暗黒錬金術師伝説10 暗黒!ライザのアトリエ2   作:dwwyakata@2024

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パティに渡した薬の後始末……。

原作ではこんな大騒ぎにはならなかったのですが。

まあ本作では、大掃除を兼ねてアーベルハイム家が準備をしていたこともあって王都のダニが多数消え。それで大きな経済力を持つバレンツも動く事になっていました。


1、未踏砂漠

復帰したクラウディアから話を聞きながら、砂漠に出向く。クラウディアによると、最終的に七つの貴族の家が潰れて。

 

それらが蓄えていた富の大半が流出。

 

本当だったら血を見ていただろう所を、バレンツ商会を中心としたグループで抑え込む事に成功。

 

とりあえずの落ち着きが戻ったそうである。

 

王都を出ていった貴族達は、殆どがろくでもない悪徳貴族。

 

先祖が蓄えた金で生きてきただけの連中で、それも失った今、のたれ死にが関の山だそうである。

 

皮肉な話で、貴族達が去るときに、ついていったのは例のメイドの一族だけ。

 

その一族ですら、恐らく監視目的でついていったのだろうと。

 

これは、カフェで聞いたとおりのたれ死にが関の山かな。

 

そう思って、あたしは苦笑い。

 

だけれども、それに同情するつもりはない。

 

橋を見ると、クラウディアは歓喜の声を上げる。

 

「すごいわライザ! こんなものを瞬く間に作りあげたのね!」

 

「へへ、どうよ」

 

「まあ、俺たちも力仕事はしたんだけどな」

 

「うん、分かってるよレント君!」

 

クラウディアは、ずっとろくでもない大人とやりとりをしていたからだろう。

 

三年前に戻ったように、無邪気に笑って橋を見て喜んでいる。

 

橋を渡りきって、それからが本番だ。

 

タオが磁石が狂っていないことを確認。

 

まあ此処だと、影の方向で分かるのだが。

 

あたしが準備してきた、冷気を周囲に撒く装置を荷車にセット。更にセリさんが植物操作の魔術で、巨大な日傘を作ってくれた。

 

問題は、空からの奇襲対策だが。

 

それには今日はクラウディアがいる。

 

クラウディアの音魔術は冴える一方だ。逆に言うと、クラウディアが対応できないようなら、他の誰でもダメだろう。

 

「よし、此方だ。 行こう」

 

「問題は砂漠に入ってからだね。 ワイバーン以外にも、見た事がないような魔物がわんさかいそうだ」

 

「違いない。 とにかく、確実に調査を進めていくしかない。 里というのも、隠蔽されている可能性が低くない」

 

「同感だ。 水たまりの中にあったりしてな」

 

クリフォードさんが、冗談めかしていうが。

 

今までの状況から考えて、その程度だったら楽でいい、くらいである。

 

あたしは咳払いすると。

 

これから先が大変である事を考えていた。

 

黙々と進む。

 

荒野がやがて岩だらけになっていく。

 

どの岩も随分と脆そうで、実際に蹴りを叩き込んでみると、それこそ脆い果実みたいに砕けて割れた。

 

辺りには植物が殆どない。

 

ちいさなトカゲが、影にいて。

 

アリの群れを食べていた。

 

「うわ、ごつごつしたトカゲさんですね」

 

「パティ、いる場所は覚えておいて。 最悪の場合、そのトカゲさんを食べる事になるからね」

 

「ええっ……」

 

悲しそうな顔をパティがするが、これは当然の話だ。

 

この先はワイバーンがウヨウヨいる危険地帯。油断しなくても、荷車を破壊されたり、粉砕されて逃げ惑うことになるかも知れない。

 

そういう場合は、この砂漠にいる生物を食べて凌ぐ事になる。

 

淡々と移動を続ける。

 

口数が減るのは、空気が露骨に乾燥しているからだ。

 

直射日光を防ぐのと。

 

更に冷気を展開する事で、だいぶ楽になっているが。

 

それでもこれは厳しいだろう。

 

少なくとも、対策無しで入れる場所じゃない。

 

足下が、じゃりっと言った。

 

注意が散漫になっていて、それで気付く。足下が、いつの間にか砂まみれになっている。それも砂が非常に危険なものだと見た。

 

「気を付けて。 この砂、多分直に触らない方が良い」

 

「正解だぜライザ。 こういう所の砂は鋭くて、柔らかい海岸とかのものとは違う。 下手に足を突っ込むと血だらけになるぞ」

 

レントがそんな事を言って脅すが。これは多分脅しと言うよりも、経験談なのだろう。

 

頷くと、慎重に動く。

 

