フラグメント・リベンジャーズ   作:有本

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第12話 炎の衣を身に纏い

「君たち、思ったよりやるじゃん。すごいね」

 

 ミユがオーガモンとの戦闘を開始した時とほぼ同時刻。

 

 チアキとフレアリザモンは、コウイチとイッカクモンに苦戦を強いられていた。

 チアキは倉庫地帯での戦闘時と同じように刀を使って戦っているものの、その刀の力もコウイチたちにはほとんど通じていない。

 

「クソッ!」

 

 チアキは距離を詰めて再度刀を振るうが、それをコウイチはグローブを使って氷の壁を作り出し、完璧に防いでしまう。

 衝撃波を何度当てても、氷壁は崩れなかった。

 

「その衝撃波、極めれば割と便利な能力になりそうだけどね、まだまだかな。イッカクモン」

 

 そんなことを言っている間にも、コウイチはイッカクモンに指示を出し、フレアリザモンへと攻撃を仕掛けさせる。

 イッカクモンはハープーンバルカンを連射し、フレアリザモンに近づく隙を与えさせない。

 尤も、近づいて炎を撃ち出してもコウイチの氷によりすぐ消火されてしまうのだが。

 

 フレアリザモンはミサイルを避けつつ、チアキに指示を仰ぐ。

 

「チアキ! このままじゃマズいよ……!」

「そんなことはわかってるッ!」

「諦めが悪いのは好きだけど、そろそろ終わりにしよう。僕も他のところへ加勢しに行かないといけない」

 

 コウイチは懐からデジヴァイスを取り出し、イッカクモンへと向ける。

 

「イッカクモン、進化」

「オオオオオオ!!」

 

 イッカクモンが大きく咆哮したと同時に、周囲に細かな電流が走る。

 進化により攻撃が止んだことから、フレアリザモンはチアキを助勢しようとするが、その電流に行く手を遮られてしまった。

 

「クソッ。ただでさえ強いってのに、これ以上進化するのかよ……!」

 

 電流を避けながら、一旦チアキとフレアリザモンは大きく後退する。

 

 やがて電流が収まると……コウイチの傍らには灰色の皮膚を持つ、筋骨隆々の海獣型デジモン・ズドモンが険しい面持ちで構えていた。

 右手には、鋭い金属のハンマー・トールハンマーを持っている。

 

「コウイチ、一気に蹴散らしてもいいか?」

「あぁ。もっとアイツらと戦っていたいが、そういうわけにもいかない。やってくれ、ズドモン」

 

 短い会話の後、ズドモンはその場にトールハンマーを振り下ろした。

 

「ハンマースパーク!」

 

 瞬間、地割れでも起きそうなほどの強烈な衝撃と火花、そして電流がチアキとフレアリザモンを襲った。

 

「「ぐああああああッ!」」

 

 その場に倒れると、チアキたちは黒い煙を上げる。

 先ほどのイッカクモンの攻撃とは比較にならないほどの威力が、ハンマースパークにはあった。

 

「こ、れが……完全体の、力か」

「うぅ、チアキ……」

 

 苦しそうにうめくフレアリザモンを見て、チアキの顔は歪む。

 ここで完全体を操るコウイチを逃がしてしまえば、それこそ救出作戦に多大な支障が出てしまう。

 それは明らかだった。

 しかし、チアキたちにズドモンを止める力はない。

 何か契機がなければ、逆転は不可能だった。

 

「ぐ……立てるか、フレアリザモン」

 

 フレアリザモンを助け起こしつつ、チアキはコウイチたちを睨む。

 コウイチは先程と変わらず飄々とした顔で、ズドモンをゆっくりと撫でている。

 

「どうだい、力の差がわかっただろう。ここで一度、君たちにチャンスをやろうじゃないか」

「チャンスだと?」

「あぁ。今すぐこの場から去るというのであれば、君たちにこれ以上危害は加えない。生かしてあげよう」

 

 舐めた顔つきで申し出るコウイチに対し、チアキは青筋を立てる。

 

「ケッ、そんな手に乗ると思ってんのか。こちとらメイビスだぞ。たとえ死んでも……任務は全うする!!」

「ふふ、だろうと思ったよ。じゃあ、ここで君たちの命を奪うしかないね」

 

 コウイチは片手を上げる。

 それに従って、ズドモンはトールハンマーをチアキに向かって投げた。

 

「クソがッ!」

 

 避けようとするチアキだったが、トールハンマーは異常なスピードでチアキを圧し潰そうと迫ってくる。

 逃げる間もなく、ハンマーの餌食になりかけた時。

 

「チアキッ!!」

 

