暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2 作:dwwyakata@2024
この過程がちょっと個人的には微妙かと思ったので、流れを本作では変えています。
ともかく、辿りつくまでが大変なのです最後の遺跡は……
序、今まででもっとも危険な
架橋か。
それを平然とやっているライザを、パミラは遠くから確認していた。
遠くから。
そう、神代と言われた時代に作られた道具でである。
コレを使えば、魔術に長じ、鋭い直感があってもどうにもならない。
何しろ、空の上から見ているのだから。
勿論これ以上ライザが成長したら、これでも気付く可能性があるが。
それでも、更に上を行く技術をパミラは有していた。
正確にはパミラではなく。
その協力者が、だが。
「この様子だと、最後の遺跡への難関は後は野生種のワイバーンだけねえ」
「本来この世界は、ドラゴンが終焉を迎えるために訪れる場所だと言う事がわかっています」
「オーレン族の話からだったわねー」
「はい。 アーカイブから確認できています。 彼等の知識は、テクノロジー面では未熟そのものですが、世界のあり方や生物学に関しては、神代の者ですら及ばない程の域にありました」
パミラの協力者は、そう淡々と言う。
パミラは笑顔を崩さない。
その程度の存在。
今まで渡って来た世界で、幾らでも見て来た。
神代の連中は、己こそ最強。己こそ無敵。己こそ世界の支配者と考えていたようだが。
はっきりいってこの世界の錬金術師は、今まで見てきた中では精々中の上程度。
それでも此処まで好きかって出来たのは。
それに対する抑止力が存在しなかったからだ。
他の世界では魔族という人間の強力な天敵が存在したり、或いは別種族の人間と言える存在がいたり。
また、世界の情勢が厳しい中、人間は無理にでも団結して、生きるために必死になっていたりもした。
この世界ではそれがない。
ただエゴだけが先行している。
パミラも、色々な世界を見て来た。
エゴを持つ人間が性能的にも高くて、なんでも好き勝手にやって良いと本気で考えているような連中が回している世界もあった。
その世界には錬金術はなかったが。
それに近い性能を持つテクノロジーがあった。
最後には自滅して、星もろとも自殺してしまったに等しい文明だったが。
パミラはそれを見て、なんとも悲しいと思った。
今も、滅びゆこうとしているこの世界を見て、同じように感じる。
普段だったら、それでも干渉はしないのだが。
錬金術が原因で世界が滅びようとしているのなら。
今は、それに対して待ったを掛けようとは思っていた。
「橋を架けることに成功したようですね」
「たったの一日であの規模の橋を。 それも高低差がある場所に掛けるなんてね」
「それで、どうしますか」
「今の時点では保留かしらねー」
懸念していた、ライザの傲慢化は今の所起きていない。
このくらいの力がある時期が、錬金術師は一番危険だ。
今のライザは、神代の錬金術師達よりももう優れているが。神代の者達には、蓄積されたテクノロジーがあり。総合力ではライザはまだ神代の錬金術師達よりも若干劣るとみて良いだろう。
そして、総合力でライザくらいの時期に。
神代の錬金術師達は万能だと錯覚して。
エゴのまま、世界を蹂躙し始める。
それはずっと変わらなかった事。神代と言っても数百年も続いた時代。その間、ずっと自分は最強、選ばれた民だと考えた錬金術師が。
この世界を無茶苦茶にして。
土地を奪って争いあい。
それに巻き込まれた全てが焼き払われ、薙ぎ払われていった。
この土地は、その一派が作ったものであり。
此処ですら。
悲劇は散々に繰り返されたのだ。
「同胞には、私から言っておくわね-。 それと、アインは大丈夫?」
「少し前に、はしゃぎすぎたようで。 それで今、補修作業をしています」
「はあ。 中核のテクノロジーはまだ引き出せないの?」
「セキュリティロックが厳しく……」
そうか。
パミラはいずれにしても、この場を離れる。
もう今は。
誰も生きた人間が住んでいない。
神代の錬金術師が。
胸を反らして、此処は理想郷だと呼んだ土地を。
橋が本当に出来た。
ライザさんの指示通りパティは石材を運んで組み合わせ。そしてライザさんは、驚くべきバランス感覚で、高所での作業を難なくこなした。
命綱はつけていたが、それでも危ない場面は一度もなく。
むしろ体格的に小さいパティが、石材を運ぶ時が一番苦労した。必然的にタオさんと連携して動いたのだけれども。
それがとにかく、気恥ずかしかったのだ。
ライザさんが事前に言った通りの手順で橋が作りあげられ。
