「完全体になりさえすれば……!」から始まる人外転生者の追憶   作:GT(EW版)

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 どっかで見たことあるような連中に支えられる姫……これは主人公。


まるでスパロボ主人公のような皇女

 一つ問おう! 自分の家に虫が入ってきた時には、何が必要だと思うかね?

 

 

「……お茶の用意でしょうか?」

 

 

 そう! 殺虫剤だ。

 

 

「むー……」

 

 

 おい、女神。何故殺虫スプレーを取り出して私に吹きかけようとしている? 確かに私もキミの家に勝手に上がり込んできた虫ではあるが、今はどう見ても可憐な美少女だろう。

 

 やめろ。本当にやめろ! なんだその丁寧に「女神謹製」と貼られたラベルは……! わ、私が浴びたら絶対痛い奴じゃん!? やめろやめてやだお願いやめて……

 

 

「冗談です」

 

 

 ……真顔でつまらん冗談を言うのはやめろ。

 

 虫にとってスプレー缶のノズルを向けられるのは、人間が銃口を向けられるのと同じようなものなのだ。

 もちろんその程度で死ぬ私ではないが、それはそれとして身構えてしまう。世の中軽はずみな冗談が取り返しのつかない事態を引き起こすこともあるから気をつけろ。マジで気をつけろ。

 

 

「すみません。私は普段偉そうな顔をしている強い女の子がしおらしく怯える様子が好きなので」

 

 

 最低な性癖を胸を張って語るな。

 まったくあの金ピカ皇女を思い出す性悪ぶりだな……酷い女神が居たものである。

 

「照れますね」

 

 キミのそういうところに、ナナシが似なくて良かった。

 私は今、彼がいかに真っ当な人間に育ったのか強く実感しているぞ湖の女神よ。

 

「あの子は私を反面教師にしたのでしょう……あの子が十歳ぐらいの頃、初めて異世界に召喚された時にはそれはもう女の子に優しくしていたそうです」

 

 ……ほう、アイツにもそんな時代があったのか。自分に対する好意を包み隠さない皇女にも、長らくの間塩対応だったアイツがねぇ。

 

 それは是非とも気になる情報だが……今は私とナナシの旅の第二章──名付けて「ファイナルウォーズ編」を語らねばならない。

 この頃はジェノサイドツアー編よりも登場人物が急激に増えた時期になる。漫画ならアンケートの低評価を受けてテコ入れでも入ったのかと邪推するところであろう。

 

 私がナナシと出会ってから五年~八年ぐらい経つこの頃、未だ生き残っている人間は良くも悪くも並大抵の連中ではない。

 彼らの力は戦闘能力で言えばナナシはもちろん私にも到底及ばなかったが、そんな私たちでさえも時には畏敬の念を抱くほどに、日々を生きる彼らの知恵と執念は凄まじいものだった。

 

 特に、前述のイカレ三賢者を統べる海底帝国の女帝こと金ピカ皇女は群を抜いて恐ろしい女だ。

 

 長年海底に身を潜めながらも、彼女は人類の覇権奪回を微塵も諦めていない。そんな彼女は滅びゆく皇国から連れてきた偉い学者さんたちと共に、イビルセクト根絶を目的とした新兵器の開発を文字通り、水面下で進めていたのである。

 

 

 ──その成果の一つこそが、対イビルセクト用の殺虫剤……言い方を変えると「戦略化学兵器の錬成」だった。

 

 

「それはまた、世界観に合っていないものが出てきましたね」

 

 

 同感である。あの金ピカ皇女は自らの錬金術で錬成したその物質に「救済の霧(レリーフ・ミスト)」と名付けたが……名前の響きこそ美しいが、要は広範囲に及ぶ毒ガス爆弾である。

 

 地上を跋扈する無数のイビルセクトを巣窟ごと殺し尽くすことを目的としたそれは、着弾と同時におびただしい毒霧を撒き散らし、ひとたび地上に放ったが最後百年以上はその地一帯が不毛な地に変わる。

