

アンペルさんはたまたま神代の書物を読んで知ったそうなのだが。

 

確かに、こんなものがあったとは。

 

「この磁力はかなり強い力でな、生物に様々な悪影響を及ぼすこともある。 出力次第だが」

 

「まさか、あの森に満ちている力は」

 

「磁力そのものではないだろうな。 ただ、磁力に何らかの影響を受けている力の可能性は高い」

 

「……」

 

なる程、これは盲点だった。

 

確かにそんな力があったのなら。ゴルドテリオンの対魔装甲を貫通してきてもおかしくはない。

 

だけれども、どう対策すれば良い。

 

磁石については、あたしだって知っている。

 

だけれども、これをどうやって阻害するかとか、そういうのは分からない。

 

それにだ。

 

仮に阻害する方法を知っていたとして、それぞれが展開して戦う場合、それを適応出来るのか。

 

出来るとは、思えなかった。

 

「対魔術装甲に関係無く貫通してきそうな力は、他にありますカ」

 

「あるにはある」

 

「お願いします」

 

アンペルさんは、書物をくれる。

 

それによると、ある種の鉱石が発する極めて危険な毒素というものがあるという。これは正体がよく分かっておらず、神代でも存在は知られていたようだが、基本的に活用はしていなかったようだ。

 

これについては、鉛で防げるという事だが。

 

ただ、そもそも余程の濃度でない限り人体に害はないとかで。

 

むしろ機械類などに悪影響を与えるのだとか。

 

他にも幾つかの、目に見えない力が解説されている。

 

あたしはアンペルさんに貰った書物を手に、アトリエに戻る。勿論、アンペルさんには書物の礼は言った。

 

アンペルさんは、この本を写して持っているらしいので、返す必要はないそうだ。

 

それならば、あたしは遠慮無く読ませて貰うだけだ。

 

それにしても、これほどに。

 

魔力にも依存せず。

 

目にも見えず。

 

防ぐ事も出来ない力はあったのか。

 

本当にどうすればいい。こういう力が、あの森で悪影響を与えているとなると、どうすれば防げるのかちょっと分からない。

 

それも土にそれが含まれているとなると。

 

それこそ、地面全てが探索を阻害しに来ているようなものである。

 

これは、難題だ。

 

アトリエでしばらく考えたが、埒があかない。外を歩き回って、少し考える。

 

もう夜だ。

 

一応この辺りは安全なはずだが、以前ひったくりに遭遇した事だってある。あまり油断するのも危険だった。

 

「フィー……」

 

「ごめん、フィー。 ちょっと今、全力で考えるわ」

 

「あら、ライザじゃない」

 

「!」

 

歩きながら、顔を上げる。

 

パミラさんだ。

 

そういえば、此方に来ていたのだったか。

 

にこにこしているパミラさんだが。

 

そういえば、この人。

 

以前ロミィさんに聞いたのだが、どこででも話を聞くと言う。

 

なんでも何世代も前の、引退した商人が会ったことがあると言う話をしていたとかで。

 

ちょっと正体が知れない人だ。

 

「パミラさん、プディング探しですか?」

 

「そうよー。 良いお店を幾つか見つけたの。 ライザ、考える時はあまいものが一番よー?」

 

「ありがとうございます。 そうですね」

 

「でも、今日はもう真夜中。 明日にしたら?」

 

空を見る。

 

瞬いているのはたくさんの星。

 

確かに、言われる通りだ。

 

苦笑いすると、アトリエに戻る。パミラさんは、可愛く手を振って見送ってくれるけれども。

 

力が上がってきた今も、あの人の戦力、よく分からないな。

 

見た感じで、だいたい実力は把握できるようになってきたのに。

 

不可解な話だった。

 

ともかく、甘い物を準備すること。

 

それに、一眠りして、すっきりすること。

 

それが大事だと判断。

 

フィーもそれを告げていたのかも知れない。

 

回収してきた土は、一旦コンテナに入れて距離を取る。何かしらの力を発揮しているとしても、それで体に悪影響は与えない筈だ。

 

後は、眠る事にする。

 

確かに今の状態では、ろくな事を思いつかないのも道理だった。

 

