暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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3、人跡未踏

皆が忙しい。だから、一日だけ予備の日を取った。その後、行動する。予備の日を活用して、皆の装備を刷新。薬や爆弾も補強した。

 

荒野を行く。

 

今日もまだクラウディアなしとはいえ、それでも充分な戦力。

 

以前、「霊墓」があった方へと出向く。パティは既に、貴族関連のごたごたで、必要な事を済ませてきたらしい。

 

これがもっと規模が大きな国だったら、こうもいかなかったのだろうが。

 

実質上、ロテスヴァッサは王都だけしかない国家だ。

 

だから、それでなんとかなってしまった。

 

それだけの話である。

 

クラウディアはバレンツのためにも、混乱する経済を一刻も早く沈静化させるためにも、今日は探索には加わらない。

 

何、本当に危険場所には、今日は赴かない。

 

それだけだ。

 

王都を東に出て、街道をすぐに北に向かう。

 

獣道になるが。気にしない。

 

主に対空警戒をしながら進む。レントが最前衛。最後衛はパティだ。クリフォードさんが荷車を引く。

 

この間の「深森」で、すぐれた五感を発揮してくれたクリフォードさんである。

 

奇襲に対応するためにも、真ん中にいる方が良い。

 

そういうあたしの判断だ。

 

左右はセリさんとタオに任せ。

 

そのまま北上。

 

すぐに森は途切れ、渓谷に出た。

 

地図を見る限り、この渓谷から少しずれるように北に向かう。

 

途中、川があって。

 

石橋があるにはあるが、崩れかけていた。

 

「使わないとは言え、酷いな……」

 

「どうする、回り道するか?」

 

「いや、予行演習だし、直しておこう」

 

建築用の接着剤を取りだす。

 

これについては、あたしの初めての大仕事で使った、という事もある。

 

だから、思い入れがあるし。

 

何度も改良を重ねている。

 

先に石橋の状態を確認した後、レントに近くの石を持ってきて貰う。

 

石の加工はレントに任せて、あたしは要所に建築用の接着剤を詰め込み、そして硬化させる。

 

この硬化させる仕組みが、この接着剤の味噌。

 

バレンツ商会でも重宝していると聞くが。任意のタイミングで強力に硬くできるのは、非常に使いやすい。

 

これはあたしが、幾つかの新居の建築に立ち会って、実感した事だ。

 

保守的な思想の大工も、あたしが作った接着剤については、便利である事、使いやすい事、実用的である事を即座に認めてくれたくらいである。

 

今では、クーケン島の新居では、これが確実に使われているほどだ。

 

「よし、かけている場所を埋めてしまうよ」

 

「も、もう補強できたんですか!?」

 

「相変わらず新鮮に驚くね」

 

「俺たちが麻痺しているだけだろ……」

 

吃驚してくれるパティに、それぞれの感想を口にするタオとレント。

 

まあ、気持ちはわかる。

 

それに、吃驚してくれるのは、こっちとしても気分がいい。

 

淡々と調整をしていく。

 

レントが細かく砕いた石材を詰め込んで、石橋を修復して行く。しばらく調整を続けて。やがて、しっかり固めた。

 

後は細かく細かく柔らかい感触になるまで砕いた砂利を撒いて、満遍なく接着剤を撒き、そこに付着させて終わりだ。

 

石橋、修理完了。

 

一刻ちょっとで終わり。

 

此処は街道から外れているとは言え、下は川だ。どんな魔物がいるか分からないし、サメが遡上してきている可能性だって低くない。

 

だったら、こうやって直せるときに直しておく。

 

それだけの話である。

 

「よし、先に進むよ」

 

「今度、アーベルハイム邸の工事を頼もうかな……」

 

「おっとパティ、それはクラウディアを通してね」

 

「分かっています。 流石に個人的に頼むには、ちょっと工事規模が大きいので……」

 

まあ、そうだろうな。

 

あたしも何度か足を運んだが、アーベルハイム邸に問題のある箇所は見つからなかった。だとすると、大規模な修繕工事だろうというのは想像がつく。

 

だからクラウディアの名前を出した。

 

まあ、あたしもパティの事は理解してきたし。

 

そういう返しが出来るだけである。

 

そのまま先に進む。

 

荒野がしばらく続く。街道はとっくに消え果てていて、時々タオが磁石を使って方向を確認していた。

 

「なるほど、もう少しこちらだね」

 