 まともな世界ではどこに出しても恥ずかしい立派な戦略兵器だったが、元よりイビルセクトが居る時点で私たちの世界にはまともさなど残っていない。

 開発者である金ピカ皇女も奇跡的に世情と噛み合った結果この時代では賢帝寄りの指導者として扱われていたが、その本質は追放癖が示す通りの狂った独裁者なのである。

 

 何なら「最初の発射は我がやるっ! 刮目するが良い! この世界を破壊し尽くすのはイビルセクトでも魔王でも勇者でもない! 帝王たるこの我だ!」と啖呵を切り、打ち上げ花火のように景気良くぶっ放したものだ。

 

 

「……皇女様は世界を救う為に世界を滅ぼす兵器を生み出してしまった人の業を、自らの責任として背負い込もうとしたのですね」

 

 

 ……いや、アイツ絶対そんな殊勝なこと考えていないぞ。

 新兵器が完成した時も、あの女は新しいオモチャを手に入れた幼子のようにキラキラと目を輝かせながら私たちに見せびらかしてきたものだ。不覚にもコイツちょっとだけ可愛いところあるなと思ったぐらい華やかな笑顔を浮かべて。持ってきたものは全然可愛くない大量殺戮兵器だったが。

 

 

「可愛いじゃないですか」

 

 

 嘘だろおい。

 ともかく自ら錬成した新兵器を嬉々として地上に運び出し、それを楽しげに撃ち込んでいく彼女の姿にはどう好意的に解釈しようとしても、自分が踏み入れてしまった禁忌に対する畏れだとか、環境汚染に対する配慮だとか言った躊躇いが感じられなかった。

 三賢者はそんな彼女の姿を痺れたり憧れたり微笑ましげに眺めていたものだが、私とナナシはコイツ生かしておいたらいけないのではないかと大分引いていたぞ。

 

「ナナシを引かせるとは中々レベルが高いですね。ですが私の方がドン引きさせた回数は多いです」

 

 張り合うな。

 何なら撃ち終わった後の彼女はしばらくの間興奮しっ放しで、今までに見たことがないぐらい恍惚とした表情を浮かべていたものだ。

 彼女が立ち上がった後の玉座も、なんか濡れていたし……一国の帝王としてあまりにもあんまりだったので、周りに気付かれない内に私がそっと放った人類抹殺ビーム(超超超低出力ver)でスカートに滲んでいた染み諸共焼却してやったものだが。

 

 ……振り返って思ったが、アイツ絶対私のことを同性の召使いか何かだと思っていただろう。

 

 

「もしかしたらそういうフォローの積み重ねが、貴女を今の姿に変えたのかもしれませんね」

 

 

 どういう意味だ?

 

 ……まあ、奴の醜態はさておき、皇女を主導とした長年の研究成果である新兵器は、対イビルセクト用の殺虫剤として恐るべき成果を発揮した。

 

 初めて実戦投入した際には、その地域一帯に生息していたイビルセクトが根こそぎ死に絶えたものである。

 毒霧の影響範囲には主戦力であるS(ソルジャー)型のみならず連中にとって小隊長的なポジションであるL(ロード)型の死骸すら見かけたほどだ。

 それは確かに、これまで無力だったこの世界の現地民が殺虫剤という敵を滅ぼし得る力を手に入れた証だった。

 

 

「読めましたよ!」

 

 

 む……どうした急に話の腰を折って、「湖の女神知ってます!」とでも言いたげなその顔は?

 こういった話は界隈では陳腐化しているので、皆まで聞かずとも先の展開が読めたとでも言うつもりかねキミは?

 

 ふん……いいだろう、言ってみるがいい。この酒を献上してくれた礼だヒック……私が直々に答え合わせしてやろう!

 

 

「大丈夫ですか? 貴女今、酔いすぎて殿方には見せられない顔になってますよ。とてもお持ち帰りされそうな顔しています」

 

 

 大丈夫だと言ってるだろうが!!

