暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
恩を仇で返すことはなんとも思わないケースは幾らでもあります。
相手の容姿が醜かったり、相手が気にくわなかったり。相手が自分より社会的地位が低かったりしたら。恩を受けた場合は恥を掻かされたとか考える人間もいます。それは決して珍しい事ではありません。
レントが三年間で受けて来たのはそういった人間の恥知らずな本性が放つ闇です。
今、それとレントは折り合いをつけようとしています。
かなり距離がある事もあって、エレメンタルも即応。固まってシールドを張り、熱槍を弾き返す。
更に、わらわらと姿を見せる。
そして、こっちに来た。
結構。
あたしはさがりながら、熱槍を連射。当然、エレメンタルも黙っておらず、複数がシールドを展開。別の複数が、様々な魔術を放ってくる。雷撃が側を掠める。近くの地面に熱魔術が炸裂する。
あたしも熱魔術を固有として得意としているが。
それでも熱魔術を直撃させられたら、威力と辺りどころ次第では死ぬ。
冷や汗を流しながら、さがって相手を引きつける。その間に、レントはセリさんとパティとともに森の中に入ったようだった。
クラウディアをタオが呼んできてくれれば、更に見つかる可能性は上がるんだが。これは悪手だったか。
だが、ミスをリカバーできるのが本職だ。
適当に引きつけた所で、反撃開始。
あたしが熱槍を十発立て続けに放ち、敵がまとまってシールドを展開したそこを、横殴りにクリフォードさんのブーメランが襲う。
うなりを上げて飛んだブーメランが、一体の首をへし折り、もう一体の頭を砕いていた。
十体以上いるエレメンタルだが、側面からの思わぬ奇襲に混乱し。
其処に更にあたしが、今度は二十発以上の熱槍を叩き込む。相手が立ち直る暇を与えない。
見た所頭もいない。
要するに、敵である人間の気配を察して、わらわらと集まって来ただけの雑魚だ。
もう街道に来ていて、子供が隠れていても巻き込まれる恐れもない。
更に火力を上げる。
走りながら、敵が放ってくる魔術を回避しながら、熱槍を叩き込み続ける。エレメンタルも苛烈に反撃してくるが。
姿を隠して放ってくるクリフォードさんのブーメランが、混乱するエレメンタルを次々に狩っていく。
そして数が一定を割り込んだタイミングで、あたしの熱槍が相手のシールドをブチ抜いていた。
どんと、凄い音と共に炸裂した。
まだ数体が、ダメージを受けながらも生き延びているが。
接近戦に切り替えたあたしが蹴りを叩き込み、首をへし折り、更にはかかとを落として頭を砕く。
更に最後の一体をクリフォードさんが、跳躍して頭上からブーメランで打ち砕いて、エレメンタルは全滅。
よし、これで一息つける。
「ライザ! こっちに来て!」
クラウディアの声。遠くから音魔術で届けられた。。
タオはどうやら、戦闘を避けて森に直接クラウディアをつれて行ったらしい。
流石タオだ。しっかり状況判断して行動してくれている。
すぐに森に。
セリさんが、かなりの数のラプトルをかなり荒々しく植物の刃で薙ぎ払い、追い払っていた。
結構魔物がいるな。
セリさんと合流して、魔物を蹴散らす。
更にクラウディアの声が聞こえた。
「今、パティさんと一緒に森の中を探しているわ。 もう少し派手に陽動して」
「よしきた!」
舌なめずりすると、食いついてきたラプトルをすっと避けて、カウンターに肘撃ちで頭を上から叩き。更に蹴りを叩き込んで、骨を砕きながら内臓ごと蹴り潰した。
辺りに魔物の死体が積み上がっていく。
王都近郊の森でもこれだ。
結構掃除したんだけどなあ。そうぼやく。
魔物はもう、恐ろしい程の数がいる。死ねば余所から開いた縄張りに別のが来るだけ。駆除が追いつかないのだ。
もっと人間側が団結して、戦士を育成して。組織的に魔物を駆逐すれば、追い返すことも可能だと思うのだが。
いずれにしても、今此処にいるのは雑魚だ。
ただそれでも、駆け出しの戦士は物量に押し潰されるだろう。
「見つけた! 三人いるよ。 もう少し気を引いて!」
「三人!?」
「近所の「悪ガキ集団」だったみたい。 届けがなかった子も二人いたって事ね」
「他には?」
今聴取中だそうだ。
森の中で魔物に囲まれて、逃げるどころではなかったらしい。
あたしも人ごとじゃない。
散々悪さして、酷い目にもたくさんあった。魔物に襲われかけて、寿命が縮む思いをしたこともある。
あたし達。あたしとレントとタオは、ボオスも加えてクーケン島でも有名な悪ガキだったのである。
だから、悪ガキの気持ちはわかる。クラウディアも、その時の事を知っているから、わざとそんな表現をしたのだろう。
だが、今だからこそ言える。
当時の自分らには拳骨が必要だった。
それを周囲の大人はしっかりやってくれた。
錬金術に理解がない父さん母さんだが、それについては感謝している。こういう現実を見ると、なおさらだ。
とにかく時間を稼ぐ。
セリさんが、巨大な木を新たに生やし。それでラプトルが頭上に放り投げられていた。勿論飛ぶ術なんて持っていないから、落ちてきたらぐしゃりと潰れるだけだ。
かなり乱暴に殺しているが、それは三人で手数が少ないこと。
