ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!?   作:サブレ.

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第二十七話

文化祭当日!

 

「ロープ劣化してるしちょっと買い出ししてくる」

「時間間に合いそうか?」

「近くのホームセンター8時からだから急げば間に合うかな」

「執事さんに買って来てもらえば?」

「テン君は別件のお仕事。文化祭のお客様の送迎しなきゃならないんだよ」

「それは大事だな」

 

さて、口実はおっけー。

朝一番で学生証を片手にお出かけ。ロープを買った帰り際に少し歩くと、パーカーを着た40代の男性がこちらに気づいて手を振った。

父さんだ。変わらないな。

 

「やあ、久しぶり」

「父さん。……うわ、酒臭い。飲んだの?」

「飲んでた方がそれっぽいし〜」

「ガチだ……」

「飲んでどれくらい戦えるか気になるじゃん?」

「わー、戦闘民族め」

 

そんな軽口を叩きながら、集音器を持たせてエージを軽く飛ばせていると、ジェントルとラブラバの二人組を発見した。

この二人が雄英高校に潜入したら、文化祭は中止になる。それを止めなければ。

生徒であると同時に、警備に携わった身でもあるからな。

 

「じゃあ、行ってくるね」

「父さん。俺と父さんは」

「会ってない、だろ?分かってるさ」

 

父親がモヂカラで刀を実体化させた。

ここから巻き起こるのはあくまで雄英高校は何一つとして関係のない小事件。朝まで飲んでいた酔っ払いと、迷惑系YouTuberがたまたま雄英高校のそばで揉め事を起こしたという、それだけの出来事。

 

「ヒーロー免許が足枷になることってあるんだね。あとは任せろ、若様……我が息子」

 

そうして俺に背を向けていなくなった数十秒後。何やら個性を使いあった大喧嘩を遠目に見て、俺は迷いなく携帯電話を取り出すと110を押した。

 

「もしもし警察ですか?酔っ払いと迷惑系YouTuberが個性を使って喧嘩してます」

 

電話を切って気づいた。

父親、アリバイ作るために、マジで朝まで夜通し飲んでるな?

 

+++++

 

「ただいまー」

「おかえり、遅かったな」

「あ、ギリギリだった?ごめん、ちょっと出先で迷惑系YouTuberと酔っ払いが喧嘩してるのに出くわして、警察呼んで仲裁手伝ってたから遅くなった」

「うわ、災難だったな」

 

警察と一緒に父親とジェントル押さえ込んだあと、親子関係が当然ばれて、父親がめちゃくちゃ怒られてたのは流石に申し訳なかった。

ごめんなさい警察の人、一連の事態の黒幕は俺なんだ。

ただ、今回の事件はあくまで“全く無関係の揉め事の収束に雄英高校生が協力した”というもの。応援としてエクトプラズムが即座に駆けつけたこと、即座に警察に通報していたこともあり、軽く嗜められる程度で終了した。

文化祭は中止にはならなかった。よし。

 

「そういや、今日は御当主様来るの?」

「今ちょっと多忙極めてるから大叔父が名代で来るハズ」

 

大叔父、苦手なんだよな。あの人鶏口となるも牛後となるなかれを突き進む人というか、誰かの下になりたくない一番上がいいというか、そんな感じの人だから。

能力的に優れてるのは御当主様に教えられなくても分かるんだけどな……なにせ一から元プロヒーローの会を作って成長させた人だから。根っからの社長気質というか。

だから当主になれなかった訳だけど。

 

「ま、景気の悪い話はこれくらいでおしまい!あとどっか手伝うところあるか?」

「大丈夫!ロープこっちに持って来て!」

「了解!」

 

 

結論から言おう。ステージは大成功だった。俺も直接見た訳じゃないけど、大盛り上がりで大満足!

