暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
この二つの可能性の内、前者は否定はされましたが。それでも今すぐではない、というだけです。
まだ封印の具体的な位置も分かっていない状態です。
最後の可能性がある遺跡。
険しい地形を超えてワイバーンをはじめとする強力な魔物がいる地帯を抜けて。
やっとたどり着ける其処を、ライザ達は目指します。
昼少し後にアトリエに戻って。
それから、しばらくは無心に調合した。
この間の毒竜の素材も吟味する。剥いで持ち帰った皮、それに肉。
食べる事は出来ないが、何かに使えるかも知れない。
少なくとも無駄にはしたくない。
それがあたしの本音だ。
皮は想像以上に凄い素材だ。
鱗はあるにはあるが、鱗よりも皮が強く発達したらしい。これはなめしておくと、非常に強力な素材になる。
しばらく考えた後。
鱗を剥がして、皮だけにした後。
エーテルに放り込んで、調整。
そして、その後デニスさんの所に持ち込んだ。
デニスさんはコンテストがどうだので忙しいようだが、手をとめて皮を見てくれる。これは、と思わず呟いていた。
「もう噂になっていると思いますが、くだんの毒竜の皮です。 防具素材に使えないですか、これ」
「使える。 最強のものを作れるよ」
「よし……なら」
それなりに量もある。
まずはパティの胸当て。クラウディアの手袋。
この二つは必須だ。
パティの胸当ては当然として、クラウディアの手袋は何故か。これは、弓矢に必須だからである。
今の手袋でも充分な性能があるのだが。
しかしながら、これを本職に加工して貰い。更にあたしが錬金術で手を加えれば、更に強力な射撃用の手袋を作れる。
レントは肩当てか。
レントは片方だけ肩当てをつかうのだが、時々この肩当てを攻撃的に使用している。タックルとか、或いは突進時に肩当てを上手に使って攻撃を逸らすとか。
この肩当ては、軽くて硬い方が良いはずだ。
クリフォードさんは靴がいいか。
今渡している靴を、更に専門で強化する。
空中戦を得意とするクリフォードさんだ。やはり靴を更に強化すれば、もっと戦いやすくなるだろう。
あたしも靴だな。
クリフォードさんとは使い路が違う。
蹴り技に使うためのものだ。
これについては、あたしが自分で徹底的に使い込んで調整もしているから、今更ではあるのだが。
一部を、プロに渡して調整して欲しい。
後はタオか。
タオは軽装で、とにかく速度と手数を増やしたいはず。
そうなると手袋だろう。
セリさんはどうしよう。
セリさんは、攻防共に植物操作が強力で、防具は必要ないかも知れない。だったら、今渡している杖がいいか。
それらを軽く話し合って。
まずはパティの胸当てだけ頼んで、それで一度戻る。報酬として、少しだけ試験的に作ったグランツオルゲンをおいていく。
これもいずれもっと研究して、更に強化していきたいが。
そもそも存在が伝説の金属だ。
簡単にはいかないだろう。
アトリエに戻った後は、お薬や爆弾の補充、調整を行う。
実の所、フラムでいうなら、廉価なフラム、強化版のローゼフラムは概ねこれでいいと思っている。
更に強い敵に使うためのフラムも今考えているのだが。
使うにしても一点に爆縮するようなものが必要で。
広域破壊は必要ない。
広域破壊なんて、大量虐殺くらいにしか使えないし。仮にフィルフサとかを相手に擦るにしても。
周囲への影響が大きすぎる。
ただでさえ、大雨で辺りを押し流すくらいしないと、フィルフサの悪影響を受けた土壌を押し流せないという問題は確かにあるが。
それはそれとして、根こそぎ吹き飛ばしてしまうのは、それはそれで雑だし、被害も大きくなりやすい。
そうならないように、これからは考えて行かなければいけないだろう。
夕方に、一度切り上げて。
そして、ミーティングをする。
装備強化の話をすると、皆サイズを測らせてくれる。一応知ってはいるのだが、それでも少し変わっているかも知れない。