 

 

「そんなに怒らなくても……ですが、他の世界でも割とよく聞く事象というのはそうですね。貴女の世界でもその事象──【禁忌の兵器により元々の目標は果たせたが、その後始まった人類同士の争いで世界は滅亡……本当の悪魔はイビルセクトではなく人類そのものだった】という展開が起こったのでしょう?」

 

 

 全然違う。したり顔で何を言ってるのだキミは。

 

「あれー?」

 

 妙に具体的なあたり、そういう世界も実際にあったのだろうが私たちのは違うぞ。

 そんな簡単にイビルセクトを滅ぼせるのなら、私とナナシが戦い続けることも無かっただろう。

 

 しかし、強力さ故にそう言った事象が危惧されていたのはその通りである。兵器の運用については、試験段階から危険性を理解していたナナシが、「……この兵器の矛先がイビルセクト以外に向くことがあれば……私は貴女を討たなければならなくなる」と皇女に対して真っ先に牽制を入れていたものだ。

 尤も、皇女はそんな牽制に対してさえいつもと同じ調子で「やはり貴殿は我の夫になるべきだよ」と気持ち悪い求婚をしていたものだが……当初の目的を達成したあかつきには必ずこの兵器を破棄し、錬成法に関しても記憶の封印なり世に残さないように封印することを、勇者と魔法的な誓約を交わしていた。その際には「ついでにこっちの誓約も」とさり気なく婚姻届を出していたが、そちらは私がナナシから学んだ剣技でぶった斬ってやった。

 奴は涙目だったが、今はふざけている時ではないだろうという私の粋な計らいである。

 

 

「いえ、それはおふざけではなく……いざと言う時に自分を止めてくれる存在として、勇者を欲していたのでしょう」

 

 

 妙に奴の肩を持つなキミは……皇女の人そこまで考えてないと思うぞ?

 

 

「しかしそんな兵器が完成したにも拘らず、ナナシと貴女が居てイビルセクトを根絶することができなかったのですか。私はてっきり、貴女の世界も「やはり人類は愚かオチ」だったのかと思いました」

 

 

 本物の女神様がそんなこと言うでない。確かにあの殺虫剤で万事何事も無くイビルセクトを滅ぼすことができたのなら、そんな未来が訪れる可能性もあったかもしれないが……

 イビルセクトに対して絶大な効果を発揮したアレは、もちろん蟲だけを都合良く殺す発明ではない。人間や他の生物にも影響を及ぼす危険極まりない殺戮兵器であり、キミの言う通り人類同士で扱ったら別の理由で世界は滅亡していたことだろう。

 その上本来ストッパーとなるべき国のお偉方も皇女の追放癖のせいでイエスマンばかりになっていた為、使用に渋い顔をしていたのがナナシ一人だけという末期ぶりだったからな。

 そんな彼女の帝国には大自然を愛することでお馴染みのエルフ族だって居たのだが、そんな彼らですら「いけーっ 暗君の娘!!」とノリノリで発射を煽っていたほどである。

 

 なお、そう叫んでいた奴らは後で皇女に踏まれてた。自分自身は亡き父親を愚弄しまくっていたが、他人が父親の悪口を言うのは許さない理不尽な女である。彼らも彼らで、後でお仕置きされるのがわかっていた上で煽る愉快な国民共だった。

 

 

「民に人気のある女帝様だったんですね」

 

 

 そんな環境になったのは、皇女を支持しない者から順に追放なり左遷なりKYOUIKUなりで居なくなったからでもあるがな。

 まあ、奴も今の私ほどではないが美少女だったし、成果を上げ続けていた以上民の信頼が厚かったのもおかしな話ではないだろう。あの時代に残っているような民は、どいつもこいつも女帝の為なら喜んで死ねる馬鹿ばかりだった。

 

 

「話だけですが、私もその方には好感を抱いています」

 

 

 そんな彼女の存在は海底帝国では新世界の神としてナナシの姿と一緒に壁画が彫られ、早朝には一部の民の間で欠かさず礼拝されていたほどだ。

 その壁画には私の姿も描かれていたが……何故か二人に仕える守護神獣的な扱いだった。誠に遺憾である。

 

 

「見た目はイビルセクトに似ていても、やっていることは人類の役に立ってますからね。例えば悪龍を退治する聖龍だって、同じドラゴンなのに守護神として人気でしょう?」

 

 

 そう言われるとわからんでもないが……第三形態の私の体色はイビルセクトの禍々しい漆黒と違ってプラチナみたいな白銀色だったし、なるほど見方によっては黒龍と白龍のような関係にも見えなくもないのか。

