ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!? 作:サブレ.
入学式翌日からは普通に授業があった。そりゃそうか、ここ高校だもん。
レベルは高いが地に足のついた勉強であることに変わりはない。中学からの延長、真面目にコツコツやってれば酷いことにはならないだろう。
さて、学校生活で割と気にしなきゃいけないのが、緑谷出久主体で起こるイベントを原作知識持ちの俺が引き起こしつつ、なんかいい感じにまとめなきゃいけないということだ。じゃないと詰む場面が結構ある。
いやまあ、最悪の場合は叔母さんと御当主様と爺ちゃんに頼るけど。
あとは、かっちゃん。
緑谷出久を失ったことを傷にしている彼が、何を思いどんな行動を起こすのかは、俺にもわからない。
かっちゃん、まあまあ繊細なとこあるしな。
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さて、今日は待ちに待ったヒーロー基礎学の時間。事前要望にそってあつらえられたコスチュームに着替えるように指示を出されたので、俺も素直に受け取って着替える。
まあ、俺個人の要望とかまるで入ってないんだけどさ。
「字、デザインがだいぶシンプルだな」
「志波ヒーローズと同じじゃねえか、手抜き?」
「普通に伝統に則ってるから拘りとか何もないだけ」
「伝統!?そんなのあるのか!」
「モヂカラ、ぶっちゃけ筆さえあれば使えるし。筆の予備を入れておける内ポケット付きの上着と、刀を差すベルトさえあれば良いからさ、伝統に背く理由もないかなーって」
「普通は伝統とかねンだわ」
コスチュームは、黒を基調としたスーツっぽい学ランっぽい感じの上下に好きな色のフード付きコート、といった程度だ。
ちなみにコートはヒーローらしく明るい色が推奨されているので、俺は赤色を選んだ。ちゃんと御当主様と祖父と大叔父と大叔母には報告済みである。この四人に報告を怠ると後々大変なことになりかねないために。
お家騒動、めんどくせぇ。
でも統一感のあるコスチュームって戦隊ヒーロー感あって、そこは好き。
そんな感じで駄弁りつつ、戦闘訓練開始となった。
オールマイトの状況設定を聞くに曰く、ヴィランが隠し持っている核兵器をヒーローが処理しようとしている、という状況らしい。
「これ実際にあったシチュだよな」
「100年くらい前にN県で起こった核弾頭密輸事件か。かっちゃん初代当主の日記読んだし知ってるよな」
「ええ!?本当に起こるの!?」
「字家初代当主の頃に実際に似たような事件あったみたいだし、ただの設定と考えるのはやめた方がいいと思う」
「しかし、そのような記録は見たことがありませんわ」
「黎明期の混乱下において全ての事件が公的記録に残ってると考えない方がいい」
初代当主が日記魔だったからかろうじて残されてるような、公的には葬られた事件が幾つも確認されている。断片的な公的記録をつなぎ合わせれば間違い無いと判断できるようなものが、それこそ数えきれないほど。
恐ろしい世界だ超常黎明期。よく戦ったな初代志波烈堂。
「そういうこと!じゃあ早速クジ引いてくぞ!」
何がそういうことなのかは兎も角、クジの結果、俺は麗日君と組むことになった。敵はかっちゃんと飯田君。
うーん、これは手強いな。
「縁があるね、よろしくね!」
「よろしく。じゃあまずお互いに個性の紹介といこうか。とはいえ俺の個性はモヂカラ、志波ヒーローズなんて呼ばれてる人たちを思い浮かべれば大体合ってる。ま、練度はまだまだだけどさ」
流石にプロヒーローと呼ばれるような一族の先達に比べれば俺はひよっこだ。真面目に訓練して勉強しなければなるまい。
作戦はシンプルに、俺が麗日君を送り届けるというもの。
作戦開始。まずはモヂカラで刀を出す。それを腰に差して屋内をゆっくり歩く。
「本当は影を出せたらいいんだけど、俺の実力じゃまだ、ね」
「影?」
「影武者」
手を刀に添える。構える。
モヂカラの欠点は手を使うこと。つまり、刀を振るう状態で筆を手にすることはできない。
つまり俺の個性を把握しているかっちゃんは、高確率で初手奇襲を仕掛けてくる!