パティは毒竜の皮鎧というのはちょっと抵抗があると素直にいってくれたが。
文字通り竜を身に纏うという意味もあるとあたしが言うと、少し考えた後に頷いてくれた。
勿論白を基調とした彩色をするつもりだ。
パティには、多分白の皮鎧が似合うと思うので。
一通り装備刷新の話をした後で。
クリフォードさんが問題があると、話を振ってくれた。
「北の里について、資料を俺なりに調べてきた。 その過程で、問題がわかってな」
「聞かせてください」
「まあ道中もまずいんだが、そもそも街道の一部が崩落してる。 前は粗末な橋が架かっていたらしいが、それも今は落ちてしまったそうだ」
「確かに誰も行かない場所だもんな。 恐らく橋というのは古代クリント王国か、それより古いものだろうが、いずれにしても手入れしなければ落ちるのは仕方がねえ」
レントがそう言うと、タオが考え込んだ。
その地形は分かるかと。
勿論、クリフォードさんは手抜きがない。
地形についても、メモを取ってくれていたようだった。
「なるほど、崖を挟んで……向こう側が高くなっているのか」
「厄介な地形だなこれ」
「ちょっと考えておく。 これだったら、なんとか橋を渡せるかも知れないし」
「ライザさん、できないことが想像できません……」
パティがなかば呆れ気味に言うが。
あたしにできないことなんて、それこそなんぼでもある。
だから、あたしは大まじめにそう返して。
そして、咳払いしていた。
「後はアンペルさんとリラさんと連携しつつ、封印の場所の特定だね。 持ち帰ったデータの精査を頼むよ」
「分かった。 とりあえず二日は動かない方針かな」
「いや、明後日にはクリフォードさんが言っていた崖を見に行くつもり。 今すぐ封印が敗れることはなさそうだけれども、それでもやっぱり急いだ方がいいと思うし。 崖の様子を見に行くだけだったら、クラウディアの音魔術の早期警戒は必要ないと思うし」
「そっか。 じゃあ、僕も早い内に資料をまとめておくよ」
解散。
パティは残って貰って、鍛冶屋に出向く。
今後改良はするが。グランツオルゲンも含めて調整をした胸当てを、試着したり色々とあるのだ。
毒竜の皮を更に鎧用に改良。
それを彩色して、要所をグランツオルゲンで補強する。
パティの固有魔術はエンチャントで。
武器の切れ味をあげたりは出来るが、パティ自身は素の身体能力で勝負するしかない。そういう意味で、多くの人が使っている身体強化の固有魔術の更に下位互換と言えるかもしれない。
ただパティは、そんな能力であっても、しっかり使いこなして今では最前線に立てる力をつけている。
だからこそに、防具を渡しておく。
残念だが、まだパティは皆の中で一番経験が浅く、戦闘力も総合的に見て低い。
最優先で防具を回すのは、それが理由だ。
デニスさんは既に防具を完成させていて、鍛冶屋に出向くと胸当てを用意してくれていた。
パティはすぐに着替える。
流石に普段から鎧を着ているだけあって、一度説明を聞いて即座に着付けについては理解したようだった。
更衣室に出向いて、着替えるパティを見送ると。
つやつやして嬉しそうなデニスさんと軽く話しておく。
「どうですか、あたしの改良した毒竜の皮」
「素晴らしい素材だ。 あんなもの扱えるなんて、鍛冶屋としてはもう死んでもいいほどだよ」
「死なれると困ります」
「ははは、そうだったね。 モチベーションがどんどん湧いているし、コンテストには気合を持って望めそうだ」
そうか。
パティが戻ってくる。
大まかなデザインは前と変わっていないが、今度のは白を基調とした、非常に美しい胸鎧だ。胸当てだが、更に以前より要所の補強の要素が強く、胸鎧に近い。
それでいながら気品もある。
今回は要所に金では無く青を入れているが。
金というのは特別感がある色なのであって。
要所に使えば素晴らしいが。
全部金色にしてしまっても、下品なだけである。
