「完全体になりさえすれば……!」から始まる人外転生者の追憶   作:GT(EW版)

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 これが好きでこのジャンル書いてるまである。


TS美少女の何気ない仕草に周りが振り回される奴

 遂に完全体となった私。

 この私が「クーレス」という名を貰い、聖剣の力と合わさって最強に見えるパーフェクトな存在となったことで、破滅しか見えなかったイビルセクトとの戦いに再び光が射し込んだ。

 

 それほどまでに、真の進化を遂げた私は圧倒的な強さを手に入れたのだ。

 

 私が解放されデビルセクトが消滅したことを理解したアルファは、消耗した勇者諸共葬り去ろうと直ちに魔界のゲートを開き、次の群れを送り込んできた。

 

 完全体になった私が初めて行ったのは、そんな雑魚共の一掃である。

 

 ナナシにも皇女にも、私の為に要らぬ負担を掛けた。

 まあ、なんだ……救ってくれた二人にはこれでも感謝していたし、自分の不甲斐無さに対しては憤りすら感じていたのだ。

 もちろん、私が一番許せなかったのは諸悪の根源である科学者とイビルセクト・アルファなのだがね。

 と言うわけで「科学者死ね! もう死んでたわ! じゃあアルファ死ね! 奴が産み落とした奴らも私以外全部死ね! カブトムシ型モンスターは私だけでいい!」と正義の怒りをぶつけることにしたわけである。血祭りです……

 

 

「闇堕ちしてませんかそれ」

 

 

 はい。

 

 いや違うぞ?

 クーレスという名前を貰ったことで自己を再定義、新生した私だが……だからと言って悟りを開いたわけではないからな。それはそれとして倒すべきラスボスの存在がようやく示されたこの段階に至っては、もはや我慢する理由などどこにも無かった。

 

 もちろん、野獣のように怒りに呑まれていたわけではない。

 

 心は熱く煮えたぎりながらも十年近く地道に培ってきた力と技は研ぎ澄まされており、覚醒直後故に絶好調だったこの時の私は「ウォーミングアップで終わらせてやる」と意気込んだ通り、新種含む何千という群勢を一人で葬り去っていった。

 それはナナシの手も借りず単独の戦闘で叩き出した私のキルスコアとしては、過去の例を顧みるまでも無く最高の戦果だった。

 

 第三形態より身体は小さくなったが、その肉体に秘められたパワーは段違いに上がっている。

 必殺技でも何でもないパンチ一発でL型を粉砕した時には、まさに強さの次元そのものが何段階も上がったことをはっきりと理解したものだ。

 

 

「具体的に、どんな能力を得たのですか?」

 

 

 まず、基本的な性能が飛躍的に上がったのは当然である。パワーだけでなくスピードも以前より何倍も速くなり、もちろん飛行能力も向上した。

 飛び方もカッコ良くなったぞ! 第三形態の頃は甲虫類と同じように背中の外殻をパカッと開き、薄い翅を超振動させながら「ブーン」と飛んでいたのだが、完全体になった私の場合は背中の外殻が「ガシャンッ!」と開き、そこから展開した光の翅が「ブワーッ」って開いて金色の鱗粉を撒き散らしながら「バビューンッ!!」と飛ぶのだ!

 

 

「よくわかりませんが、IQが溶けるぐらいスタイリッシュな飛び方になったことは伝わります」

 

 

 そうなのだ!

 

 第三形態の頃、「完全体になったらこういう能力が欲しいなー」と漠然と考えていた絵空事を、真の完全体となった私の戦闘形態クーレスは100%を超える精度で再現していたのである。

 

 だからか、十年近く連れ添ってきた肉体とは勝手が違う完全二足歩行の人型に変わっても、動作に慣れるのは簡単だった。

 

 

「しかし元が六本脚だったことを思うと、人型になったことで手数は減ってしまったのでは? 文字通りの意味で」

 

 

 チッチッチッ。

 

 そう思うだろうが、クーレスにも昆虫で言うところの真ん中の脚に当たる装備があってだな。

 スカートの横の……この辺りかな? ここら辺のサイドスカート部分には普段はコンパクトに収納されているが、ロケットアンカーのような触手が左右に一本ずつ仕込まれているのだ。

 

 

「それは気になりますね。ちょっとめくって見せてください」

 

 

 ナチュラルにセクハラするな。リラのスカートには何も仕込まれてないからな?

