「完全体になりさえすれば……!」から始まる人外転生者の追憶 作:GT(EW版)
さて、キミにも語らねばなるまい……私と勇者ナナシの物語を。その思い出を。
私の名前はリラ・クーレスと言う。人類を抹殺する為、狂気の
そんな私がナナシと出会ったのは、私が第三形態の頃のことである。出会い、そして結ばれる二人──。
……ん、何だその言い回しって?
ああ、この私は、成長する度に姿を変えるのだよ。「魔物を超越したパーフェクトな究極生命体」をコンセプトに造り出された私の肉体には、地上で最も洗練されたフォルムを持つと魔族界隈でも評判な人気昆虫の要素が色濃く組み込まれている。故に私の成長過程もまた、昆虫のそれに近しかった。
タマゴから孵った頃の私もチャーミングな姿をしていてな。見た目は巨大な白ミミズと言った機能的なボディーを持っていたものである。その姿のまま一ヶ月ほど地上の草木を荒らし回り、幾度も脱皮を繰り返すとその体長は約8mまで達する。
この時点でも私は人間はおろか並大抵の魔物を凌駕する力を持っていたのだが、更なる力を手に入れる為に私の肉体は次の段階へ移行した。それが第二形態である。
第二形態は昆虫で言うところのサナギの状態になる。強靭な外殻に身を固めながら、その中で成体に向けてゆっくりと姿を変えていく。この時期に関しては私自身も記憶が曖昧だが、大体地中で三年と言ったところか……人間にとってはまあまあ長い時間を経て、私は次なる第三形態への羽化を遂げたというわけだ。
そうして地上に飛び出した私の姿は、かつての巨大ミミズとは様変わりしたパーフェクトなフォルムへと変貌していた。
幼体の頃は8mあった体長は3m程度まで縮んでしまったが、その分筋肉は凝縮されより強固な肉体となった。
その肉体を覆う鎧のような外殻の前では、名高いドラゴンが何十発とブレスを撃ち込んでも傷一つ付けることはできない。背中の外殻は展開し、中から虹色に輝く透き通った翅を広げることで時速500キロものスピードで飛行することが可能だ。
鋼鉄よりも硬く、サラマンダーよりもずっと速い。もちろんパワーも圧倒的であり、その強靭な肉体を支える六本のしなやかな脚は下二本の脚による二足歩行も可能で、上四本の脚から放つパンチはダイヤモンドすら粉々に砕き割ることができる。
体色は幼体時代と同じく、保護色など知ったことかと言わんばかりの堂々たるパールホワイト。この時点で私は、それまで生態系の頂点に君臨していた竜種を上回る生命体へと進化を果たしていたのだ。
フフフ……そんな私の一番のチャームポイントは、頭の上に聳り立つ二本の長いツノだ。
振り回せばいかなる存在だろうと真っ二つに切り裂く刃となり、魔力を込めれば上空の敵をも肉片一つ残さないビームが奔り出る。薙ぎ払えば人間の村一つ一撃で消滅させることだってできただろう。
私の創造主である狂気の科学者は、最強の生命体を造り出すに当たり魔族界隈でも人気の昆虫──「カブトムシ」を参考にしたようだが、姿は似ていても能力は似ても似つかなかった私である。上空からビームを撃ち続けるだけで人間を滅ぼすことができるその力は、まさしく彼の意図した人類抹殺マシーンの名に相応しいものだった。
──しかし、ただ一つ創造主にとって誤算だったのは、そんな兵器が「人間の心」を持っていたことだろう。
……ああ、そういうことだ。
今まで多くの転生者たちと関わってきた
それに気付いたのは、サナギから羽化して第三形態に変態した後からのことである。おそらくは姿が変わり頭脳の容量が飛躍的に増量したことで、それまで封印されていた前世の記憶を解放することができたのだろう。
尤も人間としての記憶はほとんど残っていなかったし、残っていたのは何故か微妙なサブカル知識ばかりだった。自分の名前や姿形さえどのようなものか思い出すこともできなかったものだが……厄介なことに、前世の人生で培った人間的な倫理観だけは半端に引き継いでしまったのだった。
故に私は、自らの手で今生に与えられた「人類抹殺」の使命を果たすことは無かった。肉体が完全に別物である以上は人間の倫理観そのものというわけではないのだろうが、進んで人殺しをする気にはなれなかったのである。そんなことをしても私に何か得があるわけでもないし、生態的にも人を捕食しなければ生きられないわけでもない。私の好物は樹液や果物であって、人の肉では無いのだ。こう、カブトムシ的に考えて。
そういうわけで私は、魔族によって造り出された身でありながらも創造主の命令に従うことは無かった。
──さて、多くの転生者を見てきた君に問いたいが、他にも私のような存在はいたのかな?