「おお。 いいねパティ!」
「ありがとうございます。 竜を纏っていると思うと、恥ずかしい行動は出来ないですね」
「今後体の成長に合わせて調整するので、必要に応じて足を運んでください」
「分かりました。 その時はお願いします」
デニスさんに礼をするパティ。
大丈夫だ。
竜を纏ったということもある。前と変わっていないというよりも、良い方向で誇りを昇華させている。
これほどの仕事をした鍛冶師に敬礼をするのは当たり前だ。
偉い人間が頭を下げないなんてのは、それこそ変な理屈である。
なお、鎧にはアーベルハイムの家紋も刻んである。
つまりこれは、事実上パティの専用の鎧だ。
「これだったら公式行事に出ても、全く恥ずかしくありません。 惜しいのは、多分私一代のための家宝になってしまうことですね」
「しっかり使って。 素材だったらあたしが用意するから」
「分かりました。 本当に、有難うございます」
もう一度頭を下げられたので。
此方こそと返して。
それで、後は此処で別れる。
アトリエに戻る前に、カフェで軽く夕食を取る。
噂話が聞こえてきていた。
「アーベルハイムのお嬢様を助けて、例の錬金術師がドラゴンを倒したらしいぜ」
「ドラゴンだって……」
「ああ、噂になってる。 百年以上ぶりだそうだな」
「いや、とんでもねえな。 王都なんてその錬金術師の気分次第で灰にされちまうよ」
人間は、魔物に押され放題だ。
五百年前には、ドラゴンを強制的に使役していた人間は、既にドラゴンに対して絶対に勝てない存在としての恐怖さえ抱いている。
料理を食べながら、周囲の雑談を耳に挟んでおく。
「……侯爵が、王都をそそくさと去ったそうだ。 だがあの様子だと、途中で追いはぎにでもやられてのたれ死にだとか」
「あの野郎、辺境から持ち込まれた違法奴隷を周囲に何人も蔓延らせて、死んだのも外に捨てさせていたらしいな。 さっさとのたれ死にやがれよ」
「他にも何人か、近いうちに王都を出ていく貴族がいるそうだ」
「いい気味だな」
嘲笑。
どれだけこの国で。いや、王都だけがこの国だが。この三十万人しかいない人間の集団で。
貴族を気取っている連中が嫌われているのか、よく分かる。
他にも、貴族に対する鬱憤がよく分かる会話が幾つか聞こえたが。
あたしとしては、それで充分だった。
適当なタイミングで、薬や爆弾を納品しておく。
帰るかと思ったタイミングで。
レントとボオスが来た。
ボオスは疲れきっているようだった。
「ちょっとボオス。 大丈夫?」
「猛烈に腹が減ってる。 だけど疲れて、立ってても落ちそうだ」
「おい、やっぱり無理だっていったじゃねえか」
「かまわん。 これくらいはやらないとな」
やむを得ないか。
栄養剤を渡す。
以前よりかなり強めに作ってあるものだ。
口に入れた瞬間真っ青になったボオスだが。それでも飲み干すように強く言うと、ぐっと飲み干した。
それで、しばらく無言だった。
それはそうだろう。
コレは要所で使うために作ってあるもの。
味についてはほぼ配慮をしていない。
「飲むだけで魂が出ていきそうになるな」
「とりあえず、これで大丈夫。 で、二人して何やってたの」
「剣の稽古だよ」
「……」
言うなよ余計なことを。
そうボオスが顔に書いたが、レントは咳払いする。
今更隠すことでもないというのだろう。
立ち話もなんなので、しようがない。もう少し、此処で食事にしていく。
懐から顔を出したフィーだが。此処でボオスの頭に乗るのはあまり良くないと自分で判断したらしい。
ボオスも、フィーを見て疲れた苦笑を浮かべるばかりだった。
「どうレント。 ボオスの剣は」
「悪くないぞ。 元々アガーテ姉さんに基礎は教わっているんだしな。 俺が教えられるのは、鍛錬の方法くらいだ」
「ちょっと度を超しているがな。 その体力、どこから湧いてくるんだお前は」
「まあこればっかりは体質だろうな。 基礎体力は握力なんかと同じでほとんど遺伝だって話をアガーテ姉さんがしていただろ」