 間一髪でフレアリザモンはチアキに向かってタックルし、チアキをトールハンマーの軌道から逸らす。

 しかし、代わりにフレアリザモンがハンマーの攻撃を喰らってしまった。

 重量のある衝撃に対し、フレアリザモンは勢いよく吹き飛んで廃車の山に激突する。

 

「フレアリザモン……!」

 

 焦ったチアキは、コウイチたちにわき目も振らず廃車の山へと走る。

 そしてその中に埋もれたフレアリザモンを見つけると、涙を流しながら助け起こした。

 

「フレアリザモン、フレアリザモン!! 大丈夫か!! 死ぬな!!」

 

 フレアリザモンの体は端々から光の粒と化し、それが段々と体の中心部まで迫っていた。

 

「チア、キ」

「こんなところで死ぬな! お前は必ず、俺が本部まで連れて帰ってやる! だから死ぬな!」

「チアキ……まだだ」

「え?」

「僕が、死にかけたくらいで……チアキの気持ちは、折れない。僕たちは、まだやれる……いや、やらなきゃならないんだ!」

「フレアリザモン……」

 

 『死んでも任務は全うする』などと偉そうなことを言っておきながら、フレアリザモンが窮地に陥ると途端に目的を見失い、狼狽してしまっていた。

 それを反省すると、チアキは顔を引き締める。

 

「そうだな……俺たちはまだやれる。立てるか、フレアリザモン」

「もち、ろんッ!!」

 

 その時、チアキのデジヴァイスが燦然と輝きを放つ。

 廃車の山に近づいて攻撃を加えようとしたズドモンが、その光に驚き思わずのけぞった。

 光はやがて炎の渦となり、フレアリザモンを包み込んだ。

 

「僕はチアキの折れない心が好きだ。僕もそうなりたいってずっと思ってた……だから、ここで僕は、チアキの心に応える!!」

「フレアリザモン……! 行こうぜ!!」

 

 炎の渦を纏ったフレアリザモンは、体格を巨大に変化させ、四足歩行へと姿を変える。

 その体は、山の如き巨体となった。

 渦が収まると、全身が火山のような竜型デジモン・ヴォルクドラモンが現れる。

 コウイチは感嘆したように、賛辞の言葉を述べた。

 

「すごいじゃないか!! この土壇場で完全体まで進化させるとは!! やはり君たちには才能がある!」

「あぁ……俺もそう思ってるよ」

 

 ヴォルクドラモンとチアキは並び立つ。

 そこにズドモンが先制攻撃を加えるため、再びハンマーを振り下ろした。

 

「ハンマースパークッ!!」

 

 地割れのような衝撃波と火花、電流をヴォルクドラモンとチアキは、黙って耐え続ける。

 先ほどのようにもだえ苦しむ姿を一切見せないことから、初めてコウイチの顔色が変わった。

 

「まさか、君たちの想いはそこまで……」

 

 やがてハンマースパークが鳴りやむと、ヴォルクドラモンは『次は自分の番だ』と言わんばかりに攻撃の態勢を取った。

 

「ヴォルカニックフォーン!!」

 

 瞬間、超高温のマグマがヴォルクドラモンの口から発射された。

 灼熱の津波であるソレはあまりの広範囲攻撃だったため、ズドモンは避ける暇もなく正面から喰らってしまった。

 対して、コウイチは氷壁を多数展開し、ギリギリで攻撃を凌ぐ。

 

「ぐ、ああああ……」

「ズドモン!」

 

 マグマ攻撃に多大なダメージを受けたズドモンを助けるため、コウイチはズドモンに近づこうとするが、そこにヴォルクドラモンのもう一つの技が発動された。

 

「サークルオブデス」

 マグマに焼かれて苦しんでいるズドモンとコウイチたちの周囲に円が描かれ、その地帯を覆うように紫色のドームが展開された。

 瞬間、ズドモンとコウイチは糸が切れたようにその場に倒れ伏す。

 サークルオブデスは、範囲内にいる者を昏倒させる効果があるのだった。

 

「悪いが……俺たちの勝ち、ってことだ」

 

 チアキが一息つくのと同時に、ヴォルクドラモンはその姿を小さくさせ、ドラコモンにまで戻った。

 どうやら、急激に進化した反動が来たのだろう。

 その場に倒れかかるドラコモンを、慌ててチアキは支える。

 

「おっと。大丈夫か、ドラコモン? よくやったよ」

「チアキ……ありがとう」

 

 デジヴァイスにドラコモンをしまうと、チアキはモールを見据える。

 まだレンとミユは中で戦闘中だろう。

 ドラコモンが戦えないとしても、チアキだけでも加勢に行かなければならない。

 

 チアキ自身もかなり疲弊していたが、ここで倒れたらそれこそメイビスの名折れだった。

 その場で気合を入れて踏ん張ると、チアキはモールへと駆け出した。

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