皇帝と呼ばれるドイツ人のラインハルト様 作:ロシデレは良い
私立征嶺学園
過去、政財界で活躍する卒業生を多く輩出してきた、日本トップレベルの偏差値を誇り、かつては貴族や華族の子女も多く通っていたという、古い歴史と伝統を誇る、由緒正しき名門校である。
そんな学園には、名家や財界の名士の子息や多くの有名人が多く在籍しているが、その中でも抜きん出て有名であり、そしてこの学園に在籍する多くの生徒達を虜にする、三人の生徒がいた。
「わぁ、何あの子すっごいキレイ!」
「おいあれ、九条さんじゃん!」
「朝からツイてんなぁ」
一人目はアリサ・ミハイロヴナ・九条
征嶺学園生徒会会計を務める、ロシア人と日本人のハーフである。
成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗と三拍子揃った人物であり、その容姿と雰囲気から、孤高のお姫様と呼ばれている。
「やあ、おはよう九条さん。気持ちの良い朝だね!」
「おはようございます」
「ハハハハ!はじめましてかな? 僕は2年の安藤だ。君のことはお姉さんからよく聞いていてね、前から会ってみたいとは思っていたんだ」
その為、無論多くの男子生徒から告白をされる事は珍しくも無く、この日も2年生の中で一番モテる男子と言われている、安藤先輩なるいかにもなナルシストな人物が、彼女とお近づきになる為に、あの手この手と言い寄った。
だが
「今日よかったらお昼に…」
「結構です」
「そ、そうか…つれないな…じゃあ、せめて連絡先の交換でも…」
「すみませんが、私は貴方に興味がありません」
「ガハッ!」
「用件がそれだけなら失礼致します」
とりつく暇もなく、彼女からの塩対応に、2年生のモテ男安藤の自信とプライドはことごとくへし折られ撃沈した。
「あとそれ、校則違反ですよ」
そしてそんな心もプライドもズタズタにされ、灰になって燃え尽きた安藤先輩に、アリサは同情するそぶりもなく、ただそう言い残し、去っていった。
「すげー女子人気、No.2の安藤先輩を一蹴りかよ」
「どんだけ理想高いんだよ…」
学園の二大美姫と呼ばれるアリサの、まさに孤高の姫様の異名に相応しい、その振る舞いに、周りの生徒たちは思わずそう言った。
「あちゃー安藤先輩かわいそうに。まぁ、失敗するとは思ってたけどね〜」
「まぁ、ああなる事は明白ではあったがな…だが、自ら告白しに行くとは、その精神は理解できんな…そこまで好きな相手ならば、むしろ相手に告白させるべきだ。恋愛とは、駆け引きであり、そして戦なのだからな」
そして、その光景を校門から、二人の男女が見つめており、安藤なる人物の見事なまでの玉砕に、二人はそれぞれそう感想を言った。
すると
「おい二人とも、こんな所でくだらん玉砕劇を見ていても、時間の無駄だぞ」
「それもそうだな…では行くぞヒルデ、良世」
「はーい」
「あぁ、さっさと行くぞ」
自分にそう言って来たメガネの男子生徒、そして自分と一緒に、朝から、無謀な戦いに挑み玉砕の醜態を晒したその光景を一緒に見ていた女子生徒の、二人にそういうと、彼はまるで二人を…いや、まるで大軍を指揮する軍人…いや、それすらも超えた、絶対的な支配者の様に、背筋を伸ばし、そして堂々と校門をくぐり、校舎へと歩いて行った。
すると
「えっ!うそ!ラインハルト様よ!」
「朝からついてる!!」
「おい、アーリャ姫の次はカイザーの一行かよ、今日はなんか良いことでもありそうだな!」
三人を見た瞬間女子生徒は顔を赤らめ、男子生徒はまるで身の引き締まる様な感覚が、身体中を駆け巡った。
「カイザー…誰だそれ?」
「あぁ、お前高校からの外部入学生か、ラインハルト様、さっきのアーリャ姫、そして有希のおひい様に並ぶ、この学校の有名人だよ。アーリャ姫はあの美貌とその孤高の雰囲気、おひい様はお淑やかで優しい性格から人気を集めている一方で、ラインハルト様は、まるで皇帝の様な、圧倒的な支配者のカリスマ性で、多くの学生から慕われ…どちらかと言うと忠誠を誓われている人物だ、その証拠に」
「きゃあ!ラインハルト様と目が…あぁ…」
「女子があの鋭い目を合わせれば、目を合わせた女子は興奮のあまり失神し…」
「「Guten Morgen, mein Kaiser!!」」
「男子生徒と目が合えば、目が合った男子は、条件反射的に背筋を伸ばして敬礼してしまう」
金髪碧眼の容姿、まるで帝王を思わせるそのオーラと、鋭い目によって見つめられた瞬間、失神したり、顔を赤らめる女子生徒、そして同じく、その青色の目に見つめられ、条件反射的にドイツ軍人を思わせる敬礼をする男子生徒を指差しそう言った。