 

 そして壁画の存在をどこからか聞きつけた皇女は、わざわざ貴重な時間を割いてまで城下町へ下りて確認するなりこう言ったものだ。

 

 

『うむ、良く描けているな。褒めて遣わす! 特に夫婦である我とナナシが並んでいるのが良いな! 早朝の礼拝はどんどんやれ我が許す! でも我、神のこと大嫌いだから礼拝する時は新世界の神ではなく貴様らの帝として崇めるが良い!』

 

 

 ──と、条件付きで公に許可を出したのだ。

 

 自分の神扱いはきっちり否定しておきながら、私の神獣扱いには全くのノータッチであった。寧ろこれには「今はその方がお互い都合が良かろう?」と推奨していたほどである。

 実際、その頃は私が虫の姿を理由に面倒な人間に絡まれたりすることも随分と減っていたので、私が自由に町を巡る分には確かに都合が良かったが……思えば奴は、あの頃から自分の外堀を埋める気満々だったのだろうな。

 

 しかし彼女のそんな人心掌握の甲斐あってか、奴が錬成に成功した「救済の霧」という世が世なら世界を滅ぼしかねない化学兵器もまた速やかに実戦投入されたわけだ。

 

 最初の一発が大成功を収めると直ちに量産化を進め、世界各地に配備。それによって生き残った僅かな人類が積年の恨みとばかりに一転攻勢に転じ、ただでさえ私とナナシの活躍によって減り始めていた地上のイビルセクトに対し、一気に絶滅させるべく畳みかけていったのである。

 力無き民にも対抗手段が生まれたことで、それまでは一方的な捕食者による蹂躙だった関係がようやく「戦争」と呼べる状態にまで立ち直ったと言える。

 

 もちろん帝国軍が殺虫剤をぶっ放す度に地上は汚染されて人が住めなくなっていったが、それはイビルセクトが跋扈していても同じこと。寧ろ毒ガスによる汚染は星の自浄作用や、魔法使い等による後年の努力次第では解除できる見込みがある分この時点の世界にとっては最善手だった。

 

 

 ──しかし新兵器の実戦投入から、二年半ほど経過した頃のことである。

 

 

 この頃には各地から勝利報告が上がり、地上のイビルセクトの数も最盛期から40%近く減少したとのことだ。それは言うまでもなく劇的な変化だった。

 金ピカ皇女の生み出した殺虫剤とそれを各地にばら撒いていく猟奇的殺人者共の活躍によって、敵の殲滅は想定以上の早さで進行していった。

 

 そうした中で、人類は悪魔の蟲に勝てるかもしれないと──私とナナシの助力もあって収めることができた数々の勝利体験に、それまでは「せめて緩やかに滅びたい……」と諦観していた者たちの目にも徐々に明日への活力が湧き始めた頃のことである。

 

 

 絶望は決して、彼らを逃してくれなかった。

 

 

 空に開いた漆黒のゲート──「魔界」につながる門から現れた無数の蟲たちに、人々は再び恐怖を思い出すこととなる。

 

 

 

「ここに来て、増援ですか……」

 

 

 そういうことだ。

 私とナナシ、そして金ピカ皇女が錬成した革命的な殺虫剤によって最終戦争に持ち込むことができたが、それはあくまで地上の人間界の話だ。

 私の居たあの世界は元々、人間が統べる人間界と魔族が統べる魔界の二つに分かれていてな……大多数のイビルセクトたちは連中が真っ先に滅ぼした魔界に巣を作り、その時も延々と繁殖を続けていたのだ。

 

 奴らにとっては本隊とも言える新しい群れが、次々と地上に乗り込んできた。嵐の前の静けさと感じていたナナシの予感はまさに的中したわけである。

 

 もちろん皇女を始め人類もその可能性は理解していたし、魔界に居るイビルセクトから目を逸らしていたわけでもない。十年近く彼らの増殖を許してしまったツケは必ずどこかで払うことになるとわかっていた筈だが……当初の想定以上に、イビルセクトは恐ろしい生き物だったということだ。