クラウディアがハンドサイン。同時に、全員で一気に移動開始。岩壁を背にする。

 

ぬっと姿を見せるラプトル。

 

大きい。

 

街道にいる群れの、ボス級のだ。それも、そんなのが十体以上でてくる。

 

エサを見つけた。

 

逃がさない。

 

そう言うかのように、じりじりとラプトルの群れが迫ってくる。ちいさな動物が、じっとこっちに視線を送ってきている。

 

負けた方を、おこぼれに預かって食う。

 

そのつもりなのだろう。

 

更に、奧から現れるラプトル。

 

大きさで言うと、かなり大きいサメくらい。こんなのが、ウヨウヨいるのか。

 

まあ、無理もない。

 

此処は最低でも五百年以上、人間から見捨てられてきた土地なのだから。魔物が際限なく巨大化していても不思議では無いだろう。

 

巨大なラプトル達が、来る。

 

ぐんと、加速して、一気に襲いかかってきた。

 

正面から、あたしとクラウディアが弾幕を展開。これは、手を抜いている余裕はないな。そう思って、火力をありったけ叩き付け、更に爆弾も投擲する。

 

凄まじい弾幕にラプトル達は足を止めるが、即座に距離を取る。それぞれの個体の判断力が高い。

 

じっと此方を見た後、

 

さっと距離を取って、去って行く。

 

パティが、拍子抜けしたように言う。

 

「あ、あれ。 逃げましたよ」

 

「違う。 あれは老獪なんだ」

 

クリフォードさんが補足。

 

クリフォードさんが、丁寧にパティに説明をする。

 

「彼奴らは、地の利がある事を理解してる。 此処に入り込んで来た新参が、すぐに危険な目にあうような地形がたくさんあることもな。 だから一瞬だけ力を見て、それで距離を取った。 わざわざリスクを冒して戦うよりも、弱った所を一網打尽にするつもりだ」

 

「ろ、老獪な魔物ですね」

 

「こういう砂漠みたいな場所を極地っていうんだがな。 極地にいる生物は、獲物を逃がさないために色々と工夫をするのさ。 体を大きくするのはその一環だ。 でかければ、獲物に対して優位をとれるからな」

 

ともかく、一度様子見をして、移動をする。

 

あたしが時々高く跳んで周囲を確認するが。

 

そびえ立つ岩山。

 

たまにある巨大な蟻塚。

 

いずれもが、この辺りを迷路のようにしてしまっている。

 

今の時点で、ワイバーンは此方に仕掛けて来る個体はいないが。いずれもが、油断せず此方を見張っている。

 

いつ戦闘になってもおかしくない。

 

備えるのは、必須だ。

 

「あの辺りに、水たまりがある」

 

「なんだろう、あるのは音魔術で感知できるんだけど、みえないね」

 

「蜃気楼って奴だ。 暑すぎる場所で起きる現象でな。 ないものが見えたり、あるものが見えなかったりする」

 

「ああ、逃げ水みたいな感じかな」

 

あたしもそれは知っている。

 

石畳なんかに、存在しない水たまりが見えたりする現象だ。乾期なんかでは、時々あった。

 

レントは経験していないことはさっぱりだが。

 

クリーフォードさんはとにかく満遍なく色々な事に詳しい。

 

話を聞いていて、時々感心させられる。

 

それも、理論的に納得出来るようにかみ砕いて話をしてくれるから、パティもうんうんと頷いていた。

 

まあこれはパティが未知のことに興味を示す真面目な性格だと言うこともあるのだろう。

 

移動して、水たまりに。突然水たまりが見えたので、クラウディアが楽しそうに声を上げる。

 

本当に時々無邪気になるなあ。

 

だが、それでも歴戦の戦士だ。

 

油断なく、周囲を確認。

 

下手に荷車から離れると、ゆだるような暑さが凄まじい。あたしも偵察のために時々跳躍して確認するが、それも毎回がしんどくでならない。クリフォードさんと交代でやっているのだが。クリフォードさんもしんどそうだ。

 

クラウディアが水たまりを音魔術で調べて。やがて頷いていた。

 

「大きな魔物は中にいないよ。 水たまりも、おぼんみたいな形状で、特に変なものは中には無いね」

 

「よし、水を補給しておこう。 湧かすから、桶に汲んで」

 

「分かりました!」

 

荷車には、傘にする植物用に桶を入れてあるのだが。水は結構減っている。すぐに桶に入れた水を煮沸して、そして冷やす。

 

荷車の桶の水を交代した後、水の成分を確認。

 

エーテルを出すのは難しく無い。錬金釜がなくても、水の成分分析くらいはその場で出来る。

 