そう…彼こそが、この学園において、アリサ、そして先ほど生徒の一人が、解説するかの様に述べた、その言葉の中に出て来た、おひい様こと、生徒会広報の周防有希に並ぶ三人の有名人の一人…
その名前は
ラインハルト・ヴィルヘルム・フォン・ライヒスブルク
ラインハルト様、そしてドイツ語で皇帝を意味するカイザーと呼ばれている彼は、一年前の春に、中等部三年としてこの学園に転校して来た人物である。
名前、そしてインゴットを溶かし込んだ糸の様な美しい金色の髪と、澄んだ海の様に蒼眼を持つ、まるで理想的なヨーロッパ人とも言えるその見た目、そして大層な名前から分かる通り、彼はドイツ人の父と日本人の母を持つハーフである。
しかも、ただのハーフではない、父親はホーエンツォレルン家とハプスブルク家…かつて全てのゲルマン人の皇帝であった二つの名家の血を引き、現在は日本の在日ドイツ大使館の駐在武官を務めるドイツ空軍大佐、母親は日本有数の大財閥のご令嬢と、まさに生まれながらのエリートである。
しかも、血筋や容姿だけでなく、天才と言う言葉も陳腐に思えるほどの、超天才であり
成績は常に学年主席
ヴァイオリンの世界大会の優勝の常連
フェンシングを中心に運動も常にトップレベル
高い知能と教養、誇り高い性格、そして華麗なる血筋と、高い容姿を兼ね揃えた、まさに人の上に立つ、絶対的王者になる事を、神より定められた様な人物である。
そんな神が作り出した芸術の様な人物である為、男女問わず多くのファン…と言うより、もはや信者と言っても良いほど慕われている。
「そう言うわけで、あの人はドイツ語で皇帝を意味するカイザーと呼ばれてるんだ」
「なるほどな…それにしても、まるで人の上に立つのが当然見たいな顔をしてるな」
「バカ、見たいじゃない、当然なんだよ…」
「えっ?」
「彼の方は…カイザーは、まさに俺たちの皇帝なんだ…」
「えっ…あっ…」
さっきまで淡々とラインハルトの説明をしていた彼の、まるで神を見るかの様な羨望の眼差しに、思わず、その外部入学生は少し引いてしまった。
するとその時
「うん、おや…渡部君と君は」
何を思ったのか、突然ラインハルトは立ち止まり、先ほど自分の事をヒソヒソと話していた二人の元に近づいて来た。
「あっ、えっ俺は…」
近づかれもっと分かる、ラインハルトの圧倒的な、有無を言わせないカリスマ性の前に、思わずその生徒は、名前を言おうとするも、たじろいでしまった。
すると
「言わなくて結構、外部生の谷口良君だね、ラインハルト・ヴィルヘルム・フォン・ライヒスブルクだ。初めまして…で良いかな?」
ラインハルトはそう言うと、スッと谷口と呼ばれた外部生に手を差し伸べた。
「えっ、あっはい…えっ、なんで俺の名前を?」
差し伸べられた手を握り、ラインハルトと握手を交わしながらも、谷口は、なんで自分なんかの名前を、彼が知っているのか、困惑した。
すると
「あははは、そんなに緊張しなくて良いよ〜兄様は、学校の理事会の人々や学校の先生の名前を忘れたとしても、中等部そして高等部問わず、この学校に在籍する全ての生徒の名前と顔は絶対に忘れない人なんだよ」
ラインハルト同様、金髪碧眼、そして唯一彼とは違い、親しみやすく明るく笑う美少女が、そう笑顔で谷口に言った。
「えっそうな…えっ、兄様?」
「おっと、自己紹介が遅れたね。私はブリュンヒルデ・テレジア・フォン・ライヒスブルク。ラインハルトお兄様の妹だよ、そしてこの堅物のメガネ君は、兄様のお友達の…」
「堅物とメガネは余計だヒルデ…月平良世だ、外部生の様だが、この学校に来たのなら常に人事を尽くす事を忘れるな」
ラインハルトの妹のブリュンヒデ
そして彼の友達の一人である月平良世
二人は、そう谷口に言った。
「そう言う事だ、何はともあれ、あの難しい外部入試を突破して、この学校来たのだ。心から敬意を表する、遅ればせながらこれかも同じ一年として、よろしく」
「は、はい!」
最後にそうラインハルトに言われた瞬間、谷口はこの人がなぜこれほどまでに慕われているのかを、理屈ではなく心で理解した。
そして
「そじゃあ、僕はこれで失敬するよ、渡辺君、谷口君、二人ともくれぐれも遅れない様にね」
「はい!」
「Ja!!」
そして最後にそう言いラインハルトが去った時には、谷口も渡辺も口を揃えそう言うと同時に、反射的に敬礼をして見送った。
「まさに、彼の方は人の上に立つお方だな…」
「わかってくれたか、これでもお前も俺たち同様に同志…いや、ラインハルト皇帝の臣民だな」
