ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!? 作:サブレ.
エンデヴァーに並んで機械の天使がトレンド入りしたのは予想外だったけど、この一件で世間からエンデヴァーに対する風当たりが若干軟化した。ここまで想定通り。
「かっちゃん、福岡の明太子かっちゃんの家に送っておいたから」
「俺食えねえだろ!」
「ホークスと会ってたんだな」
「まーな。顔合わせというか挨拶というか」
福岡のお土産を配りつつ、常闇君を中心に実況生中継付きの現場の思い出話をつらつらと。天使についてもコメントをたくさん貰った。すごいよなあの火力と
「脳無の個性って封印されたのか?」
「一月くらいは使えない筈」
「長いな」
「オールマイトそんなに長く封印されなかっただろ?」
「俺の個性が成長したのが一つ、オールマイトの個性が規格外なのが一つ」
「そう考えると封印の文字ってすげえんだな」
「秘伝なんだっけ?やっぱり字家しか知らないの?」
「いや、文字自体は普通に調べれば出てくるぞ?難読漢字ってことでクイズ番組とか漢検とかに出題されることもたまに」
「秘伝ってなんだっけ」
「秘伝なのは書き順と旧字体」
そういや全国放送で脳無の個性封印したのも放送されてたな。封印の文字の有用性も回復できたようだ。思わぬ副産物。
そんな感じで福岡での出来事を語って、落ち着いた頃に一度部屋に引っ込む。
メールはまだ来ていない。もうすぐかな。
+++++
しばらく後。
「かっちゃん!!!ちょっと俺の部屋来て!!!」
「うるせえ!!!」
日付が変わる直前、寝る前に確認したメールボックスに入っていた待ち侘びた連絡に、思わずかっちゃんの部屋に突撃した。寝てただろうに律儀に部屋から飛び出してきたかっちゃんを即座に部屋に連行する。
「なんだよ!!!クソな内容だったら殺すぞ!」
「緑谷出久の事件の洗い直し案件が本格的に起動した。ヒーロー主体でやるけど、インターン生受け入れ枠がある」
「それは、本来てめえの枠じゃねえのか?」
「一人とは言ってない。元々俺の枠なのは確かだけど、条件さえ満たせば誰でも」
かっちゃんにメールのデータを放り込んだUSBを投げ渡す。付属データがめちゃくちゃ重たくて待ってるのがもどかしいからかっちゃんを俺の部屋に連行したのだ。
「条件とか全部それに入ってる。後でチェックしといて」
「あんがとよ。後でまた声掛けっわ」
「おやすみ」
翌日。
授業を終えたその足で俺はかっちゃんの部屋に向かった。事件スクラップや事件当日の出来事を記したノートを読ませてもらったり、かっちゃんのメールに対する質問に答えたり。
「依頼人が字家ってことは」
「元々調べてて、字家関係者であることは、一応、本当みたいだ」
「一応なんだな。テメェらの家のことだから、もっと早くシメてそうなんだが」
「どうやって把握すれば良いんだ?ってくらいの関係なんだよ。だけど、DNAの繋がりあって字を名乗った時点で落とし前案件」
「……殺すなよ」
「かっちゃんに言われたくねえ。まあ言われたし殺さないけど」
時間になったので、一度作業を取りやめてご飯食べに部屋から出る。この案件の人員次第では引子さんにどう報告するかっていう問題が出てくるしな。
つーか、シンプルに生きてんのかね。そいつ。
食事にそぐわない思考をしつつ夕食を終えて、風呂と宿題と自習とストレッチのルーチンワークを終わらせる。さてかっちゃんと続きをしなければ。
「真墨」
「……?どうした轟君」
後ろから声をかけられて振り向く。轟君が真剣な顔で立っていた。福岡の件か?と思ったけど、多少時間経ち過ぎてるよな。答えられる範囲で全部話したし。
