皇帝と呼ばれるドイツ人のラインハルト様   作:ロシデレは良い

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皇帝陛下一行のランチタイム

ホームルームが終わるとすぐに、約4時間の午前の授業が始まった。

 

その間にも、寝てて授業を聞いていなかった政近が先生から質問された際に、アーリャは間違った答えを彼に教える

 

休み時間中にスマホでゲームをやっていて、携帯を没収されそうになっていたりなど、さまざまなな事が起きていた。

 

因みに、スマホの件に関して一悶着あった時、ヒルデはアーリャから。

 

「保安委員会の副委員長なんだから、貴方からも注意しなさい」

 

そう言われたのだが…

 

「んー私達保安委員会は、いじめとかそういう大きな問題の対処が専門だから、そういうのは所管外かな〜」

 

ぶっちゃけ、このまま放っておいた方が面白そう…そう思ったヒルデは逃げた…所管外を理由にして…

 

ともかく、1時間目から始まる自授業、そしてその間の休み時間において、政近とアーリャは、見る人が見ればイチャついているしか思えない言い合いややり取り

 

そして当然、時々ロシア語でデレるアーリャ、それに対して表情に出さないよう頑張る政近…

 

まさに駆け引きと修練の4時間が経過した。

 

そして…

 

「ふー結構記録したな〜」

 

ヒルデによるアーリャのデレが記録された文書も、結構溜まり、それを見てヒルデは、自分の頑張りに満悦し、満足そうな笑みを浮かべた。

 

だが、その笑みもすぐに、来るべき日にこのノートを、アーリャの前で読み上げ、その際の恥ずかしそうに顔を赤らめるアーリャの姿を想像した事により、サイコパスな笑みに変わった。

 

「ふふふ…Ich freue mich jetzt darauf...」

<今から楽しみだ…>

 

そこまで楽しみなら、今からでも全て暴露してしまっても良いのでは…そう思うかもしれない。

 

しかし、ヒルデにはそれが出来ない理由があった。

 

(本当は今からでも暴露したいけど、それでもしこんな反応をされたら…)

 

 

ヒルデの脳内

 

アーリャ「何を言ってるのヒルデさん、あんなのただの冗談よ。もしかして、本気にしていたんですか…?」

 

ヒルデ「えっ…いや…」

 

脳内シミュレーションにおいて軽はずみに、例の記録をアーリャ本人に披露したヒルデは、アーリャの予想外にも冷淡な対応に不意を突かれ、動揺していた。

 

そしてそんなヒルデに追い打ちをかける様にアーリャは、まるで家畜でも見る様な、哀れそうな目と、笑みを浮かべこう言った。

 

アーリ「Совершенно...мило...」

<全く…お可愛い事>

 

(そんな事になったら興醒めだからね…)

 

そうなっては、今までの記録、そして記録をしやすくする環境づくり、あらゆる下準備が、全て水の泡になってしまう。

 

だからこそ、ヒルデとしては今すぐの暴露と言う名前の公開処刑を避け、タイミングを見計らっていた。

 

何より

 

(何より、最悪いじめだと思われたらもっと最悪だしね。イジメを取り締まる保安委員会生徒監査局局長の私がイジメをする。そんな事になれば、次の生徒会長選挙で兄様に悪影響があるだろうから)

 

そう、一番最悪なのは兄のラインハルトに飛び火する事である。

 

保安委員会員長として、同組織を率いるラインハルトは、そのルックス、学力、教養、そして何より保安委員会を率い、数々の問題を解決している。

 

中3の頃に解決した、ラインハルト初の委員会の仕事、テニス部エースの起こした、怪しげな斡旋の摘発

 

委員長に就任した、今年に起こった、ラグビー部の部費の横領事件の摘発

 

などなど少なく無い数の大問題を解決。

 

小規模の問題ではボランティアの積極参加や、生徒たちの悩み相談など、それら大小あわせた活動によって、ラインハルトは次期生徒会長候補の有力者の一人とみなされている。

 