「そうだな。それにしても、さっき言っていたヤーて?」
「あぁ、ドイツ語でハイを意味する言葉だよ。カイザーがこの学校に転入してから、ドイツ文化を布教してくれてな。それ以来、学校ではドイツブームが到来してるんだよ」
「へー学校の文化面すらも変えてしまうとはすごいな…」
「そうだろ、今度の生徒会選挙では、現生徒会の役員をやってるアーリャ姫と有希のおひい様が有力候補らしいけど、俺はカイザーが勝つんじゃないかと思ってるんだよな。あのお方は、カリスマ性があって、何よりやると断言した事は必ず実行する"スゴ味があるッ!"」
「まるで、ぶっ殺すと思った瞬間には、もう終わらせてる殺し屋の様にか?」
「おっ、分かってるな谷口」
「俺も、ジョジョファンだからよ〜全巻持ってるぜ」
その後、谷口と渡部は、ラインハルトを通じて、共通の趣味が見つかり、それ以来親友になるが…それはまた別の話である…
一方で、そうしている間にも、ラインハルト、ヒルデ、良世の二人はその後も注目の的であった。
「はぁ〜いつ見てもラインハルト陛下はかっこいい〜」
「さすが女子人気、圧倒的No.1のラインハルト様…こうしてみると、ラインハルト様に比べれば、安藤先輩なんて、月とスッポン…いや、銀河系とハエだね〜」
「もう我慢できない、私告白してみようかな〜」
すると、ラインハルトのその美貌とカリスマ性に一目惚れした女子生徒の一人が、彼にアタックをかけようとした。
すると
「ダメよ!そんなの、親衛隊の粛清案件よ」
「し、親衛隊!?」
「そうよ、この学校には皇帝親衛隊と呼ばれる、ラインハルト様の熱狂的なファンクラブがあるのよ。会員数も、メンバーの名前も、隊長も、メンバー以外は組織の実態は分からないけど…だからこそ、下手にラインハルト様に粗相をしたり、抜け駆けしようものなら即粛清よ」
「しゅ、粛清て…何されるの?」
親衛隊、粛清…
不穏な単語のオンパレードに、その女の子は、息を呑みそう聞いた。
「それは…」
「それは…?」
「分からない」
「何それ!?」
まさかの分からないと言う回答に思わず、ずっこけそう言った。
「まぁ、実際には粛清なんて、半分冗談見たいなものだろうけど…ともあれ、どうしてもラインハルト様とお近づきになりたかったら、まずは親衛隊に加入しないと。因みに、私も親衛隊よ」
「親衛隊員だったの、あんた!?」
まるで息を吐く様に、親衛隊のメンバー証を見せて来た友人…真花の、隣にいた自分の友達がその親衛隊なる秘密組織の隊員だった事に驚愕した。
校舎内
「おはようございます、ラインハルト君」
その頃、三人が校舎内に入ると、多くの生徒からカイザーだのラインハルト様だの呼ばれる中、数少ない、彼をラインハルトと呼ぶ人物の一人が、彼を引き留めた。
「Fräulein周防か、おはよう」
「あっ、おはようゆうちゃん」
その人物とは、この学園の二大美姫の一人である、深窓のおひい様こと、周防有希その人であった。
彼女は、ラインハルトとヒルデが、3年の頃転入してきた際、同じクラスに転入して来た際、ラインハルトの席と隣同士になり、その後色々あり、今では妹と共に仲が良関係を築いている。
「それにしても、相変わらずの人気ですね」
「慕われている事は嬉しいが、ほぼ毎日これだと、少し恥ずかしいよ」
「そうですか」
ラインハルトのその言葉に、有希は優しく微笑みながらそう言った。
すると
「…本題に入ろう、Fräuleinが僕の元に来たという事は」
ラインハルトは突然、真剣な顔つきで、静かにそう聞いた。
すると
「えぇ、政近君から伝言です、例の要件、なんとかなった様です」
「ふっ…そうか」
有希もラインハルトも、二人とも真面目な顔つきでそう言った。
「例の件…何だそれは?」
一方で、四人の中で唯一何の事か分からない良世は、そうラインハルトに疑問を問いかけた。
だが
「…まぁ、色々とな」
「…はっ?」
ラインハルトは、はぐらかす様にそう良世には良い、ますます何の事かと、疑問に思っていた。
「まぁ何はともあれ感謝する、Herr
政近にはDanke schönと言っておてくれ」
「はい、それではごきげんよう」
「じゃあね〜」
だがそんな良世には目もくれず、ラインハルトはただそう言うと、それを聞いた有希は、微笑み去ってゆき、そしてヒルデは能天気そうに手を振り、去ってゆく彼女を見送った。
先ほど、ロシデレ配信分を一気見して、いてもたってもいられず、後先考えず投稿しました。
ロシア要素=アーリャ
アメリカ要素=宮前
米露要素があるなら、ドイツ要素だって有って良いはず。