ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!?   作:サブレ.

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第十四話

視界が効かない中、海賊と名乗った彼との戦闘は終始俺が不利に進んだ。そもそもダメージが蓄積された状態でさらに視界が効かない、更に向こうは空を飛べる。

だが、声は届く。倒されないように気を張りつつ、声をかけることは忘れない。

 

「君、緑谷出久か!?」

「ちがうっ……!」

「ならば緑谷引子と緑谷久の息子なのか!?緑谷引子に、緑谷久の名前で贈り物をしたことはあるか!」

「……っ!」

 

反応した。少なくとも彼は、緑谷引子と緑谷久の子供であるという自認を持っている。

叫んだことで、口の中に鉄錆の味がする液体が迫り上がってくる。外部から無理やり支えているが、肉体そのものの限界が近い。

それでも確認しておかなければならないことがある。

 

「その力は自前のものか、それとも後天のものか!?」

「……」

「誰かの肉体の一部を口にしたことはあるのか!?体内に異物を取り入れたことは!?」

 

オールマイトが無自覚なだけで、何かしらの偶然でOFAを正当に継承した可能性もある。そう思っての質問だったが、一気に向こうの空気が切り替わった。

 

「っざけんな……ふざけるな!!!」

「!」

「どの口で……お前が……!!!」

 

がむしゃらに突っ込んできたのを、刀で受け止めた。迫り合いのような形になるが、フードとマフラーのせいで顔を、表情を確認できない。

しかし向けられた感情は、様々な負の感情……怒り、恐怖、苦しみ、恨み、それらが混在した中に使命感が混ざっている。

しかし、俺はこの男と直接会ったのはこれが初めてだ。

半ば困惑していると、突然コートの内側に仕込んだままのスマホが鳴り響いた。急いで距離を取り、海賊に意識を向けつつ手探りで通話をオンにする。

 

『真墨!爆豪と常闇が連れ去られた、悪りぃがそっち迎えるか!?お前から近いんだ!』

「ちょっと待て!こっちも交戦中、で……!待て!」

 

会話中、海賊がこちらに背を向けて、かなりのスピードで逃走を始める。我に帰ったときにはすでに煙幕の向こう側に消えていたが、こちらにはOFAの力を探知できる獅子折神がいる。その反応を頼りに走り出して、思い至る。

 

「こちらが場所を索敵できることを知った上で、案内しようとしている……?」

『真墨?』

「なんでもない……今、かっちゃんがいると思わしき場所に向かってる!そっちの状況は!?」

 

手探りで触れた画面はすでにバキバキに割れてて、通話以外の役割はもう果たすことはできないだろう。原作でやってたように飛んでくることができるか聞いてから、答えも聞かずに電源を切る。

エージの反応を頼りに暗い森の中を駆け抜けていけば、そこには襲撃してきたと思われる、ヴィランが集結しているのが遠目に見える。

ブレーキをかけて、烈火大斬刀を出す。本日何度目かの大筒モードは、脳内麻薬が切れた時の自分の体がどうなるか考えたくもない。

それでも今は、考えるより体を動かす時だ。モヂカラが枯渇しすぎて、もう五輪弾は撃てないが、何もしないよりマシだ。

 

「烈火大斬刀大筒モード・虎三輪弾……って、青山君!?」

「君は、字君……」

「ちょうどいい、目眩しできそうか」

「できるけど、良いのかい?君は僕を疑っていたじゃないか」

「そうだな。今更都合のいい話だとは思ってる。でも今は、連れ去られた二人のために手を貸してくれないか。罵倒も何もかも、全て受け止めるから」

 

こふ、と口の端から抑えきれない血が漏れ出てくる。それでも狙うことをやめない。

手の中には小さな丸が二つ。おそらくあれが、爆豪と常闇……否。

少しの思考の間に、なんと轟と障子が“降ってきた”。

 

「最高だぜ、二人とも……!」

 

青山君が仮面の男にビームを放ち、手から玉が二つこぼれ落ちる。しかしそれはフェイク、だよなあ!