最初に土台になった木をベースにして、石橋が作りあげられた。
そして、石橋が出来ると。
土台になった木は、力尽きたようにちいさな姿に戻っていった。セリさんの魔術も、大概ものすごい。
「よし、此処からだな。 荷車、運ぶぞ!」
「うん。 橋を渡れるかのチェック、やるよ!」
レントさんが声を掛けて、かなり斜度が高い橋を、荷車を押して上がって行く。
この先に、一度拠点を作るそうだが。
まずは上がってみて、それからだ。
かなりの勾配を、一気に越えて上がっていく。
此処にあった昔の橋は、もっと小さいものだったらしいが。
ともかく、崖向こうの高い位置まで、一気に荷車を押し切れた。
その後は、ライザさんが指示した通りに展開して、周囲を警戒。
此処に、中間拠点を作る。
崖の状態を確認。タオさんが専門的な話をしている。
タオさんは遺跡の調査でも学問でトップらしいが。片手間にやっている建築でも、相当な成績を上げているらしい。
「もう少し内側でないと地盤が……」
「ただそうなると、空から見つけやすくなるな」
「今日は拠点作りで終わりかな。 とにかく、素材を集めて。 皆、石材を切り出すから、それを運ぼう」
ライザさんが温度を採る。
荒野には点々と岩が転がっている。それをライザさんが、熱魔術で切り裂いて切り分けて行く。
ものすごい切れ味だ。
熱魔術の出力が高いというか。
熱魔術の出力を高めることを徹底的に極めているから、こういう事が出来るということなのだろう。
まだ若いのに、魔術師としての熟練も凄まじい。
ただ、錬金術込みの強さである事を考えると。
パティにも、まだ人間の範疇である事が、理解出来はじめて来た。
ライザさんが言う通り、錬金術が凄いのかも知れない。
パティにも、なんとなく錬金術がなければ届きそうだと、最近は思えはじめて来たのである。
それはパティが力を上げてきたから、なのだろう。
「石材を運ぶぞ! 気を付けろ!」
「俺は上空を警戒する。 いざという時は、すぐに戦闘態勢を取ってくれ!」
「よしっ!」
ころを並べて。てこを使って大岩を動かす。ライザさんは、タオさんと一緒に色々と難しい話をしていたが。
運んできた石材を、大きさや用途ごとに更に切り分けて。
建築用の接着剤を使って固定。
更には柱なども埋め込み、淡々と建築を進めていく。
本格的な家屋だったら、とてもすぐにはつくれないのだけれども。ごくシンプルな家屋を作っていく。
拠点としては、それで充分だからだ。
ただ、文字通り荒野の真ん中に作ってある家屋だ。
残念ながら、ワイバーンには丸見えだろう。
既に旋回しているワイバーンは、此方に数体が警戒しているようである。地上の一部も、彼等の縄張りなのだ。
「柱固定するぞ!」
「力を貸します!」
「よしっ!」
レントさんが逞しい筋肉を剥き出しに、大きな石柱を立てる。パティもそれに加わる。その間に、建築用接着剤を用いて、固定を順番に進めていく。
二刻ほど掛けて、運んできた石材を切り分け。
そして、組み立ててしまう。
更にライザさんは、土を運んできて、拠点にする建物に被せた。これで遠くからは、土まんじゅうにしか見えない。
「ライザさん、これってワイバーンからは見えているんじゃ」
「見えてるよ。 これから退治して、新しく縄張りに入ってきたワイバーン対策」
「倒す事は前提なんですね」
「襲ってきたら、だけどね」
更にライザさんは、荷車の中からゴルドテリオンのインゴットを取りだし、内側から石造の拠点を補強していく。
土まんじゅうだが、それでも内部はしっかりした拠点が出来上がる。ライザさんは、更に隣に穴を掘り始める。
そこにも石材を使って屋根を作り、倉庫にしていく。
なるほど、一時的に回収してきたものを格納するためのものか。こっちは用途もあるからだろう。
強固な戸もつけていた。
「相変わらずだねライザ。 完成の図が既に頭の中に入ってる」
「まあ、これは三年前には出来ていたからね」
「なんというか、とんでもねえよな。 俺も家を建てるのを手伝った事があるから知ってるが……」
「空間を全部把握しているんだよライザは。 だから建物を頭の中で立体的にくみ上げて、それでばらして部品を逆算してる」
パティには理解出来ない世界だ。
今日だけでも、ライザさんがやっている事はもの凄い。
子供達を助けて。
架橋を終えて。
それだけでも凄いのに。此処に拠点まで作ってしまった。
いずれにしても、荒野に乗り込む準備ができたと言える。
ここから先は、何があるかまったく分からない。ライザさんが跳躍。クリフォードさんも同じようにして、地図を作っていく。
「見えている範囲だと、北西に砂漠がある。 ただ、砂漠には普通に川が流れていて、泉もあるみたいだね」
