ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!? 作:サブレ.
「たっだいまー」
「おかえり」
「字、ゴトウシュサマどうだった?」
「次のNo. 1エンデヴァーだってさ」
「ちょっとお!?」
「ネタバレするなよ!!!」
「いやでも、過去のランキングを見ればエンデヴァーが一位なのは順当ではないか?」
「それでもさあ!情緒とか大事じゃん!」
「大丈夫!一番大事なネタバレはしてないから!」
「これ以上の展開があるのかよ!」
そんな会話をしつつ、一度部屋に戻って着替える。パソコンを立ち上げて、遅くなったがナイトアイに対する質問事項をざっと確認、テン君に送信。誤字脱字のチェックを終えたらそのままナイトアイに送ってくれるはずだ。
次にスケジュールの確認。明日の夕方あたりに警視総監がお忍びで会いに来る……雄英高校の応接室借りてるあたりお忍びでもなんでもないと思うけど、まあそんな感じ。
そしてその前に、昼頃に校長との面談……というか会談?が入ってる。
「絶対校長と警察が方針の対立起こしてるやつじゃん!!!」
雄英高校に在籍してるのは俺だから、という理由で、最終決定権が御当主様から俺に移譲されてるのだ。
そう、雄英高校文化祭。昨今の情勢を踏まえた上で、文化祭を開催するか否か。字家傘下の予備ヒーローや準ヒーローは間違いなく警備に動員するし、モヂカラを活用した結界なんかも、維持はちょっと大変だけど、作ることができたりする。
つまり字家が文化祭を支持するかしないかが、文化祭の開催にめちゃくちゃ影響するのだ。
で、その字家の最終決定権持ってるの、俺。
「うああああ……いや、文化祭は支持するよ、するけどさあ、」
俺に原作知識無かったら反対派回ってもおかしくなかったというか……綱渡りだなあ!!!
あ、そうだ。どうせなら我儘使ってみるか。
校長と警察からプレゼンを受けた結果、字家は文化祭を支持しました。というわけで文化祭開催決定!
相澤先生からの「文化祭があります」で大盛り上がりする中、俺は力が抜けて机にへたりこんて、青山君にチーズをお裾分けしてもらった。ありがとね……。
ちなみにこの後、俺は予備ヒーローと準ヒーローの動員の調整が待っているのである。
予備ヒーロー団体“ナナシ”と、準ヒーロー団体“クロコ”、二つの傘下のヒーロー団体を扱えるって、やっぱり字家どこかおかしいよ。
「いいんですか!?このご時世にお気楽じゃ!?」
「切島……変わっちまったな」
「でもそーだろ敵隆盛のこの時代に!」
「だからだよ。何もかも自粛したら不満が溜まって処理が大変なことになる。調整できるところはしてるけど、“いつもと同じ”ができるって大事なことだからさ」
「字の言うとおりだ。それに、体育祭がヒーロー科の晴れ舞台だとしたら、文化祭は他科が主役」
相澤先生の補足説明もあり、切島君は納得したようだった。この後出し物について話し合いが行われたが、俺は警備しやすいものだったらなんでもいいかな……みたいな感じ。
……あーそうだ、我儘の調整も待ってるんだった。なぜ好き好んで仕事増やしたのか俺よ。
放課後。
「もしもし……あ、テン君?ちょっとやって欲しい交渉があってさ。うん、当人には俺から説明するから、テン君は病院と主治医に……そう、俺の名前出して」
ちなみにその際、生徒に任せていい業務じゃねえだろ!と叫んだら、校長と警視総監にめちゃくちゃ慰められた。ありがとうございます。
そして上記の電話を終えたら、もうすでにA組の出し物の話し合いがほぼ終わってた。
「字、俺たちの出し物の候補決まったけどなんか意見あるか?」
「へえ……面白そうだな。俺は反対意見なし、大賛成!ただ、裏方だと嬉しい」
「字の個性だとそっちの方がいいかもな」
ワイワイガヤガヤ。
盛り上がる中、いつも通り肩に乗せていたエージも参加させようよ!ってなったけど丁重にお断りした。
「エージは文化祭当日、先約があるからな」
「それは大事だな!」
「そういえば洸汰君とも仲良くしてたよね」
「エリちゃんにもあげてたっけ」
「子供受けがいいんだな、エージ」
「だってエージ可愛いじゃん」
エージが女子組と戯れ始めたので、そのまま遊ばせながら飯田君轟君に話を聞く。
話し合いに参加できなかったけど、内容把握してないのはA組としてまずいでしょう。
+++++
少し後、通形先輩と一緒にエリちゃんのお見舞いにやってきた。
補習のときに聞いていたが、エリちゃんが口に出した要望が多少厄介なもの……すなわち、「海賊さんに会いたい」という旨だったことに起因する。
海賊と直接そして比較的長時間接触していた遠形先輩と、海賊を探知・追跡している俺に白羽の矢が立ったというわけだ。
「こんにちは、エリちゃん」
導入のお喋りは先輩にとりあえずお任せして、俺はリンゴを剥く。刃物の使い方はこれでも上手い方なのだ、任せろ。
リンゴを齧ってひと段落。エリちゃんは正座していた。ちんまりしている。
「あのね、私と海賊さんを守ってくれたお礼を言いたかったの。でも、名前が分からなかったの」
「俺はヒーロー名を志波烈堂、戸籍の名前を字真墨。好きな呼び方をどうぞ」
「えっと……レッドさん?」
「うん、それでいいよ。そしてこちらが、獅子折神のエージ」
「エージ!」
エリちゃんの目が輝いた。獅子折神、やはり子供に大人気だなあとなんかほのぼのしてしまう。エージを渡すと、エリちゃんは膝の上に乗せた。
俺よりエージが人気とか、言ってはいけない。交流期間はエージの方が長いしな!
