皇帝と呼ばれるドイツ人のラインハルト様 作:ロシデレは良い
世間一般で一等地として知られる、東京の赤坂にその屋敷はあった。
鉄製の門、その先に見える綺麗に整えられた庭に、ヨーロッパの建築様式をふんだんに使った豪邸こそ、ラインハルトとヒルデ、そして二人を連れ、駐在武官として日本に派遣された、ドイツ空軍大佐の父とその嫁である母の、4人が暮らす屋敷であった。
元はラインハルトとヒルデの母方の一家である、日本そして世界有数の某大財閥がが保有して居る邸宅だが、ラインハルトとヒルデの父が、駐在武官として子供達を連れ、日本に派遣されると言う事で、二人の母の弟が、日本での住まいとして用意した邸宅である。
そんな屋敷の一室では、今この屋敷に住む、四人が朝食をとっている最中であった。
基本的に、ライヒスブルク一家の食事は、平日は朝昼晩、あるいは朝晩は、雇われている使用人が作り、土日祝日の休日は、母か父、たまに兄であるラインハルトや妹のヒルデが作る事が多い。
今日は平日の朝という事もあり、三つ星シェフに匹敵する、母方の一族お抱えシェフ達が作った、ブリティッシュスタイルの朝食を、一家四人で味わっており、家族が揃う食事であっても、その一挙手一投足はマナーのお手本の様な、育ちの良さを感じさせる、エレガントな様子で、食事をして居た。
「そう言えば、ラインハルト」
「はい、母さん」
すると食事の最中、に優雅にハーブティーを嗜むラインハルトの母が徐に口を開いた。
正直、ヒルデもラインハルトも、父親の遺伝子の方が強かったのか、目の色も、髪の色も、あまり母には似て居ない。
だが、母の目に宿る高く高潔な心は、まさに彼女はラインハルトの母であると納得させるに相応しいものである。
そんな母をラインハルトは、少し高飛車な所と素直じゃない所があるけど、優しい母だと尊敬して居た。
「アンタの想い人とは、最近どうなの?」
「ゔっ…それは」
そして、そんな尊敬する母は、中学3年の終わりの頃から、ラインハルトが、誰かに対して恋をしている事を見抜居ていた。
「その反応を見るに、まだ告白もキッスもして居ないみたいね。本当に恋愛に関してはヘタレねアンタ」
因みに、流石にラインハルト自身、まだ告白も付き合っても居ないのに、有希の名前を出すのは、相手に迷惑をかけてしまうと言う…のを言い訳にして、単に恥ずかしい為、母にも、誰を好きになっているか名前は言って居ない。
「どうせアンタのことだから、こっちから告るのは負けだとか、未来のオスタニア帝国の臣民に示しがつかないからだ、何んだと理由をつけて、向こうから告って来るのを待ってるんでしょ?」
「いや…それは…」
だが母は、そんな息子の心のうちを汲み取ってくれているのか、息子が誰かに恋をしていると言う事実のみを受け入れ、時々彼に何故か親身になって、アドバイスを与えてくれる。
「ラインハルト…私は、貴方がいつ、その好きな人に告白しようが、口を出す気は無いわ…だけどね、アレやコレやと駆け引きをして居ても何も始まらないわよ。恋愛はスピード勝負よ。好きなら好きと、しっかりと早く言いなさい」
「…まぁ、それは…そうですが」
(それが出来たら苦労しないのだが…)
母からの助言を聞いたラインハルトは思わずそう言ったが、心の中ではそう思って居た。
正直ラインハルトの母は、こと恋愛に関してはすぐに告白しろと、スピード勝負をする様アドバイスをして来る。
だが、周防有希に対する恋心は、ラインハルトにとっては、実は初恋…そんな恋をこんな直ぐに終わらせてしまう様な決断をして良いのか…そもそも、失敗したら自分がどんな行動に出るのか想像がつかないなどの、思考がラインハルトの脳内にちらつき、母のアドバイスとは言え、こればっかりは直ぐに出来そうにはなかった。
すると
「そうだよ兄様。早く告白しないと、ママみたいに、好きな人が他の人に取られて、挙げ句の果てに学生時代に一線を越えすぎて、高校生時代にできちゃった婚されたと言う、人生のEnd Niederlageを迎えちゃうよ」