 

 

特にこれといった遺物に触ったわけではないから、なのだろう。

 

感応夢は見なかった。

 

起きだしてから、すっきりした頭で考えて見る。五感が狂っていると言う事は、多分脳にダイレクトに影響を与えてきているはず。

 

そしてゴルドテリオンの装甲で、ある程度防げたと言う事は。

 

対魔術の装甲は、決して全てが無駄では無いと言う事だ。

 

ただし、そのままでは外で活動する事も出来ないだろう。

 

何かしら、方向性が間違っている。

 

それは間違いない。

 

問題は、どうすればいいか、だが。

 

朝のミーティングまでに、カフェに爆弾や薬を納品しておく。今足を運んでいる森の辺りは、それなりに良い薬草が採れることもある。更に専門的な薬や、より強力で保存も利く薬も作れるようになってきている。

 

これなら、ヴォルカーさんも大満足してくれるはずだ。

 

そう思って、一つずつに説明書をつけて納品。

 

発破についても、工房で採取してきた大量の鉱石を活用して、様々な発破を納品してある。

 

いずれも特殊な条件を満たさないと爆発しないようにしてあるので、普通に納品しても大丈夫だ。

 

火に放り込んでも爆発はしない。

 

問題は盗難などが起きた場合だが。

 

あのカフェから盗難しようという奴は、恐らく現時点ではいないだろう。

 

畑も見て来る。

 

セリさんはもういない。カサンドラさんがせっせと畑仕事をしていた。例の作物は、やはり四苦八苦している様子だ。

 

あたしが提供した肥料も試しているようなのだけれども。

 

まあ簡単にはいかないだろうなと思う。

 

軽く話して、後はその場を離れる。

 

農作業は、時間が掛かるものだ。

 

一日やそこらで、結果が出るわけが無いのだから。

 

アトリエに戻ると、ミーティングを始める。

 

まずタオに、アンペルさんから貰った書物を渡しておく。あたしは内容を把握した。タオは、すぐに目を通す。

 

「なるほど、磁力にこんな性質があったのか……」

 

「なんだ、お前でも知らないことが結構あるんだな」

 

「当たり前だよ。 知識もそうだし、特にテクノロジーは、神代から現在までの間に失われる一方なんだ。 どうやって動いているか分からない機械だって多いんだよ」

 

「知らない事がたくさん世の中にある事を知っていて、それを素直に受け入れられる。 それは立派よ」

 

セリさんが、不意にそんな事を言う。

 

皆驚いたようだが。

 

セリさんは。以降口を開かなかった。

 

ともかく、今日も試験を行う。

 

現在、危険ラインから、七百歩くらいは奧に行けることが分かっている。

 

その範囲内でサンプルなどを確認しつつ、遺跡などがないかも見ていく。また、何かおかしなものがないかも探って行きたい。

 

そして、早めに今日は引き上げる。

 

エアドロップ陸上型の改良も行いたいし。

 

何よりも、クラウディアに時間を作りたいからだ。

 

王都の情勢が良くない現状、面倒ごとをこれ以上抱えたくない。もしも貴族達が血迷ったりしたら、封印の調査ができなくなる可能性も高い。

 

そうなったら、下手をすると。

 

王都は近いうちに滅ぶ。

 

それが理解出来るような連中だったら、誰も苦労などしていない訳で。

 

あたしは、今日は午前中で探索を切り上げる事を決めていた。

 

ともかく、ミーティングを終えて、王都を出る。現地まで急ぐ。少しずつ皆に提供している装備は強化している。

 

更にすばやく、現地に向かう事が出来る。

 

現地に到着すると、タオが地図を拡げる。

 

「ライザ、川の状態をみたいんだ。 此方から入って、此方に向かってくれる?」

 

「分かった。 調査のプランは任せるよ」

 

「うん。 後は……」

 

タオが皆に作業を割り振る。

 

この遺跡調査は、本当に全てが手探りだ。

 

テクノロジーの中核になるのはあたしだけれども、将来遺跡調査をするタオが、少しでも経験を積むべきだろう。

 

エアドロップ陸上型を膨らませ。

 

乗り込んで、奧へ。

 

