ファイアーエムブレム風花雪月-"2度目の自分" 作:ガイアプロローグ
ベレス視点
食堂にて自分は適当に窓際の席に座り今日の昼食、サガルトのクリーム添えの味を堪能している。この甘さ、何杯でもいけそうだな…
「美味しい…」
自分は思わず口にする。辺りを見渡すと皆それぞれ世間話をする子やガツガツ食う子、礼儀正しく食べる子、自分と同じく一人で食べる子など様々な場面が見える。暫く眺めていると自分の向かい側に見慣れた子が近づいてきた。
「ここ、いいかしら?」
「…どうぞ、エル」
エルが自分の向かい側に座る。
「ディミトリとクロードは?」
「二人は別々の所に座ってるわよ師」
「せんせい?」
「師達が散策している間に私達は大司教に呼ばれて聞かされたのよ、貴女達が今年の士官学校の新しい教師に任命されるってね」
「なるほど…それで三人共いなかったという事か」
「帝国で雇おうと思ったけど残念ね…教師となるなら改めて自己紹介するわ、私はエーデルガルト=フォン=フレスベルグ…アドラステア帝国の皇女であり、第一位の皇位継承者よ」
「なら私も改めて、ベレス=アイスナー…ジェラルト傭兵団の一人であり、この士官学校の新任教師よ」
「ふふ…貴女って面白い人ね」
エルは微笑みながら昼食を口にする。食べる姿を見て自分はつい…
「綺麗だ…」
「え?」
頭の中で思っていた言葉をつい口にしてしまう。エルは顔が少し赤くなりながら学級の事について話す。
「そう言えば、黒鷲の学級で気になる子とかいるかしら?よければ学級内の子の事について教えてあげるわよ?」
「全員気になる」
「…まぁまだ会ったばかりだからそうよね」
エルはその後、黒鷲の学級の子達について可能な限り教えてくれた。一通り聞いたが元いた世界と大して変わらない様だった。
「なるほど、大体はわかったよ…教えてくれてありがとう!」
「ど、どういたしまして?…おかわりもらってくるわ」
自分はエルの手を握りながら言う。エルはそっと自分の手を離すと立ち上がって厨房の方へと歩いていく。再び自分は辺りを見渡すとディミトリとクロードがベレトと会話をしているのが見えた。多分、学級の子達について話しているのか?一方でセリカはメルセデスやアネットと一緒にガールズトークを楽しんでいるようだ。平和だな…このまま皆が無事に卒業出来るといいけど…今考えても仕方ないか。
夕方…自分はベレトとセリカと一緒に色々と施設を見回っていた。
「この花は見た事がないなベレス」
「それはわかったからベレト、もう少し私から離れて?くっつきすぎ」
「ふふ…仲のいい兄妹ね」
自分達は温室から出ると釣り池の方でセテスが一人で静かに釣りをしている姿が見える。だが魚が引っかかる気配はない…するとベレトがセテスに近づき釣り糸を静かに垂らした。自分達は少し遠くからそんな二人の姿を眺めながら会話をする。
「個性の強い子が多いわね」
セリカが微笑みながら自分に言う。
「うん…皆が楽しそうでなによりだ」
「でもベレスは不思議ね…始めから生徒達の事をわかっている様に見える」
「あぁ、それは級長達を助けた時エルから生徒の事について色々と教えてくれたからかな」
嘘なんだけどね。元いた世界で一度生徒達と関わってきたから知っていて当然。
「セリカはいつからガルグ=マク大修道院にいるの?」
「私は一月前くらいにここに来たばかりよ、ベレス達とそんなに変わらないわ…その前まではフォドラ中を歩きながら旅をしていたの」
「傭兵とはまた少し違うみたいだね」
「う〜ん、でも困った人達を助けたりも時々していたから同じだと思うわ」
「セリカ、傭兵の事を少し誤解しているね?」
「?」
「私もガルグ=マク大修道院に来る前はジェラルト達と色んな場所に行っていたけど、私達傭兵は人助けもしたりする事もあるけど大半は人を殺める事だって依頼だからと言う理由でやる事も沢山あった」
「…それでも、私は貴女達が悪い人には見えない…いいえきっと悪い人じゃないわ、今日生徒達と関わっている貴女達を見て分かるわ」
「優しいね君は」
そんな中、釣り池の方からベレトが魚を片手に取りこちらに手を振っているのが見えた。自分達はベレトの方へ向かうとセテスから大司教が自分達の事を探していたと伝えて来た。なのでこれからセテスと一緒に謁見の間に戻る事となった。
「君達、生徒達と少しは親睦を深める事は出来たか?」
「色んな奴がいた」
「まぁ…癖の多い生徒が沢山いるがそれだけか?」
ベレトが短い一言で済ませようとするがセテスは自分に問いかけた。
「皆、いい子達だとこの一日で私はわかったよ」
「君もベレトと同じ様な意見だな」
えぇ…ベレトよりは明確的だと思うけど…するとセリカが慣れた言い方で…