なのに、その妹であり、副委員長の一人であり、保安委員会生徒監査局局長のヒルデがアーリャをイジメたと他の生徒に思われては、確実に自分だけで無く、兄にも被害が及ぶ。それはブラコンのヒルデにとっては、避けなければならなかった。

 

「Nun ja, es ist noch Zeit. Bis dahin sammle ich höchstens noch weitere Platten」

<まぁ、まだ時間ある。それまでは、せいぜいもっともっと記録を収集させてもらお〜>

 

そう、誰にも分からないようドイツ語で呟くと、ヒルデは席を立った。

 

「さーて、何食べようかな〜」

 

そして、今日の朝の約束通り、兄であるラインハルトと一緒に昼食を食べる為、そう言いながら教室を出て行った。

 

「そう言えば、前から思っていたけど、ヒルデさんて、十分…いや、ルックスだけ見るとアーリャ姫にも負けて無いよね。誰からも告白されないのかな?」

 

するとヒルデが、いなくなった時を見計らい、教室で食事を食べていた一人の女子生徒が、一緒にお弁当を食べている友達にそう聞いた。

 

「まー告白したいという話は結構聞くから、モテないわけでは無いけど…ただね…」

 

「そうか…ヒルデちゃんの兄さん、ラインハルト様だったね」

 

 

カフェテリア

 

「うおーっ!‪モテたい!‬」

 

その頃、ヒルデと政近らと同じクラスの、1年B組のモテない男代表の丸山が、そう叫んだ。

 

「政近‬‪、それ何食べてるの?‬」

 

「激辛、麻婆ラーメン」

 

だが清宮と政近の二人は、丸山の悲痛な叫びに対して、ノータッチであった。

 

「おい!‬‪無視してんじゃね!!‬」

 

「いつもの発作かと思って‬」

 

「これだからモテる奴は…‬」

 

モテ男特有の余裕の笑みを浮かべる清宮に、丸山はそう言った。

 

すると突然、カフェテリアがざわつき始めた。

 

「おい、生徒会のメンバーだ」

 

その理由はこの学園の生徒会の、マドンナである三人。

 

「出遅れたわね、席あるかしら?」

 

生徒会会計・アリサ・ミハイロヴナ・九条

 

「大丈夫よ~私あっちでクラスの子達と食べるわね」

 

生徒会書記・マリヤ・ミハイロヴナ・九条

 

「マーシャ先輩、お気遣いいただいてすみません」

 

生徒会広報・周防有希

 

生徒会において、いやこの学園において、美人として知られる三人がカフェテリアに現れたのだ、当然、生徒達はそのメンツにざわついていた。

 

「すごい美人姉妹だよね‬‪、九条さん達って‬」

 

「いいよな、九条先輩。‬‪お近づきになりたいぜ‬」

 

生徒会の三人を見て、丸山はそう無謀な夢を抱いた。

 

だが

 

「でも九条先輩って‬‪彼氏いるらしいよ、今まで告白した男子が‪ことごとく彼氏を理由に‪断られてるみたいだからね‬‬」

 

「まっ彼氏がいなくても‬‪毅じゃ無理だろ」

 

「るっせー!‪アーリャ姫と仲がいいからって‬‪調子乗んなよ!‬‬‪」

 

だがそんな丸山の無謀でささやかな夢を、清宮と政近はぶった斬り、丸山はアーリャと仲が良い政近に、そう文句を言った。

 

「くう~羨ましいぜ!‬あの孤高のお姫様に‪愛称で呼ぶことを‬‪許してもらってるなんてよ!」

 

「まあな…‬‬‪呆れられてばっかりだけどな‬」

 

「無関心よりはマシだろ‬。‪アーリャ姫って基本的に‬‪誰とも話さないし」

 

「まあ…俺は1年以上隣の席だし‬」

 

丸山のその言葉で、政近の脳内には、時々自分にデレるアーリャの姿、そして転校して来たばかりのと時の姿が脳内を横切った。

 