「麗日君、俺は核弾頭の破損誘爆を防ぐためにかっちゃんをビルから叩き出す!核の確保を任せた!」
「うん!」
瞬間、壁をぶち破ってかっちゃんが殴り込んできた。麗日君を軽く蹴り飛ばすようにしてかっちゃんの視界から外す。
「やっぱりテメェならそうするよな、真墨ィ!」
「お互いに初手は読んでいたか……!」
峰打ちでかっちゃんを窓枠ごとビル外に叩き出すが、かっちゃんも俺の服を掴んで道連れにしてくる。勢いのままごろごろ転がって、そのまま二人で向き合った。
「勝った方が!」
「ビル内に戻って加勢する!」
中学時代、何度もやった戦闘訓練。それの再現がコスチュームで行われているという初めての状態にアドレナリンがお互いドバドバしている。
そのまま普通に戦ってたら麗日君が核を確保して、そのまま訓練終了した。
やべえ、かっちゃんと戦うことしかしてない。
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MVPは飯田君だった。俺はかっちゃんとテンション爆上げで戦ったことを諌められたが、麗日君と端的に意思疎通してお互いの役割と行動の意図を明確にしたことは褒められた。
良かった、褒められた点がゼロだったら流石に普通に落ち込むところだった。
「俺たちビル外で戦ってたから中の様子わっかんないんだよな。後で映像もらえるか聞いてみようぜ」
「でもさあ、お前らの戦い熱かったぜ!」
「反省会しようぜ、俺らの戦い見てたか!」
「だってさ。かっちゃん参加しようぜ」
「かっちゃん言うな」
まあ俺たち二人の反省会は別に、いつもの訓練と同じなので割愛するけど。他の人の反省会聞くのがいいと思う。
特に俺ら、授業そっちのけで戦って怒られたばっかだし。
「お前ら、仲良いんだな」
「中学からの仲だな。俺の世間知らずをかっちゃんに矯正してもらった」
「こいつマジか……って思うところ山ほどあるからな。教え殺したくなる」
「マジですまん」
「なあなあ、字家初代当主の日記って……」
「御当主様の住む本邸にある書庫に保管してる、初代当主の書いたやつのこと。お礼代わりに連れてったことある」
「本邸!?御当主様!?」
「初代当主とか、やっぱすごい家なんじゃん……」
「なあなあ、俺らも読める?」
「御当主様と朱里様に聞かないとなんとも。あれ持ち出し禁止だし」
「朱里様だって!」
なんか一言喋るたびにめちゃくちゃ反応もらうんだけど。同じく名家の八百万君はうんうんって頷いたり字家について興味深く聞いてたり。
あと朱里様って言葉に反応してるけど、朱里様はただの俺の大叔母です。御当主様が50過ぎてから生まれてるから、世代的には俺の両親と同じくらいだけど。
「先帰る」
「あー!かっちゃん!置いてかないで!」
「えー!もっと話聞かせてよ!」
「やっぱりメイドとかいるのか?」
「俺の家にはいません!俺の家は普通に父さん医者で母さんパートタイマーだから!」
「それ以外は!?」
この後めちゃくちゃ質問攻めされた。いや、反省会は?
世間的な認知度は、既に鬼籍である初代志波烈堂、前線を退いて久しい二代目志波烈堂こと御当主様よりオールマイトの方がはるかに高い。
なので俺がカメラを向けられても、聞かれるのはオールマイトのことばかりだ。
ある意味気楽に黙秘を貫いて、マスメディアを避けながら学校に入る。人の噂もなんとやら、いずれ飽きるだろうさ。
この日は学級委員長を決めろという話になり、俺は原作知識もありそんなに委員長に興味がないこともあり、飯田君に入れた。
その後なんやかんやで飯田君と八百万君が委員長と副委員長になった。やれやれ、メデタシメデタシ。
「字は立候補しなかったんだな」
「んー、興味ないというか、ちょっと面倒な可能性が頭をよぎったというか」
「面倒?」
「字家次期当主問題」
「ジキトウシュ!」
いや、そんなにびっくりする話でもないだろ。ただの普通の一般家庭と同じ相続の話だ。ちょっと規模が大きくて名前がついてくるだけで。
「テメェの家の相続と一緒にすんじゃねえ」
「やっぱ違う?」
「やはり、字さんが次期当主に?」
「雄英高校入った以上、可能性はちょっとな。八百万君は家として仲良くしたい感じか?」
「ええ、まあ……将来的にはその可能性も考えろと」
「まー、お見合いも視野に入るよなあ」
「ですわね……」
「オミアイ!」
割と可能性あるんだよな、八百万家の令嬢と字家直系の男女で同学年で同クラスのヒーロー科だから。朱里様も同じ雄英高校の出身者と、顔見知りとはいえ形式はお見合いで嫁入りしたわけだし。
「えっ、字君って八百万さんのこと好きなの??」
「人間として好意的、ならお見合い相手として十分なんだよ。まあ流石に高校在学中に話は持ってこないとは思うけど」
「はー……世界が違うわ……」
そんな感じで、八百万君とは長い付き合いになりそうだと感じた。
いやほんと、御当主様すでに卒寿迎えてるし、どうすんだろうな次期当主問題。