 

「成敗!」

 

弾が、コートの男の腹を直撃する。その衝撃で、口の中に隠し持っていた“本命”がこぼれ落ちた。

 

「拾えェ!」

 

げふ、と叫んだ拍子に吐血する。無理やり血を拭った先で、かっちゃんが連れ去られるのが見えた。

 

「……チッ」

 

全力を尽くしたつもりだ。内通者の気配にも気を配り、先んじて洸汰君の元にも向かうことができた。

それでも、爆豪は拉致されてしまった。

収穫といえば、OFAの現継承者と思わしき『海賊』との接触のみ。

 

ふぉん、と変身が解ける。流石に限界を迎えて、その身が地面に頽れた。

 

 

 

二日間寝込んで、三日目に目を覚ました。

……三日!?

 

「ちょ、寝すぎだろ!御当主様とグラントリノとオールマイトに報告しなきゃならんってのに!」

 

慌てて体を起こして、咳き込んだ。取り付けられていた機械が何かの反応をして、医者と看護師が駆け込んでくる。処置をされている間も落ち着かない。

その後母さんが駆け込んできて、泣きながら抱きしめてくれた。妹は何も言わずに、俺の手をぎゅっと握っていた。ボロボロの手だから、触り心地なんて良くないし、そのことで文句ばっかり言ってきたくせに。

父さんは電話越しだったけど、生きててくれて良かったとそんな話をした。御当主様に報告したいことがあると言ったら、取り次いでくれると約束したのであとは父にお任せ。

家族に恵まれたなあと思いつつ、紙パックのリンゴジュースをごくごく飲んで喉を潤してたら、A組のみんなが見舞いに来てくれた。

 

「字ー!目覚めてんじゃん!」

「よっす。今日まともに目覚めたばっかりだぜ。何人で来たんだ?」

「耳郎君葉隠君は敵のガスでまだ目覚めていない。八百万君も頭を酷くやられここに入院している。昨日ちょうど意識が戻ったそうだ」

「ん、そっか。じゃあ合計で15人だな。さんきゅ」

「怪我の具合はどうなんだ」

「リカバリーガールが治してくれたおかげで、後遺症は多分残んないけど、ちゃんと治るまでしばらく入院してねって」

 

二日寝て、すこし思考も落ち着いた。傍には獅子折神のエージも控えている。指先で戯れながら、何か思い悩んでる風の切島君を見上げた。

切島君曰く、脳無の一体に八百万君が発信機を取り付けたのだという。

受信デバイスを作って貰えば、居場所を特定できるのでは?との発想に、クラスが大荒れした。

いや、ここ俺の病室。

パァン!と柏手を一つすると、ようやく騒ぎが鎮まった。

 

「はい、落ち着け。ここ俺の病室だから。俺だから良いものの、他の人の所だったら追い出されてるぞ、切島君に飯田君」

「うっ、すまない……」

「俺も、ゴメン」

「んで、次に。俺も本質的な部分では飯田君に賛成だ。ヒーロー免許無しでヒーローやって良いなら、字家出身の志波のヒーローは少なくとも半分以上、もしかしたら全員免許とってねえよ」

「でもよ!」

「でももだってもない」

 

なぜ初代当主が、御当主様が、ヒーロー試験を、免許制度を、肯定するに至ったのか。少なくとも、秩序が身近な俺に理解の及ぶところではないのだろうと、思う。

 

「ただ、もうすぐ俺に“特例”の話が来る。その時に幾つかの約束事をしてくれれば、俺の護衛兼介助要員として、現場の近くで尽力することができる」

 

あの日、OFAの持ち主と接触したのはエージと俺だ。そして、朱里様の獅子折神のパンジーが神野の近くでOFAの反応を探知している。

確認のために、なんらかの形で現場に赴くことになるだろう。

 

「雄英高校という名前の信頼は厚い。そして初代当主と御当主様は雄英高校の創立や運営に深く関わっておられた。字家の志波ヒーローズもまた雄英高校の出身だ。

看板に泥を塗らないのなら、俺から話を通す」

 

俺から提案できる、ギリギリのライン。

少なくとも、大暴走をしなくて済むところであり、先生相手にきちんと言い分を立てることができる。

ぐっと唇を噛んだ切島君と、覚悟を決めたような瞳の轟君を見据えて、柔く笑んだ。

 

「どうする?」

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