「やっぱりあの中で‬‪アタックするんなら周防さんかな。‪話しやすい分、アーリャ姫よりは‬‪ワンチャンありそうだよな~まあ、高嶺の花って事には‬‪変わりないけど‬」

 

「ワンチャンあるかな~?‬‪告白を断った回数では‬‪九条さん以上らしいよ?」

 

「そうなんだよな…」

 

どうすればモテるんだろう、そんな顔を丸山がしていると。

 

「…美人と言えば、ヒルデさんも結構な美人だけど、毅的にはどうなの?」

 

清宮がそう徐に聞いた。

 

「ヒルデさんか…まぁ、確かに美人だし、性格も明るいし、アタック出来るならしたいけど…ヒルデさんの場合は」

 

丸山が何かを言おうとしたその時。

 

「みろ!今度は保安委員会のメンバーだぞ」

 

「きゃあ!!ラインハルト様よ!!」

 

「今日もなんて、高貴なお姿…」

 

生徒会メンバーに続き、保安委員会委員長のラインハルトと副委員長のヒルデ、そして委員会メンバーでは無いが、彼の片腕の良世の三人が、まるで軍人の様に堂々とした姿勢と歩みで、カフェテリアに入って来た。

 

「お兄様が、あれだからな…」

 

「あぁ…確かに、ヒルデさんのお兄さん、カイザーだからね」

 

「頭もいいし、顔も良い、何より皇帝の様なカリスマ性…何もかもが俺たちとは規格外すぎて、カイザーにはもう嫉妬も湧かないぜ。そんなカイザーがお兄様じゃあ、正直ハードルが高すぎるぜ」

 

そしてその、高貴さが滲み出ると言うレベルを超えて、太陽光の様に輝いて見えるラインハルトの姿を見て、清宮と丸山の二人はそう言った。

 

そう、ヒルデも金髪碧眼、そして明るい性格と、ルックスと表向きの性格だけを見れば、先ほどの生徒会メンバー三人に引けを取らない。

 

現に男子生徒、はたまた女子生徒の中ですら、彼女に告ろうとする人は数多いる。

 

だが、そんなチャレンジャー達は必ず、彼女の兄であるラインハルトと言う障害にぶつかる。

 

天才的頭脳

 

ヨーロッパ人の理想とも言うべきビジュアル

 

そして圧倒的な帝王の貫禄

 

華麗なる血筋

 

ヒルデの前に立ちはだかる、兄ラインハルトと言う壁は、某アスレチック番組に出てくる、そり立つ壁以上の障壁であり、彼女に告ろうとするチャレンジャーたちは、その壁を前にして、ことごとく戦意を喪失。戦わずして身を引くのだ。

 

 

「あちゃー席満杯だねー」

 

「まぁ仕方ない、時間も時間だ」

 

「だが、こうなっては、誰かと同席させてもらうしか無いな」

 

そして、そんな殿上人達…ラインハルトの帝国の最大の家臣達であるヒルデ、良世、そして帝王のラインハルトの三人の、先程の生徒会役員の三人の癒されるオーラとはまた違う、まるで平伏したくなる帝王とその重臣達のオーラに、女子だけで無く、男子すらも魅了され、圧倒されていた。

 

「あら、ラインハルト君」

 

「やぁ、Fräulein周防」

 

そんな中、そのオーラに圧倒される事なく晴らしかけて来た有希にラインハルトは笑みを浮かべそう挨拶をした。

 

「見て、おひい様とラインハルト陛下のツーショットよ…」

 

「東洋の姫と西洋の帝王…推せる、これは推せる!」

 

「あそこのオーラキラキラしてるな…」

 

その雰囲気はまるで、お金持ち学園を舞台にした少女漫画の一シーンのような、そんな雰囲気であり、外野の皆はそのキラキラした光景に、魅了されていた。

 

だが一方で

 

「それと、Fräulein九条…」

 

「どうも…ラインハルト委員長」

 

ラインハルトとアーリャ、この二人が互いに挨拶をした瞬間、一瞬で先ほどの煌びやかな雰囲気は消し飛び、まるで決闘を目前にした二人の侍を前にした様な雰囲気がこの場を包んだ。