「フレンちゃんがいなくて学校に天使枠が欠けていた、ですよね?」
「流石セリカ、わかっているな」
「「えぇ…」」
生徒達の事と話題がズレてる。結局フレンが一番という事はこの世界でも同じ様だ。自分は暫くセテスに対しジト目の視線を送り続けた。二階に上がり、自分はセテスに"少しロリス(ソティス)に用があるから先に行って"と言うが"私も丁度ジェラルトさんに用があるから共に行く"と言うので皆で騎士団長の部屋に入る。
「いい子にしてたかい?抱っこする?」
「おぬしまた揶揄っておるな」
両手を広げてみるがソティスは母さんにベッタリしていて離れる様子は無かった。
「大修道院はどうだった?」
母さんは微笑みながら自分とベレトに聞く。
「ここの食堂はとても美味かったな」
「皆、個性的な子達で楽しかったよ」
自分達がそんな会話をしてる中、セテスはジェラルトと話をしていた。
「ジェラルトさん…来て早々で申し訳ありませんが、直ぐに大修道院近くの盗賊の討伐をお願いします!」
「はぁ⁉︎誰が依頼した?…レア様か?」
ジェラルトがそう言うとセテスは申し訳なさそうに頷く。
「たくっ!教団はいつも人使いが荒い…シトリー、ベレト、ベレス…すまねぇがここで待ってくれ!直ぐに片付けてくる!」
そしてジェラルトは部屋から出て行ってしまった。セテスが先に謁見の間に戻った後、自分達は暫く母さんとソティスに今日の事について色々と話した。
「何だか賑やかになりそうね〜」
「まだどの学級の先生になるかまでは決まってないけど、私は楽しみだよ」
「出来ればベレスと同じがよかったんだがな」
「ベレト、そろそろ独り立ちして?」
「ふふ、ベレトは寂しがりやさんね〜」
「母さん、俺はただベレスが心配なだけだ」
「いや私はベレトがいなくても大丈夫だが?」
するとセリカが自分の肩を軽く突いてくる。
「私もそろそろ行くわね」
セリカはそう言うと先に謁見の間へと向かって行った。家族の会話を邪魔しない様に気を遣っているみたいだ。
「ロリス、手を出して?」
「何じゃ?」
自分はソティスの手に焼き菓子を乗せた。
「生徒の一人から貰ったんだけどあげる」
「…おぬしはいらぬのか?」
「食堂で沢山食べたから大丈夫だよ、母さんも食べる?いっぱい貰ったからあげるよ?」
「いいの?ありがとうね〜ベレス」
ソティスと母さんは微笑みながら美味しそうに菓子を食べる。
「ベレス…俺にもくれないか?」
「…じゃあ手出して」
その姿を見て母さんは温かい目で見て、ソティスはベレトの方をずっと睨んでいた。そして自分はセリカ達を待たせている為ソティスと母さんと一旦別れて謁見の間へ向かい中に入った。
そこにはレアとセテス、セリカが既に待機していた。
「士官学校の様子はいかがでしたか?清廉な魂の息吹に満ちていたでしょ?」
「清廉?よくわからないが悪そうな奴はいなかったな」
ベレトがレアに対して若干失礼な発言をして自分はベレトに視線を送り続ける。
「どうしたベレス?」
「空気読んで」
続けてセテスが話を進める。
「さて、ここに呼んだのは他でもない…君達には明日から教師として三つの学級の内それぞれ一人ずつ一つの学級を受け持ってもらう、個人的には反対なのだが大司教たっての希望なのでね」
「その前に質問いいか?」
「む?どうしたベレト?」
「残った一つの学級は誰が担当するんだ?」
「…は?」
自分は思わず呆れた声でベレトに言った。それに対してベレトは首を傾げる。
「まさか…まだ気づいてないの?」
自分はセリカに指を向け、ベレトはセリカの方を見る。セリカは困惑気味な表情で小さく手を振る。
「よろしくね?二人とも」
「セリカも教師だったのか…」
「いや幾つか伏線あったけど⁉︎」
ついベレトにツッコミをいれるがベレトには効果が無かった。
「ますます心配になってきたな」
セテスが呆れた様子で頭を抱えながら自分達に向けて言う。
「セテス、ベレトとベレスはまだこの大修道院に来たばかりなのです…混乱するのも無理はありません」
「しかし大司教、やはり考え直した方が」
「セテス…口を慎みなさい」
「…分かりました」
セテスは不満そうな表情で口を閉じる。
「それでは貴方達の担当する学級を聞かせても良いですか?」
そして自分達はそれぞれ担当する学級を口にして言う。驚く程、見事に全員が違う学級を口にした為、担当する学級が直ぐに決定したのだった。
「心は決まったようですね…どうか生徒達を真摯に導いてくれる事を心から願っています」
「フォドラの未来を担う有望な生徒ばかりだ!この栄誉ある職務を誇りとして彼等を導いて欲しい!」
「「「はい!」」」
皆の返事が重なった。