「それなのに砂漠なのか」
「土の性質が良くないのかもしれない」
セリさんが、レントさんの疑問に答える。
それに対して、真北は完全に荒野で、遮る物一つないそうだ。
「まずは北西からだね。 ここから先は本当に何も分からない。 気をつけて行こう」
「そうだな。 クラウディアは明日から参加してくれるんだっけか」
「確かその筈だよ」
「だったら、どうにかなりそうだな……」
レントさんが咳払い。
以前、砂漠に足を運んだことがあるので、その注意喚起だそうだ。
「砂漠についてだが、実際には砂が満ちているような場所は殆どなくて、砂の元になる岩がごろごろ転がっているものなんだ。 正確にはこれを岩石砂漠というらしい」
「レント、続けて」
「おう。 それで砂漠は昼と夜の寒暖差が激しく、日中に移動するのは危険だ。 砂漠に住んでいる生物ですら、可能であれば日中には行動しない程でな」
「そうなると、夜に移動する事になりますか?」
パティが疑問を呈すると。
レントさんは首を横に振る。
「本来はそれがいいんだが、砂漠の規模をまだ見極められていない。 森の遺跡を作った奴らとの交流があっったということは、そこまで此処から距離があるとは思えない。 一度生活時間帯を逆転させると、体に悪い影響が出る。 出来れば無理をしてでも、日中帯に動きたい」
「熱魔術で高熱は緩和するよ。 問題は直射だね」
「それなら私がどうにかするわ」
セリさんが、魔術を発動。
何かの芽がぐんぐん伸びて、大きな葉っぱが出来る。
傘どころか、皆が乗れそうな大きさだ。
「水が必要になるけれど、これで直射は防げると思うわ」
「水は見た所少なくないみたいだし、どうにかなりそうだね」
「よし、じゃあ準備もある。 今日はここまで。 みな、引き上げるよ」
ライザさんが判断して、さっと皆で撤退を開始する。
途中、タオさんがぼやく。
「やっぱり建築への興味も捨てられないなあ」
「どうしたんですか?」
「僕ね、今論文に取りかかってるんだ」
合間にそんな事をしてたのか。
タオさんは飛び級で学校を進めている。殆どの生徒は「箔を付ける」ために来ている学校だが。
タオさんは勉強に大まじめだ。
学校の上位機関には学術院というのがあるのだが、これは本当に学問を修めたい人が二割、残りは貴族が八割というところか。
この学術院にタオさんが興味を示しているらしい。
「学術院に行くためですか?」
「そうなるね。 今より更に機密性が高い書物を読めるようになるからね」
「貴族だと簡単に入れるんですが、確か庶民だと何年に一度も入れる人間は出ないと聞いています」
「タオも物好きだな。 そんなの、どうせ中は腐りきってるぞ」
レントさんの言葉の通りだ。
内部にいる二割の変わり者の研究者以外は、ただ箔を付けたいだけの貴族がいるだけで。そいつらは殆ど顔も出しもしない。
研究施設は閑散としていて。
学術院なんて偉そうな呼ばれ方をしているのに。
内部に誰もいないなんてのは、当たり前だそうである。
これが理由で、「幽霊施設」なんて呼び方を貴族達が口にしているとか。
実は百年前くらいに、何か事故があって、大幅に縮小されたという話だけれども。
ちょっとその辺りの事情は、又聞きになってしまうので、詳しくは分からない。
はて。
似たような話を、どこかで聞いたような。
「周りの研究者に興味はないんだ。 僕が興味があるのは、未来でね」
「大きく出たなタオ」
「別にそう大それた事じゃないよ。 多分だけれども、ライザを中心に、人類は魔物への反撃を開始すると思う。 他の戦士だと手も足も出ないような魔物が、ライザを中心としたグループだと蹴散らせているでしょ。 ライザは更に強くなるだろうし、そうなると人類は魔物にやられ放題だった歴史を、此処でくいとめる事が出来るかも知れない。 だけれども、それだけじゃあダメなんだ」
タオさんの言葉は、重苦しい。
いつもは冷静で知的なのに。
此処にいる面子には、話して良いと思っているからなのだろう。
「遺跡を調査してはっきり分かってきたけれど、古代クリント王国だけがダメなんじゃあないんだ。 多分人間がこのままだとダメで、仮に魔物を押し返してこの世界の主導権を再度握ったところで、きっと同じ事をなんどでも繰り返す。 そして多分だけれども、同じ間違いをもう一度繰り返したら、この世界はもう人間を許してくれない」
「世界が人間を許さない?」
「魔物について、おかしいと思った事はない? 僕はあれは、この世界が人間に対しての攻撃をしていると思っているんだ。 あまりにも人間に対して敵対的で、攻撃的すぎるだろ」
「面白い考えだな。 続きを聞かせてくれ」
クリフォードさんも興味を持ったようだ。