少し休みながら、話を聞く。
ボオスはやはり剣術をレントに見てもらっているようで。相応に体を鍛えているようである。
目的については聞かない。
文武両道というには、体に負荷が掛かりすぎている。
少なくとも、パティに聞いた成績を家名と金で買うような貴族とは違って。超大まじめに努力をしている事になる。
ただ学問ではこれだけ休んでも余裕なタオがいるし。
武力でも、歴戦を積んですっかり一人前になっているレントがいる。
どっちにも、今後勝てる見込みはないし。
精神的な負担は小さくないだろう。
今後ボオスがやるのは、クーケン島発展のための指導者としての責務を果たすこと。
これはクーケン島周辺のちいさな集落のためでもあるし。
何よりも、魔物に押されっぱなしの人間が、少しでも反撃するための足がかりを作る意味でもある。
それを考えると、ボオスの責任は大きいし。
焦るのも、無理は無いのかも知れない。
「それじゃあ、俺は行く」
「ああ。 ちょっと王都が騒がしいし、一応気を付けろよ」
「分かってる」
フラフラとボオスがカフェを出て行く。
心配になったが、レントが首を横に振った。
「ライザの栄養剤だって飲んでるんだ。 意地くらいは張らせてやれ。 多分、寮につくくらいまでは大丈夫だ」
「なんだか心配だよ。 無茶はさせていないよね」
「させていない」
レントもこの辺りは本職だ。
ボオスの体力をしっかり見極めた上で、それで無理をしない程度に鍛錬をしたという事なのだろう。
これはクーケン島に戻ってきたら、すぐに護り手の長になれる。
アガーテ姉さんもやっと引退できるだろう。
実は此処に出てくる前に、アガーテ姉さんがアンチエイジングについて興味を示したことがある。
アガーテ姉さんもそろそろ三十路になる。
これから結婚だの子供を作るだのとなると、体の負担が大きいかも知れない。
それでアンチエイジングが出来るなら、と思うのだろう。
確かにクーケン島の護り手を支えてくれた功労者だ。
引退して、その後は自由に余生を送るのもアリの筈。
あたしも、そのくらいの便宜は図りたかった。
「じゃあ、あたしも戻るよ」
「ああ。 それにしても、次はワイバーンがわんさかいる場所に行くんだな」
「フィルフサが溢れるよりマシでしょ」
「それもそうだ」
レントは少し飲んでいくと言う事だ。
二日酔いにならない程度にしなよと釘を刺すと。
あたしはアトリエに戻る。
途中で大衆浴場によって汗を流すと。
後はもう。残務を片付けて、さっさと寝てしまう事にした。
夢を見る。
感応夢じゃないな。
だけれども、記憶の整理という感じでもない。
羅針盤を使った結果だろうか。
ぼんやりと感じる。
多数の残留思念が、周囲に溢れている。それは世間的には幽霊とか言われるものが近いかも知れないが。
どうにも、怖いとは思えなかった。
人間の方が、幽霊なんかより余程怖い。
それはあたしが、クーケン島で散々思い知らされた事実だ。
幼い頃から与太者や。詐欺同然の商売をしようとする商人。商会は散々見て来たのである。
島で四則演算を教え込むのは、そういう連中に騙されないようにするため。
もう少し踏み込んだ算数も教える。
更に物価についても。
それくらいしっかりしていないと騙される。
勿論、そんなのは騙す方が悪いのだが。
自衛するのもまた、必須なのだった。
あたしはぼんやりと、残留思念の群れを見る。それらは歩いて行く。歩いて行く先は、殆どが闇だ。
なんとなく分かる。
この膨大な残留思念。きっとこれらは、五百年前の古代クリント王国の破綻時に、命を落とした人達。
自業自得の破滅を遂げた人間も多いだろう。
古代クリント王国が、錬金術師達によって牛耳られ。
そいつらが、文字通り人倫にもとる行動しかしていなかったのは、あたしも知っている。
だが、その破滅に巻き込まれた人達は。
少なくとも、同情の余地があるのでは無いかと、あたしは思う。
