ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!?   作:サブレ.

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第二十九話

俺にとっちゃ穏当な波乱でもなかなか疲れるんだから、寝耳に水の人たちの混乱具合と言ったらもう大変だった。新聞は二日連続で号外出すしワイドショーはビルボードチャート一択だしSNSも常時トレンド入りしてるし。

でもまあ、号外とワイドショーで呑気に騒げる程度に世の中が落ち着いてるタイミングで公にできて良かったと言うべきだろうな。

雄英高校はセキュリティと全寮制のおかげで呑気に爆睡できたのは良かった。

 

「やあ、お疲れ様⭐︎チーズあげる」

「どうもありがとう。なかなかに疲れたよ……」

 

本日は休日である。朝鍛錬後に二度寝して寝過ごした後、青山君からチーズをもらい齧りながらSNSをざっとチェックする。

わー、エンデヴァーファンとアンチが大喧嘩してる。地獄だ。本人が燃える系の個性だからって、なにもSNSまで燃えなくても良いと思う。と、この炎上事態を招き入れた側の人間として無責任に思う。

宿題にかかる時間をざっくりと見積りつつ、大まかなスケジュールを頭の中で組んだ。

 

「彼はどうなるのかな」

「御当主様にこき使われるのは確定してるな」

 

えーと……あ、父親単身赴任始まったみたいだ。切実に、本当に気をつけて、脳無とか殻木とかマスターピースの情報これでもかと持ち帰って欲しいものだ。頼むぜ父よ。

さて、次はインターンの時期だな。一年で仮免取得でさえ例外対応だというのに加えてインターンで現場の経験を積めとは、学徒動員しますと言ってるみたいなものじゃないか。

でも反対する理屈がないのである。かなしいなあ。

 

+++++

 

ま、今はまだそんな話にはなってない。とりあえずホークスに接触、潜入任務がどの程度か探っておかねばなるまい。

No.1のエンデヴァーが表彰されなかった以上、実質的なNo.1はホークスであるため、字家次期当主が挨拶に向かってもおかしくないのが幸いだ。

 

 

「三代目志波烈堂、字真墨です」

 

アポはとってるので朝イチで新幹線に乗って博多にやって来た。ここかー、ツクヨミが職場体験とかしてるところ。

ちなみに、ここにはエンデヴァーも来ている。俺との一対一の会談が終わったら、エンデヴァーも含めて三人で会食予定なのだ。

 

「いやあ、お疲れ様。遠かったでしょう」

「移動の間、宿題も仮眠も好きにできますから」

「へえ、ちゃんと学生やってるんだね」

「ちゃんと学生ですよ?俺は」

 

ビルボードチャートの挨拶の時より心持ち柔らかめの対応……あーそっか。ずっと公安預かりだからマトモな学生生活がピンと来てなくて、俺が字の仕事出ずっぱりなことも含めて自分と同類カウントしてるのか。

まあ確かに十代にやらせることじゃない諸々をこなしてるって点ではホークスも俺も同じか。

 

「エンデヴァーは現在、実質的な字家の預かりだって聞いたけど?字家傘下のヒーロー団体のうち、どこに入りそう?」

「No.1は事務所こそ無期限閉鎖ですが、免許剥奪も引退もしていません。字家傘下の正ヒーロー団体(シノビ)にも所属していませんよ。サイドキックも、預かりは志波雨流ですし」

「何か最近、別件で動いてるみたいだけど?」

「不届きものがいた、それだけの話です。字が落とし前をつけます。ホークスに関しては、今の所はお変わりないようですが?」

「今の所はね」

 

否定されてはいない。つまりまだ潜入前、しかし任務の兆候は感じ取っている。

というあたりか。ま、公安今死ぬほどバタついてるから仕方ないか。主に御当主様が引っ掻き回してるけど、潜入任務に影響は出さないだろう。その辺の手腕は強い。

 

「目良さんが死にかけてたけど、あとどれくらいで終わりそう?」

「そこそこかかりますよ。なにせ徹底的にチューンナップされていた鼠であったもので。業務に支障は出しません、ご安心を」

 

要するに、公安委員会に忍び込んでた魔王のお友達の排除中なのだ。せっかく魔王が捕まってるのにやけに封印の文字の使用許可が降りないなと思って探りを入れたら発覚した。

いやー、怒り狂ってたな御当主様。それでも秩序を是とする者として、凡雑な手続きを無視して封印敢行するわけにいかず、キレながらお掃除中というわけだ。

多分ここまで魔王が仕組んでたということは、あの複合個性のガッチガチの対策さえ潜り抜ければ、封印の文字そのものは効くんだろうな。工夫必須だけど。全く、魔王を名乗るなら大人しく封印されとけよ。

その後も諸々喋り通していたら時間になったので、パトロール兼ねて徒歩で目的のお店まで。

 

「いやー、目立ちますね。No.1とNo.2の組み合わせって」

「お前だけでも秘書に送って貰えば良かっただろうに」

「流石に一学生仮免の身でそれは……あと秘書じゃなくて執事です」

「何が違うのか分かります?」

「知らん」

 

