ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!?   作:サブレ.

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今日は一話だけの投稿です。明日は複数投稿できたらいいな

初めて本作でここすきをいただきました!ありがとうございます!


第十五話

夜、叔母が代表して迎えに来た。正直治療で体力使ったのもあって、だるい。

結局、同行者には委員長組と轟君と切島君の四人が立候補した。八百万君は名目が介助であるなら私の個性は有用です、と主張してたけど、多分本音はストッパーだろうな。

 

「雄英高校には許可とったんだよな?」

「御当主様が話通してたよ」

「わー、相澤先生に後でお詫びの品用意しないとダメじゃん」

「それももう御当主様が準備なさっていたらしいよ」

「信頼できねえ」

 

叔母の運転する車でそんなやり取りをしつつ、連れてこられたのは現場からほど近い廃墟ビルの中を掃除した観測所。下手すりゃ普通に巻き込まれる位置にいる。

冷静に考えて、重傷人を連れてくる場所じゃねえ。

今回同行組につけられた条件は三つ。

 

・プロヒーロー志波雨流の指示に従うこと

・会話の内容に深入りしないこと

・会話の内容を他言しないこと

 

ぶっちゃけOFAの詳細とかね、今後はともかく今の魔王が野放し状態で伝えるわけにも行かないしな。

モニターがたくさん並んでいるので、中央の椅子に座る。咄嗟に飯田君がカーディガンを差し出してくれたので、ありがたく受け取り肩にかけた。

 

「志波雨流って引退したんじゃ……?」

「事務所は辞めたけど、ヒーロー免許自体は今も持ってる。非常事態にだけ参集するヒーローなんだよ。予備自衛官ならぬ予備ヒーローってとこかな」

「このヒーロー飽和時代に、予備ヒーロー?」

「リスクに対する手段は、いくらあっても良いものだよ」

 

爺ちゃんも免許返納はしてないから、厳密には予備ヒーローってとこかな。

さて、三代目志波烈堂のお仕事でもしますかね。

 

「朱里様の配置は何処に」

「ベストジーニストと同じ場所に配置される可能性が高いかな。朱里様はベストジーニストのサイドキックでおありである故」

「そういや表の肩書きはそんなんだったな。忘れてた。朱里様の獅子折神……パンジーの配置は朱里様と同じ?御当主様は作戦本部かな」

「両方その通りだね。あと、御当主様の獅子折神はグラントリノへ貸し出されている」

「封印の文字の使用予定は?」

「最悪の場合、朱里様がお使いになられると」

「はあ!?」

 

流石に看過できないぞそれは。叔母の顔を振り仰ぐと、叔母もまた苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

「しかしだね、御当主様は高齢かつヒーロー免許を返納された身。真墨はまだ学生で仮免すら持ってない。朱里様しか前線に出られないじゃないか」

「あの、封印の文字って?」

「字家に代々伝わる、人の個性を封じるための文字」

「字が期末試験で使ったやつか!」

「そうそれ!真の力を発揮できればAFOですら永久的に封じる、俺たち字家の真の切り札が一つ!」

「しかしながら、使える人間は限られている上に、使用するためには大きなエネルギーを消費する。また、習得難易度も生半可なものではないんだ」

 

封印の文字について説明しつつ、通信機器やモニターを的確に起動ながら御当主様から指示を受ける。獅子折神は呼応しているが、反応の元は現在位置はここから五キロほど離れたとある商業ビルのようだ。

 

「目視できるのは、脳無格納庫か……朱里様とベストジーニストはここに配置……御当主様、五キロも離れていれば流石に海賊の目視確認は厳しいのですが」

『AFO自身が格納庫にいる可能性がある。控えておけ。最悪の事態もある、朱里を見ろ』

「……はっ!」

 

獅子折神が哭いている。

ワープの個性が近くにある以上、こっちに来る可能性もゼロじゃない。確か原作でもワープでこっちに合流してたはずだしなぁ。

 

「なあ、最悪の事態って……」

「しっ静かに」

 

