ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!?   作:サブレ.

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第十七話

仮免試験にあたって必殺技を作ろう!という課題が出たが、ぶっちゃけ俺もうクリアしてるんだよな。

ざっと思い浮かぶだけでも火炎の舞、烈火大斬刀大筒モード、身体能力底上げの(スーパー)化の三つを使えるし、これに封印の文字が加わる。

先生も俺に関しては「個性伸ばしとけ」で放任している始末。なんかごめんなさい。

入学前から必殺技の括りに入る動作を複数会得しているのは、ヒーローの大家出身者として得られる恩恵の一つだよなあ。

まあそんな感じなので、俺は校長とオールマイトに呼び出された。

 

 

「失礼します、字です」

「いらっしゃい」

「楽にしてくれたまえ」

「お言葉に甘えて」

 

ずず、とお茶を啜る。差し出された羊羹は御当主様がご贔屓にしている店のものだった。多分御当主様からの差し入れだな……。

 

「今日ここに呼び出したのは他でもない。『九代目OFA継承者』について君の意見を聞きたくてね」

「御当主様を通じて報告書という形で提出済みだと思いますが」

 

羊羹を一口、やっぱり美味しい。ここ数ヶ月で食べ慣れてしまった味だ。

 

「もちろんさ。僕が確認したいのはその先、どうしたら彼を保護できるか、だ」

「保護ですか。逮捕ではなく」

「推定九代目の緑谷出久君、自称『海賊』は幼少期に誘拐の被害に遭っている。加えて、ヴィランとしての活動も確認されていない。幸い、AFOは彼自身を、オールマイトの影武者だと認識しているようだしね」

「可能であれば、私の後継者として、共に戦ってほしいと、思っている」

「少なくとも、説得は俺には無理かと。彼は俺に対して敵愾心を抱いてる節がありますから」

 

何を言われるかではなく、誰に言われるか、という問題だ。少なくともこの点において、字家が彼の問題の根幹を担っている可能性が高い以上、保護や説得には俺じゃない方がいい。

 

「説得ならばそれこそ、かっちゃん……爆豪勝己が適任だと思います。彼は神野の事件で緑谷出久と言葉を交わしていますし」

「OFAの詳細を、彼とも共有したいのかな」

「校長にはお見通しですよね。そうです」

 

よし、幾つかの確認と条件の合意を経て、かっちゃんに対するOFAの情報開示許可が出た。あとは条件さえ達成すればいい。

こんな感じだろう、と挨拶を交わすと、今まで黙りがちだったオールマイトが口を開いた。

 

「君の、今後の展望はあるかな」

「空を飛ぶ必要性と、烈火大斬刀大筒モードの取り回しの悪さを痛感したばかりです。その二点の改善を目標に据えています」

「そうか。いや、君は家の縛りが特に大きいと思ってね。あまり、不自由に苦しんでいないといいと思ったんだけど」

「大丈夫です、オールマイト。ご心配ありがとうございます」

 

勘当される道を選んでない時点で、覚悟は決まってるからな。

 

+++++

 

後日。

仮免試験は、割愛。

いやだって、一部から「字家だから配慮されたんじゃねえの」「試験内容カンニングしたんだろ」「ヒーローの名家はいいねえ俺らとは違って」的なスピーチがあちらこちらから聞こえてきてな……殺気で黙らせたけど。

ステインが現代のヒーローに絶望した感覚がちょっとだけ理解できた。ちょっとだけ。

まあ周囲が代わりに怒ってくれたし、相澤先生も正式に苦情付けてくれたから俺から言うことは何もないけどね。

 

結果だけ言えば、かっちゃんと轟君が落ちてそれ以外は合格した。俺の二次試験の点数は86点で、まあまあ。ヴィラン役襲撃の際に咄嗟に指揮権を握って救助現場と戦闘現場を分断、救助の場面に被害が行かないように取り仕切ったことが評価されてた。

減点は「笑顔が怖い」「人形みたい」……悪かったな!ちゃんと笑顔だったろーが!

