ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!?   作:サブレ.

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時間が空いたので少しだけ書きました
次回投稿は未定


第二十三話

将来の専属執事・天使との顔合わせを後日に控えて退院して、寮に帰ってきた。うわあん、A組の優しさが身に染みる。

轟君やかっちゃんはここ数日、補講に精を出しているのでこのまま頑張ってください。

 

「字、執事付くって?」

「噂がはやぁい……うん、今本邸に人定書類の送付お願いしたとこ……もしかしたらA組も会うかもしれない……」

「ガトーショコラ食べるか?」

「ハーブティーをお淹れしますわ」

「ありがと……」

 

ソファに倒れ込みながら流れ作業で打っていたメールも送信済み。

最近は俺の実家エピソードが飛び出しても盛り上がることは減ってきて、逆に労われたり心配されたり、と言ったことが増えてきた。仮免試験の日に泣いたことが影響してるらしい。

 

申し訳ない。でもしんどいんだよー。

 

執事が付くってことは、改めてしんどい仕事の引き継ぎとかも増えてくんだろうし、というかもう始まってるし。

 

なんというか、雄英高校合格前の自分がどれだけ浅はかだったか叩きつけられた気分だ。

 

退学なんて選択肢はとっくに断たれた。レールを嫌々歩くか覚悟を決めて突っ走るかの二択しか残されていない。

推定九代目OFA継承者緑谷出久・自称海賊との接触、敵連合の動き、その他諸々。

思考しなければならない事柄が減ったのは良いことだけど。

 

「インターンも見合わせ入ったしなあ」

「みたいだね⭐︎」

「うわ、びっくりした」

 

ぼんやりしてたら青山君が俺の顔を覗き込んでいた。でもそろそろソファの占拠をやめねば。

腹筋の力を借りて上体を起こすと、八百万君がマグカップを差し出してくれた。

美味しい……。

 

「八百万君、最高だな君の腕は……」

「光栄ですわ」

「砂藤君の腕も、素晴らしいな……」

「ありがとな!」

 

英気を養った。貰ってばかりだし、今度、御当主様ご贔屓の羊羹でも差し入れようかな……あれめちゃくちゃ美味いんだよ。

 

+++++

 

真夜中。

コンコン、窓ガラスをノックする音で目が覚めた。ベランダにはチーズで『お話ししたいな⭐︎』と書いてある。……何故にチーズ。

拾って食べてみたら美味しいけど、ちょっと癖と塩気がある。サンドイッチに挟んだら美味しそう。

 

 

翌日。

 

「青山君、チーズありがとう」

「サプライズ!喜んでくれて何よりさ!」

「チーズ?」

「お礼と言っちゃなんだけど、はい。個人的なお気に入りなんだ」

 

お礼として売店で売ってたサンドイッチを手渡す。お気に入りなのは本当。その時にこっそり仕込んでおいた今日の密談の時間と場所を指定したメモに、青山君は気づいたらしい。

 

「一日くらいなら味も変わらないからさ。部屋で軽食にでもしてくれよな」

「メルシィ!」

 

暗に部屋で読んでくれ、と言ったら伝わったようだ。パチン、とウインクを返された。こういうところかなり聡いよな、青山君。原作で内通者こなしただけあるわ。

かっちゃん、じーっと見てるけど見ないで。密談の約束してやがる……って見破らないで。

 

 

約束の時間、約束の場所で。

少し早めに来たはずなんだけど、青山君はすでに待っていた。もう夏は過ぎて夜は肌寒さを感じる季節だ。

 

「ごめんな、待たせたようだ」

「僕か早めに来ただけさ」

 

場所は、雄英高校敷地内のとあるベンチのある休憩所のような場所。別に俺と青山君が一緒にお話ししていること自体は把握されても良い。ここから先は会話内容が盗聴されないこと、記録されないことを念頭においたものになる。

 

「お互い風邪をひかないように単刀直入にいこう。聞きたいことってなんだ?」

「君の執事ってどんな人⭐︎」

「名前は七村十蔵。年齢は20。性別は男。誕生日は3月30日。個性は浮揚。ヒーロー名は天使。

とある私立高校ヒーロー科に進学してヒーロー免許を取得。卒業後にオランダにある執事養成学校の二ヶ月コースを受講。現在は字家直下の予備ヒーロー団体“ナナシ”に登録され、字家の執事として働いている人」

 

なるべく一息に、必要な事項を、端的に述べる。一応補足説明を入れたけど、前半の情報だけで青山君の求めている情報にはなったはずだ。

 

「だから」

 

念のため、ダメ押し。

 

「青山君のご両親ではないよ」

 

青山君の顔を正面から見据える。いつものポーカーフェイス。視線が少しだけ下を向いて、小さく自嘲気味の笑みが漏れた。

 

「……そっか」

「正直なところ……俺も知らないんだ。青山君のご両親が今どうしているか」

 

入学前、俺が青山君の動きについて御当主様に報告というか丸投げしたことがあった。その結果がこれだ。

青山家はAFOと直接的な繋がりがあった両親が“事故死”しており、青山君は表向き、遺産を相続した天涯孤独ということになっている。

正確には、青山夫妻は名前も仕事も生年月日も変えて、息子との繋がりを断って、何処かで生きてるはずだけど。

 

「……俺が浅はかだったよ。字家の力のことなんて何も考えず」

「ノン!」

 

謝ろうとした俺の口にチーズが突っ込まれた。昨日のチーズとはまた違う味だ。チーズ好きなんだな……。

至近距離から、青山君がキラキラの目で覗き込んでくる。

 

「君が気づいてなかったら、僕たちはあのまま支配を受けていたよ」

「だからと言って、家族を引き裂く結果を誇って良いはずないだろう」

「それでも。生きていれば先があるさ。僕は必ずヒーローになって、パパンとママンを守れるようになって、迎えに行く」

 

その瞳に、俺に……字家に対する怒りや憎悪といった負の感情は浮かんでいなかった。

 

「僕たちのヒーローが、そんなことを言わないで。君のおかげで、僕は皆と対等になることができたのさ」

「……そうか。それなら、尚更、謝らないといけないな」

 

改めて、青山君に向き合う。

林間合宿の時にあった出来事で流れていたが、これ以上有耶無耶にするのもいただけない。

 

「入学以来、君のことを疑い続けていたことを心より謝罪します……申し訳ない」

 

九十度、しっかりと腰を折って頭を下げた。

他ならぬ字家が疑っていたとか許されるようなことでもないけれど。

 

「君から見て、僕はヒーローになれそうかい?」

「ああ、もちろん」

 

俺より、余程。

 

 

翌日、青山君がフィナンシェくれた。美味しかった。洋菓子ちょっと拘ってみようかな。

と、そんなことを溢したら青山君が食いついてきたので、砂藤君も誘って、今度一緒に三人で洋菓子店に行く約束をした。

 

「パパンとママンが好きなお店だったんだけど、僕一人になってからは足が遠のいていてね」

「……早く会えるように頑張るからな」

 

最低でもAFOの個性を封印して……ん?

タルタロスに収監されている今、絶好の封印チャンスじゃん。なのになんで封印の文字の使用許可が降りないんだ。

政治的配慮か?次会う時に聞いてみるか。

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