……ああ、やはり別の世界ではそこまで珍しい話ではないのだな、人外転生というのは。
えっ、私みたいに人外転生した後、美少女になってしまうのもメジャーな事象なの? ええ……凄いな異世界……
……ふむ。しかしそう言った転生者たちもまた、いずれも自らの意思で自分の行動方針を決めていたと。
使命に従って素直に魔族の味方をするのもいるし、逆らって人間の味方をする者もいる。大抵は美少女が多い方の勢力につくと……その言い方は何か嫌だな。……まあ、種族関係無く気に入った存在の味方をするというのは私も同じか。私も人外転生者としては、まだまだベター寄りの存在だったということか。
──と、話が逸れかけたね。オーケー、話を戻そう。
そんなこんなで第三形態のマッチョ系カブトムシのような姿となった私は、襲い来る外敵をちぎっては投げちぎっては投げ、数日と経たず周辺地帯の生態系の頂点に君臨していた。
求道者ではない私は当初、別段この力で最強のモンスターを目指していたわけでは無かったのだが……次々と現れる外敵を駆逐している内に気づけば四六時中戦闘を続ける修羅と化していたのである。
──私がキミが聖剣を託した勇者、「ナナシ」と出会ったのは、その時だった。
一目見て、ただ者ではない人間とわかったよ。
この中世ナーロッパ的な剣と魔法の世界の中で、あの男はただ一人和装に身を包み、腰には鞘を、右手には一振りの刀を携えていた。
即ち──あからさまにSAMURAIなのである! それまで私を討伐しに来ては投げ返してやった王国軍の兵隊たちとは一線を画す装いをした黒髪の男との出会いが、この私リラ・クーレスという人外転生者の運命を決定付けることとなった。
それはまさしく運命の出会い……今となっては懐かしい話だが、忘れられない思いである。ふふっ。
さて、無敵の名を欲しいままにしていた当時の私に対してこの期に及んで挑んでくるような輩は、誰も彼もがまともな連中ではなかった。
それは私が拠点としていた住処を自らの縄張りと主張する高慢ちきなドラゴンであったり、無謀にも人類存亡を懸けて挑んできた王国の英傑たちであったり……私を制御下に置き、本来の使命を果たさんと命令してきた魔族たちであったりもした。挑んできた命知らずたちは、いずれも相応の肩書きを持つ猛者ばかりだった。
しかしそんな彼らさえもパーフェクトな生命体である私の前では赤子も同然であり、徒党を組もうとまるで歯が立たなかったのだ。
何の努力もせず、持って生まれた圧倒的な力を振るうだけで強敵たちを一方的に蹂躙していく。そんなことを幾日も繰り返していけば、最初は謙虚堅実をモットーとしていた私の心にも次第に変化が訪れていた。
──私に出させてくれよ……本気を。
すなわち、イキリカスオオカブトの誕生である。
……いや、モンスターでありながら人に近い倫理観を持っていた私だが、それは経験や立場の変化に伴って人間臭い感情に揺れやすい存在になったということでもあり──それはもう、増長期真っ盛りだったのだ。
自然界故に美味い果物を喰い美味い樹液に酔う以外、ロクな娯楽が無かったというのも言い訳になるが……この時は勝ちまくりモテまくりのセカンドライフにすっかりのぼせ上がっていた。
そんな風に調子に乗っていたからバチが当たったのだろう。
望み通り本気を出させてくれる相手──自らを「ナナシ」と名乗ったその勇者と出会ったことで、それまで無双していた私は初めて完膚なきまでに叩きのめされたのであった。
俄には信じ難い光景だった。
敵は竜種どころか、私よりも圧倒的に小さい人間が一人。
しかし彼がその手の刀を振り払う度に、鋼鉄はもちろん竜の鱗よりも頑丈な筈の私の肢体や外殻を豆腐のように斬り裂いていったのである。
一秒間の間に百回ぐらいは斬られていただろう。動体視力もパーフェクトな私の複眼ですら捉えきれない超高速の斬撃は、この肉体の頑強さをものともせず斬り裂いていった。
コイツだけ世界観間違えているだろ……と思うほどに、理不尽な強さだった。所詮は人間、遠距離ならこっちが有利ィとビームを引き撃ちすれば当たり前のように刀身で切り払われ、あまつさえピッチャー返しのように打ち返されたりもした。