相手の数も多いこと。
それに、相手を怒らせて、こっちに集中させなければならないからだ。
「レントくん!」
「おおぉっ!」
クラウディアの音魔術での声と、レントの雄叫び。
そして、何かが大剣で断ち割られる音。
あっちもあっちで大変な状況のようだ。
だったらこっちから支援を回すべきか。
だが、クラウディアも戦闘に入っているらしい。声を掛けても、返事してこない。
しかたがない。
相手の場所も分からない。とにかく、可能な限り敵をたたいて、削るだけだ。
しめった森の中だから、簡単に火事になったりはしない。
それでもあたしは、森の中では熱魔術の使用は避ける。少なくとも高熱の熱槍は放たない。
代わりに冷気の熱槍と、更には風爆弾であるルフトを叩き込んで、敵を叩き潰していく。
まだまだ来る。
植物の魔物だ。
トレントほど年を取ってはいないようだが、マンドレイクの一種か。かなり面倒な相手だが、勝てない相手ではない。
人間に姿が似ているマンドレイクが、ずるずると体を引きずってくると、それを見てラプトルがギャアギャアと鳴き、一斉に逃亡開始。逃亡する背中からクリフォードさんがブーメランを放って更に数を削るが、あれは子供らの方に行くことはもうないだろう。
マンドレイクは、人間に近い姿だったのに。
突然口を巨大に開けて、そして音波砲をぶっ放してくる。人間に半端に似ているから、姿の恐ろしさが半端ではない。不気味の谷だとか言う現象だったか。
それに音魔術の恐ろしさは、クラウディアを見て知っている。
こいつは伝承に近い、音を使って攻撃してくるタイプか。
セリさんが植物で壁を作るが、一瞬で粉砕された。
音は振動などを工夫すると、それだけで武器になる。大きな音というのも、音の出力次第では、簡単に人間を殺傷できる。
更に腕に見える部分が伸びて、鞭のように振るって来る。
かなりのスピードだ。
面倒なのが出て来た。
遠くからこの森に最近来た。大物かも知れない。
いずれにしても、潰す。
あたしは鞭のように振るわれる腕を、木の枝を蹴って跳躍しながら回避。上を向いたマンドレイクの顔面を張り倒すように、クリフォードさんのブーメランが直撃。更にセリさんの植物が。マンドレイクの全身を貫いていた。
あたしは熱魔術を応用して、空中で小爆発を引き起こして、空中機動。
頭上から、加速しながら踵落としを叩き込み、マンドレイクを一撃で真っ二つに切り裂き。
更には至近距離から熱槍を叩き込んで。
トーチにしてやった。
流石にこれはどうしようもなく、燃えさかりながら消えていくマンドレイク。呼吸を整えると、辺りに散らばっている死体を見やる。
これで充分な筈だ。
しばしして、レント達が姿を見せる。
レント自身は、子供二人を抱えていて。タオが更に二人の手を引いていた。
悪ガキ四人か。
昔のあたし達みたいだな。そう思う。
そのまま、警備の戦士達につれて行く。
母親は大泣きして感謝していたが。他の親は。
後、これは怒る人間が必要だ。
そう思っていると、カーティアさんが来た。
カーティアさんを見て、子供らがげっと声を上げる。なるほど、此処ではこの人が、クーケン島で言うアガーテ姉さんみたいな仕事をしていると言う事か。
それでいい。
後ろで、カーティアさんが滅茶苦茶怒っているのに、後は任せる。
料金はいらない。
未来を担う子供達を助けられたのだから、それでいい。
さあ、架橋だ。
気持ちを切り替えて街道を行くと、レントがぼやく。
「やっぱり怖いって言われたよ。 最後の一人が別の所に隠れててな。 結構大きめのラプトルに襲われる寸前でよ」
「それで剣を振るったんだね」
「ああ」
「感謝された?」
「全然。 最後までブルブルふるえるばかりだったよ」
そうか。
だが、レントは、どこか吹っ切ったようだった。
「俺の代わりに、クラウディアが鬼みたいに怒ってくれてな」
「ちょ、レントくん」
「私もクラウディアさんがあんなに怖いなんて知りませんでした……」
「僕もだよ」
そっか。
クラウディアもろくでもない相手と接しているのだ。本気で怒ってみせる事も、たまには必要なのかも知れない。
いずれにしても、レントはそれで良かったのだろう。
仲間として信頼しているクラウディアが、代わりに怒ってくれたのだから。
「もう感謝されなくてもいい?」
「ああ。 助かったぜクラウディア。 少なくとも、此処にいる皆は俺の事を理解してくれている。 それだけで、後何年でも戦える」
「ふふーん。 良くやったって頭でも撫でてあげようか?」
「言ってろ。 ただ、ライザでも同じ事をしてくれただろうことは分かるから、それでいいさ。 クラウディアが怒らなくても、タオやパティが怒ってくれただろうしな」
良かった。
これでレントは、本人が言う通り当面は大丈夫だろう。
さて、次の遺跡は相当に厳しい場所だ。
気を入れていかないと。
辿り着く事さえ、出来ないかも知れなかった。
(続)
最後の遺跡の調査。
それを始めるには、険しい道を踏破する必要がありました。
ライザは準備を整え、最後の遺跡の調査に向かいます。
その道が如何に厳しいとしてもです。
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