「親父……エンデヴァーが近々、字家からの要請でヒーロー活動に復帰するって聞いた。爆豪と真墨が話してるの、それか?」
「うん、そだな。インターン枠が設けられてる。俺とかっちゃんはそれに参加予定」
「……それ、俺も参加できねえか?」
「誰から聞いた?」
「親父から」
「エンデヴァーか」
息子に経験を積ませたいとか、字家のやり方を教えたいとか、そういう考えかな。俺としても、現在のOFA継承者たる緑谷出久との交戦が見込まれる以上、戦力はあった方がいいし。
ただ、なあ。
「やぶさかではない。けど、推奨しない」
「どうしてだ?」
「轟君にとって極めて酷な役割を求めるから」
「それでもだ。俺はエンデヴァーのNo.1ヒーローとしての強さを知りたい。そして、字家がどういうものなのか、ちゃんと見てえ」
「……わかった。一応、直前までキャンセルは受け付けるから。俺は一回部屋で御当主様と相澤先生に連絡とってくるから、かっちゃんの部屋で概要聞いといて」
「ありがとな」
轟君がかっちゃんの部屋に向かったのを確認してから、俺は一度自室へ戻る。部屋位入って念のため鍵をかけてから、御当主様へ。
「───という訳です。よろしかったですか?」
『構わん。炎司からすでに要請はあったのでな。事前打ち合わせには来させろ。仔細は七村に伝えてある』
「話が早いですね……了解しました」
ついでにメールチェックして、届いてた資料を三人分印刷してかっちゃんの部屋に持っていくと、部屋に入るなり怒鳴られた。
「なんでコイツも参加するんだよ!?」
「インターン枠にヒーローが推薦したからかな」
+++++
後日。
でけえ邸宅の前に三人で立っていた。一応制服だが、一泊のため着替えなどは持参済み。
「けっこうデカいんだな、字の本邸」
「まあ、一応名家とか大家の括りだしな。卒業後はこれ全部俺のものになる」
「そのクセ一般人名乗ってやがったからなコイツ」
「中学生までは継承するって決まってませんし。かっちゃんが欲しいならあげるけど」
「いらねえ」
字家の本邸は少々意外に思われることも多いが、和洋折衷の邸宅となっている。応接室や客室も洋風のものと和風のものが入り混じり若干カオス。
「実は温泉もひいていてな。後で入ろうぜ」
「そうなのか?」
「サウナ残ってんか?」
「この間稼働したから残ってる筈。ちゃんと確認済みだぜ」
そんな話をしながら、一度客間に荷物を置く。それからテン君の案内で、今回の案件のリーダーとなるNo.1ヒーロー、エンデヴァーと合流。
「こんにちは、エンデヴァー。今回の案件においてインターン枠で参加させていただく字真墨です」
「上辺の挨拶など要らん。字家次期当主」
「いやあ、表向きの体裁って大事だと思うんですけどね。俺たちはあなたの下で動くことになりますし」
「……轟焦凍だ」
「爆豪勝己」
「……エンデヴァーだ」
さて、御当主様とご挨拶というか打ち合わせの時間だ。なんだかんだで外部の人と一緒にこうやって会うのは初めてかもなあと思いながら引き戸の前に立つ。
「「───っ!?!?」」
ガタン!と大きな音がしたと思ったら、両脇に立っていた轟君とかっちゃんが大きく下がって今すぐにでも個性で反撃できるような体勢になっていた。エンデヴァーは逆に一歩踏み出して二人を庇うような位置に立っている。
……もしかしてこの、心臓の動脈に王手をかけられたような鋭い殺気を、この場にいる全員がうけてるのか?
いやいや、次期当主で字家の人間の俺はともかく、他の人にやって良いことじゃないだろ!
引き戸に手をかける。そのまま勢いよく、大きな音が鳴るほどに派手に入室して、叫んだ。
「御当主様!!!客人の御前です、戯れはおやめください!!!」