すげーヒソヒソされる。その過程でホークスがサクッとヴィラン退治してるのは流石だな。

ここにいるのぱっと見どんな組み合わせだ?ってなる三人なんだけど、No.1とNo.2と字家次期当主という肩書きだとバランス取れてるの本当に嫌だ。せめて学生終えてから次期当主なりたかったよ。

同じことこなしてた朱里様やっぱすげえな。

 

+++++

 

「改人脳無についてですか」

「どの程度把握している?」

「ぼちぼちです。USJ襲撃までは字家が情報に関しては一歩リードしてましたが、情報がある程度知れ渡った今となっては、あなた方とそう変わらない。全国で脳無の目撃情報があることと、それが意図的に流された噂である可能性が高い。それだけです」

 

焼き鳥の肉を箸で串から外す。俺は直接齧るより箸使いたい派なのだ。

食べ盛り高校生なのでホークスもたんとお食べと色々注文してくれたのでお言葉に甘えている。その対価がNo.1とNo.2からの質問というか半尋問なわけだが。

 

「何も手を打ってないってことはないでしょ?」

「無論です。こちらが怪しいと踏んだ施設に独自に一族の人間を潜り込ませました。現在情報を集めていますが、結果が出るには多少時間がかかるかと」

 

そういうホークスは何を掴んでいるのか。目線で問いかける間もなく、ホークスは語り出した。さすが早すぎる男、話が早い。

 

「さっき、異能解放万歳!って叫んでた人がいたでしょ?」

「いましたね。異能解放の単語で連想するのはデストロの異能解放軍ですが」

「最近、自伝が再出版されてけっこー売れてるんだよね。字家は何か掴んでる?」

「いいえそこまでは。しかしホークスがそう言うのなら、裏どりした方が良さそうですね?」

「いやあ、字家にコネクションあると便利だ」

「まあ、ヒーローにとっての便利屋ならばこちらとしても望むところです、引き受けます」

 

再出版を働きかけた人間はおそらくリ・デストロだろう。オールマイト全盛期ならせいぜい本屋の片隅で埋もれる程度の本だ。オールマイト不在が確定したビルボードチャート発表に合わせて、マーケティングに力を注いだ可能性はある。

この情報社会、うまくやらねば昔のヴィランの自伝程度、埋もれて終わりだ。体力のあるバックアップの一つや二つ、ついててもおかしくはないしな。

 

「本当は、No.1のプロデュースをしたかったんですよ?俺」

「どう足掻いてもエンデヴァーの過去は消えないので、ホークスに現在をバックアップしていただければそれで十分、というのが字家の方針です。過去については、そこはもう年長者と当事者の領分なので、ヒーローが触れる部分残ってなくないですか?」

 

昔はともかく、平和を知らない純粋な被害児童の轟夏雄と轟焦凍は家庭の外に救世主(ヒーロー)を見つけてしまっているんだよな。もう既に職業ヒーローができることと言ったら荼毘関連くらいしかない。

 

「ヒーローは間に合わなかった。遅すぎたんですよ、と。轟焦凍の一友人として若造が一方的に申し立ててみます」

 

エンデヴァーは横で目を逸らしている。おいこら目を逸らすな。そうやって現実から目を逸らし続けたから轟燈矢が荼毘化したんだろうが。

年上かつ同級生の父親だからといってそこは容赦しない。つーか末息子と同い年の子供に尻拭いの一端担わせた点で俺は擁護する気はさらさらない。

その辺は御当主様にぶん投げるか。俺もホークスも若すぎてその辺マジで適性なさすぎる。

ホークスも、エンデヴァーの虐待については思うところあるみたいだし、傷口は広げないようにしよう。

 

「……俺が言えたことでもないが、No.1を不在にして、字家はどのようなヒーロー社会を望んでいるんだ」

「代替が効く社会ですね。個々を尊重するのは大切だと思いますが、オールマイトのように代替が効かない象徴は得てして世代交代の失敗を招く。字家もまた代替の存在があって然るべきかと」

 

つーか時代錯誤オブ時代錯誤を突き進む本質が指定敵団体寄りの一族なんざヒーローの大家やってていい存在じゃないんだよなあと引き継ぎしながらしみじみ思う。

あと、代わりが効くって字家の中だとかなり重要視されるのだ。代わりが効かない方が問題視される。

つまり御当主様、ある意味結構な問題児。俺がいたから良かったものの。

 

「へえ。将来の展望とかあるの?」

「……ここで言うことではないでしょう。これから一年を乗り越えられるかも疑問視しているというに」

 

マジで、ここで、言うことじゃない。俺の将来の展望。

つーか展望こそこの場の二人が言うべきだろうに。

 

「俺こそ、お二方にお聞きしたい。現No.1と実質的なNo.1は、この時勢をどう見ておいでで?」

 

しかし、俺の問いかけに二人は答えなかった。

窓の向こう側から飛来する一つの影。見覚えのある初めて見る個体…………脳無。

しかし脳無は、窓ガラスに激突する前に何かに弾き飛ばされた。次いで視界に入るのは、機械仕掛けのアイテムを見にまとった俺の部下。

 

「テン君!」

 

ヒーロー天使が、空を浮遊して脳無と対峙した。

 

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