 

「俺の笑顔ってそんなに怖いか?」

 

ちょっと気になって飯田君に聞いてみた。轟君とかっちゃんは落ちたのでなんか話しかけづらいし。

 

「普段の笑顔は特に何も思わないが……たまに、ひどく作り物めいて見えることがある」

「まじか」

 

あーでも、確かに志波ヒーローズはキリッとした凛々しい顔つきが特徴って言われるか。笑い方も要研究しないとな。

騒ぎの中心からちょっと離れた場所でとりあえず仮免許の写真を撮って御当主様につながるメールアドレスに送信。そのままカチカチ妹とチャットで話していたら、名前を呼ばれた。

 

「字」

「相澤先生!」

「あー……本家の仕事も増えるだろうが、お前はまだ学生だ。無理だと思ったら俺じゃなくてもいい、誰か先生に相談しろ」

「はい、ありがとうございます!」

 

……うん、いい先生だなあ。相澤先生が担任で、雄英高校に入って本当に良かった。

そして、本格的に次期当主の仕事は増えていくだろうな。

 

「今日は直接寮に戻らないと聞いたが、何か理由があるのか」

「朱里様のお見舞いに。それからはか、ベストジーニストに預けている獅子折神にモヂカラを充填してから戻る予定なので別行動となります。送り迎えは、志波雨流が」

「そこまで送っていく。A組は一度ギャングオルカに預ける」

「わかりました」

 

パンジーは折神なのでモヂカラで動くが、朱里様の意識が未だ戻られない今、火のモヂカラを充電できるのは御当主様か俺しかいない。

父の従兄にあたる人に一応火のモヂカラ使いのヒーローはいるんだけど、あの人孤島に赴任してるからなあ。

試験会場から少し離れた場所で、叔母が車で待っていた。軽く挨拶をして、助手席へと乗り込む。

 

「真墨様、仮免取得、誠におめでとう御座います」

「……おばさーん。俺真墨だよ。甥っ子だよ。いらないよそんな敬語」

「しかしながら、貴方様は次期当主にして三代目志波烈堂。私たちを取りまとめる者として、威厳と線引きは必要です。要するに、慣れなさい!」

「はーい……」

 

字家のボンボンがって陰口叩かれた後にこの扱いかあ……。

はーほんと、字家当主とか三代目志波烈堂とか、貧乏籤にも程がある。相澤先生の優しさが無かったらやさぐれていたところだ。

この後ベストジーニストこと袴田維にも会いに行ったら、俺の前だからと気丈に振る舞っていたけど明らかに憔悴していた。

でしょうね。

朱里様は顔色が悪く、いつお目覚めになるのか、お目覚めにならず一生植物状態なのか、その場合お腹の子はどうなるのか、医者でも先行きは読めないとのことだった。

獅子折神のパンジーも心なしか元気がない、ように見える。

 

「パンジーさん。ベストジーニストのことを助けてあげるんだよ」

 

俺の獅子折神のエージと一緒にわちゃわちゃしているのを見て、夫婦としての日々を思い出したのか、袴田維殿が若干涙ぐんでいた。

それでも俺を前途ある若者として最後まで扱ってくれたので、本当にすごい大人の人だと思う。

 

 

「ただいまー」

「お帰り!」

「遅かったな、飯みんなで待ってたんだぞ!」

「いやー、これで明日から普通の授業だよ!」

「一生忘れられない夏休みになったな……」

「皆!字君は疲れているんだ!」

 

わちゃわちゃと俺の周りにクラスメイトが集まってくる。いつも通りの光景に、目頭が熱くなる。

 

「うわ!字が泣いてる!」

「どうしたんだ!」

「とりあえずタオル使う?ソファー座ろ?」

 

おたおたと周囲が慌てながらも、俺にタオルが渡された。手にしたタオルを顔に押し付けて、なんでもない、と首を振る。

 

「俺、A組とイレイザーヘッドとベストジーニスト一生好き」

「まじで何があった!?」

「やっぱり仮免試験の陰口いやだったのかしら」

「私たちで相澤先生と一緒に注意するから!ね、泣かないで!」

 

結構な騒ぎになった。

でも、ちょっと嬉しかったのは内緒だ。

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