 

 ……と言うのも、そもそも魔界のゲートとは魔族の王たる魔王にのみ扱うことができる特別な秘術によって開くことができ、それまでは知能の低い蟲たちが気軽に開閉できるものではないと考えられていたのだ。

 

 

 しかし、魔界に君臨するイビルセクトの王──M(マスター)型にはそのゲートを、自らの意思で人間界の空に開けることができる能力が備わっていた。

 

 

 魔王の秘術を魔王よりも高い精度で使うことができるのはかの怪物が魔王を喰らったからか、或いはより効率的に生命を滅ぼすようにさらなる進化を遂げたからか。

 理由は定かではないが、形勢が変わったかに思えた戦いの中で人類は再び追い込まれることになった。

 

 それはその時を境にM(マスター)型自身が気まぐれのように人間界を往き来し、各地を蹂躙するようになったのが大きいが……そんな王に追従するように出現した「新種のイビルセクト」たちの存在もまた、さらなる悩みの種だった。

 

 

M(マスター)型と言うと、全長100m級の個体でしたか。最強のM型と本隊の合流。おまけに新種の登場ですか……詰んでませんか?」

 

 

 だから言ったではないか。私が地中に三年眠っていた間に人類は詰んでいたと。絶望はさらに進化するという奴だ。

 一度微かな希望を与えてから、それを念入りに踏み潰す。そうすることが人類にとって最も辛いとわかっているかのように、連中のやり口は悪辣だった。

 

 しかもその新種の中には、D(ダイブ)型という相性最悪のイビルセクトが居てな……

 

「名前からして嫌な予感が……」

 

 ああ、察しの通りだ。

 D型はその名の通りdive……潜ることに秀でた特殊個体である。この「潜る」という能力はそれまた範囲が広く、水中はもちろん地中やマグマだろうと自在に行き来することができた。

 個体数は奴らの中では多い方ではなかったが、それでも地上から離れて潜伏していた者たちにとってこれ以上の脅威は無い。

 

 このD型のイビルセクトは、金ピカ皇女の治める海底帝国にとっても最悪の脅威として襲いかかってきたのである。

 

 

「……では、やはり皇女様の国は……」

 

 

 ……そういうことだ。ああ、そういうことになったのだよ。

 

 皇女自身は持ち前の悪運の強さと殿を引き受けたオカマタコ側近と殺人ピエロほか命知らず共の尽力、運良く護衛に入っていたナナシと私の気まぐれのおかげで生き延びることができたがな……D型の出現から二年と持たず、帝国は崩壊したよ。

 

『この海はアタシのフィールドよ……陛下のこと任せたわ勇者ちゃんたち! 本当は貴方たちの間に挟まって滅茶苦茶にしてあげたかった……!』

『ボクも本当はイビルセクトを狩り尽くした後で美味しく実った陛下を狩りたかったんだけどね……♠︎ 現実は厳しいネ』

 

 別れ際、最後に聞いた二人の言葉はそんなものだった。

 最後の最後にそんなカミングアウトは無いだろうと思ったが、ある意味そんなことだろうとは思っていたあんまりな発言に対して、皇女は苦笑したまま何も言わず彼らを見送ったものである。

 

 尤もあの女は彼らが足止めをしている間、崩壊していく海底都市を後に「帝国は滅びぬ……この我の居るその場所こそが帝国なのだから」「親愛なる我が臣下を何人も奪った報い……高くつくぞ羽虫共」と怒りに身を震わせていたが──そんなバッドエンドにも等しい幕引きで、この物語は最終章である「リラ・クーレス編」へと続いていくわけだ。

 

 

「……いよいよ完成するのですね……貴女の完全体が」

 

 

 そういうことだ、湖の女神よ。

 

 ……いや、少しだけ違うな。

 これは私自身のパーフェクトな完全体というよりも──私とナナシと、あそこまで繋いでくれた友人たちと共にたどり着いた真の完全体と言うべきなのだろう。

 

 今こそ明かそう。

 私がこの姿に至った最後の戦いを……この私リラ・クーレスが見届けた、勇者ナナシの最期を。




 次回、今こそ明かされる主人公の真実……
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