ヒロアカ世界に転生したは良いけど主人公不在らしいです。どうしろと!? 作:サブレ.
ヤッホイ、字真墨だぜ。
襲撃翌日の臨時休校は本邸に日帰り推参。羊羹美味かった。御当主様は相変わらず健在だったなあ、あの人と日常的に仕事してる朱里様の心臓どうなってんだ。
そしてさらに次の日。登校したらUSJ襲撃を乗り越えた相澤先生がミイラになってた。無事だったんですね!と飯田君が叫んでるけど無事なのか、あれ。
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねえ。雄英体育祭が迫っている!」
「クソ学校っぽいの来たあああ!!」
「げ」
雄英の体育祭とか、御当主様がVIP席で見るやつじゃん。
あ、でも別にノルマとか課されなかったって叔母が言ってたな。良かった気楽に参加できる。
ちなみに、襲撃受けたばっかりなのに体育祭やるの?という話題については、逆に開催することで雄英の警備の盤石さを示す役割があるらしい。
もしかしたら爺ちゃんや父親もモヂカラ結界要因として駆り出されるかもな。特例で一時許可取って警備参加とか、字家なら普通に通るだろうし。
「年に一回、計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」
俺だって雄英生、ヒーローが主役のこのイベント燃えない理由がない。
昼休みは体育祭の話題でもちきりだった。
「いやあ楽しみだな、燃えるぜ体育祭!」
「なんだ、テメェはお家がめんどくせぇとか言うのかと思ったけどな」
「いやあ、流石に雄英高校の入学後は自由だよ。下手に突くと雄英に対する干渉になりかねないし、学生の青春を大人の都合だけで振り回すのもなっていう感じで」
元々の雄英高校の校風を踏まえても、外部の人間がアレコレ口出してへいこら従うのはあんまり良くない、ということで雄英にさえ入れば、素行不良とか赤点連発でもしない限り放任主義だ。
麗日君の体育祭に対する意気込みなんかも聞きつつお昼ご飯を食べに行こうとすると、オールマイトに肩を掴まれた。
「真墨少年、ご飯一緒に食べよ?君の曾祖父の方から、ね」
「はい、わかりました」
御当主様、オールマイトに何吹き込んだんだ。
若干ビクビクしてる?
オールマイトに一声かけて売店で適当なパンを買い込んでから仮眠室に集合した。淹れてもらったお茶を啜りながら、焼きそばパンを詰め込む。ただの焼きそばパンでさえレベルが高い。さすが雄英。
しばしお互い黙って食事に集中した。空気は重いけど、御当主様の圧の強い空気の中で羊羹食べるより気楽だ。
パンをぺろりと平らげたあたりで、オールマイトが口火を切った。
シュウ、と煙を立ててオールマイトが萎む。原作知識はあれど、実際に目撃するとビビるな。驚いた心を素直に出せば、オールマイトも疑うことはなかった。
「活動限界が50分程度!?」
これは本物の驚きだ。思った以上に火が消えていくスピードが早い。オールマイトは大真面目に頷いた。OFAを継承した、原作とほぼ変わらないスピードじゃないだろうか。
その通り、とオールマイトが頷いた。
「君はその個性ゆえに察してしまっているからね。先にこちらからある程度事情を話して口止めしたほうがいい、と根津校長と話して決めたんだ。他言したかな」
「御当主様には報告を。それ以外は一切口外していません」
「御当主様……二代目志波烈堂だね。それならいい。その方もまた、私の力の減少に気が付いているから。
そういうことだから、私の力のことは他言無用でお願いね。君の御当主様とも話し合ってることだからね」
「はい」
OFAが何故消え始めたのか、流石に吐いてくれないか。ここは素直に引くべきだな、下手に突っ込んでも逆に情報から離される。
それに、いたずらに混乱を巻き起こさないためにも、ここは根津校長の意図に乗っかったほうがいい。経験に関しちゃどんなプロにも劣るしな、俺。
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放課後、なんかめっちゃ敵情視察されてクラスの周囲が人で埋まってた。まあヴィランの襲撃経験したらな、多少注目が集まるのは仕方ない。
俺とかっちゃんは平常運転。
「意味ねえからどけ」
「どんなもんかと見に来たが随分えらそうだなあ」
まあ、事前分析なんて意味ないだろとは思う。ヒーローなんて敵に自分の能力分析されるとか日常なんだから。そういう最低条件の上で成果を上げるのがヒーローの仕事である。
通じるのなんてそれこそ、俺たち一年生くらいだ。
普通科生徒の、あ、この人心操だ。大胆不敵な宣戦布告をちゃんと心に刻み込む。舐めてかかって負けました、なんてヒーローに許されるはずもない。