 

彼女の名誉の為説明しておくが、別にアーリャもラインハルトも互いが嫌いだとか、軽蔑しているだとか、負の感情を持っているわけでは無い。

 

二人は、そこまで仲良しと言うわけでは無いが、ラインハルト自身保安委員会委員長を務める傍ら、生徒会監査と言う役職についており、生徒会作成の書類チェックなどの仕事をする為、結構な頻度で顔を合わし、共に仕事をする事も多々ある。

 

そしてその際、軽い雑談をする事も珍しく無く、またラインハルトの妹であるヒルデが、アーリャと同じクラスである事から、アーリャとラインハルトの関係は言うなれば、仲は悪く無いが、二人っきりにしたら共通の話題がなく絡みづらい程度の仲という関係である。

 

しかし一方でアーリャには、どうしてもラインハルトに対して敵意…いや、対抗意識を持ってしまう事がある。

 

それはテスト

 

アーリャは日本に移住し、この学校に転校してくる前、すなわちロシアの学校でも、常に主席を取り続けていた秀才。

 

しかし

 

中3の中間テスト

 

「うそ…」

 

当時のアーリャは、IQ3しか無い様な顔で、張り出されていたテスト結果に呆然としていた。

 

今まで学業では、1位しか取ったことが無かったアーリャは2位に転落、そしてロシアの学校でも自分の特等席であった1位の椅子には、同じ時期に転校して来た、別のクラスのドイツ人のラインハルトなる生徒の物となっており、しかもその成績は…

 

「…ノーミス」

 

全教科オール100点、パーフェクトゲームと言う、凄まじいものであった。

 

さらに

 

「すごいじゃないですか、ラインハルト君。満点合格なんて」

 

「ふっ、兄様にとってはいつものことだよ有希ちゃん。さすが天才の兄様」

 

「まぁ、当然の結果だな…」

 

たまたま、ラインハルトと一緒にテスト結果の張り出しを見ていた有希、ヒルデ、そしてラインハルトのその言葉…特にヒルデのその一言と、ラインハルトのこんなテストでパーフェクトを取るなど当然の事だろ、と思っている様なスカした顔が、アーリャの心に深く刺さった。

 

「悔しい…」

 

悔しい

 

「悔しい…!」

 

悔しい!

 

「悔しい!!」

 

悔しいッ!!!

 

アーリャの向上心は人並み以上に強い。

 

上があるなら目指したいと言う理由で、生徒会会長を目指しているほどに。

 

だからこそ、アーリャの心にはラインハルトに対して、敵対心…いや!ライバル心が宿っていた。

 

恋愛対象としては見ていない、しかしアーリャにとってラインハルトはまさにリスペクトに値する人物であると同時に、絶対に勝ちたい高い壁なのだ。

 

その為

 

「な、なんか修羅場の様だな…」

 

どうしてもライバルとして意識してしまい、二人が揃うと、時々この様に、バチバチとした空気が漂ってしまうこともあるのだ。

 

「なんかおもしろ〜い、あっそうだ、写真撮って石上君に送ろ〜と。えっとタイトルは…バチバチな雰囲気の兄様とアーリャちゃん、まるでモスクワの戦いみたいでワロス。石上君よ震えて眠れ…と」

 

そしてヒルデは、面白そうに笑いながら、その光景を写真に収めていた。

 

「アーリャ姫とラインハルト陛下のツーショットもいいよな〜」

 

「そうそう、お互いをライバル視していて、高め合ってそうな感じが…」

 

そして呑気な外野の皆様…

 

「さて、とにかく席に座りましょう」

 

そんな中、有希がアーリャとラインハルト、そして良世のヒルデの2人に言った。

 

「あぁ、そうだな…」

 

そして、昨日のランチメニューである、鶏肉のソテー定食が乗ったトレーを手にしたラインハルトはそう言うと、まりを見回した。

 