 

 ……で、その触手はあのオカマタコ魚人の腕のように伸縮自在なため、隠し腕として不意を突くだけでなく幅広い射程にも対応する使い勝手の良い武器として扱うことができた。

 先端の形状は鋭利になっているので突き刺して拘束するも良し、剣として振り回すも良しと変幻自在ぶりに磨きが掛かっている。あと、ビームも出せる。有線式のビット兵器みたいにも扱えるので応用法を考えるのが結構楽しかった。

 こういう応用性の高い武器を扱ったトリッキーな戦い方はあの殺人ピエロが得意としていたものだが……もしかしたらそんな彼から得た着想が具現化し、私の身に宿ったのかもしれないと思うのは感傷的すぎるか。

 

 

「タコ様のように伸びる触手と、ピエロ様のような変幻自在さですか。亡き戦友たちの技を取り入れるとは粋なことをしますね……デスメタル様のは何かあります?」

 

 

 アイツのは無い。まあ、アイツだけは生きてたし。

 後に再会した際に同じことを訊かれたものだが、私がそう答えるとあの男もショボーンと落ち込んでいたものである。

 

 

「かわいそうな魔王様……」

 

 

 しかしそんな彼は後に、「俺様が貴様の服を見繕ってやったぞ!」と美少女になった私の為にわざわざ新しいコスチュームを持ってきてくれたのである。それが今着ているシャツとスカートだな。

 奴はファッションセンスも悪魔的だったから一体どんなエキセントリックなデザインが来るのかと戦々恐々としていた私だが……蓋を開けてみれば、意外にも機能性を重視した落ち着いたデザインで安心したものだ。

 シャツは肩を出したノースリーブの造りだったりスカートは丈が短かったりと全体的に露出度は高めだったが、ぼんやり残っている前世の記憶から世の婦女子がたが着ていた衣服を思い出すと、このぐらいなら許容範囲かなぁと受け止めていた。何よりそれを着た私が凄く似合っていたからな。

 

 

「良いですね」

 

 

 まあ、この世界だとそれでも十分挑戦的なファッションだったようで、一同の前にお披露目した際には「眼福だが、流石にそれはちょっと肌を出しすぎだ……」と珍しく微妙な顔をした皇女が、妥協案として自ら錬成したハイソックスと長羽織を手渡してきたものだ。心做しかナナシまで安堵した様子だったし、思えばあの時が私の中で一二を争うぐらい激しいカルチャーショックを感じたものだ。あと、魔王様もひっそり落ち込んでた。

 

 ──だが、彼女からプレゼントされた上着も併せて性能はもちろん着心地が良かったため、今でもこの通り愛着させてもらっている。

 

 この長羽織は暗闇だと黄色い部分がキラキラとホタルみたいに光る仕組みになっているのは、半分以上は奴の趣味だったのだろうが……後に行う「魔界戦線」ではその視認性が誤射防止の面で地味に役立ったりもした。

 

 あと、何と言ってもデザインが良い! 同じ和装同士、ナナシと並ぶと「SAMURAIコンビ」って感じで見栄えの良さに磨きが掛かっていたし、ヘラクレスオオカブトを彷彿させる細かな意匠もナイスだろう。クーレスも喜んでいた。

 

 

「キシャッ」

「今までの旅で出会ってきた大勢の人たちとの絆が集まって……なんだか本当に、集大成って感じですね」

 

 

 ……ああ、そうだな。

 

 この姿になってから皇女を筆頭に、周りの奴らが妙に甲斐甲斐しくなった気もしないではなかったが、そこは何と言っても私が美少女になってしまったのだから仕方あるまい。

 美しすぎる……美しすぎるんですよ私は……! ハァッ⭐︎

 

 

「虫だった頃と違って表情がコロコロ変わるようになったのですから、貴女にお世話になった人たちはそれはもう可愛がりますよね。私は可愛いものや美しいものは愛でるよりいじめたくなるタイプですが……スイカ食べます?」

 

 

 やめろ! 予想以上にこの酒が美味くてちょっとだけ飲みすぎたから、これ以上の水分は許容できん!

 

 ……だが、さっき言った「集大成」というのはイイ表現だな。

 

 そういう意味では何と言っても、完全体となった私の新しいメインウェポンのことも語らねばなるまい。

 

 

 ──クーレス、お母さんに見せてやれ。

 

 

「キッシャーンッ!」

「ひゃあっ!?」

 

 

 光る! 鳴る!

 

 今、私の前に出てきたヘラクレスオオカブトもどきが一瞬にしてその姿を変化させ、顕現したそれこそが──今の私の愛剣であり、完全体クーレスの扱うメインウェポン「聖剣クーレス」の真の姿であるッ!

