暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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4、中枢を調べる前に

アトリエに早めに戻る。

 

事前の見たて通り、やはり遺跡の大きさは大した事がなく、中央部の墳丘部分以外は、周囲にちいさな建物が幾つかあるだけ。

 

小さいと言っても貴族の邸宅くらいはあったけれども、それでも今までの遺跡に比べるとぐっと小さかった。

 

まずは回収した本の調査からだ。

 

タオとクリフォードさんが、手分けして調べ始める。あたしも、持ち帰った装丁された本を見るが。

 

暗号で書かれている。

 

これは恐らくだが、錬金術師の残したものだ。

 

多分だけれども、今までの遺跡でみた残留思念にあった「不死の魔女」とやらの本だろう。

 

だとしたら、古代クリント王国以前の錬金術だ。

 

どれだけ危険な内容なのかちょっと判断がつかない。

 

「ライザ、それは任せるよ」

 

「分かった。 何とかしてみる」

 

タオも、この本については手に負えないと、先に言ってくる。というか、考古学とは別分野なのだ。

 

クリフォードさんにとっては暗号解読は出来るかもしれないが、錬金術は分野違いである。

 

だから、あたしがやるべきと言うことなのだろう。

 

クラウディアは先に引き上げて貰い。これから二日掛けて、本を調査する事にする。その間、レントとセリさんとパティが、物資の集積所から、他の回収したものをアトリエにピストン輸送してくれることになった。

 

パティを顎で使うようでちょっと心配だが。

 

基本的に他人に見られる所では、力仕事はせず。

 

表向きは指揮官みたいに振る舞うと言う事で、パティに納得して貰った。

 

面倒だが、こういうのは仕方が無いのだ。

 

アーベルハイムはこの王都で数少ないまともな貴族なのである。

 

今後王都をよくするためにも、少しでも頑張って貰わないと困る。

 

そのためには、多少あたし達も、それなりのやり方をしなければならなかった。

 

皆の作業分担をした後、解散。

 

タオは本を抱えて持って帰る。

 

クリフォードさんも、同じようにして引き上げる。

 

あたしは、まずは暗号の分析からだ。

 

アンペルさんに基礎は教わっているけれども、それでも結構難しい暗号だ。タオに残して貰った、同時代の文字についての解読表も見ながら、やっていかなければならない。苦手分野だが。

 

今後、もっと古い時代の暗号も出てくるかも知れない。

 

それに対策する場合を考えて。

 

知識を増やさなければならなかった。

 

「ライザさん」

 

「ん?」

 

パティが残っている。

 

そういえば、どうしたのだろう。

 

真面目な話の可能性も高い。

 

顔を上げて、話を聞く事にする。

 

「実は、ライザさんに頼みたい事があるんです」

 

「なに? いつもパティには世話になってるから、仕事だったら格安で受けるよ」

 

「ありがとうございます。 ……正直になれる薬ってありますか」

 

「正直に……」

 

ちょっと考え込む。

 

精神操作の薬は、あるにはある。

 

あたしもあの塔……いにしえの戦いで、古代クリント王国がフィルフサを誘引し、水で一気に押し流す作戦で、守備の戦士もろとも全滅したあの地獄から。回収した本については見ている。

 

その中には、とてもまっとうな人間だったら思いつけないような、残虐な仕打ちをする錬金術や。

 

知っていても絶体にやってはいけないような事を出来る錬金術についても、記述があった。

 

古代クリント王国を乗っ取る際に、錬金術師達は暗殺も洗脳もなんでもやった。

 

彼等に倫理などと言うものは存在せず。

 

そういう連中が、我欲だけを求めて力を振るったらどうなるか。

 

それが示されていたのが、古代クリント王国がこの世界でも、オーリムでも、やらかした所業だと言えるだろう。

 

ともかく、そういう知識はあるにはあるが。

 

パティの場合は、まずは事情を聞きたい。

 

「そういう薬は作れるけれど、とても危険なんだよ。 ただ一度だけ、短時間だけ効果を発揮する薬だったら作るけれど、使う内容を聞かないと渡せないかな」

 

「そうですよね。 ライザさんがそういう人だと分かっているから、この話をさせていただきました」

 

「うん。 それでなにに使うの」

 

「お父様が、タオさんとしばらく会うなって言い出しました」

 

はて。

 

それはどういうことか。

 

確か、ヴォルカーさんはタオを認めていて。パティの夫になるような膳立てをするつもりだと聞いていた。

 

実際貴族の無能なボンボンなんかより、戦闘も出来るし学者として大成すること確定なタオの方が、パティの夫としては最高の逸材だろう。これ以上無い程の優良物件だといえる。

 

あたしがタオを男としてみられない事と、パティの夫として最適かどうかは別問題である。

 

それくらいのことは。あたしにも分かる。

 

「最近、ライザさんについてあたしが機械の修理を積極的にやっていることで、一部の貴族が醜聞を探しているようなんです。 これ以上アーベルハイムが力を持つと危険だと判断する人達です」

 

「そういえばヴォルカーさん、今度伯爵だかになるんだっけ」

 

「今までの功績を考えると、侯爵でもいいくらいなんです。 王都の人達と、王都周辺の街道をどれだけお父様が守ったことか……」

 

だけれども、それはそれとして。

 

タオと離れろというのは、我慢ならないとパティは言う。

 

珍しくこの子が本気で怒っている。

 

素直になっていると思うのだけれども。

 

だけれども、パティはヴォルカーさんの厳しい立場も理解していて。それで、あまり強くは言えないのだと思う。

 

「勿論その、外でタオさんにく、くっついたりするつもりはないです。 家庭教師に学生を招いている貴族の子弟は幾らでもいますし。 ライザさんは既に驚天の技の持ち主として、貴族達から畏怖されていて、側にいても問題はないとお父様は判断されているようです。 でも、タオさんはまだその、有望ではあっても学生で、それで……」

 

「分かった。 さっきも言ったけれど、一度だけ、短時間だけしか効く薬を作るよ。 とにかく危険なものだから、本当に気を付けてね」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「料金は今後も良き人間であろうという姿勢を崩さないこと。 貴族だろうがなんだろうが、今の王都の上層部みたいな連中には絶対にならない事。 もしもこの約束守ったら、首をもらいに行くよ」

 

ちょっと強めの脅しを掛けるけれど。

 

パティはそれに、大まじめに頷いていた。

 

或いは、遺跡を回る過程で、色々と思うところがあったのかも知れない。

 

やはりこの年頃が一番伸びるんだな。

 

そう思って、あたしは笑みを浮かべてしまう。

 

一礼すると、パティは戻る。

 

頑張って。

 

その背中に、あたしはただ思った。

 

 

 

(続)




ついにこの困難な……対人トラップと密林への偽装で守られた森の深奥に迫るライザ。

仲間である皆の悩みにも、順番に平行で肉薄していく事になります。

マルチタスクで困難な任務をこなしていく様子は。

まさに豪傑です。

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