すると多くの生徒達…女子は下心から、男子はラインハルトへの忠誠心からか、皆親切心とは違う、異様な思惑が混じった様子で、こっちに座ってくれとアピールする様に席をずらしたりしていた。

 

(不味いな…これではどの席に座っても、後で禍根が残りそうだ…)

 

ラインハルトはナルシストでは無いが、自分自身の優秀な頭脳をフル回転させ、高い情報分析能力を駆使し導き出した結果、この状況では、誰の席に座っても、一緒に同席しなかった人達と自分の間で禍根が残ると判断

 

その為、誰の席に座るかどうかを自分自身では、決められなくなっていた。

 

(仕方ない…)

 

しかし、この状況でもラインハルトはその優秀な頭脳から、最適解を弾き出していた。

 

「Hilde, es tut mir leid, aber bitte gib dein Bestes.」

<ヒルデ、悪いが上手くやってくれ>

 

ラインハルトは、肘で軽くヒルデをこつくと、そうドイツ語で言うと、徐に政近達の席の方に、自身の目線を合わせた。

 

「ふっ、Jawohl mein Bruder」

<はい、兄様>

 

そして、そんな兄の思いを察したヒルデは、そうドイツ語で言うと。

 

「有希ちゃん、どこに座る?」

 

徐に有希に聞いた。

 

すると

 

「そうですね…ここは、政近君の席に座りましょう」

 

有希はそう言い、その言葉を聞いたヒルデは、ラインハルトの方を向くと、ラインハルトは満足そうに頷いた。

 

「Ja、そうしよう!」

 

そう言うと、ヒルデと有希の二人は、政近達が座る席に近づくと。

 

「おーい政近君、一緒に食べよー」

 

「ご一緒してよろしいですか、政近君」

 

ヒルデと有希の二人は、それぞれそう政近に聞いた。

 

「あぁ、俺は良いけど…」

 

それに対して政近は、ヒルデと有希、そして少し離れたところで不機嫌そうな顔をしているアーリャといつも通り難しそうな顔をする良世、そしてラインハルトの方を見た。

 

(計五人…か)

 

今政近が座っている席は六人席、そして政近、清宮、丸山の三人が座っており、座れる席の残りは三つ。

 

正直、あのメンツ全員が座る椅子は無かった。

 

(まぁ、でも二つ椅子をどこからか借りて、通路側と、窓際に椅子を置けば…)

 

そう政近が心の中で思っていると。

 

「それじゃあ、俺たち別の席で食べるわ」

 

「政近はゆっくりして行って」

 

「えっ、いいのか…?」

 

まだ食べ終わってないのに、席から去ってゆこうとする丸山と清宮に、政近はそう聞いたが。

 

「いや…おひい様やアーリャ姫だけでもキラキラしてるのに、ラインハルト様まで来たら、俺ら灰になっちまうから…という事で、後は頑張れよ」

 

丸山は耳元でそうヒソヒソと言うと、席を立ち清宮と共に去って行った。

 

こうして、生徒会と保安委員会のメンバーは無事に席を確保することに成功した。

 

「見てあそこの席…」

 

「ま、眩しい!眩し過ぎる!!」

 

「アーリャ姫とおひい様だけでも眩しいのに、ラインハルト様やヒルデ殿下、それに良世君まで…」

 

「あ〜目が、目がー!!」

 

だがイケメンと美女が一箇所に集まったこの席は、色んな意味で注目の的であった。

 

「全く…食事中に喧しい奴らだ」

 

「そう言うな良世。何かと注目される、生徒会メンバーの皆が居るのだ、こうなるのは仕方ない」

 

「あら、そのお言葉そのままお返ししますよ、ラインハルト君」

 

そしてそんな周りの反応に、良世は煩わしそうに、ラインハルトは苦笑いをしながらまるでテーブルマナーのお手本の様な様子で食事をしながら、有希はいつもの様に微笑みながらそう言った。

 

「そう言えば政近」

 

「どうした、ラインハルト?」

 

「Fräulein周防から聞いたのだが、例の件…感謝するよ」

 