毒物は、なし。

 

飲んでも大丈夫かはともかく、被っても平気だ。

 

早速手を洗い、顔を洗う皆。

 

それくらい、この辺りの気候はしんどいのだ。

 

出来るだけ飲まないように。

 

そう注意して、あたしも口をゆすぐ。風に混じって砂が飛んでくるので、たまったものじゃない。

 

皆で、しばし一息つく。

 

首が長い、見た事がない生物が来る。背も高い。背丈はあたしの三倍以上はあるとみて良い。それにあたしの背丈の二倍以上ある首がついている。

 

体は黄色に黒の斑模様。背中にはひれみたいなのがついていて、此方には興味を見せない。

 

のったりした動きをしたそれが、首を水たまりに突っ込んで水をがぶがぶと飲み始める。

 

警戒するパティに、レントが言う。

 

「大丈夫だ。 こう言う場所では、基本的に動物は例外を除いて争わない」

 

「例外もいるんですね」

 

「ワニなんかの待ち伏せするタイプの魔物は襲ってくるな。 ただ、クラウディアが確認して、いないって分かってるだろ」

 

「確かにそうですね。 わかりました」

 

剣を収めて、座り込むパティ。

 

タオが、地図を作って見せてくれた。

 

「とりあえず、こんな感じになるね。 今の時点では、里らしいものも、何かありそうな空間も見当たらないよ」

 

「……タオ、ちょっと見せてくれ」

 

「はい、クリフォードさん」

 

「……」

 

小首を傾げているクリフォードさん。

 

懐から取り出した、かなり年代物の本を開いて、見比べている。やがて、頷いていた。

 

「今日は無理だろうが、この辺りを調べてもいい余裕が出来たら、ちょっとこの辺りを調べさせてくれるか」

 

「何かありそうなんですか?」

 

「これは俺のトレジャーハントの師匠ともいえる人が残してくれた古文書でな。 宝があるって場所に、ちょっと似ているのさ。 ロマンだろ?」

 

久しぶりに出る良く意味がわからない単語、ロマン。

 

まあ、確かにロマンかも知れない。

 

既に陽は落ち始めている。

 

此処で夜を過ごすのはぞっとしない。

 

帰路に移る。

 

あの大きなラプトルの群れは、じっと此方を見ていた。あたしとクラウディアの猛攻で、一匹も欠けなかっただけのことはある。

 

とにかく慎重で。

 

油断が出来ない相手であるのは、事実のようだった。

 

 

 

翌日。

 

早い段階から、砂漠に到着。途中の道を、かなり急いだのだ。今日は、昨日以上に念入りに準備をしている。

 

街道で戦闘を数回こなしたが、いずれも大した相手では無かった。

 

砂漠にいる魔物に比べれば雑魚も雑魚。

 

これからやり合うのは、あんなのとは比較にならない強敵だ。ウォーミングアップには丁度良い。

 

砂漠で、準備を確認。

 

靴も微調整した。

 

人数分やるのは大変だが。此処の砂が危険だと分かったのだ。砂が中に入らないように調整するのは必須である。

 

「今日は、あの辺りから北上して、様子を見るよ」

 

「よし。 少しずつ、未確認の地点を踏破しつつ、地図を作るんだな」

 

「はいクリフォードさん。 そうなりますね」

 

「俺の宝の地図の件は後回しだ。 ともかく、少しずつ確実にやっていこう」

 

クリフォードさんは相変わらず堅実だな。

 

ロマンと口にするが、きちんと周囲の安全を確保してから、自分の事をやってほしいと言っている。

 

これは奥ゆかしいとかではなく、全体の事を考えてくれている。本当の意味で、である。

 

この人は、なんというか。

 

見かけと中身の乖離が激しいな。

 

そうあたしは思う。

 

まあ、見かけで相手を判断するのが色々とおかしいし。

 

人類の宿痾なのだ。

 

砂漠を移動して行くと、例の大きなラプトルをまた見かける。それよりも、だ。大きな獣の、死体を見つける。

 

骨まで綺麗に囓られていて。その骨すらも、痩せこけた鳥がつついていた。

 

骨を割って、髄を食べている。

 

更には、骨には虫も集っていて。骨を細かく分解しているようだった。

 

大きな獣だが、それほど昔に殺されたようには思えない。ここでは死ぬと、一瞬でこうなるということだ。

 

一瞥して、判断する。

 

「殺されたのは今日だね、これは」

 

「こんな大きな獣が、今日殺されてこんな……」

 

「気を付けて。 あたし達も他人事じゃない」

 

パティに釘を刺しておく。

 

