フラグメント・リベンジャーズ   作:有本

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第10話 合戦開始

「さて、と。着いたな」

 

 チアキを頭に、レンとミユは車両から降りる。

 作戦会議と準備を終えたレンたちは東京二十三区外、地方部にある廃ショッピングモールへと来ていた。

 

 時刻は午後二時、気温が最も高い時間帯である。

 薄っすらと額に浮かんだ汗を、レンは拭った。

 レンとミユはチアキたち機関員に合わせ、機関特製の制服を着用している。

 一見するとただの黒いスーツだが、特殊な繊維で編みこまれた一品らしく、デジモンの攻撃を多少軽減できる代物らしい。

 

 モールの外縁を、約二百人の機関員が囲んでいる。

 突入の合図がかかると共に、機関員たちは即座にモールに侵入し、研究者たちの救出を始める手はずになっている。

 

 入り口付近にある、駐車場を管理する建物に身を隠すようにして、レンたちは中心にある巨大なモールの様子を伺っていた。

 すると、レンはミユが微かに震えているのに気づく。

 

「大丈夫か?」

「は、はい。ただちょっと、緊張してしまって」

 

 およそ一ヶ月ほど前までは普通の女子高生だった彼女が、今は武力を用いる作戦に参加しているのだ。

 環境の目まぐるしい変化に体がついていかないのだろう。

 レンとしても、このような様子のミユを見ているのは心苦しかったが、ミユ自身の気持ちを尊重すると決めたことから引き返すわけにはいかなかった。

 それにここで別れて待機させるより、一緒に行動する方が不測の事態も起きないだろう、と判断する。

 

「……了解。二人共、作戦開始だ。モールまで移動するぞ」

 

 チアキの指示に従って、レンたちはモールまで駆け出す。

 周囲を見ると、同じく一斉に移動する機関員の集団が見て取れた。

 

 レンたちは素早くモールの入り口まで辿り着こうとしたが、しかし。

 突如眼前に現れた一匹のデジモンに、行く手を阻まれてしまう。

 回避して距離を取ったレンは、デジヴァイスを取り出した。

 

「アナライズ……イッカクモン、成熟期か!」

 

 白色の体毛に覆われ、鋼鉄のような一本角を持ったそのデジモンは、イッカクモン。

 その横に、ゆっくりと歩いてくる男がいた。

 どうやら、モール内に廃棄されていた廃車の山の中に身を潜めていたようだった。

 センターパートの金髪で背が低いその男は、デジヴァイスを片手に持っている。

 どうやらイッカクモンは、男のパートナーらしい。

 

「流石に、そう易々と根城に通してくれるわけないか。なぁ、アンノウンさんよ」

「アンノウン? もしかして、俺らの組織の事かな。中々面白い名前を付けてくれたもんだ」

 

 男はヘラヘラとした調子で、イッカクモンを撫でる。

 

「お前らがそろそろここに来ることは、セイジさんも勿論予見していた。俺はここでお前らを迎撃するための人員ってことさ。深山コウイチだ、以後よろしく」

「そうかァ。なら、ここは俺が受け持ってやる」

 

 チアキが一歩前に出て、デジヴァイスを構える。

 それを見て、男……コウイチは意外そうな顔をした。

 

「おっと、お前ら三人なら相手は俺一人で十分だ。まとめてかかってきな」

 

 チアキはレンとミユに近寄ると、軽く耳打ちする。

 

「俺が先行して隙を作る。その間に、お前らはモールの中へ入れ」

 

 頷くレンとミユを横目に、チアキはドラコモンをリアライズさせる。

 レンとミユも、それぞれダルクモン、ケラモンを出した。

 

「合意の合図と見た。行け、イッカクモン!」

 

 イッカクモンはコウイチの指示により、いきなりその場で頭部に付いている一本角を射出した。

 

「ハープーンバルカンッ!!」

 

 角は空中で開くと、ミサイルの形となってレンたちに向けて降下を開始する。

 

「ドラコモン、進化だ!」

 

 ミサイルが落ちる前に、チアキはドラコモンをフレアリザモンへと進化させる。

 そして、進化による力の波動を使ってハープーンバルカンを空中で弾き、爆発させた。

 

「へぇ、やるじゃん」

「俺たちの力、存分に見せてやる。フレアリザモン、反撃だ!」

 