「あぁ、気にすんな、そっちも忙しかったんだろ?」

 

「あぁ、あの時はラグビー部に対する査問会の準備で忙しくてね、本当に助かったよ。今日の夜にでも、お礼を持って伺わせてもらうよ」

 

「おう、なんかこっちこそ悪いな」

 

ラインハルトと政近の二人はそう言った。

 

「…所で、二人ともすごいものを食べてるね」

 

すると、話を横で聞いていたヒルデが、政近と有希の食べているラーメンを見て思わずそう言った。

 

「確かに…リヒトホーフェン大尉の機体と同じくらい赤いな」

 

「正直食べ物とは思えんな」

 

そしてラインハルトも、目の前にある、ドイツの英雄マンフレート・フォン・リヒトホーフェンの乗った機体よりも赤いラーメンに、思わずそう言い、良世に至っては少し引いていた。

 

「あら、結構美味しですよ」

 

一方の有希はそう言うと、躊躇なくそのラーメンを口にした。

 

「美味しですね、辛さはもう少しあっても良いと思いますけど…」

 

「ラー油があったら良いよな…」

 

「そうですね…今度生徒会の議題で、検討してみても良いかもしれません…」

 

「いや、保安委員会のメンバーの前で公私混同甚だしい事言うな」

 

「冗談です」

 

政近と有希はそう和気藹々と話していたが。

 

「本当に人間なのか…?」

 

辛い事で有名なこの学校の激辛ラーメンを顔色ひとつ変えず食べた、二人にヒルデはドン引きしていた。

 

すると

 

「保安委員会と言えば…ラインハルト君とヒルデさんは、良世くん以外のお友達と食事したりする光景はよく見かけますが…同じ委員会の、石上君とは食事を食べたりしないのですか?」

 

「…そんな事はないが、石上自身あまりカフェテリアで食事するのが好きじゃないみたいだからな、無理強いは出来ないからな」

 

「一応今日誘ってみたんだけど"カフェテリアと言う名前の陽キャ共の巣窟に僕を連れてゆこうとするなんて、新手のイジメですか"と返されたからね〜」

 

有希の徐に聞いて来た質問に、そうラインハルトとヒルデはそう答えた。

 

有希が述べた石上という人物は、保安委員会においてヒルデと並ぶ二人目の副委員長である。

 

本名は石上御幸は、ラインハルトが率いる保安委員会において、ヒルデが指揮を取る、いじめなどの摘発を行う生徒監査局と双璧をなす、部活動の不正を監視し調査する組織監査局のリーダーを務める、保安委員会きっての情報処理のエキスパートであり、その事務処理能力は圧倒的であり、生徒会メンバーからも一目置かれるほどである。

 

一方で自他共に認める陰キャであり、部活動などの青春を謳歌する人達に対する憎しみは凄まじく、その憎しみをパワーに、仕事に励んでおり、仕事の内容とその原動力の源のお陰で、生徒達からは敬愛を込めて"青春ファッカー石上"の愛称で親しまれている?人物である。

 

「そういうわけで、石上君は人が大勢集まる場所にはあまり来たがらないんだよね〜」

 

「そうなんですね。彼、結構面白いのに少し勿体無い。そうだ、今度機会があったら生徒会役員と保安委員会の役員どうして、親睦を目的とした昼食会を開きませんか?」

 

「昼食会か…絶対石上君のライフがゼロになってそうで面白そ〜」

 

「やめてやれ二人とも」

 

同じオタクとして石上と言う人物を知っていた政近は、悪い目的で石上を連れて来ようとしていた有希とヒルデにそう言った。

 

すると

 

「…久世君と周防さん、随分と仲が良いみたいですね」

 

さっきから仲が良さそうに接する政近と有希を見て、アーリャは思わずそう二人に聞いた。

 

「私達幼なじみなんです‬」

 

「幼なじみ…‬」

 

「はい、幼稚園からずっと‬‪同じ学校なんですよ」

 

「そう…なの…」

 

幼馴染…そのワードに、アーリャは、思わず心に針が刺さったような気持ちになりながら、そう呟いた。

 