「それと三人に予め伝えておく…近日、現時点での生徒達の実力を測る学級対抗戦を行う予定だ!同時に君達の実力も見定めさせてもらう!大司教を失望させぬ様にしてくれ!以上だ解散!」
セテスが内容を言い切ったと同時に謁見の間の扉からノックする音が聞こえた。自分達は振り返ってセテスが入るように言うと扉が開かれた。
「お兄様!…あ…申し訳ございません、お話の最中でしたの?邪魔をしてしまいました…」
「丁度今終わった後だフレン、それにお前を邪魔だと思った事は一度たりともないさ…どうかしたのか?」
「いいえ、大した用ではありませんの…?」
フレンが自分達の方に顔を向ける。
「久しぶりねフレン!」
「ま!セリカさん、お久しぶりですわ!お兄様から既に聞いていますわよ?士官学校の教師になるみたいですわね?」
「えぇそうよ、これでも少し緊張しているのよ?」
そう言えばセリカは自分達よりも早く大修道院に来ていると少し前に言っていた。そしてフレンは自分の方を見る。
「あなた方も新しい教師ですの?」
「ベレスよ、よろしくね」
「同じくベレトだ」
「初めまして、セテスの妹のフレンですわ」
笑顔で自分達に挨拶をするとセテスが咳払いをする。
「君達、そろそろ解散してくれ…ここは神聖な場所だ」
「お兄様、雑談くらいいいじゃないですか?」
「そうですよセテス、親睦を深める事は大事な事と貴方自身も仰ってましたよね?」
「う…」
「セテス、貴方はフレンに対して執着しすぎです…子離れをお勧めします」
「大司教まで⁉︎」
その後、セイロス騎士団が二人来て自分達三人は学生寮に案内された。自分とベレトは一階でもう一人の騎士団はセリカを二階の学生寮に案内し一旦別れた。
「ここが君達のそれぞれの部屋だ、では…私はこれで失礼する」
「ありがとうございます」
自分はベレトの隣、一番端の方の自分の部屋に入った。とても懐かしい感じがして落ち着く。そしてレアから渡された名簿や資料を整理する。その後にベッドにダイブしてみるとすごくモフモフしていて気持ち良くなってきた。
「すぅ…」
「…きて、起きて師…もう朝よ?」
「…エル?」
「みんな待ってるわよ?早く行きましょ?」
「行くって何処へ?」
エルが自分の手を引いて扉を開けると帝国軍の皆が武装をしていて待機している。よく見ると皆の姿が成長している。そしてその先にはシャンバラが見える。嫌な予感がした。
「さぁ師…これで最後よ!」
「っ!待って!」
だがエル達は聞く耳を持たずシャンバラに進軍して中に入る。そしていつの間にか自分もシャンバラの中に入っていた。
「我らアガルタに…光あれ!」
「っ!」
手に持っているのは天帝の剣ではなく銀の剣になっていた。
「…何で…」
そしてシャンバラが崩れ…辺りは仲間の死体がそこら中に転がっていた。そして目の前には…
「…あ…あっ」
自分の足に少しずつ血溜まりが流れている。
「はぁっ!…はぁっ!」
その先にはエルの死体が転がっていた。
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
「っ!」
自分は冷や汗をかき起き上がった。
「はぁっ!…はぁっ!…はぁ…はぁ…夢か…」
酷い悪夢だった…今は23時、あの後どうやら寝落ちしていた様だ。自分は部屋を出て浴室に向かう。
「あの…すいません」
「はい?」
「ここまだ空いてますか?」
自分は浴室係の人に聞くと"顔色良くないが大丈夫か?"と心配されるが自分は気にしないでと言い、浴室に入る。服を脱いで浴室用の服に着替えて頭をスッキリさせよう…
「はぁ…」
人一人いない場所座りながら色々な事を考える。もし自分が教師じゃなかったら未来が変わるのかな…でも今更、教師をしたくないなんて言える筈もない。
「はぁ…何やってんだ…私は…」
暫くボーっとしていると浴室の扉が開く。
「一人か?」
「?」
そこには浴室用の服を着たシャミアがいた。
「あなたは…シャミアさん?」
シャミアが目を見開く。
「名乗った覚えはないが?」
「いや…数年前に会った人と姿が似ている気がしてね」
適当な嘘を言う自分。だがシャミアは自分に視線を向けたまま…
「…あんた…もしかして例の新任教師か?」
「…明日からです、担当学級も既に決まっています」
「そうか」
暫く同じ空間でボーっとしている間に自分は目を閉じる。するとそれを見たシャミアが軽く頬をつねってきた。
「そんな所で寝ると熱中症になるぞ?」
そう言うとシャミアは先に浴室から出て行ってしまった。
「…そろそろ出るか」
自分も浴室から出て着替えを済ませた後、部屋に戻る。
ベレスが悪夢を見ている間、ベレトとセリカは先に浴室に入ってた。