「タオの事を疑うつもりはないが、地平の先まで荒野だな……」

 

「この辺りは古戦場なんだよ。 多分古代クリント王国と、名前すら抹消された、遺跡を作った国が戦った場所だ。 何年もこの辺りで食い止めたみたいで、古代クリント王国の錬金術師は、容赦なく辺りを破滅させるようなことをしたんだと思う」

 

「無茶苦茶だな……」

 

オーリムで連中がやったことを思えば、この程度はまだ軽いのかも知れない。

 

レントが不愉快そうにするが。

 

不愉快なのはあたしも同じだ。

 

神代で色々問題を起こしただろうに。その後も、反省すると言う事を一切しなかったからこうなった。

 

人間の大半には反省なんて概念は無い事は知っているが。

 

それでもこれは、その醜悪すぎる証拠だ。

 

「魔物の影もないな」

 

「そういえば……」

 

「……」

 

タオが黙り込む。

 

多分だけれども、緻密に計算して、現在地を割り出しながら歩いているとみて良い。セリさんが、周囲を見て嘆息。

 

これでは、植物を仮に急成長させた所で、すぐに枯れてしまうと思ったのだろう。

 

彼方此方に水たまりがある。

 

ずっと降っていた雨の結果だろう。

 

それにも関わらず、植物は生えていない。

 

戦闘があったのは、五百年……いやもっと前の筈だ。

 

それでこんな状態になっているというのは。

 

一体何をしでかしたのか。

 

古代クリント王国の錬金術師は。もしも目の前に姿を見せたら、問答無用で蹴り殺すつもりでいるが。

 

拷問してやった事を聞きだした後、生まれてきたことを後悔するくらい残虐に殺す事に切り替える。

 

まあ、奴らは滅んだ後だ。

 

今更、何もできないが。

 

「もう少しだよ。 大きめのクレバスがある」

 

「そこが例の……」

 

「うん。 北の里に向かうには、其処を通るのが一番安全だと思う。 というか、それ以外事実上道がないよ」

 

見えてきた。

 

衝立のような崖だ。

 

確かに、橋の跡のようなものがある。

 

昔はこの辺りに街道があって。

 

此処にあった橋を使って、細々とこの先にある北の集落と、交易なりなんなりをしていたと言う事か。

 

それも恐らくは、古代クリント王国に対しては独立を保ち。

 

そして、やがて滅びていったのだろう。

 

エンシェントドラゴンが守りについていたとはいえ。それでも戦略的に価値が無いと言うことが。存在の理由になっていたのだろうから。

 

そんな場所に住む人達が。

 

いつまでも生きていられたとも思えない。

 

橋については、あたしがしっかり覚えておく。なるほどね。これだったら、どうにか出来ると思う。

 

何度か見て、空間把握をしておく。

 

更に足に魔力を集中して跳躍。

 

高さなども確認。

 

崖の向こう側は、数体のワイバーンが飛んでいる。

 

それもかなり大きい奴だ。

 

確かにこの先に行くのは自殺行為である。武装無しでいったら、百%殺されるとみて良い。

 

こんな感じで、人が入れない土地が、この世界にはたくさんあるんだろうな。

 

そう思うと、魔物に好き放題人間が押されるのも、当然に思えてきた。これだけやって、世界に嫌われるのは、当たり前だ。

 

「よし、戻るよ」

 

「もう大丈夫なんですか。 それにしても、具体的にどうするんですか?」

 

「まずあの辺りに肥料を撒く。 土を建築用接着剤で固定する。 そうすることで、インスタントに肥沃な土地を部分的に作る。 水はあるから、それで大丈夫だと思う。 その次は、この種を植える」

 

「!」

 

セリさんがくいついた。

 

この植物は、畑などに生えてくる邪魔者の一つ。

 

凄い勢いで成長する雑草の一つだが、実際には「草」ではない。放置しておくと、見る間に木になる。

 

見る間と言っても、木になるには一年くらいはかかるが。

 

その後は、放っておくと二百年くらいは木として生きる。

 

それくらい、タフな植物だ。

 

「ライザ、それを見せて」

 

「えっと、珍しく無いと思いますけど。 あたしも王都で見つけて、回収してきたくらいですし」

 

「……そうね。 でもこれは。 ……」

 

黙り込んでしまうセリさん。

 

咳払いすると、続いてどうするかを説明する。

 