移動しながら。時々タオが岩などに目印をつける。そして、あたしかクリフォードさんが跳躍して、周囲の状況をタオに知らせる。

 

今度は、川に行き着く。

 

この川、何処が出所なのだろう。

 

昨日、水を持ち帰って調べて見たが、危険な成分はなかった。

 

目に見えない程小さい危険な生き物がいる場合もあるのだけれども、それもなかった。

 

ちいさな虫が、水を溜めているとすぐに湧くことがあるのだけれども。あの水たまりにはそれもなかったっけ。

 

本来此処は、緑豊かな場所だったのだろうか。

 

ちょっとなんとも言えない。

 

とにかく。少しずつ、安全圏を拡げていく。

 

不意に、凄まじい声が響いた。

 

ワイバーンだ。ワイバーンが、ラプトルを襲っている。昨日見た奴より少し小さいが、それでもかなり大きなラプトルを、楽々と持ち上げて。空中から地面に落としていた。

 

悲鳴を上げるラプトルに、尻尾を突き刺す。

 

必殺の毒針である。

 

ラプトルは悲鳴を上げて倒れ、倒れた獲物をワイバーンが貪りくう。口を血だらけにしてがつがつと肉を喰らっているワイバーン。

 

皆、岩山の影に隠れて、様子を見守る。

 

「た、戦いますか?」

 

「無用。 あの様子だと、満腹になる。 縄張りの確認だけして、進んだ方が良い」

 

パティにセリさんが淡々と告げた。

 

それにしても、流石にドラゴンの幼体だな。

 

体格的にはそれほど変わらないだろうラプトルを簡単に持ち上げて、そして毒針で一撃必殺。

 

倒れたラプトルを貪り喰って、そしてワイバーンが飛んでいくと。

 

わっと、他の動物が、死体に群がる。

 

その中には、ラプトルも混じっていた。

 

同種であっても関係無しか。

 

ラプトルは雑食だ。雑食は豚などもそうだが、とにかく何でも平気でくう。死んだ同類も、瞬く間にエサだ。

 

それを考えると逞しいが。

 

生物としては、あまり個人的に好意はもてない。

 

ただ、扱ったことがある畜産動物の豚が同じような雑食だということもあって。

 

あたしは、冷静に目の前の事を見る事が出来ていた。

 

ばりばりと凄い音がする。

 

骨も瞬く間に囓り、崩されていくのだ。

 

やがて大型の動物は去り、小型の鳥や虫が骨を崩していく。

 

此処で死ぬと、ああなる。

 

そう思うと、とても此処で倒れるわけにはいかなかった。

 

タオが地図を作っている。

 

地図を見ると、川の流れに沿ってくだる事が出来そうだ。勿論川の流れに沿って上がる事も出来るが。

 

今、丁度鮮血の宴が行われた地点を行く事になる。

 

パティを見る。

 

思ったよりは、落ち着いているようだった。

 

「パティ。 いける?」

 

「はい、どうにか」

 

「よし」

 

ハンドサインを出す。

 

全員、姿勢を低くして行く。そのまま、死体の横を駆け抜けて、先に。

 

今日は、この川の先に何があるのか、確認して起きたい。

 

空を舞っているワイバーンは、此方が見えているだろうに、興味を示さない。多分、今ので腹一杯だからだろう。

 

動物とは、そういうものだ。

 

 

 

水源に到着。

 

結論から言うと、其処には泉があるだけ。どうやって水が湧いているのかはちょっと分からない。

 

クラウディアが、音魔術で確認してくれる。

 

「どう、クラウディア」

 

「深さはそれほどはないね。 ただ、水はこんこんと湧いていて、尽きるおそれもなさそうだよ」

 

「そうなると、何処かの川が一度地下に潜って、それから浮上しているんだろうな」

 

「本当の意味での水源は、もっとずっと先と言う事か」

 

レントがぼやく。

 

いずれにしても、此処は外れか。

 

それにしても、恐ろしい場所だなと思う。

 

さっき、ワイバーンでも避けて通る巨大な竜を見た。いや、あれは竜なのかちょっとなんとも言えない。

 

二本足で歩いていて、手は小さく。トカゲという割りには足が下に出ていて。そして顔は凄まじい恐ろしさで、牙が乱ぐいに上下に出ていた。

 

尻尾も太く。

 

ひれだの飾り羽だのはないが。そのシンプルな姿故に、圧倒的な実力が見るだけで伝わってくる。

 

そんな生き物だった。

 

セリさんも、見た事がない。戦わない方がいいと言っていた。

 

あれはなんなのか。

 

魔物にしても、ドラゴンと同等の存在におもえる。

 