指定通りに進んでいくと、途中に川が見えてきた。

 

それほどの規模じゃあない。

 

どうも水源はこの遺跡の、危険地域にあるらしい。

 

密林を通っている川は幾つかあるのだが。この川はその中でも、特に規模が小さいものだ。

 

或いはだけれども。

 

何かしらの理由で水脈が途中から陸上に出ているのか。

 

逆に、殆どの水が、地下水脈に潜ってしまっていて。その一部だけが、陸上で再湧出しているのかも知れない。

 

「川の規模、極小。 川幅、あたしの歩幅で三歩ほど。 どうぞ」

 

「ライザ、流れはどうかしら」

 

「流れも強くはないね」

 

「川の上で、変な風に光景は歪んでいない?」

 

今の所は平気だ。

 

恐らく悪さをしているのは土だと思うのだが。

 

それを確定させるためにも、こうやって色々と調べて行く必要がある。

 

クラウディアの音魔術で、周囲の探索もしてくれる。ただそれすらも、この森の深部では正しい情報が伝わらない。

 

タオの指示で、川に沿って上流に。

 

やがて、不意にがくんと揺れるような感触。

 

来たな、とあたしは判断。

 

エアドロップをとめる。

 

「五感に異常。 周囲の光景が、歪んで見える。 どうぞ」

 

「ライザ、引き返してきて」

 

「サンプルを取り次第戻ります、どうぞ」

 

「了解」

 

やりとりは出来るだけシンプルに。

 

水、それに土。どちらもサンプルを取って、帰還する。

 

幸い早い段階で気付いていたので、帰還は難しく無い。

 

途中で魔物が死んでいた。

 

入り込んでしまったのだろう。干涸らびるようにして死んでいる。

 

普通こういう森の中では、スカベンジャーがたくさん彷徨いていて。こんな新鮮な死体なんて、瞬く間に骨にしてしまうものなのだが。

 

この森では、これだけ危険だからだろうか。

 

そういったスカベンジャーすら見つけられず。

 

虫すら集っていなかった。

 

虫ですら、此処ではまともに生活出来ないのか。ちょっと恐ろしい。

 

正確には昆虫ではないそうだが。昆虫の近縁の生物は。深い海にも生息しているという話だ。

 

外洋まで行く漁師の、かなり深い所まで降ろす網にはそういう虫の近縁生物が引っ掛かるらしく。

 

また少し前にレントに聞いたのだが。

 

火山の噴火が起きて、何もかもなぎ倒されたような場所でも。

 

最初に戻ってくるのは虫だそうである。

 

それだけ虫というのは、適応力が高いのだ。

 

そんな虫でもどうにもできない森。ここは、あらゆる意味でおかしくて、いびつな場所なのだと思う。

 

皆の所に到着。

 

それぞれで、色々な試験をしている。

 

セリさんがかなり消耗しているが、植物操作の魔術をたくさん使ったからだろう。

 

あたしが戻って、サンプルを回収すると、クリフォードさんが皆に警告した。

 

「また危険かも知れない。 迂闊に近付くなよ」

 

「うん。 ライザ、サンプルは指定通りに取ってくれた?」

 

「大丈夫。 植物、水、土、それぞれね」

 

「何か遺跡みたいなものは見えなかった?」

 

クラウディアの言葉に、あたしは首を横に振る。

 

残念ながら、そういうものはなかったと思う。

 

回収してきた土は、相変わらず五感を狂わせるようだ。ただ、分かってきた事もある。

 

この土。

 

五感を狂わせることはそうなのだが。

 

それはそれとして、少なくともアームの金属カバーで覆っている間は、異常を発生させない。

 

もしかして、だけれども。

 

それが、何かの突破口になるのかも知れなかった。

 

「よし、今日はここまで。 一度引き上げよう」

 

「それでライザ、これ以上の探索はどうするの? 北の里というのから、先に調べる手もあるよ」

 

「ワイバーンだらけの場所に踏み込むには、まだちょっと準備が足りないよ。 それに、いるのはワイバーンだけとは限らないし」

 