 フレアリザモンはイッカクモンへ向けて駆けだし、炎を纏ったパンチを繰り出す。

 イッカクモンは鈍重な見た目の通り動きは遅いようで、躱すことも出来ずそれを喰らってしまった。

 自分の体に燃え移った炎を見て、苦悶の声を上げるイッカクモン。

 それを見ると、コウイチは再度デジヴァイスを構えた。

 

「インストール、ペイルドラモン!」

 

 コウイチは両手に分厚い青色のグローブを形成する。

 そしてそれをイッカクモンに向けると、グローブから吹雪が放たれた。

 吹雪はイッカクモンの炎を、たちまち鎮火させる。

 

「君のパートナーの炎と、俺の氷は相性が悪いみたいだけど……大丈夫かい?」

「お前こそ大丈夫か? 後ろ、見てみろよ」

「なに」

 

 コウイチが背後を振り返ると、そこには走り去っていくレンとミユ、ダルクモンとケラモンの姿があった。

 コウイチはそれを見て、僅かに唇を噛むが、すぐにまた平然とした顔に戻る。

 

「逃がしてしまったものはしょうがない。まずはお前たちを片付けるところから始めよう」

「それはこっちのセリフだ! 行くぜ、フレアリザモンッ!!」

「応ッ!」

 

 チアキとフレアリザモン、コウイチとイッカクモンはその言葉を皮切りに、激突した。

 

 ― ― ― ― ―

 

「大丈夫ですかね、チアキさん」

「チアキはまだ成熟期までしか進化させられないが、ポテンシャルは高いんだ。今はその可能性に賭けよう」

 

 レンとミユはモールの中に駆け込んで、辺りを見回す。

 一見すると、薄暗くガランとした空間である。

 レンたち以外には誰もいないが、ダルクモンとケラモンは気配を感じ取ったらしく、臨戦態勢に入っていた。

 遠方から轟音が聞こえることからも、各所でメイビスとアンノウンの戦闘が始まっているのだろう。

 

「俺たちの目的はあくまでも、お兄さんを助け出すことだ。無駄な戦闘はなるべく避けて進む、いいね?」

「はい」

 

 慎重に辺りを見回しつつも、駆け足でレンたちはモール内を探っていく。

 途中で何度かアンノウンの犯罪者や、アンノウンが捕獲していたらしい野良デジモンたちがうろついていたが、身を隠して戦闘を避けていった。

 

「……レンさん。そういえば兄の居場所について、手掛かりはあるんですか?」

「一応、デジヴァイスのアナライズ機能で周囲を探ってる。デジモンたちを集めている、守りが固い場所があるはずだ。まずはそこまで行こう」

 

 十数分、デジヴァイス片手にレンたちはモール内を隠れながら移動し、数か所の守りが固い場所を特定した。

 それをメイビス機関員たちに連絡して共有する。

 手分けして守りの固い部分を突破しようという試みだった。

 

「ここを一階上がったところに、かつては書店だったスペースがあるらしい。そこの一区画、ちょうどバックヤードがある辺りに野良デジモンが複数待機している。何かありそうだ、俺たちはそこを攻めてみよう」

「了解です」

 

 動きが止まっている苔むしたエスカレーターを登り、レンたちは目当ての階へと到着する。

 しかし。

 

「……そろそろ、ここに誰か来る頃だと思っていた。だが、まさかお前だとはな」

 

 書店の前に、倉庫地帯でレンと戦ったテツオが、胡坐をかいて座っていた。

 

「アンタか……。ミユちゃん、ここは俺に任せて行け。今の君なら、野良デジモンぐらいなら倒せるはずだ。君を信じる」

「レンさん……! わかりました」

 

 書店へ向けて走るミユとケラモンをテツオは止めようとするが、瞬間。

 

「インストール、グレイモンッ!」

 

 レンはガントレットを装備しつつ、テツオに向かって打撃を繰り出した。

 寸前でテツオは避けるが、そのせいでミユを書店内へ逃がしてしまう。

 

「アンタの相手は俺たちだ」

「どうやらそのようだな。リアライズ、ウッドモン」

 

 樹木のようなデジモン、ウッドモンを出現させるテツオ。

 ウッドモンの姿を見ると、ダルクモンは静かに剣を抜いた。

 

「インストール、ゴリモン。いくぞ……便利屋」

 

 腕にゴリモンの大砲を形成するテツオに向けて、レンはガントレットを構えた。

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