話を聞いて居たヒルデは、ケラケラと笑いながら、故意に揶揄う様にそう言った。
「ヒルデ!またお前なんて事を…」
ラインハルトがそう言ったその時、金属製の食器が、食器皿の上に落ちる音が、食堂に響いた。
その音を聞いたラインハルトは恐る恐る、一方のヒルデは待ってましたと言わんばかりの視線を、その食器の音がした方に向けた。
「何で…そんな、古傷を抉るような事言うの…」
すると二人の目の前には、自分の娘が故意に放った、心の大量殺戮兵器がヒットし、爽やかな朝に相応しく無いほどの、真っ黒とどんよりした負のオーラが見えそうな様子で、ポロポロと泣き出す、二人の最愛の母の姿があった。
「うあぁああん!!私の愛する娘が、また言葉の家庭内暴力を〜〜!!!」
「ヒルデ!母さんの古傷を抉るのはよせと、いつも言ってるだろ!」
「ごめん、泣いているママって、いつも面白いからついうっかり⭐︎」
ヒルデによる、言葉の家庭内暴力を振るわれ、さっきの母としての威厳は消し飛び、子供の様に泣く二人の母、その居たたまれない様子を見て、ラインハルトは勢いよく立ち上がり、妹であるヒルデにそう言ったが、当のヒルデはテヘペロと、舌を出して、全く反省して居ない様子で、お茶目に謝った。
「他人を顧みない自己愛の権化…男を誑かすあのヘンテコヘアピン女…それまでは良い感じに距離を詰めて居たのに…アレがなかったら…しかも最後は神って…」
「しまった…古傷を抉られて、母さんの心が暗い過去の世界に連れてゆかれた…」
目の前でアニメ版Ζガンダムのラストで、精神を連れてゆかれたカミーユ状態になっている自分の母を見て、ラインハルトは思わずそう呟くと、徐に食堂から一時退出した。
すると
「ヒルデ毎回言ってるだろ、自分の母を泣かせるんじゃない」
先程まで英字新聞を読んでいた、ドイツ空軍の軍服に身を包んだ、金髪碧眼そしてエレガントみ溢れる、金髪碧眼の軍人…ラインハルトとヒルデ、二人の父である、ルドルフ・オットー・フォン・ライヒスブルク空軍大佐がそうヒルデに言った。
「良いかヒルデ、彼女はお前の母である以前に、私の妻…私が人生で出会った、愛する生涯の伴侶だ。それは分かるな?」
「うん、もちろんわかってるよMein Vater」
「では、それを踏まえた上で、もしお前が愛する人が、同じ様に泣かされたら、お前はどう思う?」
ヒルデの父、ルドルフは声を荒げたり、威厳たっぷりで何か物を言う事はないが、冷静に、そしてエレガントに、諭す様にヒルデにそう聞いた。
「もし好きな人がね…」
そう聞かれたヒルデの脳内には、ラインハルトの姿が浮かんだが、正直ラインハルトは、常人なら泣かされる様な事をされたら、泣く前に、相手を完膚なきまでに、それこそ骨一本、髪の毛一本残さず、叩き潰すタイプであるため、泣いたりする光景が、ヒルデには予想がつかなかった。
すると
「お前の事だ…おそらくラインハルトの事が、脳内に浮かんだのだろうな」
「あっ、やっぱり分かる?」
そんな娘の心の中を察したのか、ルドルフはそう言った。
「ではこう言い直そう。ラインハルトは除いて、それ以外に愛する人ができた場合…その人が泣かされた時、お前はどう思う?」
「私が愛する人ね…」
ルドルフは、先ほどの質問を言い直しそう言い、その質問に対して、ヒルデの脳内には、自分が好きだと思う人が泣かされているイメージが浮かんだ。
ヒルデの脳内世界
何処か薄暗くジメジメとした地下室…
ヒルデの脳内世界の設定では、この地下室は、オスタニア帝国皇帝となった、兄ラインハルト・フォン・ライヒスブルクが支配する帝国において、国の意向に従わない愚か者を取り締まる機関、帝国保安省…秘密警察本部の地下にあるバンカーであった。
そのバンカーの一室
綾乃「や、や…やめてください…お願いです…有希様…」
アーリャ「マーシャ…怖い…助けて」
マーシャ「アーリャちゃん、大丈夫…大丈夫よ…」