どんな相手だって、足元を掬ってくる可能性はある。
まあ、俺の場合は個性の性質上、そもそも上位に上がれるのかっていう問題もあるんだけど。
体育祭当日。
控室で指定ジャージに着替えてその時を待つ。ちなみに入学の成績は、俺は次席。主席はかっちゃんだった。さすがかっちゃん。
なのにかっちゃんより俺の方がみんなにライバル視されてるのは何故だ。
「そりゃテメェがサラブレッドだからだろ」
「まあ確かに志波烈堂の直系ではあるけど、すごいの俺じゃなくてご先祖様だからな?」
俺はまだ何も成してないぞ。
あと、ヒーロー科はサポートアイテムやコスチュームは持ち込み禁止で、俺の個性は発動に筆が必須なので、なんか実質個性なし縛りみたいになってるし。
……体育祭に対して一族がノータッチなの、これが理由かあ。実力発揮するタイミングねえわ。
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プレゼント・マイクの司会の下入場すると、会場中の視線がこちらを向いていた。その中でも一際鋭い視線が“ふたつ”。この自然の群れの中でもすぐに察することができるの凄えな。
爺ちゃんも鋭い視線を送ることはできるけど、擬態も上手い。今日は多分擬態してる筈だから、これは御当主様と朱里様だな。
「選手宣誓!静かにしなさい!選手代表!一年A組爆豪勝己!」
一年生の主審は18禁ヒーローことミッドナイト。雄英高校って自由だなあと思うのは主に教師を見てだな……生徒は一応指定の制服とかジャージあるし。
かっちゃんの宣誓も多少のブーイングを巻き起こしつつ終わり、第一種目は障害物競走。全長4kmのコースを走り抜けろというもの。
良かった、モヂカラ使わなくてもなんとかなる種目だ。
「よーい、ドン。ってな」
スタートの合図と同時に一斉に走り出す。狭いスタートゲートを軽く超えて、轟君の妨害も軽く突破する。うまく周囲を見て走ればどうにかなるような妨害ばかりだな、今の所は。
その後の、蛙吹君曰く大げさな綱渡のザ・フォールも軽々クリア。
最後のコース、地雷のアフガンも普通に地雷の形跡見えるから通ってゴール。順位としては真ん中くらいだった。
ま、こんなとこだろ。
続いての競技、騎馬戦は心操君に敢えて操られることで適当にクリアした。だってやれることねえし。
こんな感じで、やれる範囲で頑張って体育祭は決勝まで残った。周囲の視線が痛い。叔母筆頭に俺の一族のモヂカラ使い、こんな視線の中で体育祭やってたの?そりゃ心臓に剛毛も生えるわ。
体育祭に乗りきれてないのを自覚しながら昼食を取るために移動しようとしたところで、後ろから声をかけられた。
「なんか用か?轟君」
「個性を使わずにここまで残ったのは凄えと思う。だが、決勝もそれを貫くつもりか?」
「自分の意思で個性をセーブしてる君と一緒にしないでほしいな。俺は個性を使わないんじゃない、使いたくても使えないんだ。サポートアイテムの持ち込みが禁止されてるからな」
筆がなければモヂカラを発動できない。個性の特性の問題だ。
「君こそ、雄英高校体育祭なんて一大イベントで片方の個性しか使わないなんて、不粋じゃないか」
「俺の親父はエンデヴァーだ、知ってるだろ」
「ああ、勿論」
「万年No.2のヒーローだ。親父は極めて上昇志向が強い。……自分でオールマイトを超えられない親父は、次の策に出た」
「それが個性婚で、作られたのがお前か。心中察するよ。俺の一族のお家騒動もそーいうのが原因だ」
上昇志向自体は悪いものではないが、煮詰まると周囲に悪影響をばら撒くものだ。明確な目標と明確な壁があるならば、どうにかそれを越えようとして手段を間違える。
反吐の出る、よくある話だ。
「俺は左側を使わずに、お前を超える。志波の侍、次代の志波烈堂候補であるお前を」
「……ったく、エンデヴァーはどっからその話を仕入れてきたんだか」
次代……三代目志波烈堂はうちの家において核爆弾にも匹敵しうる話題だ。故にこそ、卒寿を超えた御当主様が今もなお健在なのだ。
だがまあ、ここまで堂々と言われちゃ否定するのも無粋というもの。
「火を使わずに火のモヂカラの系譜にして三代目志波烈堂候補が一人、字真墨を超えるとは大きく出られたものだな。ま、体育祭で白黒付けられるとは思ってねえよ。あいにく俺は、体育祭においちゃ擬似的な無個性だ。
かちあったらその時はよろしくな、轟君」
と、轟君に別れを告げてからわずか五分後。
VIP席から抜け出してきた御当主様に言われた。
「真墨、今日からお前が志波烈堂だ」
「……はい?」
感想をいただけないでしょうか……(強欲)