「そういえば、ドラゴンの目撃例もあるんですよね。 ワイバーンの群れなんて考えるのも恐ろしいですし、更にドラゴンとなると……」

 

パティに、王都でのドラゴンキラーの記録について聞いてみる。

 

そうすると、百年前だかに小型のを狩った記録があるとか言われる。

 

百年前か。

 

そうなると、もうノウハウもなにもないだろう。

 

アトリエに戻る。

 

予定通り昼である。後は解散して、あたしは黙々とサンプルの調査。それに、エアドロップの回収を行う。

 

レントに、パティが声を掛けていた。

 

「レントさん、修練を見てもらって良いですか?」

 

「別にかまわないが、師匠はいるんだろ。 俺に余計なことを言われると、却って太刀筋が鈍るかも知れないぞ」

 

「いえ、それは分かっています。 色々な人の戦い方や意見を聞いておきたくて」

 

「なるほどな、タオが言うとおり向上心の塊らしい。 分かった。 ちょうどアーベルハイム卿には良ければ家に来て欲しいとか言われていたし、午後は訓練を見させてもらう」

 

パティの、この貪欲な勉強に対する姿勢は、恐らくタオと根本的な所で気があう理由なのだろう。

 

あたしは、後は淡々と調査を行う。

 

やはり分厚い金属で覆うと、土の影響はかなり緩和できるようだ。逆に、土には絶対にフィーは近寄ろうとしない。

 

珍しく、威嚇っぽい声まで上げている。

 

それくらい、嫌だと言うことだ。

 

あたしは土をエーテルに溶かして、成分を分析するが。

 

分からない要素が多すぎる。

 

それぞれの要素を抽出して、分析していくと。

 

やがて、明らかに体に異常を及ぼす要素が幾つか出て来た。

 

まだ濃度はそれほど圧縮できていないが。

 

それでも危険極まりない。

 

僅かな量でも、近付くと視界がぐらりと来る程だ。金属で覆って、隔離する。だけれども、金属で覆っても駄目なものもある。

 

アンペルさんに貰った資料を確認してみる。

 

幾つかそれらしいものもあるが。

 

ただ問題がある。

 

共通して、それほど大量に用意できない、ということだ。

 

今、これらの危険物は、土に含まれていて。それが危険を生じさせている。それが何種類かある。

 

いずれもが、今は失われた知識の産物であって。

 

多分神代から伝わったか。

 

或いは何となくに伝承されてきたものを、遺跡を作った人間が利用したというのが実情だろう。

 

森の奥に遺跡があれば、だが。

 

それは今は、考えない方向でいく。

 

腕組みして考えながら、色々と試す。圧縮した原因を用意できたのは有り難い。アンペルさんの所に、持ち込もうかと思っていると。

 

そのアンペルさんが、丁度此方に来た。

 

今日は、リラさんもいる。

 

これは有り難い。

 

二人に茶と菓子を出す。

 

リラさんは、油断なくアトリエを見回していたが。やがて席に着く。相変わらず、警戒心が強いなと思う。

 

「毒物らしい未知の要素を圧縮できました。 確認して貰えますか」

 

「流石にやるな。 どれ……」

 

「まて。 これは……」

 

リラさんが目を細めて、並べたサンプルの一つを見る。

 

そして手にとって、左右から見つめた。

 

サンプルはどれもシャーレに乗せているのだが。リラさんはアンペルさんの所で見ているからか、シャーレには抵抗がないようだった。

 

「……間違いない。 これは恐らくだが、キビスビスだ」

 

「それはどういうものですか?」

 

「オーリムにも存在する土でな。 龍脈の近くに自生する植物が圧縮する。 魔力に触れる事で、周囲を幻惑する」

 

「!」

 

植物産なのか、これ。

 

詳しい話を聞くが、リラさんも詳しくは分からないらしい。古代クリント王国が来る前に、先達からそういう危険なモノがあるから近寄らないように、とは言われていたようだ。

 

「そのキビスビスを生じさせる植物については分からないかリラ」

 

「ちょっとなんとも言えない。 ただ、此方の世界にも龍脈はある。 そしてその植物は、そもそもオーリムでは珍しいものでもなんでもなく、たしか無力化する手段があるとかないとか……」