空へ逃がれようとすれば刀を振り抜いた風圧から繰り出される真空波で翅を引きちぎられ、かと思えば次の瞬間には六本の脚が根こそぎ切り落とされている。
私は再生力もパーフェクトなので、欠損した部位は即座に再生することができた。それまではあらゆる攻撃を無傷で凌いできたから気づかなかったが、頭の中にある核を破壊されない限り何度でも完全な状態に再生するその超再生力こそが、私の中で最も強力な能力だったのかもしれない。
しかし肉体は再生できても、心は別の問題である。
再生した次の瞬間には自分の身体が再生前よりも酷い状態へズタズタにされていく光景にはもはや泣きたくなった。泣いた。
「ちくしょう……チクショオオオーッ!!」
具体的にはこんな感じに泣き喚いたのである。我ながらブザマな姿だった。
人外の究極生命体に生まれ変わった私は、もはや人間では太刀打ちできない無敵の存在になったのだと驕っていた。
しかし目の前に現れてしまった本物の究極生命体──勇者と呼ばれし者と出会ったことで、私はそれまでの認識の全てが間違いであることを理解してしまったのだ。
どんな攻撃をしても通じない。
どんな防御も貫かれる。
逃げようとすればバラバラにされる。
再生したらさらにズタズタにされる。
あっこれ何度再生しても無駄な奴だと悟ったその時、私は自らの死を確信する。
そうして生まれて初めて味わった死の恐怖と決定的な挫折の中で、私は半ば錯乱して言い放った。
「完全体に……! 完全体になりさえすれば!! あんな奴ごときにぃ……!!」
……などと言う、意味のわからない供述である。
しかし私の口からそんな負け惜しみを聴いた瞬間、それまで一片の容赦も無く私をなます切りにしていたSAMURAI勇者の眉がピクリと反応したのだった。
「……日本語?」
カブトムシのような口から放たれた私の、当時の野太い声を聴いた瞬間、彼はその言葉がこの世界には存在しない言語──日本語であることに気づいたのだ。
驚きに目を見開き、刀を止める勇者。
その隙に、翅を広げて逃げようとする私。
次の瞬間ダルマにされて転がされる私。
全然隙が無かった。少しは動揺しろよ、化け物が。
そんな彼はいつでもトドメを刺せるように私の頭に刀の切っ先を突き付けると、先程の言葉について問い掛けてきた。
「……何故、日本語を知っている?」
「ゑ?」
思えばその時が初めて、彼が私のことを「駆除すべき害虫」から「得体の知れない虫」へと認識を変えた瞬間だったのかもしれない。
虫扱いであることは依然変わらないが、流れ作業のように私の身体を斬り裂いていた時とは違い、そこからの彼は私の一挙一動を一層強く警戒するようになったのだ。
……絶対に逃げられなくなったという意味ではよりピンチになってしまったと言えなくも無いが、同時に巡ってきた対話による戦闘中止のチャンスに、私の舌は回った。それはもう、我ながらよくあそこまで自分の身の上を簡潔かつ明瞭に、パーフェクトに説明できたと思うほどに回ったものである。
──と、そんな経緯で私は、彼に対して自分が異世界転生した元日本人であることを明かしたわけだ。
すると彼は遠い昔を懐かしむような郷愁の表情を浮かべた後、即座にそれまで浮かべていた死んだ目つきに戻った。
そう、勇者ナナシの特徴を記号的に挙げるならば、その「死んだ目」がそれに当たるだろう。戦闘以外の感情を余計なものとして削ぎ落とした、虚無の眼差し。すごく……ハードボイルドな雰囲気が漂っていた。
私は彼が勇者であることは一度たりとも疑ったことはなかったが、万人がイメージする希望の象徴の眼差しとは実に乖離していたことだろう。顔立ち自体は整っていたと思うがね。
まるで人生の大半を終わりの無いクソゲーのプレイに費やしてきたかのような眼差しで、彼はダルマに転がした私を見下ろし続ける。
「さっき言っていた……「完全体」と言うのは、何だ?」
言語の次には、言葉の内容に対しての問い掛けである。
しかし実際のところ、この時の私の言葉には見苦しい負け惜しみ以外の意味など無かった。
Q.完全体って何?