セリさんの魔術で、この木を急速成長させる。その後は、その木の背を使って、石橋を作る。

 

あくまで最初の土台として木を用いて。

 

以降は奧に行けるようにするための木を使う、ということだ。

 

実は、「霊墓」の奧でも似たような事が出来そうなのだが。あっちをこれ以上荒らすような真似をしたくない。

 

アンペルさん達がまだ調査しているし。

 

今後行き詰まったら、最初からまた調査をし直す必要がある。ただでさえ内部が可動式の遺跡だったのだ「霊墓」は。

 

下手に動かすと、遺跡そのものが崩落するかも知れなかった。

 

「というわけで、セリさん、頼みます」

 

「……一つ条件があるわ」

 

「はい、出来る範囲でお願い出来ますか」

 

「貴方にできない事なんて。 そうは思いつかないけれどね」

 

嘆息すると。

 

セリさんは、この荒野を見回していた。

 

「この荒野をちょっと調べたい。 オーリムより酷い状態になっていると判断したから。 もしもこの荒野で根付こうとしている植物があるというのなら、私が探しているものになりうる」

 

「確かオーリムの浄化をするための植物を探しているって話だったよな」

 

「そうよ」

 

もう皆に情報は共有している。

 

セリさんは若干ぶっきらぼうだが。此処にいる人間は、皆信頼してくれている。だから、ぶっきらぼうであっても、不愉快そうではなかった。

 

あたしは影の方向、長さを見て、判断。

 

タオも、現実的な話をしてくれた。

 

「もし植物があるとしたら、短期的に出来る水たまりではなくて、川辺だと思う。 此処から西に行って、それから南下すれば見つかるかも知れないよ」

 

「よし、それで行こう。 水辺だとサメがいる可能性がある。 みな気を付けてくれ」

 

「了解!」

 

すぐに川に沿って、西に。渓谷はおぞましい高さで、さっき目星をつけた地点が、一番高低差が小さいくらいだった。

 

これはどういう理由で出来た地形だったのだろう。

 

或いは、エンシェントドラゴンが。

 

いや、それは憶測だ。

 

ともかく、エンシェントドラゴンが守護していた里となると、相当な隠れ里、秘境となるだろう。

 

タオとクリフォードさんがよだれを垂れ流すような場所になる筈で。

 

あたしもある程度興味がある。

 

川に沿って南下。

 

川岸には、流石に時々雑草があるが。それをみて、セリさんは首を横に振る。

 

違う、というのだろう。

 

川岸には、それ相応に土砂が堆積して。それがある程度、この土地に満ちている邪悪な何かの残りを打ち消している。

 

それで雑草が生えているだけであって。

 

この土地を汚染している何か邪悪なものに打ち克って生えているものではない、ということだ。

 

ただ、それでも専門家が見れば、何か分かる事があるかも知れない。

 

途中、やはりサメに襲われる。

 

この辺りはエサが少ないらしく、獰猛に襲いかかってくるが。このメンバーにはとても勝てない。

 

仕留めて捌く。

 

あまり大きなサメでもないので、腹を割いて内臓を開いて。人間の残骸が入っていなければ、肉を燻製に。他は焼いて処分してしまう。

 

サメの肉はあまり美味しくない場合も多いが。こう言うときは贅沢も言えない。

 

淡々と調べながら南下。

 

思ったより時間は掛かるが、これもセリさんのためである。

 

セリさんの事情はそれなりに重いし。

 

仕方が無い事だった。

 

やがて、セリさんが興味を示す。一つ、内陸気味に生えている草がある。それを見て、セリさんがじっと考え込む。

 

全員で、周囲警戒。

 

本職の人間の邪魔をしない方が良いだろう。

 

「ライザさん」

 

パティが話しかけてくる。

 

あたしは、警戒を続けながら応じる。

 

「どうしたの」

 

「ええと、今回の件が終わったら。 いずれクーケン島にお邪魔させてください。 その、オーリムを見ておきたいんです。 どれだけ人間が愚かしい過ちを犯したのか」

 

「もう確定したから、今回の調査の過程で見られる可能性も高いよ。 門が不完全に開いている状態なら、殴り込んで王種を殺す必要があると思うし」

 

「はい。 でも、確定ではないですよね」

 

その通りだ。

 

セリさんの様子を見て、パティは申し訳なさそうに言う。

 