そしてそのあと、エリちゃん引子さんにご挨拶をする。エリちゃんは通形先輩と、引子さんはテン君と一緒に文化祭を回っているので順番に。

 

「ご無沙汰しております、緑谷引子さん。楽しんでいただけましたか?」

「はい、とても。……こんなに、騒がしいのは久しぶりで」

「お疲れでしょう。一度、座りましょうか」

 

テン君とアイコンタクトを取って、座れるスペースでジュースを手渡す。涼しくなって来た時期だから熱中症に気を配る必要はないけど、気疲れはどんなタイミングで来るか分からないしな。

 

「あなたも、出久と同い年なんでしょう?」

「ええ、そうですね。4月で16になりました」

「出久も、大きく育ったのかな」

「……はい、そうです。俺と同じくらいでした。きっと、喧嘩したら負けます」

 

というか一回負けたしな。林間合宿の時に。OFAのあの出力に勝つのは至難の業だと思う。

 

「あの子は、ずっと、ヒーローになりたがっていたんです。……無個性だから、諦めた方がいいと、無個性だから、誘拐されたんじゃないかって……」

「詳しいことは、未だわかりませんが……彼はエリちゃんのヒーローでした。間違いなく。

字家次期当主、字真墨の名において、断言します」

 

概念的な意味合いでは、俺より遥かにヒーローしてたなあと思う。それと同時に帰る場所を見失った子供でもあるから、見つけて手を引かなければならないのだけれど。

 

「出久が元気だって分かって……あの子が助けた子供がいて、出久がヒーローになれたのが分かって……」

 

ボロボロと、引子さんが再び泣き出す。落ち着くまで、一緒にいた。

 

+++++

 

このあと、引子さんは体力が限界になったので先にテン君と一緒に帰った。そのあと合流したエリちゃんも楽しかったようで何よりです。

そして大叔父にネチネチ言われること30分。話が長えんだよ。

 

「馬鹿な父親を持って苦労するなあ、息子」

「ご心配には及びませんとも」

「なぁに、馬鹿な父親を見限りたければ言うがいい」

「必要ありません。俺は未来永劫、父と母の息子ですから」

 

人の父親を馬鹿馬鹿言ってんじゃねー!中指立ててやろうか!?

そんな父親、名前こそ伏せられてるけどネットニュースに乗ってた。雄英高校生もお願いした通りに匿名になってた。

親子であることは公表されててそこそこのコメントが付いてた。あーあ。

そして、大叔父やら父やら対応しまくってたら残り時間が一時間切ってた。自由時間だいぶ削れたなあ。ま、しゃーないか。こんだけ余ってる分運が良かった。

しかしなあ、一人で一時間弱回るといってもなあ……と悩んでたら、後ろから声をかけられた。

 

「字君!用事は終わったか!?」

「回ろうぜ。まだ時間あるし」

「……いいのか?」

「もちろんだ!」

「ありがとう!」

 

飯田君と轟君が来てくれた。このあと頑張って出店を回って、フランクフルトとジュースとクレープをお腹に詰め込んだ。引子さんとエリちゃんに軽く付き合った程度で昼飯ほぼ抜きだったからなあ…胃袋に染み渡る美味さだ。

大叔父の長ったらしい話さえ無ければランチラッシュの昼ごはん食べられたのにくそう。

 

+++++

 

翌々日。

父親からメールが届いた。

 

『病院クビになったよ〜』

 

俺が仕組んだこととはいえ、呑気すぎるメールのあまりに呆れそうになった。退職金出てないだろ、いや生前分与の資産かなりあるし倹しく暮らすなら普通に足りるんだろうけど。

母親からのメールは、ちょっとしばらく大変そうです、というものだった。無理はしないでほしいものだ。

妹からはなんでギター弾かなかったの?というメールだった。うるせえやい好きにさせろ。

 

 

そのさらに十日後。

父親からメールが届いた。

 

『再就職先決まったよ〜。単身赴任です!』

 

 

住所は関西。

再就職先の名前を蛇腔病院。

理事長の名前を、殻木球大。

 

 

「───釣り糸には引っかかったか」

 

モヂカラ自体、個性の中では少々特殊寄りだ。加えて封印の文字について、魔王は極めて興味を寄せている。

なにせ自分を倒しうる力なのだから。その手がかりは近くに置いて、可能ならば研究したいのだろう。

手を出すかどうかは賭けだったが、第一段階は突破したと見ていいだろうか。

 

さて。

鬼が出るか、蛇が出るか、魔王が出るか。

賽は投げられた。

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