 

 

「……いきなりでびっくりしました。心臓に悪いです……」

 

 

 ふん、セクハラの仕返しだ。キミが私にとっていかに大恩ある湖の女神と言えど、やられっぱなしというのは私の性分ではないのだよ。

 皇女にされるのは私にも自業自得の面があったので拒みきれなかったが、キミに対しては反撃しない理由が無いのでな。

 

 

「それは失礼しました。やりすぎましたねごめんなさい。しかし、なるほど……確かにこれは私がナナシに与えた聖剣ですね。私が与えた時は黒刀だったと思うのですが……随分派手な色に変わってしまって」

 

 

 ああ、それはこれが、あの時半分に折れた刀の片割れだからな。私に突き刺さった方の。

 

 白銀の柄から伸びる刀身の大部分は派手な金色になっているが、先端部分だけ黒くなっているだろう?

 

 

「ええ。この色は覚えています」

 

 

 それがナナシがデビルセクトの核に突き刺した、元々聖剣だった部分だ。それから私と融合したことで再鍛造され、新しく錬成されたのがこの刀なのではないかというのが皇女の考察だな。

 

 尤もあの女は真面目な考察をした後で「グリップの白銀色はクーレス。先端の黒はナナシ。そしてその二つの色を我のパーソナルカラーである金色が繋いでいるというわけだ。やるではないか聖剣! 粋な計らい、大儀である!」……とかなんとか、気持ち悪いことをほざいていたものだが。

 

 

「間に挟まりたかったのでしょうね」

 

 

 アレは間に挟まると言うより、間から両方取り込もうとする動きだったがな。

 私がこの身体になったことでお互いの体型が近づいた分、彼女とは以前にも増してスキンシップが増えたと思う。それはもう、「ナナシとクーレス、どっちも我が抱く!」って感じの勢いで。本当に気持ち悪い。

 

 だけど……大好きだった。

 

 

「……良い友人を得ましたね」

 

 

 それは認めてやる。

 奴は気持ち悪いところもあったが、妹のように大切に想っていたとな。

 

 ……酔い過ぎているな。かつて愛飲していた樹液にもアルコールが含まれていたから、私は酒にも強い方だと思っていたのだが。

 

 

「多分再生力が無かったら五回は倒れてるぐらい弱いですよ貴女」

 

 

 何だとー……? まあ、良い。それはそうと刀の話だ。我が聖剣クーレスの話。

 

 この刀は凄いぞ! 聖剣の破片から再鍛造した物とは言え、その威力はオリジナルの聖剣にも劣らない。

 何と言ってもこの非戦闘形態の私が振るっても、ナナシと真っ向から打ち合うことができたほどである。この時点で第三形態の私が剣化させた腕よりも圧倒的に頑丈なことが窺える。

 

 

「えっ、打ち合ったのですかナナシと? その身体で? その格好で?」

 

 

 ? ああ、模擬戦がてら何度かな。

 そんなに不思議か?

 

 

「ええ、それはもう」

 

 

 ふーん……私にはキミの食いつくところがよくわからないよ。

 

 ナナシに模擬戦を挑んだのは、少し落ち着いた後で私の方から提案したことだ。

 理由としてはこの刀の性能を確かめたかったのもあるが、見た目は人間と変わらない非戦闘形態(トランジェントモード)でどれだけ動けるのか今一度理解しておきたいと思ったからである。

 

 前世は人間だったとは言え、カブトムシ怪人になってから十年近く経っているのだ。特に関節の柔軟性とか手脚の可動域とか色々と違うところがあったし、実戦以外の場で何度か試してみたいことがあった。

 

 

「つまらない理由ですね……」

 

 

 む、何故そこでガッカリする?

 

 まあ、その模擬戦の甲斐もあってか私はこの姿でもある程度なら戦えることがわかったし、何なら第三形態よりもパワー、スピードは上回っていることがわかった。電撃くらいならこの姿でも変わらず放つことができることも実証され、これなら戦う美少女路線でも十分やっていけるのではないかと皇女からもお墨付きである。

 

 ──ただ、そんな非戦闘形態(トランジェントモード)にはイビルセクトと戦う上ではそれまでの姿からは明確に劣る、致命的な弱点があった。

 

 何だと思うかね? 当ててみたまえ。

 

 

「蟲に群がられた時の絵面がR-18Gになる──」

 

 

 …………

 

 

「──と、言うのは冗談で。そうですね……防御力が弱くなったとか?」

 

 

 そうだな、概ね正解だ。

 

 正確に言うと、肉体の頑丈さはそこまで落ちていないのだ。仮に銃で撃たれても私の皮膚には傷一つ付かないだろうし、刃物で傷つけても生半可なナイフでは刃の方が折れる。

 そういう意味では決して防御力は低くないのだが……この身体は何かとその、痛いのである。

 

 

「ああ、クーレスちゃんに挟まれた時や、皇女様に叩かれた時も痛がってましたもんねー」

 

 