パティは一戦士として戦うだけ。
今後は王都を背負って立つだけ。
だから、ちょっとスケールが大きすぎて、何とも分からない。
「人間の変え方は分からない。 だけれども、僕はこう考えている。 過去にやってしまった間違いは周知すべきだ。 二度と同じミスを繰り返さないことで、少しでもマシになるんじゃないかってね」
「なるほどな。 そのための考古学なんだな」
「半分くらいは僕の好奇心なんだけどね。 ただ残り半分は、僕らの中の星、ライザが作る未来に、僕が出来る事について考えての事なんだ」
「ハハ、こりゃちょっとあたしもあまりうかうかはしていられないか」
ライザさんが苦笑。
パティも、黙り込むしかなかった。
色々考えているなタオさんは。
貴族が庶民がと言っている連中が、タオさんの前ではバカにしか見えない。
そしてライザさんの実力を間近で見てきたパティも、タオさんの言葉を絵空事だとはとても思えない。
今後は更にライザさんは躍進し。
世界を変える可能性もある。
人間すらも、ライザさんが何かしらの方法で変えていく事はありうる。
その時、今のままの閉鎖的でくだらない王都なんて、何の意味も持たないだろう。
パティはついていけるだろうか。
ついていかなければならない。
ぐっと、前を向く。
もうすぐ街道に出る。
街道に出たら、アトリエまですぐだ。
本格的な探索は明日になる。既に夕陽が辺りを赤く照らし始めている。この状態で、未知の地点に挑む戦力は無い。
明日クラウディアさんも加えて、それでやっと本格的な探索が始められる。
そう思うと。
パティは襟を正す気分だった。
アトリエで解散となる。
邸宅に戻ると、お父様も丁度戻って来た所だった。
あれ以来、わだかまりもなくなったような気がする。夕食で、軽く話をする。
「パティ、今日の探索はどうだった」
「密度が高かったです。 朝一番に、行方不明になっていた子供四人を助けました」
「カーティアから報告が上がっていたものだな」
「はい。 それから、北のワイバーンが多数いる荒野に出向くべく、架橋を行いました」
そう聞くと、流石にお父様もぎょっとしたようだったが。
ライザさんだったらおかしくは無いと思ったのだろう。
そのまま、パティも協力して拠点を作り、それで戻った事まで告げる。拠点まで、そんな短時間で。あの少人数で。
それを考えると、驚異的なのだが。
お父様は、もう驚かなかった。
「分かった。 そのままライザ君に同行して、重要な事が起きたら伝えなさい。 ライザ君には、近々私から細かい話を聞こうと思う」
「……」
「タオ君については、悪いようにはしない。 そのまま、分別を保って家庭教師をうけなさい」
「わかりました」
その辺りは念を押してくるんだな。
だけれども、パティにはなんとなく分かる。散々ため込んで怒りが爆発したのだ。今後は、もっと何かあったら話しなさい、というような意味もあるのだろう。魔物を容赦なく討ち取り、犯罪者に怖れられる豪傑の姿と言うよりも。今は、お父様から不器用な愛情を確かに感じられる。それはとても嬉しい事だ。
勉強をして、それから休む。
勉強はそれほど得意では無いけれども。タオさんと一緒にいるためだったら。
そう思えば、苦にはならなかった。
※ドラゴンとワイバーンについて
原作でもワイバーン系の敵からドラゴン素材が取れる事もあって、本作ではドラゴンの幼体=ワイバーンと設定しています。
アトリエシリーズではドラゴンは重要な節目で交戦する事が多い重要な敵なのですが、ライザシリーズではあまりドラゴンと節目でやりあうことはありませんね。
ただしドラゴンは作品設定に大きく噛んでいます。
本作では、あくまで伏線を撒いておくだけですが……
本作の次に連載する作品はどれが良いですか?
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暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
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真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
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流行り神二次創作
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その他二次創作
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オリジナルの長編