ぼんやりとみていると、闇の中に人々の群れが吸い込まれていく。
同情の余地があったとしても。
だいたいの人間は、地獄に落ちると思う。
地獄があるかどうかは分からない。
だけれども、残留思念が存在していて。希に幽霊についての話も聞く。だったら、あの世があっても不思議では無いし。
地獄や天国があるのは、おかしなことではないだろう。
フィーに似た生き物がいる。
それも、誰かの側にいながら。一緒に闇に飲み込まれていく。
あれは、フィーの仲間だろうか。
人間に荷担した。
それならば、人間の死ぬときに行く場所と、同じ所に行く。
そういうものなのかも知れない。
ぼんやりと見ていると、ふと我に返る。
フィーは、どうなるんだろう。
あたしは。自分が天国に行けるなんて思っていない。多分あたしは、地獄にすらいけないと思う。
今後、この世界のために。
錬金術師を増やすにも、慎重になる。
この世界の錬金術は、あまりにも強力だ。あくまで普通の人間の振るう力に対して、だが。
だから万能感を拗らせる輩が、大半を占めることになる。
あたしやアンペルさんみたいな例は、本当に例外なのだ。
そしてあたしは、人間のために今後は錬金術を使うが。
錬金術を使いたいという人間に対しては、厳しい見極めをするつもりだ。
多分だけれども、この錬金術と言う学問は。
欲があったら、まずいのだ。
欲がある人間が錬金術を覚えると、絶対に欲のために使いたくなる。その結果、神代も、古代クリント王国も、
ろくでもない錬金術師であふれかえったのではあるまいか。
そしてこの世界だけではなく。
オーリムにすら迷惑を掛けた挙げ句に、破滅に落ちた。
もう一度同じ事をやったら、この世界は滅びる。確実に。オーリムもだろう。
「人間の可能性を信じる」なんて寝言は、色々知った今は口にはできない。
かといって、誰かが未来に錬金術を一から発見した場合。
また好き放題に振る舞って、世界を破滅に追いやる可能性だってある。
あたしは。
この光景を再現させないためにも。
錬金術を伝承し。
二度と悪用されないように、監視しないといけないのだ。
それが責務というもの。
或いはだが。
あたしはもう。人間を既に、やめかけているのかもしれない。この精神は、既に普通の人間のものではない。
ふと、視界が切り替わる。
色町だ。
彼方此方で、男女がまぐわっている。淫靡なあえぎ声を上げて、絡み合う裸の肉体。
あたしは、夢の中とはいえ。
それに対して、まるで興味を持てなかった。
動物が交尾しているのを見る以上に。
どうでもいいとだけ、考えていた。
目が覚める。
夢の内容は、異常にクリアに覚えている。ぼんやりとした後、頬を叩く。
そろそろ、覚悟を決めた方が良いのかも知れない。
あたしは、人間を止めるべきだろう。
今までの遺跡を調査してきて、「不死の魔女」という存在について知った。
不完全なアンチエイジングで、苦しみながら若さを維持してきた人物だった。
あたしは、それよりも高度なアンチエイジングを既に出来るようになっている。この辺りは、錬金術が才能の学問だった故。
そして百年を経ているアンペルさんが、既に錬金術ではあたしの方が上だと言っているように。
あたし以上の才能を持った人間が今後出て来て。
錬金術で世界を好き勝手に蹂躙しようと思ったら。
おそらく、だれもそれをとめる事はできないのだ。
もしもそれをとめられるとしたら。
あたしが先に発見して。錬金術に習熟する前に、首を刎ねること。それ以外に、道は無いだろう。
顔を洗う。
「不死の魔女」も、自分の欲望に忠実な人だったことが分かっている。
ただ、古代クリント王国の錬金術師達よりは、まだマシだった。
それくらいの差しかない。
錬金術を、絶望の学問にしないためにも。
もうあたしに、選択肢はないのかも知れなかった。
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