「うん?どうしたんですか、ラインハルト君、ヒルデさん?」

 

先ほど、有希が政近との関係を話していた際、ラインハルトは何やら呆れた様子、ヒルデは面白い事を隠すように笑いを堪えている様であるなど、この姉妹が少し不審なリアクションをとっていた事に、気になったアーリャは思わずそう聞いた。

 

「いや…何でもない」

 

しかし、ラインハルトはそう言った。

 

「所で、アーリャちゃんと有希ちゃんは仲良いの?」

 

すると、すかさずヒルデが話の内容を変えるように、二人にそう聞いた。

 

「仲よくしようとしている最中…‪でしょうか‬。‪少なくとも私は‬‪アリサさんとお友達になりたいと‬‪思っていますけれど」

 

そう言うと、有希はアーリャに微笑んだ。

 

「私と友達になっても‬‪楽しくないと思うわ‬」

 

だが一方のアーリャは、自分自身の性格、そして周りから孤高の姫君と呼ばれている事などを考え、思わずそう言った。

 

「つまり私と‬‪お友達になること自体は‬‪嫌ではない‬‪ということですよね?」

 

「えっ…まあ…そうね…‬」

 

しかし有希はアーリャに迫る様な様子でそう聞きき、それに対してアーリャは少し照れくさそうにそう呟いた。

 

「所で…政近君。生徒会に入るという話は‬‪、検討してくださいましたか?」

 

一方で、話を振った側である有希は、アーリャを揶揄う様な様子で、政近の側に椅子を寄せ、そう聞いた。

 

「何度も言ったろ、俺は入る気ないって‬」

 

何度もアタックされている事なのだろう、政近はあからさまに、またこの話かと、思っている顔でそう言った。

 

「政近君なら私や‬‪アリサさんとも‬‪うまくやれると思うんです‬…ねぇ、ラインハルト君?」

 

「まぁ、適任ではあるかもしれないね」

 

有希にそう聞かれたラインハルトは、静かにそう肯定した。

 

「そうなの久世君?」

 

「有希に頼まれたから出たんだよ‬。‪うちの生徒会選挙は‬‪会長副会長のペアで立候補‬‪しないといけないからしかたなくな…」

 

「にしては、なかなかの辣腕を発揮していたと聞いたぞ」

 

初めてその事を知ったアーリャは、少し驚いた様子でそう聞き、それに対して政近は、それほど大袈裟に驚かれる事ではないと言いたげな様子でそう言ったが、ラインハルトは謙遜するなどでも言いたげに、微笑を浮かべながらそう言った。

 

すると

 

「それを言うなら、ラインハルトだって、日本に来る前は、ベルリンにあるウチの学校の姉妹校で会長やってたんだろ?」

 

それに対して政近はそう言った。

 

「そ、そうなのラインハルト委員長!?」

 

「あぁ」

 

ラインハルトおよびアーリャ、転校して来てから一年が過ぎた今、初めて明かされる驚愕の事実にアーリャは思わずそう言い、そしてその横では、ラインハルトの妹であるヒルデが、自分の事の様に誇らしそうにしていた。

 

「兄様はすごいんだよ!ベルリンの学校でも、そのカリスマ性と敏腕ぶりで学校を引っ張って、何より2年前に始まった、姉妹校の国際交流会も、兄様の提案で始まった事だからね」

 

「大袈裟な。俺はただ…これからのグローバル時代、国を超えた国際協力なども必要になると考え、せめて、姉妹校同士の国際的交流会を行うことによって、生徒達に国際協調の大切さと、国際的なコネクションの構築の機会を与えられたら良いと思って行動しただけだよ」

 

「そう…なのね」

 

ラインハルト自身、大した事はやっていないと言いたそうな口ぶりでそう言ったが、アーリャ自身は、目の前にいる金髪碧眼のドイツ人に対して、改めて脅威を感じていた。

 

(この人も…来年の生徒会長戦の時は、周防さんと私のライバルとして出馬して来る…)

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