叔母が切島の言葉を遮る。俺も意識を眼下の建物に向けた。着いてきた四人には悪いが、これからそっちに意識を払えるか分からない。

制圧作戦が始まった。

 

+++++

 

「オールマイト、戦闘開始した!」

「海賊の反応と、かっ、爆豪勝己の反応は」

『海賊、反応無し。爆豪勝己は……自分と一緒に連れて帰ろうとしている……?』

「!」

 

やはり海賊は緑谷出久と関係がある。かっちゃんの反応を見る限り……本人の可能性が高い。

しかし問題は、本人が自分のことを緑谷出久ではないと否定したこと。

 

「獅子折神の反応は!?」

『海賊に対して反応あり』

「〜っ、不味いな、AFOの教え子の元に聖火の持ち主がいることになるぞ!」

「しかし聖火の本当の持ち主が海賊だとして、なぜAFOが無反応でいられる?」

「御当主様に後で問いただすけど、俺が習得してないもう一つの秘伝文字だろうなぁ!」

 

あれに関しては、封印の文字に対して正直扱いに困るというか、使い所が限られる。

さらに、その文字を使ったとして、なぜ緑谷出久にOFAが継承されているのか?という疑問の答えにはならないのだ。

 

「もう一つの秘伝文字ってなんなんだよ!」

「質問するなって条件だろ!あともう一つの文字の効果は“影武者”!オールマイトの影武者を作れる文字だ!」

「ではその文字が原因では!?」

「そう考えてんの!でもそれだと一番の謎が不明のままなんだよ!」

 

正確には、文字を書き込んだ対象を、OFAの継承者の影武者とする文字だ。しかし長年の戦いで、その影武者の作り方は魔王に露呈してしまっている。今では影武者を大真面目に作ったところで見破られて終わりだ。

ついでにもう一つ。力が大きくなりすぎたOFAは、影武者を作るのにも多大なリスクを孕むようになった。字を書く人間の消耗は初代当主の頃とは比べ物にならないし、影武者となった人間も力に耐えきれなくなる。

純粋な戦力増強手段としてさえ、成功率の低さから採用を見送られ続ける代物だ。

 

二つある秘伝文字のうち、封印の文字のみが取り沙汰される理由がここにある。

 

「っ、真墨!」

「!」

 

突如、壁が砕かれた。叔母が咄嗟にモヂカラで盾を作って庇ってくれる。壁そのものがまるっと無くなって視界が通った先には、不気味に佇むオール・フォー・ワンの姿があった。

即座に立ち上がって筆を手にする。吐き気を催すような圧力が俺に向けられた。

 

「……御当主様が会うたび圧力と殺気かけてきた理由が今わかったわ」

「圧されるな、次期当主」

「当然」

 

眼下にはベストジーニストが倒れていて、その前で朱里様が烈火大斬刀を手にして庇える位置に立っていた。

朱里様が一矢報いられるのは封印の文字のみ。

 

「こちら志波雨流、志波朱里様の援護に入る!」

『志波朱里だ、感謝する』

「雄英生!言った通りだ、私は戦場に出る。字真墨様を身を張って守れ。将来“アレ”に対抗できる切り札だ、この国の未来を背負うも同義と覚悟しろ!

真墨!朱里様の邪魔立ては決してするな、お前はまだ学生で戦場に立てる身分じゃない!そして字の未来とこの国の切り札を担う身だ!朱里様が何を成し遂げるのか見届けろ!」

 

一息に叫んで、叔母は戦場に降り立っていった。魔王は叔母の演説を聞いていたのか、ぱちぱち、と余裕たっぷりに拍手をもって賞賛してみせる。

 

「成程、君たちが今代における志波の侍か。いやはや、長い付き合いだな」

「初代当主の時代からの悲願だ。魔王、今宵がお前の最後と知れ」

「ずいぶん自信があるようだ、その“封印の文字”」

「……待て、朱里!」

 

朱里様が、文字を書き始めた。叔母はベストジーニストを掴んで安全圏とも呼べないが遠くまで一旦下がる。

 