「私も王都の民を守るとは思ってはいました。 王都の貴族の腐敗に苛立ってもいましたし、苦々しく感じてもいました。 ですが、今回の一件で、本当に先祖達がどうしようもない事をしたことを実感していて……」

 

「ともかく、今は現実的にこの世界を救わなければならない。 そういう意味で、オーリムの現実を見るのはありだね」

 

ほどなくして、セリさんが、何株かの植物を、土ごと回収。

 

多分だけれども、農業区で面倒を見て、様子見をするのだろう。

 

セリさんに、レントが声を掛ける。

 

「どうだセリさん。 いけそうか」

 

「高い耐汚染能力を持っているのは確定よ。 だけれども、それが偶然生じたものなのか、今後も引き継がれる特性なのか、それが更に重要。 少し調べて見たい」

 

「……そうなると、何日か抜けるのかな」

 

「いや、そこまでしなくても平気よ。 いつものように朝晩に世話をして、少し様子を見るだけ」

 

そうか。それは助かる。

 

後は、急いで王都に戻る。

 

結局、王都に辿り着いたのは夕方だ。

 

門の警備をしている戦士達に、サメの肉をお裾分けする。燻製にしているから長持ちする。

 

そもそも警備の戦士達だって、給金が高いわけでもない。

 

こうやって臨時収入があれば彼等だって嬉しいし、生活も助かるのである。

 

後はアトリエでミーティングして解散する。

 

具体的にどうやって橋を架けるかが、これで決まった。

 

それが全員に示された。

 

後は実施するだけ。

 

あたしは淡々と、材料を集めていく。調合もしていく。建築用の接着剤は、今まで散々作ってきた。

 

今更増やすのも、改良するのも、お手のものだ。

 

黙々と作業をしていると、フィーがあたしの側を飛び始める。

 

別に食事をねだっているわけでもなく、遊んでいるだけらしい。

 

今の時点では。

 

体調は大丈夫だな。

 

そう思って、あたしは調合を続けた。

 

 

 

翌日。

 

外に出ると、セリさんの様子を見に行く。

 

セリさんが借りている畑は、植物が凄い事になっていた。セリさんが腕組みして、考え込んでいる。

 

一部は木になっているが。

 

それをあっさり引き抜いて処分したりもしている。

 

土に関しては、恐らく魔術で栄養を補給するか。

 

休作用の植物を急速育成させて、それで栄養を補填しているのだろう。

 

「どうですか、セリさん」

 

「朝早いのね」

 

「農民の娘ですので」

 

「そう……」

 

一応農民という概念は知っていそうだ。

 

手伝う事は多分ないな。

 

一応肥料などが必要かは聞くが、大丈夫と言われる。だったら、もう邪魔になるだけである。

 

去ろうと思ったら、セリさんに言われた。

 

「この畑では足りないわね。 少し他に実験所が欲しいわ」

 

「そうですね。 街道側の森の中に、幾つか開けた場所があります。 そういう場所を使っては」

 

「……魔物も出るけれど、仕方がないか」

 

「セリさんの場合、余程油断しなければ、もう街道側で遅れを取るような魔物とは遭遇しないと思いますけれど」

 

セリさんは首を横に振る。

 

かなり集中して作業をしたい、ということだ。

 

そうなると。

 

手をかざして、見る。

 

開いている畑を使うしかないだろう。

 

王都では、相変わらず農業をする人間を最下層と判断しているようで。今でも殆どの畑が草ぼうぼうである。

 

あれらの中に。

 

使える畑はないものか。

 

勿論勝手に使うことはまずい。

 

だが、或いはだが。

 

王都を出ていった貴族の所有物があるかも知れない。

 

それだったら、使える可能性がある。

 

「パティに相談してみますか」

 

「そう。 任せるわ。 此方の世界の人間の事は、はっきりいってまだよく分からない。 優秀でもないものが王族だの貴族だのを血縁で引き継ぐような社会の仕組みは、私達のものとは完全に別種だもの」

 

「そうでしょうね……」

 

オーレン族は氏族単位でくらす。

 

その氏族も、気に入らなければ出ていって新しく自分で造れば良いという話だし。

 

一人や二人が、勝手な事を出来るような体制でもない。

 

勿論オーレン族が数が少なく、繁殖力も弱く。

 

それぞれの能力も高いから成立するのだろうが。

 

あたしには、その辺の細かい検証はするつもりもないし。

 