「ルミリオンさん。レッドさん。海賊さんがどこにいるか知ってますか」
「海賊に、会いたいかな」
「助けてくれたんです。お礼を言いたくて」
「ごめんな。俺も、海賊が今どこにいるか分からない」
「そうなんですか?」
「うん。海賊を探すのが一番得意なのがエージだ。俺も会ってみたい、もう一度」
「そうだね!また会えたら、俺も一緒に、三人でありがとうって言おう!」
通形先輩の的確なまとめ。しかし、エリちゃんはやっぱり困ったような、悲しいような顔をしている。
「海賊さんもね、悲しいお顔をしてたの」
「うん」
「帰るお家がないって、私と一緒だねって言ってたの。そうなの?」
「それは違うな。海賊はそう思い込んでるだけ
なんだ。帰る場所はずっと同じ場所にある」
それはすでに、かっちゃんと確認済みだ。あの後も何度か手紙でやり取りをしていて、息子が生きているなら受け入れる覚悟もあると、引子さんからきちんと聞いている。
「それに、海賊も君を助けたくて頑張ったんだ。だから君が楽しいって思えたのなら、海賊もきっと笑顔になれるよ」
「彼の言うとおりさ、気楽にいこう!皆、君の笑顔が見たくて戦ったんだよ!」
「ごめんなさい……笑顔ってどうやればいいのか」
ま、だろうな。
だから、次のカードを切る。
「相澤先生、よろしいですか?」
「ああ……ったく、どこまで読んでんだ」
「あはは」
「なにか考えがあるのかな!?」
「はい。エリちゃん。もうすぐ雄英高校で文化祭があってね。もしよければ、来ない?」
「!エリちゃん、これは名案だよ!」
通形先輩がテンション高めに文化祭について解説するので、エリちゃんもかなり乗り気になったようだ。
ちなみに、例のプレゼン時間に、文化祭を後押しする条件として緑谷引子とエリちゃんの二名の文化祭参加を取り付けた形だ。いやー、校長と駆け引きするの大変だった。
とても。
通形先輩がいったん落ち着いたのを確認してから、改めて少しだけ顔を近づけた。
「エリちゃん。実はね、海賊のお母さんを招待したんだ」
「……!」
「海賊のお母さんはね、小さい頃に海賊と離れ離れになってしまった」
思い出しても腹が立つ、字の名前を騙った大馬鹿者のせいでな。
「だからね、大きくなった……エリちゃんが会った海賊のお話を、その人にしてあげて欲しいんだ。これは、俺からのただのお願いなんだけど」
いいかな、と小さく首を傾げる。
悪い返事は来ないだろうと言う確信がある。
現に、エリちゃんは頷いた。
予備ヒーロー団体/ナナシ
ヒーロー免許を取得しているが、普段はヒーロー活動を行わず別の仕事で生計を立て、非常時のみ召集・活動するヒーローの団体。字家の傘下であり、普段の訓練も字家の施設を使って行っている
準ヒーロー団体/クロコ
一週間に1〜2日程度、もしくは決まった季節のみ、副業としてヒーロー活動を行っているヒーローの団体。字家の所有する企業に勤めている者が多く、勤務日数などの調整も行っている