「……八百万君、ストップウォッチ出せる」

「は、はい」

 

封印の文字は書き始めてから書き終えるまでに数分かかる。その数分を使って、魔王はかっちゃんや敵連合のメンバーを呼び出して、ゆったりとした調子で死柄木に声をかけていた。

歯牙にも掛けないという意味では、最高のパフォーマンス。

そして、現着したオールマイトが殴りかかったその時に、文字が書き終わった。

 

「……!59.46秒、記録にある限りの最速か、これ」

 

手持ちのストップウォッチの時間は一分を切っていた。俺は略字でさえ3分を超えるというのに、朱里様は俺の書いた字より画数が多いにも関わらず、三分の一以下で文字を書き切っていた。朱里様は汗を流していて、この文字を発動すればそのまま意識を失うだろう。

しかし、命懸けで発動したその文字は、AFOを倒すには至らなかった。

 

「『脱皮』『身代わり』『ドッペルゲンガー』『影法師』『マリオネット』『蜃気楼』『しっぺ返し』……やれやれ、封印の文字から逃れるのにこれだけの“個性”を集めるのは苦労したよ」

 

……多分、苦労したというのは本当。しかし一度手に入れてしまえばノーリスクで封印の文字を回避できてしまう。

そして、魔王は封印の文字によって生まれる隙にオールマイトから受ける攻撃さえもオートカウンターで対抗していた。そのために、それだけの個性を組み合わせないといけなかった。

かたり、と朱里様の体が頽れる。瞬間、ベストジーニストの個性によって朱里様の体が端へと引き寄せられた。

 

「わざわざ時代錯誤な影武者を用意していたようだけど……残念だったね、彼はもう弔の友人となったようだ」

「…………」

「さあ、逃げるんだ弔。その子を連れて」

 

海賊と名乗った少年が、すっと此方を……否、俺の奥に視線を向けた。多分、俺の奥にいる雄英高校生に向けたものだ。

 

「……っ、轟君、氷でざっくりとでいい、あの戦場に続く道を作れるか?直前まででいいんだ。飯田君、切島君を背負ってその道の先端まで行ってくれ。切島君がかっちゃんを掴んだら、すぐにエンジンで戻ってきて欲しい。

どうやら海賊が、かっちゃんを返してくれるようだから」

「は、?」

「彼は、俺はともかく、皆んなには優しい人だよ」

 

多分、字の人間である俺はダメだ。林間合宿で向けられた敵意は、生半可なものではなかった。

 

「頼む」

 

深く、頭を下げた。

 

「……わかった、やってみる」

「お前のおかげでここに来れたんだしな」

「ありがとう」

 

海賊に攻撃されないよう、念のため遠く後ろまで下がる。轟君が氷の道を作って、飯田君が走り出した。

モニターは破壊されてるし、下がったので戦局は見えなかったが……やがて、切島君がかっちゃんの手を引いて帰ってきた。

 

「本当に、返してくれた……」

「クソが!!!帰れないじゃねえんだよ帰るんだよ!!!」

「おちつけ、かっちゃん。どうやって返してくれたんだ?」

「黒い鞭のようなもので身体を掴んで投げていたな」

「そっか」

「しかし、どうしてわかったんだ。彼が爆豪君を返してくれると」

 

飯田君の言葉に、かっちゃんがシンと静まりかえった。重たい空気が流れるので、代わって俺が言葉を続けた。

 

 

「何年経っても帰れない苦しみを分かってる人だから、かな」




オリキャラ設定


志波雨流:オリ主の叔母。ヒーロー免許は持ってるけど普段は別の仕事をしてる人。ヒロアカの女傑キャラらしく太ももがムチムチしている
本名は字水波。独身。

志波朱里:オリ主の大叔母。しかし雨流より歳下。ベストジーニストのサイドキックだが仕事は秘書的なものが多いらしい
本名は袴田朱里。旧姓は字だが、袴田維と結婚して今の苗字になった。
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