A.私にもわからん。
そもそもの話、サナギの状態である第二形態から三年掛けて羽化したのが第三形態の私である。昆虫で言えば成虫に当たる為、言うならばこの時点で私は既に完全体になっているのだ。
と言うか、私自身もこれ以上変態する余地は無いと思っていたし。故にこの時の私が吐き捨てた「完全体になりさえすれば……!」という言葉は、働く気の無いニートが「俺が本気にさえなれば……!」とほざいているのと変わらない無根拠の強がり以外の何物でもなかった。
だが、そんな真意を教えてしまえばどうなる? 「あっそうじゃあ死ね」と即刻トドメを刺されて終わりである。
私が元日本人の転生者だという話に驚いた以上、彼自身も転生者かそれに近しい存在であることはパーフェクトなこの頭脳から察していた。
ならば同郷のよしみでここは見逃してくれないかと……そういう願望もあったが彼の死んだ目を見て直ちにその期待は捨て去った。
関係無い……コイツの目は何の迷いも無くヤる奴の目だ……! と。
この時の私には何がそこまで彼を駆り立てていたのかはわからなかったが、たとえ魂が同郷だろうと人間の敵ならば容赦無く殺すという覚悟ガンギマリな勇者の視線を前に私の思考はフル回転し、前世の記憶に残っている数少ないサブカル知識も総動員しながら最適な行動を導き出していった。
この手の人種には、人情に訴えかける命乞いは無効……!
ならば、ここは「理」を取る!
彼は他に並ぶ者の居なかった最強生物である私を、たった一人で圧倒した化け物……ならば当然、今まで彼にとって「戦い」と呼べる経験は無かった筈である。そこに、付け入る隙を見た──!
最強無敵の力で苦難も無く無双し続ける。そうしているとどうなる? 退屈するのだ。日常の中で変わり映えの無い自らの駆除活動に。
ではどうしたくなる? 期待したくなるのだ。自分に本気を出させてくれる、未知なる敵の存在に! ソースはイキリカスオオカブトになっていた頃の私!
……ならば、こういう言い回しなら効くのではないかと。ほとんどやけっぱちであったが、私がこの状況から生き残るにはこれしか無いという決断のもと、私は命懸けの説得タイムに移った。
「ふっふっふっ……わかるぞ、わかる……戦ってみたくなったのだろう? 完全体となった私と! 今の私はまだ成長途上に過ぎない。しかし逆を言えば、不完全でありながらこれほどの力を持っている私がさらなる進化を遂げた時、その力は勇者に匹敵するかもしれない。お前もBUSHIDOを嗜んでいるのなら、お互い全力同士で戦ってみたい筈だ。期待しているのだろう? お前自身が本当の力を試す千載一遇の機会を……かつてない強敵との果たし合いをォ……!」
「…………」
「私を逃したら、お前は一生本気を出すことも無く孤独な生涯を終えることになるぞォ!」
蹴っ飛ばされた!
岩盤を三枚ぐらい貫通した!
よっしゃ! この勢いに乗じてエスケープするぜ! と思ったが、しかし回り込まれる。瞬間移動でもしているのか……本当に世界観間違えてないこの人?