そのバンカーの地下室では、ボロボロの服を着せられ、手と足を拘束され首輪つなげられた、綾乃とアーリャ、そして涙を堪えながら、必死にアーリャを守ろうとするマーシャの姿があった。
そしてもう一人
ヒルデ「ふふふ…可愛い、反抗的な目をしたメス犬達が3人…これは、躾のしがいがあるね…」
灰色のドイツ軍の開襟軍服を着た、脳内世界ではこの秘密警察組織、帝国保安省長官の重責を担っていると言う設定の、ヒルデが、シュタールヘルムを被りアサルトライフルを持った、帝国保安省衛兵連隊なる部隊の兵士を連れ、鞭を手にしながら、悪魔の様な笑みを浮かべて居た。
アーリャ「わ、私達に…何するの?」
脳内世界でも誇り高い性格のアーリャは、恐怖の秘密警察長官となったヒルデを前に、恐怖で少し涙を流しながらも、気丈にそう啖呵を切った。
すると
ヒルデ「決まってるでしょ?せっかく、こんなに可愛いメス犬ちゃん達が居るんだから…」
脳内のヒルデは、そう言いながら軍服の上から着ていた、コートを衛兵に預け、そして黒い革手袋をはめると。
ヒルデ「徹底的に、私色に染めてあげようと思ってさー」
正直、健全な漫画やアニメ、小説であれば、お見せできない様なとんでもない、人を苦しみと快楽の底に突き落とす様な、性的、肉体的拷問道具の数々を、自慢のおもちゃを見せる様に3人に見せびらかした。
アーリャ「い…や…や、やめて…」
マーシャ「お願い…アーリャちゃんには…何もしないで…」
綾乃「有希様…政近様…助けて…」
その数々の拷問道具を前に、3人は恐怖と絶望で涙を流していた。
それに対してヒルデは
ヒルデ「Jetzt ist es Zeit für etwas Spaß und Spaß ...」
<さぁ、楽しい楽しいお遊戯の時間だよ…>
興奮気味にニヤリと、不敵に、悪魔の様な笑みを浮かべていた。
「で、どうなんだヒルデ…」
そして現実世界では、そんな妄想をしているヒルデに、ルドルフは改めてそう聞いた。
するとヒルデはフッと笑い、爽やかな様子でこう言い放った。
「すごく…そそられるね…」
「ちょっと!!」
「お前は何を言っているんだ…」
その一言に、母と片手にティーカップを手に、食堂に戻って来たラインハルトは、思わず一斉にツッコんだ。
すると
「うむ…そうだな…」
「ちょっとーー!!ルドルフ!?」
何故か父ルドルフも、思わず合意した様子でそう言い、それに対して思わず母は叫んでしまった。
正直、ラインハルトとヒルデの母と結婚した決め手は、彼女の泣き顔がキュートであったと言う理由である。
昔こっそりと、その事を話してくれたラインハルトは
(もしや、ヒルデのサディスト思考は父譲りか…?)
そう思った。
一方で
「うぇえええーーん!!!初恋の人は取られるし!!愛する娘は意地悪だし!!!何処で、育て方間違えたのーーー!!!」
「あははは!ママおもしろーい!」
机に突っ伏し泣き喚く最愛の母と、その光景を見てケラケラと笑い、母の泣く姿を写真で激写してる最愛の妹。
このカオスな状況を、とりあえずなんとか収めなければとラインハルトは判断した。
「母さん大丈夫、父さんも、俺も、勿論ヒルデも、母さんの事は愛してるよ。ほら、これで涙を拭いて、ハーブティーでも飲んで落ち着いて」
そしてラインハルトは、慰める様に、そう言うとハンカチと、母が泣いた時によく飲んでいるハーブティーを、差し出した。
すると母は、ハーブティーを一気に飲み干し、こころがリラックスした所で、ラインハルトが差し出したハンカチで涙を拭くと。
「うぁあああん!!ありがとうラインハルト!!やっぱり、持つべきは、優しい息子ね!!」
ハーブティーと優しくて優秀な息子に癒やされた母は、少し元気になり、ラインハルトに抱きつきながらそう言った。
そして当のラインハルトであるが。
(そう言えば…もしかして俺が恋愛に対して臆病なのって、この人の遺伝なのか?)
目の前で、母の威厳も何も無く泣いている、自分の母を見てそうラインハルトは思った。
本日の皇帝陛下の朝…
カオス