あたしとしても、無理に戦いたいとは感じなかった。

 

だが、いずれ戦う必要は生じるかも知れない。

 

あの強大な顎。この間戦った毒竜と同等か、それ以上の相手とみて良いだろう。恐ろしい砂漠だ。

 

あんなのが、平然と彷徨いているなんて。

 

ともかく、川に沿って降って、一度戻る。

 

これは一日や二日で、里を見つけるのは無理だ。帰路で、あの食われた大型ラプトルの所を通ったが。

 

文字通り、何もなくなっていた。

 

これは砂漠で誰か倒れても、あっと言う間に死体は食べ尽くされてしまう。それが一目で分かる。

 

此処の生物たちも必死だろう。

 

死んだら親兄弟にすら瞬く間に食い殺されるのだ。

 

此処はそれだけ厳しい場所。

 

それで、厳しい場所なら強い生物がたくさん育つかというと、それはノーだ。

 

生物の絶対数は決して多く無いし。

 

それに、この様子だと。

 

強さより、幸運だろう。

 

生存に寄与するのは。

 

幸運なんて、生物によって違う。どんなに強い生物だって、運が悪ければ死ぬ。

 

淘汰圧というものの、現実が此処にあるなとあたしは思う。

 

少なくとも此処で。

 

文明だの、すぐれた生物だのが誕生する可能性はない。

 

橋を抜けて、街道に出たころには、陽が落ちていたが。はっきりいって、ほっとした。カーティアさんが、数名の戦士を連れて警邏しているのにでくわす。一礼して、話を聞いておく。

 

「何かありましたか?」

 

「いえ、貴方たちが助けた子供達の件もあって、警邏をするようにと指示がありました。 街道を経験が浅い戦士と見回ることで、戦闘経験を積ませています」

 

「へへ、そういうことでさ」

 

なんか話しかけてくる奴。

 

なんでも、カフェであたしを見かけたことがあるそうだ。済まないが、まったく見覚えがないので苦笑い。

 

いずれ戦士として腕を上げていけば、顔を覚えるかも知れない。

 

「いくぞ。 恐らくまだ魔物との戦闘はある。 可能な限り仕留めて、安全度を上げておく」

 

「はい!」

 

戦士達が行くのを見送る。

 

今日はここまでだな。

 

タオに、一応聞いておく。

 

「タオ、地図の進捗はどれくらい?」

 

「せいぜい三割かな。 それも、これからが大変だよ」

 

「そっか……」

 

魔物の危険が大きい。

 

地形の危険が大きかった、「深森」とは別ベクトルの場所だ。だが、こう言う場所の探索の経験を積んでいけば、今後役立つかも知れない。

 

アトリエに戻ると、くみ置きの水を飲む。

 

しばし、冷やした水を飲んで、体調を整えた。皆、相当に参っている。戦闘は殆ど起きていないが。

 

砂漠という環境が、あまりにも想定外だったのだ。

 

火山などで暑い思いはした事があるが、それともまた別の危険さだ。

 

コレは確かに、独立勢力を保てたのも分かる。

 

だが、どうやって交流して行き来していた。それが、分からない。

 

考え込むあたしに、挙手するクラウディア。

 

「ね、ライザ。 あてもなく砂漠を調べて地図を作っても、多分みんなもたないと思うんだ」

 

「正論だね。 その通りだと思う。 何か案はある?」

 

「まずはクリフォードさんの宝について調べて見ない? 今すぐに封印が壊れる訳では無い事も分かった。 それならば、少しは余裕を持っても良いはずだよ」

 

「……」

 

それも、そうか。

 

分かった。

 

それに、少しだけだが、地図を埋める役にも立つ。ならば、やっておくのも良いだろうか。

 

「分かった。 そうしよう」

 

「ありがたい。 頼むぜ」

 

「頼まれました」

 

まずは地図を確認。砂漠の中にある不可解な地形だ。全体的に、とぐろを巻いているというかなんというか。

 

いずれにしても、かなり特徴的な地形である。

 

確かに調べて見るのも良いかも知れない。

 

少なくとも、危険にさらされ続けて、神経をゴリゴリ削られ続けるよりはいいと、あたしもクラウディア同様に思うのだった。




砂漠に突入です。

何度か暗黒!アトリエシリーズでは砂漠を扱ったことがあるのですが。

本作でも、厳しい場所として描写しております。

本作の次に連載する作品はどれが良いですか?

  • 暗黒!アトリエシリーズのまだ未掲載の作品
  • 真女神転生Ⅲの二次創作(真Ⅴ要素なし)
  • 流行り神二次創作
  • その他二次創作
  • オリジナルの長編
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