暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
調査をして。
情報を確証に変えなければなりません。
封印の正確な位置も、まだ分かってはいないのです。
遺跡の安全はこれで確保できた。
一度、毒竜の解体と、首を持っての凱旋を済ませる。
頭が半分打ち砕かれ。片側に目が二つある異形の竜の死骸は、街の入口を通るだけで騒ぎを起こし。
アーベルハイム邸に持ち込む時にも、周囲に人だかりが出来ていた。
メイド長が、弁士をすぐに連れてくる。
弁士というのは、喋る事を仕事にしている人だ。
クーケン島にも一人だけいたっけ。
祭なんかで、司会進行をすることを仕事にしていて。重要な行事の時とかも、開始の合図をしていた。
声を増幅する魔術を使っているのだが、あたしが声を大きくするための道具を渡しておく。
合間に作ったもので、別に大したものでもなく、空気の振動である声をそのまま増幅して、更に拡散するだけのものだ。
これに喋る事を仕事にしている人が加われば、更に分かりやすくなる。
「王都を狙っていた悪竜を、アーベルハイム家のパトリツィアお嬢様が、協力体制にある錬金術師であるライザリン=シュタウト様と、そのお仲間がたとともに仕留められた! 実に百年以上ぶりの快挙である! 新しいドラゴンスレイヤーが、今誕生為されたのだ!」
「おおっ!」
「アーベルハイム家、万歳!」
元々王都の良民は、アーベルハイム家に非常に大きな感謝をしている。
当たり前の話で、上に立つ人間の責務を体を張って果たしている事を、誰もが知っているからだ。
王家や他の貴族とは違う。
そいつらは偉そうにふんぞり返っているだけ。
アーベルハイムは生命線である街道近辺の警備に出て、常に最前線で戦っている。それで実際に命を救われた人間は数も知れないし。
王都の警備でも、義賊の三人組などを積極的に採用して。
治安の向上に努力してくれている。
要するに、生きやすくなるように最大限の努力をしてくれている存在であって。
それでこれだけ歓迎されていると言う事だ。
今朝、他の貴族複数家に対する醜聞が、パティの手でまき散らされた事もある。
これで王都のパワーバランスは一変するはずだ。
ヴォルカーさんが出て来たので、弁士も慣習もぴたっと黙る。
ヴォルカーさんは、毒竜の巨大な、半分になった首を見やると。
うむと頷いていた
パティの格好を見て、どれだけの激戦だったのか、一目で理解したのだろう。
「見事だ。 後は私が処理しておこう」
「はい、お父様」
「すまないが、ライザ君。 明日は娘を連れて王宮に出向く。 この毒竜の首を国王に見せなければならないからな」
「そう思って、首の保存処置はしてあります。 ただ牙には強い毒がありますので、運ぶ時には注意してください。 念の為、もしも牙に触れてしまったときは、この毒消しを用いてください」
薬も渡しておく。
今、アトリエで急いで解析して、毒消しを調合したのだ。
毒は量こそ多いが、成分はそれほど厄介なものではなかった。
毒蛇の中には体が大きく、毒の量が多くて危険なものがいる。この毒竜は、そういうタイプだった。
勿論毒消しが効くことも実証済みだ。あたしの身で。
「何から何まですまないな。 これからもパティと連携して王都のために行動してくれ」
「はい」
王都のためだ。
この国の王族や貴族のためじゃない。
そう込めての、返事だった。
そのままアトリエに戻る。
今日はミーティング無しで解散。明日から、羅針盤を使っての、遺跡の探索を行う事になる。
そもそも北の里が、更に厳しい場所である事は確定なのだ。
それに、封印にも傷をつけたくないし。徹底的に丁寧に調べておきたい。
あの墳丘の中に封印があるのはほぼ確定とみて良いが。
いずれにしても、あの場所には時間をおいてから、調査に出向きたいのも事実だった。
アトリエで、皆で休む。
「ライザ、感謝するぜ。 俺はトレジャーハンターして長いが、あんな凄まじい魔物とやりあったのは初めてだ。 それで勝てたんだから、ロマンの極限を味わえたと言える」
「良かった。 満足出来ましたか?」
「まさか。 常に更に先を目指す。 そうでないと、人間は進歩が止まる。 俺はまだまだ、更なるロマンを目指していくぜ」
流石だ。
クリフォードさんは、子供みたいな所もあるが。
こういう所は筋が通っている。下手に大人ぶっている人間より、よっぽど好感が持てる人物である。
ボオスが咳払い。
「明日はパティは忙しいだろうな。 それでどうする」
「明日一日掛けて、羅針盤を用いて遺跡の探索を終えてしまうつもり。 出来れば封印も確認したい」
「それじゃあ、私も明日は抜けて良いかな。 王都の混乱のピークが明日になるとおもうから、バレンツの方でも色々とする事があるの。 私の見たてでは、幾つかの貴族の家が今回の一件で没落して、結構な資産が流出する。 それによる混乱をある程度抑える手を打っておきたいの」
あくまで影響が出るのは王都の中だけ。
それでも三十万の民が混乱による影響を受ける可能性がある。
クラウディアの対応は妥当だと思う。
「よし、じゃあ明日はパティとクラウディア抜きで行こう。 それでいいかな」
異議はでなかった。
よし、これで「深森」の探索も大詰めだ。
流石にあれ以上のガーディアンは配置されていないはず。だが念の為に、これだけの戦力もいる。
何よりあの場所では、クラウディアの音魔術による奇襲防止があまり機能していないのも事実。
それだったら。別にクラウディアの存在は必須とも言えなかった。
舞っていた土も、雨が降っていたこともあって、明日には落ちついているだろう。調査には、それで良かった。
皆が帰ってから、毒竜の肉を分析する。
フィーが、不思議そうに見ていたが。
あたしは、腕組みしてしまう。エーテルに溶かして要素を分析してみたのだが。
やはり毒がかなり含まれている。
それ以上にこれは。
内臓の方が良いか。
内臓を確認して、中身を取りだして見る。そして、あっと声が出ていた。
内臓の中から、要素を圧縮して、エーテルから取りだす。
其処には、小さいけれども。確実に虹色に輝く光があった。
生唾を飲み込む。
これは、間違いない。
「セプトリエンだ……」
なるほど。
確かに超圧縮された魔力によって出来ると言う話だったが。あれほど強大な毒竜の体内だったら、自然に出来る可能性があるということか。
これは自然には見つからないだろう。
それにこのセプトリエンは、あまり品質が良くない代物である可能性も高い。
出来ればもう少しサンプルが欲しい。
なお、セプトリエンを取りだして見ると。あれだけ臨界近い魔力を蓄えていた内臓は、即座に萎びてしまった。
色々な意味で恐ろしい金属だ。
これが伝説の品になるのも、よく分かった。
「フィー?」
「ごめんね。 これはあげられない。 それよりも……」
粗悪品でもいい。
ともかく、これをトラベルボトルにセット。それで増やして、それで。
ゴルドテリオンでは限界だった装備の刷新が出来る可能性がある。
これ以上は装備の強化ができない事を覚悟していたが。
ついに、その先が見えてきたことになる。
錬金術師としての血が疼く。
いよいよ、究極の装備が。
見えてきたかも知れなかった。
(続)
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