自慢のツノはへし折られても心は屈しない。ただ生きるという信念を胸に、私は彼の足元をゴロゴロ転がりながらしたり顔で語り続ける。「完全体はいいぞナナーシィー」と。
彼はそんな私を、感情の読み取れない表情で静かに見下ろしていた。
すると、そろそろ恐怖を通り越して笑いが溢れてきた私の顔をわしづかみにしながら、勇者ナナシは死んだ目で私の複眼から目を離さずに問い掛けてくる。
「……これほどの差があっても、完全体になれば、私を殺せると……?」
「た、倒せるさ……そ、その程度の強さならな……っ!」
いや……本当に第三形態より上の完全体という姿があったとしても、正直言ってこの化け物を倒せる気は全くしていなかったのだが、ここで弱気になるのはマズいと私の中でパーフェクトな六感が働いていた。故に、震え声ながらも虚勢を張り続けた。
しかし彼もそんな問い掛けをしてきたということは、もしかしてこの与太話に興味を持ってくれたのか……? と期待しながらおそるおそる表情を窺ってみる──が、駄目……死んだ目をした虚無顔のSAMURAI勇者からは、まるで感情を読み取ることができなかった。
何を考えているのかわからないということは、何を考えているのかわからないということである。雲を掴むような感覚であったが、それでも藁にもすがる思いで話を続けた。
いわく、完全体になりさえすればパワー、スピード、頭脳、全てがよりパーフェクトな存在になる。
いわく、完全体になりさえすればグッとガッツポーズするだけで魔王が泣いて謝る。
いわく、完全体になりさえすればおよそ30%の力でこの星を木っ端微塵にすることができる。
いわく、完全体になりさえすれば日曜日も月曜日も思いのまま。
いわく、完全体になりさえすれば3打数5安打は当たり前、8安打もできるetc.
パーフェクトな頭脳が思いつく限りの怒濤のセールストークを交えながら、「だから今第三形態の私を殺してしまうのは色々と勿体ないぞ勇者よォ……」と涙ながらにすがりついていった。
「もしかしたら完全体の姿はお前好みの美少女かもしれんぞォ……」とまでまくし立てていくその姿は、日本のちびっ子たちの憧れたる雄々しきカブトムシの姿を模す者として見るに堪えなかったことだろう。まあ、それについては本当に実現してしてしまったのだが……その話は機会があれば後でしてやろう。
……ま、何とでも言えばいい。しかしそうまでしても生きたかったのだ、私は。
思い返してみると私は、自分でも引くほどに生への執着心に溢れていた。長生きして何かをしたいわけでもなかったのだがな……この時は。
しかしそんな私の滑稽な姿が哀れみを誘ったのか、それとも本当に私の完全体(笑)に興味を持ったのかは当時の私には窺い知れなかったが──最終的に勇者は私にトドメを刺さずして、どう見てもジャパニーズKATANAな聖剣を鞘に納めることになった。
えっ嘘マジで見逃してくれるの……? とその光景に困惑する私に向かって、彼は告げた。
「……三つ、条件を言い渡す。それを生涯守ってくれるのなら、完全体とやらになるまで見逃してやってもいい」
必死の説得の間、彼に切り落とされた肉片と貫通させられた岩盤は数知れず。
散々痛めつけられた故に大分鈍ってしまった再生力から、どうにか活動可能な状態になるまで肉体を修復させていく私に、それ以上の斬撃は与えられなかった。
しかしこの話を聞き終えるまで逃がす気は無いのだろうと観念した私は逃走を選択肢から外し、大人しくその条件とやらを聞き入れることにした。
「一つ……もう二度と人間を襲わないこと。反撃も禁じる」
それは……問題無い。元々好き好んで人間を襲うことはしていなかったし、あちらから攻撃された場合にも反撃できないのは面倒だが、私に危害を加えられるような人間はコイツぐらいなものだ。他の連中に攻撃されたところで鬱陶しいことは鬱陶しいが、逃げることは容易なので呑み込めない条件ではなかった。
私のような怪物を見逃す条件にしては正直ぬるいと思ったが、彼が続けた二つ目の条件──それは生に対して執着の強い私にとって、理解し難い言葉だった。
「二つ……完全体になったお前が、本当に私よりも強くなるのなら……その力で、私を──」
濁りきった死んだ眼差しの中に、僅か……ほんの僅かな期待を滲ませて、彼は言った。
「私を──殺してくれ」
──それが彼、勇者ナナシと交わした初めての
ボクの性癖は「人外転生なのに進化して人型になるとガッカリする気持ち」と「でも美少女になるのもロマンだよね」という両方の感情を併せ持つ……♣