 

流石に五百年以上前に、ちょっとだけ話を聞いただけのものだ。

 

それ以上は、リラさんも分からないようだった。

 

いずれにしても、これはもしかして、セリさんの出番か。

 

ともかく、活路は開けたかも知れない。

 

フィーがリラさんに懐いているので、任せて畑に様子を見に行く。今の時間も、ひょっとしたらいるかも知れない。

 

それに、アンペルさんがフィーを調べたいと言っていた。

 

少し任せておくのもありだろう。

 

軽く走って、すぐに農業区に。

 

セリさんはいた。

 

黙々と作業をしている。あたしを見ると、顔を上げる。やっぱり、まだ少し警戒をしているようだった。

 

「セリさん」

 

「どうしたの。 急な招集?」

 

「いえ。 キビスビスというものに心当たりはありませんか」

 

「……そう。 恐らくあのリラという戦士ね。 キビスビスの事は知ってるけれど、私の知っているものと、今困らされているものは少し違うわね」

 

いや、それで充分だ。

 

順番に、そのキビスビスの特徴を聞いていく。

 

今、カサンドラさんがいないのも丁度良い。

 

幾つか特徴を確認すると、なる程と納得させられるものもおおかった。

 

キビスビスというのは、龍脈近くに自生する植物が、身を守るために発生させるものだそうである。

 

土に長い時間を掛けて変化を起こし。

 

最終的に、植物が狂わないように、植物を守るための盾のような役割を果たすのだとか。

 

龍脈が地面に露出しているような場所では、本来では考えられないような魔力が流出を続けており。

 

それはかなり危険なものなのだという。

 

魔力も量が多すぎると、植物の育成に悪影響を与えたり。

 

更には異形を生じさせるとか言う話だ。

 

「これは植物に限った話ではないわ。 龍脈の直の上には、基本的には私達も集落を造りはしないのよ。 龍脈の近くに集落を作る事はあってもね」

 

「なるほど、キビスビスというのは、それだけ限定条件で作られるものなんですね」

 

「もしもそれを人工的に作ったのだとしたら、本来のものと性質が違っているのが当然でしょうね。 ましてやあの森全域に撒かれているとなると……キビスビスを生じさせて、周囲にばらまくような植物が品種改良で作られて、自生している可能性もあるわ。 そうなってくると、その植物が大気中の魔力を吸い上げて、長年かけてキビスビスを広範囲にばらまいている可能性すら考えられるわ」

 

そうか、それは危険だ。

 

対策は何か無いのかと聞くが。

 

セリさんは首を横に振る。

 

「故郷にあったものとそもそも性質が違うから分からないわね」

 

「……なるほど、確かにそうですね。 ただ、植物が生じさせたとなると……活路は見いだせるかも知れません。 もう少し、分かる事を全てお願い出来ますか」

 

「ええ。 まあ別に損にはならないし、いいわ」

 

順番に性質を聞いていく。

 

それを全てメモ。

 

アトリエに戻ると、既にリラさんはその場を離れていて。アンペルさんが、フィーを検査していた。

 

フィーは大人しく検査を受けている。痛い事はされていないようだった。

 

「アンペルさん、やはりセリさんが色々と知っていました」

 

「メモを見せてくれるか」

 

「はい!」

 

メモを見ると、アンペルさんは酷い字だなとぼやきながら、すぐに内容を把握してしまう。

 

そして、フィーから手を離すと、咳払いしていた。

 

「今の時点では大丈夫だろう。 幾つかの古文書を見て調べたが、どうにも似た生物が見あたらない。 ただ……」

 

「何か、分かりそうですか?」

 

「いや、このフィーの翼の形状がな。 どうしてもオーリムの生物に合致しているように思えてな」

 

なるほど。

 

フィーがオーリムの生物である可能性は高いと言うことか。元々その可能性は考慮していたし、今更驚く事もない。

 

アンペルさんは、資料と研究結果だけ持って、そのまま戻る。後は、あたしが。色々と調べなければならなかった。




フィーの正体は原作ライザのアトリエ3で説明されるのですが。

本作ではせっかくですので、早い段階で色々と伏線を撒いておきます。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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