 そういうことだ。人間の肉体に近づいた影響かわからないが、四肢をもがれても平然としていた第三形態の頃と比べて些細なことで痛覚が敏感に働くようになった。戦闘形態クーレスに変身している時はそんなことないのだが、この姿だけは痛みに対する耐性が人間のそれと同じなのである。

 水分を摂りすぎると辛いことになるのも、この身体になってから付随した今の私の弱点だった。

 

 

「……良いのではないですか? 「生きている」って感じがして」

 

 

 同じことを、ナナシにも言われたよ。

 励まし方が似ているところは、やっぱり母親だったんだなキミは。

 

 

「そうですか……あの子も言えるようになりましたね」

 

 

 ふふっ。

 

 まっ、第三形態の頃よりも善戦はしたが思いがけない弱点を露呈させた私が尻餅をつき、予想以上の痛みに悶えていたところで見かねたナナシがそっぽを向くように「……このぐらいでいいだろう」と切り上げたことで最初の模擬戦はお開きとなった。

 

 思い返してみても、たかが仰向けに転倒させられたぐらいで泣きそうになるとは我ながら情けない姿である。

 実戦では戦闘形態(ファイターモード)になるから良いとしても、些細な痛みぐらいは耐えられるようにならないと尊厳的な意味でどうかと思ったので、この後も何度かナナシに頼んで非戦闘形態(トランジェントモード)での訓練に彼を付き合わせることになるのだが……その話は本筋から離れるので割愛する。

 

 

「割愛しないでください。特に貴女が尻餅をついた時の状況を、詳しく」

 

 

 ? ああ、ナナシの得物のことか。

 

 彼が持っている聖剣はデビルセクトとの戦いで折れてしまったが、折れたのは先端の方だけで刀身の大部分はまだ残っていたからな。あの後金ピカ皇女が錬金術で補修してくれたことで、彼の聖剣も問題無く扱えるように直ったよ。その為か奴の聖剣は私のコレとは逆に、先端部だけが金色に変貌していた。

 

 その際にナナシは「以前よりも強くなった気がする……ありがとう、姫」と満悦する皇女の前で絶賛していたものだ。

 この頃からだったかな? 二人の仲が一方的なものではなく、双方歩み寄るように進展し始めたのは。心なしか二人とも以前より雰囲気が丸くなったような気がしたが、色々と心境の変化でもあったのだろう。

 

 

「そっちじゃない……そっちじゃないんですが、それはそれとしていい話ですね! 私そういう関係好き!」

 

 

 ?? よくわからない女神だなキミは。そっちじゃなければ何だと……尻餅? ……あっ!

 

 

 っ……本っ当にいい性格してるなキミは!

 

 

「いい顔ですね。私が見たかったのはその顔です」

 

 

 まるで絶望に染まった主人公の顔を見た時のラスボスみたいなセリフを言わないでもらおうか。

 

 言っておくが、確かにその時の私はナナシの方から見えてしまっていたかもしれないが……ちゃんと穿いていたからな?

 念押しするが、「 transient(トランジェント)=はかない」って、そっちの意味の「はかない」ではないからな! 儚い方のはかないだからな!? 故に、キミの期待しているようなことは何も無かったと言わせてもらおう!

 

 

「穿いてなかったらドン引きですよ……」

 

 

 そこにはちゃんと引くんだな……私にはキミの感覚がわからん。

 

 

 ……そんな馬鹿な話はともかくとして。

 

 今回は完全体の性能解説で終わってしまったが、次回からは話が一気に動く。

 

 

 ──そう、あの男が来るのだ。いや、正確には「帰ってきた」と言うべきか。

 

 

「そ、その男は……!?」

 

 

 あっ、クーレスもう戻っていいぞご苦労だったな。

 

 

「キシャーンッ」

 

 

 そう、その男とは──魔王の息子。

 

 

 かつてイビルセクトM型に殺された魔界の王、魔王には息子がいた。

 魔王は死ぬ間際にこじ開けたゲートからただ一人、その子を人間界へと脱出させていたのだ。

 

 しかしその息子は当時頭に負ったショックによって長い間記憶喪失に陥っており、この年に至るまで自分が何者であるかも忘れていたのである。

 

 

 そしてその魔王の息子こそが、皇女のもとに集った三賢者の一人であり──帝国崩壊以来消息を絶っていたデスメタルバンドマンこと、悪魔的な吟遊詩人その人だった。

 

 

「……本当に魔王様だったんですね、魔王様」

 

 

 正確には、「魔王子」になるがな。

 

 ともかくそいつの記憶が喪失状態から蘇ったことで、事態は再び進展したわけだ。

 

 

 ──もちろん、人類側の反撃パートとしてな。

 

 

 

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