出来るだけの資料もなかった。

 

後は、アトリエで話すことにして、一度戻る。

 

さて、今日もこれから大変だ。

 

橋を架けなければならない。

 

まあ、今の人類に、あの荒野を突っ切って、橋を抜ける事は非常に難しくはあるのだけれども。

 

それでも、注意はしなければならないだろう。

 

あたしは荷車を二台使う事を説明。

 

一台は、朝バレンツで借りてきた。

 

この二代目に、肥料とか、今回の作業で使う物資を積載する。このため、この荷車は小型の馬車ほどもある大きなものだ。

 

勿論途中がかなり危険になる。

 

クラウディアは今日いっぱいは手伝いにこれないが。

 

逆に、今日中に作業を終わらせて。危険地帯に踏み込む事を考えたい。

 

それを説明すると。

 

ボオスが挙手。

 

「それで、街道に橋を架けることは、王都では把握しているのか」

 

「そもそも其処に橋があったことすら把握していませんし、実質上たどり着けませんので……」

 

「そうか。 色々と杞憂だったか」

 

「いえ、此方から後で書類だけ出しておきます。 どうせ内容なんてろくに読みもせずに、ハンコだけおしておしまいですよ。 今の王宮はそういう場所です」

 

玉爾が泣いている。

 

そうパティがぼやく。

 

まあ王族が無能なのは知っている。

 

それが、現実という訳だ。

 

後は、セリさんの件についても話をしておく。パティは考え込んだ後に、分かりましたと応えてくれた。

 

「今、バレンツと連携して、王都から出ていった貴族の資産を確認しています。 その中の畑があれば、セリさんにしばらくお貸しします」

 

「助かるわ。 料金とかは平気?」

 

「しばらくは寝かせておくだけですので」

 

「そう。 ありがとう」

 

セリさんは、あまりお金を持っているとは思えない。

 

今使っている畑だって、今の王都の状況だから使えているようなものだ。

 

とりあえず、これで全てか。

 

では、これより。

 

橋を架けに行く。

 

アトリエを出て、荒野に向かう。途中、警備の兵士達が騒いでいる。

 

「お願いです! 昨日からまだ帰っていなくて!」

 

「街から出て一日だろ。 諦めろ……」

 

「そんな……」

 

「どうしたんだ」

 

レントが出向く。

 

中年の女性が、警備の戦士達に頼み込んでいる。

 

この様子だと、外に出て戻っていない人間がいるのか。

 

「子供が昨日、街の外に遊びに出たらしくって……」

 

「街の外に出て、街道の外に出たらまず助からない。 もう魔物の腹の中だ」

 

「まだ可能性はある」

 

レントが手を上げる。

 

仕方がない。

 

架橋工事は、少し開始が遅れるかも知れないが。人命には変えられない。ましてや未来を担う子供の命には。

 

どこに行ったか、可能性がある場所をレントが聞く。

 

どうやら、可能性があるなら近くの森らしい。あたしは、タオに声を掛ける。

 

「ごめんタオ、緊急事態だから、クラウディアを呼んできて」

 

「分かった。 すぐに行ってくる」

 

「よし、手分けして探すぞ。 うまく隠れていれば、ひょっとすれば助かるかもしれん」

 

「ありがとうございます! ありがとうございます……!」

 

見た目、かなり年老いている女性だが。

 

これは生活が厳しいから、老け込みが早いのだろう。

 

すぐに森に向かう。あたしは跳躍して、森の上から人影を探す。レントが、聞いた子供の声を呼ぶ。

 

流石に図体がでかいだけあって、声量が凄いな。

 

タオがクラウディアを呼んでくれば、更に助かる可能性が上がる。

 

だが。あたしは良くないものを見つけていた。

 

「エレメンタルだよ。 数は十以上」

 

「結構いるな」

 

「もし人間を見つけて、集まって来たのだとしたら。 急がないと手遅れになる可能性が高い。 更に言えばまだ集まっていると言う事は……」

 

子供が助かる可能性も高い、ということだ。

 

レントは少し考え込むと。

 

あたしに、頼んでくる。

 

「エレメンタルを引きつけてくれるか」

 

「一人支援が欲しい」

 

「俺が支援に回る」

 

クリフォードさんが挙手。

 

頷くと、あたしはもう一度跳躍。エレメンタル達の頭上から、熱槍を叩き込んでいた。

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  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
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  • オリジナルの長編
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